浅野直樹の学習日記

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司法試験予備試験の学習記録(科目別)2年目【表示に時間がかかります】

1年目については司法試験予備試験の学習記録(科目別)をご参照ください。また、時系列での学習記録は司法試験予備試験の学習記録(時系列)2年目にまとめてあります。

 

1.憲法

芦部信喜『憲法』だけでは物足りなかったので、野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅰ・Ⅱ』を読みました。


憲法1


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2020年05月12日


憲法2


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2020年05月12日

もちろん判例百選も読みました。第6版が出る前だったので第5版です。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

 

2.行政法

宇賀克也『行政法』を以前に読んでおり、もっと詳しい内容が欲しかったので、同著者の『行政法概説』に進みました。


行政法概説


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2013年10月17日


行政法概説


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2013年10月16日

3分冊目の行政組織法/公務員法/公物法も読みたかったのですが、時間効率の面から断念しました。司法試験(予備試験)での出題は少ないですので。

 

当然判例百選は押さえました。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

しかしこれの分量が多くてざっと読んだために理解が怪しくなっているような気がします。個人的には百選に収録する判例をもうちょっと厳選してほしいところです。

 

3.民法

もう一度コンパクトに全体像をつかみたかったので、潮見佳男『入門民法(全)』を読みました。


入門民法(全)


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2023年06月20日

そして本命は内田貴『民法』シリーズです。これを信じています。


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2008年06月25日


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2011年07月01日


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2005年10月21日


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2004年04月20日

判例百選も読みました。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

家族法まで読む必要があるのかと疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、対抗問題などの理解が深まりますし、そして何より身近で面白いので、読むことをおすすめします。

 

4.商法(会社法)

会社法の部分は辞書だとも言われている江頭憲治郎『株式会社法』をじっくり読みました。


株式会社法


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2012年03月15日

分厚い分だけわかりやすいです。

 

判例百選も必須です。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

特に会社法判例百選は具体的なイメージが湧いてよかったです。

 

商法総則・商行為・手形・小切手は弥永真生さんの薄い本を読みました。


リーガルマインド商法総則・商行為法


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2006年05月18日


リーガルマインド手形法・小切手法


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2007年05月25日

ざっと読んだだけなのでまだまだ理解不足ですが、どういうところが問題になり得るかなど少しはわかりました。

 

判例百選の商法のほうは読んでいません。時間さえあれば読みたいです。

 

5.民事訴訟法

1年目からの流れで藤田広美さんのシリーズを読みました。


講義民事訴訟


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2013年06月28日


解析民事訴訟


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2013年06月28日

初心者の状態から始めやすく、重要な論点についてひと通り押さえられたという点ではよかったと思います。ただ、特に短答で問われるような細かい手続にはこれだけでは厳しいかなと感じました。

 

もちろん判例百選も読みました。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

 

6.刑法

1年目に悩んだ末に西田典之『刑法総論』『刑法各論』がフィットすることがわかったので、もう一度読みました。


刑法総論


作 者: 

出版社: 弘文堂

発売日: 2013年06月26日


刑法各論


作 者: 

出版社: 弘文堂

発売日: 2013年06月26日

著者がお亡くなりになられたのでもう改訂されないのかと思うと寂しいです。

 

判例百選も当然読みました。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

 

7.刑事訴訟法

1年目同様、白取祐司『刑事訴訟法』に頼りました。


刑事訴訟法


作 者: 

出版社: 日本評論社

発売日: 2012年11月02日

歴史的な経緯や実務に反対する著者の意見がはっきり書かれているので理解しやすいです。ただ、具体的な手続の部分がまだよくわからないので、実務基礎科目も見据えてさらなる参考文献を探したほうがよいのかもしれません。

 

判例百選は読み応えがありました。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

 

8.六法・辞書

六法は1年目より『判例六法』を愛用しています。

 

それに加えて、2年目は『有斐閣 法律用語辞典』を導入しました。これまでに社会学や心理学を学んでいたときにはよく辞書を読んでいたので、法律でもそれをしない手はないとある時ひらめいたのです。


