浅野直樹の学習日記

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2016 / 9月

シュラッター図を使わずに意味を考えて差異分析をする

今、日商簿記検定の勉強をしているところです。日商簿記検定3級・2級の受験記録 – 浅野直樹の学習日記にも書きましたように、差異分析のシュラッター図は、視覚的な印象に反することと呪文のように暗記しろと言われることに抵抗があるので、好きではありません。そこでシュラッター図を使わずに意味を考えて差異分析をする方法を編み出しました。

 

差異分析の目的は、これだけかかると予定していた費用(標準原価)と実際にかかった費用(実際原価)との差を分析することです。標準原価を考える際には便宜的に1時間あたり変動費が○○円で固定費が□□円かかるといったように決めます。そこで標準原価よりも実際原価のほうが大きかった場合に、製品を作るのに予定よりも時間がかかりすぎたこと(能率差異)、電気代の高騰などにより時間あたりの変動費が予定よりも高くなったこと(予算差異)、機械の稼働時間が短かったことなどにより時間あたりの固定費が予定よりも高くなったこと(操業度差異)に分解します。ここではわかりやすさのためにすべて不利(借方)差異であるかのように記述していますが、有利(貸方)差異なら逆に考えればよいだけです。

 

それでは実際の問題で考えてみましょう。

 

1.問題と解答

工業簿記 第120回 第5問 配点20点
製品Aを量産するX社は、パーシャル・プランの標準原価計算を採用している。次の資料にもとづき、製造間接費の差異分析を行いなさい。なお、差異分析では変動予算を用いて、予算差異、能率差異、操業度差異を計算すること。このとき、能率差異は変動費と固定費からなるものとして計算しなさい。
解答は、借方差異ならば(借)、貸方差異ならば(貸)と記入すること。

 

(資料)
1.当月実際製造間接費 1,588,000円(内訳:変動費 628,000円、固定費 960,000円)
2.当月の実際直接作業時間は7,800時間であった。
3.当月生産データ
月初仕掛品 200個(進捗度50%)
当月完成品 2,400個
月末仕掛品 400個(進捗度50%)
4.製品Aの1個当たりの標準直接作業時間は3時間である。
5.年間製造間接費予算 19,200,000円(内訳:変動費 7,680,000円、固定費 11,520,000円)
6.年間の正常直接作業時間は96,000時間である。
(注)製造間接費は直接作業時間を基準として製品に標準配賦されている。

 

<解答>
製造間接費総差異 88,000円(借)
予算差異 4,000円(借)
能率差異 60,000円(借)
操業度差異 24,000円(借)

みんな大好きシュラッター図の覚え方 | パブロフ簿記のブログより)

 

2.解き方

(1)標準原価を計算するために1時間あたりの製造間接費(内訳:変動費 固定費)を求める

表題の通りです。標準原価、つまり予定のほうです。問題文から「年間製造間接費予算 19,200,000円(内訳:変動費 7,680,000円、固定費 11,520,000円)」と「年間の正常直接作業時間は96,000時間である」を読み取って、1時間あたりにするために年間予算を年間予定作業時間である96,000時間で割って、1時間あたりの製造間接費は@200円(内訳:変動費@80円 固定費@120円)であることがわかります。

 

 

(2)ボックス図をかく

ボックス図を書くところまではシュラッター図を用いた解き方と同じです。製造間接費は直接作業時間を基準として製品に標準配賦されているとあるので加工費換算のボックス図です。

100個 2,400個
 2,500個
 200個

これで当月投入量は製品2,500個分だとわかりました。

 

(3)能率差異を求める

問題文より「製品Aの1個当たりの標準直接作業時間は3時間である」とのことなので、製品2,500個分の作業時間は3×2,500=7,500時間になるはずです。しかし「当月の実際直接作業時間は7,800時間であった」と書いてあります。つまり、7,800−7,500=300時間分だけ予定よりも時間がかかりすぎたということです。(1)より1時間あたりの製造間接費は@200円と求めたので、300時間だと200×300=60,000円分の能率の悪さによる不利差異があったと言えます。この問題では必要ありませんが、変動費能率差異は80×300=24,000円、固定費能率差異は120×300=36,000円のそれぞれ不利差異です。

 

(4)実際にかかった変動費と固定費を求める

ここで実際にかかった変動費と固定費を求めておくと後が楽です。この問題では「当月実際製造間接費 1,588,000円(内訳:変動費 628,000円、固定費 960,000円)」と書いてくれているので計算して求める必要がありません。そのまま使うことができます。

 

このような情報が問題文に書いていない場合は自分で計算して求めます。固定費はその名の通り固定されている費用なので求めやすく、こちらから考えます。年間の固定費の予算が11,520,000円なので、11,520,000÷12=960,000円と1月あたりの固定費が求まります。変動費は実際にかかった製造間接費の総額である1,588,000円から先ほど求めた固定費の960,000円を引いて628,000円と計算できます。

 

(5)予算差異を求める

予算差異という言葉がわかりにくいですが、実際にかかった時間で予定される変動費と実際にかかった変動費との差だと理解するとよいです。(3)の能率差異を計算することによりかかった時間の差は分析済みなので、安心して実際にかかった時間を用いてください。

 

