勉強法の本のまとめ

私はこれまでに、仕事のため、自分のために勉強法の本はかなり読んできました。それぞれの本で共通している部分もあれば、相反している部分もあります。山の学校の「勉強とは何か?」トークイベントで話すことになったので、これを機会に勉強法の本をまとめておきます。

 

1.孔子『論語』、プラトン『ソクラテスの弁明』、福沢諭吉『学問のすすめ』

勉強法と関わる古典としてはこの3つを挙げたいです。テキストは見つけやすいと思いますので、それぞれ入手してください。

 

孔子『論語』は最初の部分で学びについて述べられています。

 

子曰わく、学びて時に之を習う、亦説ばしからずや。朋遠方より来たる有り、亦楽しからずや。人知らずして慍みず、亦君子ならずや。

 

私なりに勉強法に引きつけて解釈すると、「学んで復習するとよく理解できて喜ばしいことだ。勉強仲間が来て共に勉強するのも楽しいことだ。自分が勉強していることを他人が知らなくても気にしないというのは立派なことだ。」となります。

 

他にも有名な「四十にして惑わず」は「十有五にして学に志し」から続いているので学べば人生に迷わないという意味だと解釈できますし、「温故知新」も「古いものと新しいものの両方勉強すべきだ」という主張だと読めます。学ぶことと思うこと(暗記することと考えること)の両方をすべきだと説く箇所などは、「数学は暗記か理解か」というテーマを想起させます。

 

プラトン『ソクラテスの弁明』には「無知の知」と呼ばれる部分があります。ソクラテスも当時賢いとされた人も物事を知らないのであるが、ソクラテスは自分が物事を知らないということをわきまえているのに対し、賢いとされた人は自分が物事を知らないということをわきまえていないということです。そしてソクラテスは対話を通じて相手と共により高次の理解へと至ります。「無知の知」と「対話術(弁証法)」は有力な勉強法として現代でもそのまま通用します。

 

福沢諭吉『学問のすすめ』は何のために勉強するのかを考える書です。そこでは個人が独立し、国家が独立することがその目的とされます。狭い意味での勉強法からは少し離れますが、今で言うところの、学者の役割や、行政と民間との関係なども論じられます。

 

 

2.野口悠紀雄『「超」勉強法』(講談社、1995)とアルベルト湯川『「超」勉強法 「超」批判』(データハウス、1996)


「超」勉強法


作 者: 野口 悠紀雄

出版社: 講談社

発売日: 1995-12-04


「超」勉強法 「超」批判


作 者: アルベルト湯川

出版社: データハウス

発売日: 1996-09-01

私の記憶がある範囲では、野口悠紀雄『「超」勉強法』が「勉強法」と題して話題になった最初の本です。中学生か高校生くらいのときに読みました。その主張は次の通りです。

 

第一原則:面白いことを勉強する

第二原則:全体から理解する

第三原則:八割原則

 

そしてこれらに基づいて、英語は教科書などを丸暗記する、国語で文章を書くときは字数に着目する、数学では基礎がわからなくても百科事典で必要な項目を読む「パラシュート学習法」をすることがすすめられます。

 

これを受けてアルベルト湯川『「超」勉強法 「超」批判』では、特に数学と英語に関して、暗記ではなく理解をする学習が大事だと反論されます。さらにこの本では、統計学を批判しその代わりに厳密科学を提唱して経済学を大きく作り変えるような試みがなされるかと思えば、睡眠時間を確保してタバコの煙を避けるべきだという非常に身近な助言がなされたりもします。

 

それぞれに続編があります。それでも両者の対立点は同じで、野口悠紀雄さんのほうは大まかに暗記で乗り切ろうとして、アルベルト湯川さんのほうは厳密な理解を重視します。

 

 

3.和田秀樹『できる大人の勉強法大全』(ロングセラーズ、2013)


できる大人の勉強法大全


作 者: 和田秀樹

出版社: ロングセラーズ

発売日: 2013-05-16

和田秀樹さんと言えば数えきれないほどの勉強法本を出されています。ご自身の学歴が灘中学・高校から東大理IIIと日本では最高のものです。そうはいっても全く挫折知らずだということはありません。灘中学・高校では落ちこぼれになり、だからこそ「できる人から学ぶ」という姿勢を身につけられたのでしょうし、「数学は暗記」といった効率的な勉強法を追い求められたのでしょう。

 

和田秀樹さんのスタイルは神経科学や認知心理学に依拠しつつ、効率的に勉強することです。私の言葉でまとめると、勉強を始めるときはできる人や入門書から学び、いろいろとエピソードなどをつなげながら記憶し、過去問を活用して、わからないところは答えを見て記憶し、適度に復習するということになります。「複眼思考」、「メタ認知」、「EQ」といったキーワードが印象的です。これは知性の働きによって感情的な部分にも対処しようとする、知性→感情という方向です。逆の感情→知性(動機付けをして勉強のやる気を高める)という方向にはほとんど注目されていません。和田秀樹さんにとっては一週間のうち日曜日に休んだり遊んだりするとやる気は自然に出てくるもののようです。