有斐閣法律用語辞典


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2015年02月25日

怪しいなと思う語をこれで調べれば知識が引き締まります。もっと早くから使っておけばよかったです。同じ会社から出ている『法律学小辞典』も気になっています。こちらのほうは単に語の意味を調べるというよりは、ちょっとした説明を読む辞書です。

 

9.短答対策

『法学セミナー』のシリーズで過去問をひたすらやりました。

 

10.論文対策

予備試験の過去問を解くとは当然でしょう。答え合わせには司法試験・法科大学院(ロースクール)情報を参考にさせていただきました。サイト内検索で「参考答案」と打ち込めば見つかります。インターネットで探した限り一番説得力がありました。

 

『法学教室』末尾の演習問題もおすすめです。時事ネタにも対応しています。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

 

予備校本ではLECの『司法試験予備試験 新・論文の森』が一番見やすく感じたので、これをひと通り読みました。


司法試験予備試験新・論文の森法律実務基礎


作 者: 

出版社: 東京リーガルマインド

発売日: 2012年11月08日

 

予備試験の論文独自の科目として実務基礎(民事・刑事)がありますが、この対策を考えあぐねています。民事のほうは司法研修所編『新問題研究要件事実』や岡口基一『要件事実マニュアル』のシリーズがあるからいいとして、刑事が悩みどころです。

 

11.漫画

気分転換と債権回収の実情を知ることを兼ねて、青木雄二『ナニワ金融道』を読みました。弟子たちの手による『新ナニワ金融道』も現在刊行中です。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

初代は古いので法改正に気をつけなければなりませんが(何せ滌除が出てくるくらいです)、本質は今でも通用するでしょう。

 

新しいところでは『カバチタレ!』ですね。


カバチタレ!


作 者: 

出版社: 講談社

発売日: 2022年03月07日


特上カバチ!! : カバチタレ!2


作 者: 

出版社: 講談社

発売日: 2021年10月12日


カバチ!!!1


作 者: 

出版社: 講談社

発売日: 2021年12月06日

こちらのほうは債権回収に限らず法律全般です。自分ならどのような方法を試みるか考えながら読むと楽しいです。

 

以上です。こうやって一年分をまとめるとなかなか迫力がありますね。

 



司法試験予備試験の学習記録(時系列)2年目

1.1年目

一年目は短答で3点足りずに不合格でした(平成25年司法試験予備試験成績通知)。それまでの学習記録は司法試験予備試験の学習記録(時系列)にまとめた通りです。

 

1年目で不合格だった理由は何よりも知識不足です。受験することを決めてから4か月ほどの勉強であと3点のところまでいけたのだから、2年目の短答突破は最低条件で、いかに論文で勝負できるようになるかを考えました。

 

2.2年目の6月〜12月

知識を幅広く仕入れるために、各科目の判例百選を読むことを自らに課しました。それからもう一度基本書を読んで、体系的な理解を構築するという計画です。

 

また、雑誌『法学教室』の後ろのほうにある演習問題をちょっとした空き時間に読むようにしました。この時点では自分で答案を作る力など到底なく、ただ読むだけでした。

 

この時期は仕事のほうが忙しいので、空き時間に判例百選と法学教室の演習問題を読むのが中心でした。

 

3.2年目の1月〜3月

お正月や年度末にはまとまった時間が取れるので、判例百選を読み終えた科目から基本書をもう一度読み、その概要をこのブログにまとめました。この作業を経てようやくある程度の力がついたかなと思えるようになりました。

 

同時並行で判例百選も読み進めました。「百選」と言いながらだいたい100以上あるし、2分冊のものもあるので、けっこう大変でした。家族の争いとか具体的な事例を読みだすと面白いんですけどね。判例百選を読むのは筋トレみたいなものだと思っています。

 

4.2年目の4月〜5月(短答直前期)

いくら短答は大丈夫だろうと言っても対策をしないわけにはいきません。新司法試験になった2006年からの過去問は全部1周しました。

 