1時間あたりの変動費は@80円で実際にかかった時間は7,800時間なので、80×7,800=624,000円が予定される変動費の額です。(4)より実際にかかった変動費の額は628,000円だったので、予定よりも4,000円多くかかりすぎた、つまり4,000円の不利差異が発生していると言えます。

 

(6)操業度差異を求める

操業度差異という言葉もわかりにくいですが、実際にかかった時間で予定される固定費と実際にかかった固定費との差だと理解するとよいです。(3)の能率差異を計算することによりかかった時間の差は分析済みなので、安心して実際にかかった時間を用いてください。

 

1時間あたりの固定費は@120円で実際にかかった時間は7,800時間なので、120×7,800=936,000円が予定される固定費の額です。(4)より実際にかかった固定費の額は960,000円だったので、予定よりも24,000円多くかかりすぎた、つまり24,000円の不利差異が発生していると言えます。

 

3.まとめ

この手順で意味を考えながら計算するとシュラッター図をかかなくても差異分析をすることができます。最初に製品の個数から予定される時間と実際にかかった時間の差である能率差異を計算します。それからは実際にかかった時間を基礎として、予定される変動費と実際にかかった変動費の差である予算差異を求め、予定される固定費と実際にかかった固定費の差である操業度差異を求めるのです。

 

個人的にはこれでようやくすっきりしました。

 

 



日商簿記検定3級・2級の受験記録

日商簿記検定3級と2級を初めて受験したときの記録です。先に結果を書いておくと、3級が93点で合格、2級が69点で不合格でした。

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1.勉強を始める前の状態

2015年の11月頃に簿記の試験を受けてみようと思い立ちました。会計学を教える必要が出てきそうだったからです。先に会計学から入ったのです。財務諸表などはそれなりに読めるものの、これをどうやって作っているのだろうという状態でした。

 

それとは別に団体の会計をすることなども多く、簿記の知識があったほうがよいだろうなと薄々感じていました。小さい団体なので単式簿記でも基本的に問題ないとはいえ、決算資料を作るときに迷うこともありました。

 

肝心の簿記の知識はゼロに等しかったです。複式簿記の何がすごいかもわかっていませんでした(負債や資産を正確に把握し、借方と貸方の数字を合わせることにより検算してミスを防ぎやすくする点に複式簿記のすごさがあると今では理解しています)。

 

電卓も普段は使わないので速く打てません。その代わりに計算を工夫して頭の中でやるといったことはできます。ある金額の5%ならその金額のゼロを一つ取って半分にするといった考え方です。

 

2.簿記3級の勉強

本屋で簿記試験のコーナーを見ると「スッキリ」シリーズと「サクッと」シリーズの2大勢力が目に付きました。両方をぱっと見た感触で「スッキリ」のほうが読みやすかったため、こちらに決めました。

 

絵がかわいいですし、左側(借方)はうれしいことで右側(貸方)は悲しいことのような直感的な理解も悪くありません。欲を言うなら、なぜ複式簿記が必要なのかということや、何のために決算整理をするのかといったことの説明も欲しかったです。特に決算整理は○○表というのがたくさん出てきて混乱しました。財務諸表を作るための作業だということを意識すると理解しやすくなります。精算表で当期純利益が損益計算書の借方から貸借対照表の貸方に移動することも、企業の活動を大きな視点で捉えて財務諸表を意識すればわかりました。

 

「スッキリ」に付属している問題を解き、過去問を10回分くらいやったら、満点に近いところで合格できそうな手応えを得ました。

 

3.簿記2級の勉強

2級も同じく「スッキリ」シリーズを活用しました。

 

商業簿記は3級の発展版なのでスムーズに入れました。こういう場合はこういう仕訳をするという細かいことを覚えるのが大変なだけです。苦労したのは社債を発行したときの調整と帳簿の記入方法あたりです。

 

工業簿記は全く初めての領域だったので戸惑いました。現金など→材料・賃金・経費→仕掛品→製品→売上原価→売上→現金などという大きな循環を大前提として、材料・賃金・経費→仕掛品の部分は直接算入される部分と製造間接費を経由する部分があると理解して、今学んでいる事柄がどこの話なのかということを意識できるようになってようやく慣れました。

 

ボックス図はほぼ完璧に使いこなせるようになったのでよいとして、差異分析のシュラッター図が嫌いです。金額が基準より大きくても小さくても外側に書くという点が視覚的な直感に反していますし、「よその」のように呪文として意味もわからず暗記しろと言われることに抵抗があるのです。それよりも予算差異は予算と実際との差、操業度差異はどれだけ固定費の分を使い倒したかという差異、能率差異は同じだけの製品を作るのにどれだけ多く(少なく)時間がかかったかという差と理解したほうが計算しやすいです。

 

「スッキリ」付属の問題を解いてから過去問を15回分くらいやって、平均的に70点は超えられるかなという状態になりました。

 

4.受験した感想

3級は多少自信がないところもあったものの、満点に近いところだろうという手応えでした。2級は微妙だなという手応えでした。200%定率法というのが何なのかわからず、帰ってから調べると新しく出題されるようになった範囲のようでした。最新情報は常にチェックすべきだと反省しました。

 

結果を見ると、記述式なので自己採点よりも実際の点数が低くなるように感じました。漢字を間違えていたり帳簿や表の書き方が違っていたりするせいでしょうか。

 

次は1級と2級を受けようと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 




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