 

この『できる大人の勉強法大全』という本ではこうしたコツが非常に短くコンパクトに記述されています。これまでに聞いたり読んだりしたことの総まとめとしては適していますが、その分だけ掘り下げが少なく物足りないとも言えます。

 

4.市川伸一『勉強法の科学――心理学から学習を探る』(岩波書店、2013)


勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)


作 者: 市川 伸一

出版社: 岩波書店

発売日: 2013-08-07

さらに科学的に勉強法を考えるのがこの本です。さながら心理学の入門書です。

 

記憶についてはチャンク化してつなげる、有意味化して理解することが推奨されます。知識の使い方ではスキーマ(枠組み)という概念が重要で、それが助けになることもあれば妨げになることもあります。動機付けについては学習性無力感などが紹介されます。高校生との質疑応答も参考になります。これが1997年に行われていたとは驚きです。心理学の基礎的な知見に基づいているので、2013年に再度編集されて出版されても内容は色あせていません。

 

5.伊藤真『夢をかなえる勉強法』(サンマーク出版、2006)


夢をかなえる勉強法


作 者: 伊藤 真

出版社: サンマーク出版

発売日: 2006-04-01

資格試験と言えば司法試験(医師国家試験はどちらかと言うと医学部入試での勝負ですが、司法試験は予備試験経由で誰でも受験できます)ということで伊藤真さんの本を取り上げます。

 

この本では勉強法以前の部分に感銘を受けました。伊藤真さんは生徒にまず合格体験記を書いてもらうのだそうです。目標をはっきりさせるためです。その上で合格しないことも直視されています。司法試験は合格者の人数が予め決められているので必ず不合格者が発生しますからね。塾や予備校では誰でも合格できるかのうように喧伝するのが常なのに、伊藤真さんは合格しないこと可能性にはっきり言及されていたのに驚きました。

 

勉強法はオーソドックスなものです。目次をコピーして全体像を把握する、過去問に早くから取り組む、セルフレクチャーをする、しんどくなったときにあと5分粘るといったことです。ここまでは私も同感ですが、色分けしてマーカーで塗るという部分にだけ違和感を覚えました。個人的にそこまで几帳面にできないからです。

 

エジプトのピラミッドに閉じ込められた話や、睡眠時間を削って勉強して眠ると本が落ちてきて目を覚ますような仕掛けを作った話など、熱いエピソードが満載です。睡眠時間はきちんと取ったほうが効率的だと主張する和田秀樹さんとはある意味対照的です。

 

6.三田紀房監修『ドラゴン桜 公式ガイドブック 東大へ行こう』(講談社、2005)と7人の特別講義プロジェクト『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書 なぜ学び、なにを学ぶのか』(講談社、2007)


ドラゴン桜 公式ガイドブック 東大へ行こう! (KCデラックス)


作 者: 

出版社: 講談社

発売日: 2005-07-22


ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書~なぜ学び、なにを学ぶのか~


作 者: 7人の特別講義プロジェクト

出版社: 講談社

発売日: 2007-06-21

勉強法を語る上では『ドラゴン桜』を避けては通れません。本当は原作を読むべきなのでしょうが、絵や世界観に好き好きがあり、私はガイドブックと公式副読本で済ませてしまいました。

 

『ドラゴン桜 公式ガイドブック 東大へ行こう』は『ドラゴン桜』の勉強法部分のまとめと、それに対する現役東大生からのコメントから構成されています。細かなコツがたくさん載っています。東大に特化した部分、東大に限らず日本の大学入試に応用できる部分、広く勉強法に関わる部分があります。メモリーツリーで関連付けて記憶せよといったよく聞くコツもあれば、街に出ていろいろなものに好奇心を向けよといった目新しいコツもあります。

 

『ドラゴン桜公式副読本』のシリーズは16歳の教科書が2冊、40歳の教科書が2冊の計4冊が出版されています。勉強法と言えるのは上に画像を示した16歳の教科書の1冊目で、残りはいろいろな人が勉強と関連付けて自分の人生や考えを語っています。この本では5教科について専門家が勉強法を述べていて、例えば数学では計算の工夫の仕方や数学力の分析が示されます。

 

7.菅広文『京大芸人』(講談社、2008)と坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、2013)


京大芸人


作 者: 菅 広文

出版社: 講談社

発売日: 2008-10-30


学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話


作 者: 坪田信貴

出版社: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス

発売日: 2013-12-26

勉強法に関わる伝記ものとしてこの2冊を紹介します。

 

『京大芸人』はロザンの宇治原さんの伝記を相方である菅ちゃんが記した本です。面白おかしく読めて、嫌味でなく、かつそこで紹介されている勉強法はおよそ正しいという絶妙なバランスが保たれていると感じました。具体的には「京大芸人」及び「京大少年」で紹介されている宇治原さんの勉強法について教えて… – Yahoo!知恵袋の回答にある通りです。この本の続編である『京大少年』の冒頭でも同じ内容がまとめられています。

 