明らかに1年前とは手応えが違いました。何の話をしているのかわからないという問題はありませんし、自信を持って正解を選べる問題もそれなりに(3〜4割ほど)ありました。間違えたところや正解していても気になるところは基本書や辞書などで納得のいくまで調べました。

 

『重要判例解説』も過去3年分ほどはざっと目を通しました。特に公法系はこの内容が短答試験で問われることも多いですね。

 

2013年の最新の問題は制限時間通りにマークシートも使って解いてみました。すると、去年受けた予備試験との共通問題があるとはいえ、7割近くの正答率だったので、これはいけると思いました。予備試験の短答は一般教養科目で9割取れるので、法律科目は6割取れれば合格点を越える計算です。

 

そして実際はだいたいその通りの結果でした(平成26年司法試験予備試験成績通知(短答))。法律科目6割というのは一般教養科目のない司法試験では苦戦するような低い点数ですが、論文のための理解重視で過去問を1周しかしていないことからすると、そんなものかという気がします。

 

5.2年目の6月〜7月

短答の自己採点でぎりぎりではあっても合格はしているだろうと判断できたので、そこからは論文対策に集中しました。

 

短答試験の前から少しずつ、『司法試験予備試験 新・論文の森シリーズ』を読み進めました。論文試験までにどうにか全部読破しました。問題と参考答案だけを読みました。

 

それと法学教室の演習問題を4年分ほど読み返しました。4年分だと48回分なので、一日平均1回分を読んだことになります。時間がなかったので答案こそ作りませんでしたが、頭の中で構成を作ってから解説を読むようにしました。

 

また、法科大学院コア・カリキュラムも全部目を通しました。わからないことは基本書やインターネットなどで調べました。

 

時間を決めて過去問を解くということも当然行いました。時間配分や手書きで答案を作る感触をそこでつかみました。本当なら全部の過去問をすべきなのですが、どうしても時間が足りず、最新の平成25年分はすることができませんでした。

 

自分の場合は知識さえあればそれを文章にすることはできるので、特段文章表現の練習はしていません。

 

論文試験の手応えは、全力は出し切れたというものです。初めて論文試験を受けるので結果はわかりません。通知が来たら報告します。

 

 



平成26(2014)年司法試験予備試験論文再現答案民事訴訟法

問題

〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,2:3)

次の【事例】について,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

【事例】
 Xは,Aとの間で,Aの所有する甲土地についての売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,売買を原因とする所有権移転登記を経由している。ところが,本件売買契約が締結された後,Xは,Yが甲土地上に自己所有の乙建物を建築し,乙建物の所有権保存登記を経由していることを知った。Xは,Yに甲土地の明渡しを求めたが,Yは,AX間で本件売買契約が締結される前に,Aとの間で土地上に自己所有の建物を建築する目的で,甲土地を賃借する旨の契約を締結しており,甲土地の正当な占有権原がある旨を主張して,これに応じなかった。
 そこで,Xは,平成26年4月15日,甲土地の所在地を管轄する地方裁判所に,Yを被告として,甲土地の所有権に基づき,乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起し,その訴状は,同月21日,Yに対して送達された。
平成26年7月13日の時点では,乙建物は,これをYから賃借したWが占有している。

〔設問1〕
 上記の【事例】において,YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年2月10日であり,Xは,Wに乙建物が賃貸されたことに気付かないまま,Yのみを相手に建物収去土地明渡しを求める本件訴訟を提起し,その後,乙建物をWが占有していることに気付いた。Xは,Wに対する建物退去土地明渡請求についても,本件訴訟の手続で併せて審理してもらいたいと考えているが,そのために民事訴訟法上どのような方法を採り得るか説明しなさい。

