浅野直樹の学習日記

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2022 / 7月

令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(刑事)

再現答案

 以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

(1)
 令和3年3月1日(以下日付だけ示す部分は全て令和3年のことである。)の夜、Aから電話でV方から金を奪おうと誘われたというBの供述は、証拠⑪と整合する。それから何回か、Aと共に私の車でV方付近に行き、V方の様子を観察したというBの供述は、証拠⑮と整合する。証拠⑬及び証拠⑭から、このサバイバルナイフをAがBに触らせたことが推認されるのであるが、それは「親父のだから、落としたりするなよ。」とAから言われてサバイバルナイフを渡されたというBの供述に整合する。その他、3月9日の犯行時の服装や用いた道具なども、各証拠と整合する。
 このように、Bの供述が客観的な証拠と整合するので、信用性が認められると判断した。
(2)
 (1)よりAが本件被告事件に関与したことが認められるとして、その関与の形態が共謀共同正犯なのか挟義【原文ママ】の共犯(教唆、幇助)なのかが問題となる。共謀共同正犯か挟義【原文ママ】の共犯かは、客観的主観的事情から、自己の犯罪として実行する正犯意思があるかどうかで判断する。
 本件では、Bの供述によると、AからV方から金を奪うことを提案し、サバイバルナイフという主要な道具を提供した。奪った現金500万円についても、Aの取り分が300万円であった。
 以上より、検察官は、Aに共謀共同正犯が成立すると判断した。

〔設問2〕
 公判前整理手続の制度趣旨は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことである(316条の2第1項)。本件では、同条以下の所定の手続きを経て、弁護人が予定している主張を明らかにしている(316条の17)。これにより、AB間の共謀の有無が本件の争点になることがはっきりしてきた。そこで、裁判所は、検察官に対し、316条の21第1項の証明予定事実の追加し又は変更を求めた。本件では、単に証拠を並列するだけではどのようにしてAB間の共謀を立証するのかがわかりづらく、争点を明確にして充実した公判の審理をするために、追加の証明予定事実記載書の提出を求めたと考えられる。

〔設問3〕
 接見等禁止の請求の根拠は、81条である。ここでは、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかどうかが問題となる。その理由があるかどうかは、被告人の主観的な態様及び罪証隠滅の客観的な可能性から判断する。
 下線部ウと下線部エの間で、被告人であるAの主観的な態様が変化したという事情は見られない。本件ではBの証言が重要な証拠であるところ、下線部ウと下線部エの間にBの証人尋問が行われたという事情がある。よって、下線部エの時点では、もはや罪証隠滅の客観的な可能性が認められず、接見等禁止の請求をしなかったと思われる。下線部ウの時点では、Aに会いに来たBに対し、Aが共謀はなかったという趣旨の証言をするように働きかける可能性があった。AはBの地元の先輩であり、BはAには昔から面倒を見てもらっていたと感じていたという事情も考慮している。

〔設問4〕
(1)
 公判前整理手続の時点では予想できなかった事態に応じて証拠調べ請求をする場合は、316条の32第1項の「やむを得ない事由」があると解する。本件では、公判前整理手続の時点では、Bが証拠⑩とは異なる内容の供述をすることが予想できなかった。その予想できなかった事態に応じた証拠調べ請求であるため、やむを得ない事由があると考えた。
 証拠能力については、公判期日における供述に代わる書面として、320条1項で証拠能力が否定されないかが問題となる。同項で禁止されるのは、その内容の真実性が問題となる場合に限られる。本件では、証拠⑩によりBが証人尋問とは異なる供述をしていた事実自体を問題としているので、同項で証拠能力が否定されることはない。このことは、328条でも注意的に規定されている。
(2)
 「同意」とは、320条1項で禁止される証拠について、325条に基づき証拠能力を付与する行為である。「異議」は309条1項の証拠調べに関して申し立てる異議である。
 本件では、(1)で述べたように、そもそも320条1項で禁止される証拠に当たらないので、同意は問題とならない。316条の32第1項を根拠として証拠調べに関して異議を申し立てる可能性はあったが、(1)のように考えたので、「異議なし」と述べた。

