令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(民事)

再現答案

 以下民法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

(1) 請負契約に基づく報酬支払請求権1個
  履行遅滞に基づく損害賠償請求権1個
(2) 被告は、原告に対し、300万円及びこれに対する令和4年5月28日から支払い済みまで年3分の割合による金員を支払え。
(3) ア 令和4年2月8日、Xは、Yに対し、本件工事を請け負った(報酬1000万円)。
  イ 令和4年5月28日、Xは、アに基づき本件工事を完成させ、本件建物をYに引き渡した。
(4) 請負契約に基づく報酬支払請求権について、請負契約の締結につき、632条より、アの事実の記載が必要だと考えた。報酬支払請求権につき、633条より、イの事実の記載が必要だと考えた。*
  履行遅滞に基づく損害賠償請求権について、法定利率(404条2項)を請求する場合は、特段の主張の必要はないと考えた。令和4年5月28日を経過していることは、顕著な事実として、主張の必要はないと解した。

〔設問2〕
(1)
 (i) 令和4年5月28日、Yは、Xに対し、本件契約に基づく報酬として、700万円を支払った。
 (ii) Xが請求している請負契約に基づく報酬支払請求権の全額は1000万円であり、300万円の免除だけでは1000万円全額を障害するのに届かないため、(ア)の事実が必要であると考えた。
(2) Xの請求が認められることを仮定すると、Yはこの損害賠償債権を自働債権とする相殺(505条1項)の抗弁を提出することが考えられる。これにより、事実上の回収をすることができる。このような相殺が許容されるというのが判例の立場である。
 しかし、それでは350万円に足りず、またそもそもYはXの請求が認められないと主張しているので、反訴(民事訴訟法146条1項)の提起をするほうが望ましい。この損害賠償債権は、本訴の目的である請求と関連する請求であり、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。同項ただし書(同項各号)には該当しないと思われる。

〔設問3〕
 XとYが本件契約を締結した事実を直接証明する証拠はない。契約書がないからである。そこで、以下の事情や間接証拠から、本件契約の成立を主張する。
 提出された書証や両者の供述から、XがYに対して700万円以上の金額で本件工事を請け負い、実際に外壁工事を含む本件工事を実施したことが認められる。外壁工事を含む本件工事の適正価格は1000万円であり、建物のリフォームを仕事としているXがその外壁工事分をサービスすると言ったというYの主張は、にわかには信じがたい。本件見積書①及び②から、外壁工事を含む本件工事の適正価格が1000万円であることには争いがない。
 本件見積書①及び②の成立は両者とも認めており、2枚の見積書が存在することにつきそれぞれ説明している。Xは賃貸人に本件工事の承諾を得るために金額の低い見積書を作ったと説明し、Yは銀行から300万円を上乗せして融資を受けるために金額の高い見積書を作ったと説明している。Yは本件見積書②を実際に賃貸人に見せたということであり、Xの説明は筋が通っている。Yが実際に銀行から融資を受けられたのは700万円であり、Yの説明は筋が通りにくい。外壁工事の記載の有無という本件見積書①と②の違いについても、大掛かりなリフォームと見えないようにするためというXの説明とは整合するが、金額にしか興味を持たないであろう銀行に提出するためというYの説明とは整合しにくい。
 本件契約の契約書が存在しないのだけれども、かといって金額が700万円の契約書が存在するわけでもなく、これがXの不利に作用することはない。
 以上より、XとYが本件契約を締結した事実が認められる。

〔設問4〕
 本件確定判決による強制執行の不許を求めることができない。
 関係する条文は民事執行法35条である。同条2項で確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限るとされている。Yが主張する契約不適合を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債権は、本件訴訟の口頭弁論の終結後に生じたものではないからである。請負契約の不適合を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債権は、請負人に対して損害賠償請求をする意思表示をした時点で確定的に発生するというのが判例の立場である(旧民法下での判例であるが、その趣旨は今なお妥当する)。本件では、令和4年6月初旬、YはXに対して損害賠償を請求する旨を伝えているので、この時点で損害賠償債権が確定的に発生した。よって、令和4年8月1日に提起された本件訴訟の口頭弁論の終結前に生じたものである。

*に以下の「 」内を追加
「判例により一部請求は認められているので、1000万円と300万円で金額が食い違っていることについて、よって書き以前に説明する必要はないと考えた。」

以上

感想

 この民事のほうから答案の記載を始めたのですが、〔設問2〕(1)(i)が思いつかず、刑事の科目のほうを終わらせてから、上に書いた内容を思いつきました。「判例を踏まえて」が多いなと思いました。自分なりには書きましたが、正しい内容かどうかはわかりません。




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