〔設問2〕(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
 上記の【事例】において,YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年5月10日であり,そして,Wは,本件訴訟で,AX間で本件売買契約が締結された事実はないとして,Xが甲土地の所有権を有することを争いたいと考えている。
ところが,Yは,本件訴訟の口頭弁論期日において,AX間で本件売買契約が締結されたことを認める旨の陳述をした。
 ① Yがこの陳述をした口頭弁論期日の後に,Wが本件訴訟に当事者として参加した場合
 ② Wが本件訴訟に当事者として参加した後の口頭弁論期日において,Yがこの陳述をした場合
 ③ Xの申立てにより裁判所がWに訴訟を引き受けさせる旨の決定をした後の口頭弁論期日において,Yがこの陳述をした場合
のそれぞれについて,Wとの関係で,このYの陳述が有する民事訴訟法上の意義を説明しなさい。

 

再現答案

 以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 Wが自ら独立当事者参加(第47条)や義務承継人の訴訟引受け(第50条)を行えばXの目的が達成されるが、それではW次第ということになってしまうので、ここではXが主導的に行える方法を検討する。
1.義務承継人の訴訟引受け(第50条)
 本件訴訟の目的物は、乙建物を収去して甲土地を明け渡すことである。それをWがYから承継したので、当事者であるXの申立てにより、裁判所は、決定で、Wに訴訟を引き受けさせることができる(第50条第1項)。YがWに乙建物を賃貸したのは平成26年2月10日であり、本件訴訟継続以前であるが、Xはそのことを知らなかったのであって、当事者であるYやWの同意があれば訴訟引受けを認めても問題ないだろう。
2.訴えの変更(第143条)
 原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の集結に至るまで、請求を変更することができる(第143条第1項)。本件では当事者がYからWに変更されるものの、Xの所有権に基づき、乙建物を収去して甲土地を明け渡すことを求めるという点で請求の基礎に変更がないと言えるので、請求を変更することができると考えられる。訴訟が始まったばかりなので、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることもない。この場合、請求の変更は書面でしなければならず(第143条第2項)、相手方に送達しなければならない(第143条第3項)。
3.別訴の提起+弁論の併合(第152条)
 訴えの変更に係る請求の基礎の変更を厳格に解してこれを認めないとするなら、Wを被告として別訴を提起して、それをYを被告とする訴訟に弁論の併合をすることもできる。こうすることでも、Wに対する建物退去土地明渡請求について、本件訴訟の手続で併せて審理してもらいたいというXの願望は満たされる。

 

[設問2]
① このYの陳述はWに影響しない
 Wは本件訴訟に独立当事者参加(第47条)したと考えられる。Yがこの陳述をしたのがWの参加前なら、Wは当事者ではなく、どうすることもできなかったので、このYの陳述がWに影響することはない。
② このYの陳述はWに影響しない
 ①と同様に、Wは独立当事者参加をしたと考えられる。Wが本件訴訟に当事者として参加した後にYがこの陳述をしたという点で①と異なる。この場合、第47条第4項を経由して第40条第1項から第3項までの規定が準用される。そうすると、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる(第40条第1項)。このYの陳述はXの所有権を認めることにつながるので、Wにとって利益にはならない。よってこのYの陳述はWに影響しない。
③ このYの陳述はWに影響する
 これは義務承継人の訴訟引受け(第50条)であると考えられる。その場合は、第41条第1項及び第3項が準用される(第50条第3項)。そうすると、共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない(第41条第1項)ので、必然的にYの陳述がWに影響することになる。

以上

 

感想

 議論があらっぽいような気がします。特に設問2では「自白」という言葉を使っていないのがよくないと思います。

 