『京大芸人』で書かれている勉強法は私にとって目新しいものではなかったので、大学入学以後が記された『京大少年』のほうが興味深かったです。宇治原さんは「ええかっこしい」であり、わからないことがあれば移動中にでもすぐに調べるといったあたりです。高校時代は勉強ができても嫌な奴だという印象だったのが、大人になるにつれて人間性の部分が変わってきたというところがこの物語の見せ場です。

 

宇治原さんは小さい頃から周りからかしこいかしこいと言われるような少年でしたが、周りからバカだと言われ続けた少女が慶応大学に入学するという話があります。今話題の「ビリギャル」本です。

 

この話はウソではないと感じましたし、そこで実践されている方法も正しいと思います。歴史をストーリーで覚えるというのは『京大芸人』とも共通しますし、入試で必要な科目に絞って勉強するのも当然でしょう。しかしこの本の主役はビリギャルことさやかちゃんではなく、著者である坪田信貴さんだと思います。勉強法よりも教授法です。

 

そして坪田信貴さんが上手に教えれば教えるほど、救いようのない気分が湧いてきます。親が塾代を払い、本人は塾で決められたように勉強するだけになるからです。さやかちゃん自身がとてつもなく頑張ったことは否定しませんが、創意工夫をした跡がうかがえないのです。親が安くない塾代を払えたからその塾に通えて希望の大学に合格できたのです。そして大学に合格したらそれで終わりといった感じです。

 

8.馬場祐平『受験はゲーム-「道塾式」劇的合格法』(光文社、2009)、花房孟胤『予備校なんてぶっ潰そうぜ。』(集英社、2014)


受験はゲーム!「道塾式」劇的合格法


作 者: 馬場 祐平

出版社: 光文社

発売日: 2009-07-18


予備校なんてぶっ潰そうぜ。


作 者: 花房 孟胤

出版社: 集英社

発売日: 2014-04-25

塾に通え(通わ)なくてもインターネットを活用すれば勉強できるという新しい時代の動きを紹介します。

 

馬場祐平さんは高校中退の後、大検(現在の高卒認定試験)を経て早稲田大学に入学し、勉強法を学ぶ意義を解いている人です。本のタイトルからもわかるように、受験をゲームだと捉えて、その攻略法をインターネットで探し、2ちゃんねるにまとめるというスタイルが独特です。参考書の具体的な名前や生活リズムにまで話が及んでいて極めて実践的です。

 

花房孟胤さんは東大在学中にmanaveeという無料授業動画サイトを作った人です。地理的、経済的な壁を取っ払うことはもちろん、多様な講師陣から好みの講師を選ぶというコンセプトが特徴的です。『予備校なんてぶっ潰そうぜ。』は勉強法についての本ではなく、いかにmanaveeを運営してきたかについての本です。

 

 

9.齋藤孝『地アタマを鍛える知的勉強法』(講談社、2009)と池上彰『<わかりやすさ>の勉強法』(講談社、2010)


地アタマを鍛える知的勉強法 (講談社現代新書)


作 者: 齋藤 孝

出版社: 講談社

発売日: 2009-12-17


<わかりやすさ>の勉強法 (講談社現代新書)


作 者: 池上 彰

出版社: 講談社

発売日: 2010-06-17

最後にテレビでも見かける文化人に登場いただき、少し角度を変えて勉強法を考えます。

 

齋藤孝さんは『声に出して読みたい日本語』や「三色ボールペン」でおなじみの教育学者です。身体性や視覚イメージを重視した勉強法です。ニーチェに憑依されると言ってみたり、野生の勉強法と言ってみたりするかと思えば、第四章のまとめでは、スタンダードな本を選び、往復を繰り返し、苦手ノートを作るといった穏当なアドバイスが並べられています。かと思えばその後の終章では丹田呼吸をして直感的に本質をつかむといったことが語られます。

 

池上彰さんはわかりやすさの代名詞とも言える人です。常に根本的な疑問を持つ、絵を描けるような説明をするといったことは勉強法にもつながりそうです。名前ネタはフックになるというコラムも、例えば英単語を覚える際に応用できるでしょう。その他新聞や本の活用の仕方、ノートの取り方、インタビューの仕方などが本の後半では取り上げられます。

 

まとめ

  • 楽しみながら勉強する
  • 理解できることは理解する
  • 適度に復習をする
  • 関連づけながら記憶する
  • 目的をはっきりさせ、自分の現状を把握する
  • 各自でなぜ勉強するのかを追求する

 

楽しみながら勉強するということに反対する人はいないでしょう。理解できることは理解したほうが楽しくなりますし、思考力を養うことができます。記憶に関しては適度に復習することと関連づけながら覚えるようにするのが2つの大きなコツです。一歩引いて、目的をはっきりさせて自分の現状を把握するのも大切です。入学試験や資格試験なら過去問を最大限活用する、合格者の話を聞くなど最適な方法を探ることができます。その目的を突き詰めると「なぜ勉強するのか」という問いに行き着きますが、その答えは各自で追求するしかありません。

 




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。