以上

感想

 これでちょうど3ページ分くらいになりました。分量が少ないような気もしますが、淡々と記述したらこうなりました。



令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(民事)

再現答案

 以下民法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

(1) 請負契約に基づく報酬支払請求権1個
  履行遅滞に基づく損害賠償請求権1個
(2) 被告は、原告に対し、300万円及びこれに対する令和4年5月28日から支払い済みまで年3分の割合による金員を支払え。
(3) ア 令和4年2月8日、Xは、Yに対し、本件工事を請け負った(報酬1000万円)。
  イ 令和4年5月28日、Xは、アに基づき本件工事を完成させ、本件建物をYに引き渡した。
(4) 請負契約に基づく報酬支払請求権について、請負契約の締結につき、632条より、アの事実の記載が必要だと考えた。報酬支払請求権につき、633条より、イの事実の記載が必要だと考えた。*
  履行遅滞に基づく損害賠償請求権について、法定利率(404条2項)を請求する場合は、特段の主張の必要はないと考えた。令和4年5月28日を経過していることは、顕著な事実として、主張の必要はないと解した。

〔設問2〕
(1)
 (i) 令和4年5月28日、Yは、Xに対し、本件契約に基づく報酬として、700万円を支払った。
 (ii) Xが請求している請負契約に基づく報酬支払請求権の全額は1000万円であり、300万円の免除だけでは1000万円全額を障害するのに届かないため、(ア)の事実が必要であると考えた。
(2) Xの請求が認められることを仮定すると、Yはこの損害賠償債権を自働債権とする相殺(505条1項)の抗弁を提出することが考えられる。これにより、事実上の回収をすることができる。このような相殺が許容されるというのが判例の立場である。
 しかし、それでは350万円に足りず、またそもそもYはXの請求が認められないと主張しているので、反訴(民事訴訟法146条1項)の提起をするほうが望ましい。この損害賠償債権は、本訴の目的である請求と関連する請求であり、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。同項ただし書(同項各号)には該当しないと思われる。

〔設問3〕
 XとYが本件契約を締結した事実を直接証明する証拠はない。契約書がないからである。そこで、以下の事情や間接証拠から、本件契約の成立を主張する。
 提出された書証や両者の供述から、XがYに対して700万円以上の金額で本件工事を請け負い、実際に外壁工事を含む本件工事を実施したことが認められる。外壁工事を含む本件工事の適正価格は1000万円であり、建物のリフォームを仕事としているXがその外壁工事分をサービスすると言ったというYの主張は、にわかには信じがたい。本件見積書①及び②から、外壁工事を含む本件工事の適正価格が1000万円であることには争いがない。
 本件見積書①及び②の成立は両者とも認めており、2枚の見積書が存在することにつきそれぞれ説明している。Xは賃貸人に本件工事の承諾を得るために金額の低い見積書を作ったと説明し、Yは銀行から300万円を上乗せして融資を受けるために金額の高い見積書を作ったと説明している。Yは本件見積書②を実際に賃貸人に見せたということであり、Xの説明は筋が通っている。Yが実際に銀行から融資を受けられたのは700万円であり、Yの説明は筋が通りにくい。外壁工事の記載の有無という本件見積書①と②の違いについても、大掛かりなリフォームと見えないようにするためというXの説明とは整合するが、金額にしか興味を持たないであろう銀行に提出するためというYの説明とは整合しにくい。
 本件契約の契約書が存在しないのだけれども、かといって金額が700万円の契約書が存在するわけでもなく、これがXの不利に作用することはない。
 以上より、XとYが本件契約を締結した事実が認められる。