平成26(2014)年司法試験予備試験論文再現答案商法

問題

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

1.X株式会社(以下「X社」という。)は,携帯電話機の製造及び販売を行う取締役会設置会社であり,普通株式のみを発行している。X社の発行可能株式総数は100万株であり,発行済株式の総数は30万株である。また,X社は,会社法上の公開会社であるが,金融商品取引所にその発行する株式を上場していない。X社の取締役は,A,B,Cほか2名の計5名であり,その代表取締役は,Aのみである。
2.Y株式会社(以下「Y社」という。)は,携帯電話機用のバッテリーの製造及び販売を行う取締役会設置会社であり,その製造するバッテリーをX社に納入している。Y社は,古くからX社と取引関係があり,また,X社株式5万1千株(発行済株式の総数の17%)を有している。Bは,Y社の創業者で,その発行済株式の総数の90%を有しているが,平成20年以降,代表権のない取締役となっている。また,Bは,X社株式5万1千株(発行済株式の総数の17%)を有している。
3.Z株式会社(以下「Z社」という。)は,携帯電話機用のバッテリーの製造及び販売を行う取締役会設置会社であり,Cがその代表取締役である。Z社は,Y社と同様に,その製造するバッテリーをX社に納入しているが,Y社と比較するとX社と取引を始めた時期は遅く,最近になってその取引量を伸ばしてきている。なお,Z社は,X社株式を有していない。
4.X社は,平成25年末頃から,経営状態が悪化し,急きょ10億円の資金が必要となった。そこで,Aは,その資金を調達する方法についてBに相談した。Bは,市場実勢よりもやや高い金利によることとなるが,5億円であればY社がX社に貸し付けることができると述べた。
5.そこで,平成26年1月下旬,X社の取締役会が開催され,取締役5名が出席した。Y社からの借入れの決定については,X社とY社との関係が強化されることを警戒して,Cのみが反対したが,他の4名の取締役の賛成により決議が成立した。この取締役会の決定に基づき,X社は,Y社から5億円を借り入れた。
6.Y社のX社に対する貸付金の原資は,Bが自己の資産を担保に金融機関から借り入れた5億円であり,Bは,この5億円をそのままY社に貸し付けていた。Y社がX社に貸し付ける際の金利は,Bが金融機関から借り入れた際の金利に若干の上乗せがされたものであった。なお,Bは,これらの事情をAに伝えたことはなく,X社の取締役会においても説明していなかった。
7.他方,Cは,Aに対し,X社の募集株式を引き受ける方法であれば,不足する5億円の資金をZ社が提供することができると述べた。
8.そこで,同年2月上旬,X社の取締役会が開催され,1株当たりの払込金額を5000円として,10万株の新株を発行し,その全株式をZ社に割り当てることを決定した。この決定については,Bのみが反対したが,他の4名の取締役の賛成により決議が成立した。X社は,この募集株式の発行に当たり,株主総会の決議は経なかったが,募集事項の決定時及び新株発行時のX社の1株当たりの価値は,1万円を下ることはなかった。また,X社はこの募集株式の発行について,適法に公告を行っている。
9.Cは,同月下旬,上記6の事情を知るに至った。

 

〔設問1〕
Cは,平成26年3月に開催されたX社の取締役会において,X社のY社からの借入れが無効であると主張している。この主張の当否について論じなさい。

〔設問2〕
Bは,X社のZ社に対する募集株式の発行の効力が生じた後,訴えを提起してその発行が無効であると主張している。この主張の当否について論じなさい。

 

再現答案

 以下会社法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 この主張は当たっていると私は考える。以下でその理由を述べる。
1.利益相反取引(第356条第1項第2号)
 BはX社の取締役である。X社はY社から借入れをしているが、第356条第1項第2号の「自己又は第三者のために」という規定を「自己又は第三者の計算で」だと解釈すれば、本件借入れはBによる自己のための株式会社との取引であると言える。BはY社の創業者で、その発行済株式の総数の90%を有しているのでY社の利益は実質的にBの利益であることに加え、貸し付けの原資の5億円もBが自己の資産を担保に個人的に借り入れたものである。そして本件借入れは、市場実勢よりもあや高い金利であり、Bが金融機関から実際に借り入れた金利よりも若干上乗せされたものであったのだから、Y社と同視される Bに利益がある。Y社は古くからX社と取引関係にあるので、この貸し付けを回収できないという危険は少ない。Bは当該取引につき承認を受けていないどころか、重要な事実を開示していない。
 以上のように本件借り入れの違法は重大であり、無効とすべきである。借り入れを無効にしても第三者を害するという事情もない。
2.取締役会への特別利害関係人の参加(第369条第2項)
 上で述べたようにBは本件借り入れに関して特別の利害関係を有する取締役であるが、取締役会でのその決議に加わっている。確かにこれは違法であるが、仮にBが決議に加わらなかったとしても、その他の取締役3名の賛成で決議が有効に成立したのだから、X社のY社からの借り入れを無効とするほどのことではない。

