令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案労働法

再現答案

第1 裁判所に対する請求
 Xは、裁判所に対し、Y社との労働契約上の地位を有することの確認を請求することが考えられる。方法選択の適切性、対象選択の適切性、即時確定の利益(紛争の成熟性)の要件を満たせば、確認の訴えが認められる。本件では、他に適当な方法はなく、現在の法律関係の確認であり、Y社がXに対して契約を更新しない旨を通知しており、これらの要件は満たしている。

第2 その請求が認められるか
(1)労働契約法19条各号該当性
 Xは、上記の請求の根拠として、労働契約法19条を主張することが考えられる。そこで、まず、同条各号に該当するかを検討する。
 同条1号に関して、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるかどうかを検討する。Xは、平成29年4月1日からY社での勤務を開始しており、通算勤務期間は5年に満たない。また、XのY社との有期労働契約の期間は1年であり、その更新の際には、新たに労働契約書に署名・押印をさせるだけでなく、売上成績等を考慮して更新後の新しい年俸額を決定していたとのことである。このように、通算勤務期間が5年に満たず、更新時に新たな契約を締結していたという本件の事情からは、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できず、同号には該当しない。
 同条2号に関して、労働基準法14条2項を参照すると、有期労働契約の終了時には紛争が生じやすく、更新の有無及びその基準は労働基準法15条1項のその他の労働条件に含まれ、使用者が明示しなければならないと解する。労働契約法19条2号に該当するかどうかは、この説明が決定的に重要であると考える。本件では、契約不更新の可能性が指摘されることはなかったということであり、従って契約更新の基準も説明されていなかったのであるから、同条2号に該当する。
(2)相当性
 Xは、Y社との労働契約が令和4年4月1日以降も存続していると主張しているのだから、当該有期労働契約の更新の申込みをした場合に当たる。そこで、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときに当たるかどうかを検討する。
 Y社は、XのせいでA店全体の職場環境が非常に悪化し、従業員2名が退職せざるを得なくなり、Xの勤務態度が根本的に改まることはなかったので、これ以上Xを雇い続けることはできないと主張することが想定される。退職した従業員はともかく、残っている従業員や新たに雇い入れる従業員に対して使用者であるY社は安全配慮義務を負うので(労働契約法5条)、そういう意味でもXとの労働契約を終了することに合理性があると主張するかもしれない。
 Xは、それは必ずしも自分のせいだけでもなく、Y社の管理体制という問題でもあり、配置転換や異動で対応すべきだと反論する。このような雇止めは労働者に大きな影響をもたらすのであるから、年俸を減らして契約を更新するとか、せめていつまでに改善しないと契約を終了するという期限を定めて予告すべきであったと反論することも考えられる。
 これに対しては、Y社としては既に他の従業員を他店に移動させることが数回あったのであり、年俸は売上成績や能力評価が直接反映されるとしても契約を更新しないと判断した理由とは別であって、期限を定めて予告はしていないもののXに対して指導を行うこともあったのであるから、客観的に合理的な理由があると反論することが考えられる。そもそも、Xは過失ではなく故意に業務指示に反して同僚に責任転嫁するなどしており、悪質であるとY社が主張することも考えられる。
 これらを総合的に考慮すると、Xの請求は認められない。故意に業務指示に違反するという態度の悪質性が高く、既に異動や指導をY社はしてきたからである。

 

以上

感想

 労働組合は関係ないのかと問題文を一読したときに思いました。就業規則に触れたほうがいいのかなとか、無期転換権の脱法について触れたほうがいいのかなとか少し思いつつも、それらに触れることはできませんでした。あまり自信はありません。




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