〔設問4〕
 本件確定判決による強制執行の不許を求めることができない。
 関係する条文は民事執行法35条である。同条2項で確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限るとされている。Yが主張する契約不適合を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債権は、本件訴訟の口頭弁論の終結後に生じたものではないからである。請負契約の不適合を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債権は、請負人に対して損害賠償請求をする意思表示をした時点で確定的に発生するというのが判例の立場である(旧民法下での判例であるが、その趣旨は今なお妥当する)。本件では、令和4年6月初旬、YはXに対して損害賠償を請求する旨を伝えているので、この時点で損害賠償債権が確定的に発生した。よって、令和4年8月1日に提起された本件訴訟の口頭弁論の終結前に生じたものである。

*に以下の「 」内を追加
「判例により一部請求は認められているので、1000万円と300万円で金額が食い違っていることについて、よって書き以前に説明する必要はないと考えた。」

以上

感想

 この民事のほうから答案の記載を始めたのですが、〔設問2〕(1)(i)が思いつかず、刑事の科目のほうを終わらせてから、上に書いた内容を思いつきました。「判例を踏まえて」が多いなと思いました。自分なりには書きましたが、正しい内容かどうかはわかりません。



令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案労働法

再現答案

第1 裁判所に対する請求
 Xは、裁判所に対し、Y社との労働契約上の地位を有することの確認を請求することが考えられる。方法選択の適切性、対象選択の適切性、即時確定の利益(紛争の成熟性)の要件を満たせば、確認の訴えが認められる。本件では、他に適当な方法はなく、現在の法律関係の確認であり、Y社がXに対して契約を更新しない旨を通知しており、これらの要件は満たしている。

第2 その請求が認められるか
(1)労働契約法19条各号該当性
 Xは、上記の請求の根拠として、労働契約法19条を主張することが考えられる。そこで、まず、同条各号に該当するかを検討する。
 同条1号に関して、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるかどうかを検討する。Xは、平成29年4月1日からY社での勤務を開始しており、通算勤務期間は5年に満たない。また、XのY社との有期労働契約の期間は1年であり、その更新の際には、新たに労働契約書に署名・押印をさせるだけでなく、売上成績等を考慮して更新後の新しい年俸額を決定していたとのことである。このように、通算勤務期間が5年に満たず、更新時に新たな契約を締結していたという本件の事情からは、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できず、同号には該当しない。
 同条2号に関して、労働基準法14条2項を参照すると、有期労働契約の終了時には紛争が生じやすく、更新の有無及びその基準は労働基準法15条1項のその他の労働条件に含まれ、使用者が明示しなければならないと解する。労働契約法19条2号に該当するかどうかは、この説明が決定的に重要であると考える。本件では、契約不更新の可能性が指摘されることはなかったということであり、従って契約更新の基準も説明されていなかったのであるから、同条2号に該当する。
(2)相当性
 Xは、Y社との労働契約が令和4年4月1日以降も存続していると主張しているのだから、当該有期労働契約の更新の申込みをした場合に当たる。そこで、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときに当たるかどうかを検討する。
 Y社は、XのせいでA店全体の職場環境が非常に悪化し、従業員2名が退職せざるを得なくなり、Xの勤務態度が根本的に改まることはなかったので、これ以上Xを雇い続けることはできないと主張することが想定される。退職した従業員はともかく、残っている従業員や新たに雇い入れる従業員に対して使用者であるY社は安全配慮義務を負うので(労働契約法5条)、そういう意味でもXとの労働契約を終了することに合理性があると主張するかもしれない。
 Xは、それは必ずしも自分のせいだけでもなく、Y社の管理体制という問題でもあり、配置転換や異動で対応すべきだと反論する。このような雇止めは労働者に大きな影響をもたらすのであるから、年俸を減らして契約を更新するとか、せめていつまでに改善しないと契約を終了するという期限を定めて予告すべきであったと反論することも考えられる。
 これに対しては、Y社としては既に他の従業員を他店に移動させることが数回あったのであり、年俸は売上成績や能力評価が直接反映されるとしても契約を更新しないと判断した理由とは別であって、期限を定めて予告はしていないもののXに対して指導を行うこともあったのであるから、客観的に合理的な理由があると反論することが考えられる。そもそも、Xは過失ではなく故意に業務指示に反して同僚に責任転嫁するなどしており、悪質であるとY社が主張することも考えられる。
 これらを総合的に考慮すると、Xの請求は認められない。故意に業務指示に違反するという態度の悪質性が高く、既に異動や指導をY社はしてきたからである。