[設問2]
 この主張は当たっていないと私は考える。
 本件で提起される訴えは、株式会社の成立後における株式の発行の無効を求める訴え(第828条第1項第2号)である。無効だと主張する理由は、払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額であるということである。募集事項の決定時及び新株発行時のX社の1株当たりの価値は1万円を下ることはなかったので、5000円という価格は、確実に資金を集めなければならないという事情を考慮しても、特に有利な金額である。そうすると株主総会でこのことを説明しなければならない(第199条第3項)。それにもかかわらず、本件ではそもそも株主総会が開かれていない。
 これは重大な違法であるが、本件募集株式の発行が無効とされるべきではない。というのも、募集株式の発行が無効とされると、取引の安全性が害されるからである。X社は公開会社なので、本件株式がすでに第三者の手に渡っている可能性も十分にある。
 本件募集株式の発行を無効としなくても、取締役の責任を追及することはできる。Cは本件募集株式の発行を提案したので、取締役の任務を怠りX社に損害を与えたと言える。決議に賛成したB以外の取締役も、任務を怠ったことが推定される。これらの取締役は、株式会社に対し、生じた損害を賠償する責任を負う(第423条第1項)。本件では、適正な価格との差額である、(10000−5000)×100000=5億円の賠償責任を負う。

以上

 

感想

 比較的理解できている分野でよかったです。多額の借財の話を書き損ねました。

 



平成26(2014)年司法試験予備試験論文再現答案民法

問題

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

【事実】

1.Aは,自宅近くにあるB所有の建物(以下「B邸」という。)の外壁(れんが風タイル張り仕上げ)がとても気に入り,自己が所有する別荘(以下「A邸」という。)を改修する際は,B邸のような外壁にしたいと思っていた。
2.Aは,A邸の外壁が傷んできたのを機に,外壁の改修をすることとし,工務店を営むCにその工事を依頼することにした。Aは,発注前にCと打合せをした際に,CにB邸を実際に見せて,A邸の外壁をB邸と同じ仕様にしてほしい旨を伝えた。
3.Cは,B邸を建築した業者であるD社から,B邸の外壁に用いられているタイルがE社製造の商品名「シャトー」であることを聞いた。CはE社に問い合わせ,「シャトー」が出荷可能であることを確認した。
4.Cは,Aに対し,Aの希望に沿った改修工事が可能である旨を伝えた。そこで,AとCは,工事完成を1か月後とするA邸の改修工事の請負契約を締結した。Aは,契約締結当日,Cに対し,請負代金の全額を支払った。
5.工事の開始時に現場に立ち会ったAは,A邸の敷地内に積み上げられたE社製のタイル「シャトー」の色がB邸のものとは若干違うと思った。しかし,Aは,Cから,光の具合で色も違って見えるし,長年の使用により多少変色するとの説明を受け,また,E社に問い合わせて確認したから間違いないと言われたので,Aはそれ以上何も言わなかった。
6.Cは,【事実】5に記したA邸の敷地内に積み上げられたE社製のタイル「シャトー」を使用して,A邸の外壁の改修を終えた。ところが,Aは,出来上がった外壁がB邸のものと異なる感じを拭えなかったので,直接E社に問い合わせた。そして,E社からAに対し,タイル「シャトー」の原料の一部につき従前使用していたものが入手しにくくなり,最近になって他の原料に変えた結果,表面の手触りや光沢が若干異なるようになり,そのため色も少し違って見えるが,耐火性,防水性等の性能は同一であるとの説明があった。また,Aは,B邸で使用したタイルと完全に同じものは,特注品として注文を受けてから2週間あれば製作することができる旨をE社から伝えられた。
7.そこで,Aは,Cに対し,E社から特注品であるタイルの納入を受けた上でA邸の改修工事をやり直すよう求めることにし,特注品であるタイルの製作及び改修工事のために必要な期間を考慮して,3か月以内にその工事を完成させるよう請求した。