 

以上

感想

 労働組合は関係ないのかと問題文を一読したときに思いました。就業規則に触れたほうがいいのかなとか、無期転換権の脱法について触れたほうがいいのかなとか少し思いつつも、それらに触れることはできませんでした。あまり自信はありません。



令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案刑事訴訟法

再現答案

 以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

第1 下線部①の行為の適法性
 日本国憲法35条で、逮捕又は令状がある場合を除いて、何人も、その所持品について、捜索及び押収を受けることのない権利が保障されている。その令状については、218条及び219条に詳しく規定されている。下線部①の行為が、その令状(捜索差押許可状)の範囲内であるかどうかを検討する。
 まず、差し押さえるべき物は「覚醒剤、注射器、計量器等」であり、本件キャリーケースの中に入る大きさなので、その点で本件キャリーケースは令状の範囲内である。
 次に、捜索すべき場所はA方居室であり、本件キャリーケースは捜索開始時にA方居室にあったのだから、その点でも令状の範囲内である。通常はA方居室に存在しないような物であれば別論となる可能性はあるが、本件キャリーケースにそのような事情はない。
 本件令状には、Aを被疑者とする被疑事件と記載されており、その点が問題となり得る。本件キャリーケースをAではなく甲が所持していたからである。しかし、甲はAの妻でAと同居しており、同居の夫婦は家の中にあるものをそこまで区別しないのが通常であるため、本件キャリーケースはAを被疑者とする被疑事件に関する物であると考えてもよい。
 以上より、本件キャリーケースは、本件令状の範囲内である。
 甲の承諾を得ることなく本件キャリーケースのチャックを開けてその中を捜索したことは、222条1項に準用される111条1項の必要な処分として許容される。「必要な処分」としてすることができるかどうかは、必要性と相当性から判断される。本件では、再三にわたりキャリーケースを開けて中を見せるように求められた甲が拒否し続けているため必要性があり、無施錠のキャリーケースのチャックを開けてその中を捜索するという行為は相当である。
 以上より、下線部①の行為は適法である。

第2 下線部②の行為の適法性
(1)本件ボストンバッグについて
 本件ボストンバッグが本件令状の範囲内であるかどうかを、第1と同じように検討する。
 本件ボストンバッグが大きさ的に本件令状の範囲内であることは第1のキャリーケースと同様である。
 A方居室という捜索すべき場所については、捜査開始時に本件ボストンバッグはA方居室になかったので、問題となり得る。もっとも、令状には捜索開始時刻が記載されておらず、たまたま捜索開始時に捜索すべき場所になかったとしても、通常その場所に存在するものであれば、令状の範囲内であると解する。本件ボストンバッグは、乙が特に抵抗せずA方居室に持ち込んだことから、通常A方居室に存在するものであると考えられる。よってこの点においても令状の範囲内である。
 本件ボストンバッグが、Aを被疑者とする被疑事件に関する物であるかが問題となり得る。Aと乙とは親子であり、夫婦ほどではないとしても同居の親子が物を共有・共用することは珍しくないので、本件ボストンバッグがAを被疑者とする被疑事件に関する物であると言える。
 以上より、本件ボストンバッグは、令状の範囲内である。
(2)乙の身体について
 日本国憲法33条で現行犯又は令状がなければ逮捕されないことが規定されている。また、刑法208条で暴行罪を処罰することが規定されている。Pらが乙を羽交い締めにしたことは、逮捕には至らないとしても、暴行には該当する。もっとも、正当行為(刑法35条)であれば罰されないのであり、下線部②の行為の適法性の検討に戻る。
 先にも述べたように、111条1項の必要な処分は、必要性と相当性から判断する。本件ボストンバッグは、一応は本件令状の範囲内であるとしても、その中にAを被疑者とする被疑事件について差し押さえるべき物が入っている可能性は低い。乙は再三にわたり中を見せることを拒否していたのだけれども、乙を羽交い締めにするということは、相当性を逸脱している。さらに説得を続ける、すきを見て確認するといった、他の手段が考えられるからである。よって必要な処分には含まれない。
(3)結論
 以上より、下線部②の行為は違法である。