〔設問1〕
【事実】7に記したAの請求について,予想されるCからの反論を踏まえつつ検討しなさい。

【事実(続き)】
8.【事実】7に記したAの請求があった後3か月が経過したが,Cは工事に全く着手しなかった。そこで,嫌気がさしたAは,A邸を2500万円でFに売却し,引き渡すとともに,その代金の全額を受領した。
9.なお,A邸の外壁に現在張られているタイルは,性能上は問題がなく,B邸に使用されているものと同じものが用いられていないからといって,A邸の売却価格には全く影響していない。

〔設問2〕
Aは,A邸をFに売却した後,Cに対し,外壁の改修工事の不備を理由とする損害の賠償を求めている。この請求が認められるかを,反対の考え方にも留意しながら論じなさい。なお,〔設問1〕に関して,AのCに対する請求が認められることを前提とする。

 

再現答案

 以下民法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 私はこのAの請求が認められるべきだと考える。
 本件のA邸の改修工事は請負契約であり、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(第632条)。ここでの「仕事」は「A邸の外壁をB邸と同じ仕様にすること」である。Cは「シャトーを用いてA邸の外壁を改修すること」がここでの仕事だと反論するかもしれないが、AはCにB邸を実際に見せてこれと同じ仕様にしてほしい旨を伝えているのであって、シャトーを用いるというのはCの判断である。
 そうであるなら、シャトーを用いていても、B邸の外壁とは異なる状態では、仕事の目的物に瑕疵があると言える。耐火性等の性能が同一だったとしても、Aは色などに着目して仕事を依頼しているのであるから、瑕疵だと言える。そのとき、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる(第634条第1項)。AはCに対し、特注品であるタイルの政策及び改修工事のために必要な期間を考慮して、3か月以内にその工事を完成させるよう請求したので、相当の期間を定めていると言える。Cは、その修補に過分の費用を要する(第634条第1項ただし書き)と主張するかもしれないが、Aが求めているタイルは注文を受けてから2週間あれば製作できることからしても、過分の費用を要することはないと考えられる。
 Cは、仕事の目的物の瑕疵が注文者の与えた指図によって生じた(第636条)と反論するかもしれないが、前述のように、AはB邸を実際に見せてこれと同じ仕様にしてほしい旨を伝えたのであるから、注文者であるAの指図によって生じたとは言えない。また、AはA邸の外壁の改修が終わってからすぐに本件請求をしていると読み取れるので、瑕疵の修補は仕事の目的物を引き渡した時から1年以内にしなければならない(第637条第1項)という期間も満たしていると思われる。
 以上より、本件請負契約の仕事はA邸の外壁をB邸と同じ仕様にすることなので、その仕事がまだ完成していないと考えるにせよ、仕事の目的物に瑕疵があると考えるにせよ、AはCに対し、本件請求をすることができる。

 

[設問2]
 この請求が認められると私は考える。
 [設問1]で述べたように、本件請負契約の仕事の目的物に瑕疵があるなら、注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる(第634条第2項)ので、注文者であるAは、請負人であるCに対し、外壁の改修工事の不備を理由とする損害の賠償を請求することができる。仮に仕事の目的物に瑕疵がなかったとしても、[設問1]のAのCに対する請求が認められるのであれば、Cは改修工事をやり直す債務を負っているので、債務不履行による損害賠償を請求することができる(第415条)。
 AはA邸を2500万円で売却し、引き渡すとともに、その代金の全額を受領していて、現在張られているタイルでもB邸と同じタイルでも売却価格には全く影響していないのだから、損害が発生していないとの反対の考え方があるかもしれない。しかしこの反論は本末転倒である。AはA邸の外壁を自分が望むようなB邸と同じ仕様にできなかったために仕方なくA邸を売却したのである。よってそのために損害の賠償が認められないということはない。

以上

 

感想

 シンプルに条文に当てはめていきました。これだけでよいのか不安です。

 

 




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