以上

感想

 令状の範囲内であるかどうかという検討枠組みは合っていると思うのですが、うまく書けたという感じはありません。



令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案刑法

再現答案

 以下刑法についてはその条数のみを示す。

第1 間接正犯一般
 甲の罪責を検討するために、先に間接正犯一般について論じる。
 刑法では、個人主義の観点から、実行行為をした者が罪責を負うのが原則である。しかし、人をあたかも道具のように利用して実行行為を行った者は、その者が実質的な行為者なので、罪責を負う。間接正犯である。人の意思を抑圧して利用した場合には間接正犯が成立する。実行の着手は、法益侵害の危険性が発生したときに認められる。間接正犯の場合は、被利用者を基準にして考える。

第2 Yの行為について
 甲は、Yに対し、「さっきのブドウを持ってきて。…お金を払わずにこっそりとね。」と言った。Yは、ちゅうちょしたが、甲から強い口調で言われ、甲の指示に従うことを決めた。甲とYは親子であり、6歳というYの年齢も考慮すると、甲はYの意思を抑圧したと言える。よって、甲の指示通りにYがブドウを持ってきたとしたら、間接正犯として、甲に窃盗罪(235条)が成立する可能性がある。
 もっとも、実際には、Yはブドウを持ってこなかったので、窃盗罪は成立しない。しかも、そのブドウが置いてある果物コーナーの場所が分からなかったとのことである。窃盗罪の保護法益は他人の占有する財物であり、その物を見つけて近づいていない段階では法益侵害の危険性は発生していない。よって実行の着手が認めらず、窃盗未遂罪(243条)は成立しない。
 以上より、甲は何らの罪責も負わない。

第3 Xの行為について
 甲は、Xに対し、C店から牛肉を取ってくるように言っている。しかし、本件の事情からは、Xが13歳であることの考慮すると、Xの意思を抑圧したとは評価できない。よって間接正犯は成立しない。
 Xとの共同正犯(60条)について検討する。共同正犯は、犯罪を実行することにつき意思連絡をして、それに基づいて実行行為が行われたときに成立する。
 本件では、甲とXが、C店から牛肉を取ってくることにつき意思連絡をして、それに基づいてC店が占有する牛肉の占有をXが自己に移転させ窃取している。X自身は13歳であるので罰されないが(41条)、違法な行為であることには変わりない。責任は個別化しても違法は連帯するので、甲にはXの共同正犯として窃盗罪が成立する。
 甲は実行行為を担当していないが、そのような場合にも共同正犯が成立する。共同することにより犯罪の実行を容易にするということに変わりはないからである。このような共謀共同正犯と挟義【原文ママ】の共犯(61条の教唆と62条の幇助)との区別は、主観的客観的状況から自己の犯罪として実現する正犯意思の有無で判断する。本件では、甲からC店から牛肉をとってくることを提案し、エコバッグという道具も提供している。そしてその牛肉を食べるという利益も甲とXが共同で受けている。よって甲は共謀共同正犯である。
 甲がXにとってくるように言ったのは牛肉2パックであり、実際にXがとってきたのは牛肉5パックとアイドルの写真集である。しかし、Xがこれらをとってきたのは同じ機会に甲から渡されたエコバッグを用いてのことであり、意思連絡と因果関係がある。同じ構成要件内の具体的事実の錯誤については故意(38条1項)も阻却されない。
 以上より、甲は、牛肉5パックとアイドルの写真集全体につき、Xとの共同正犯として、窃盗罪の罪責を負う。窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であるが、それも認められる。

 

〔設問2〕
第1 既遂か未遂か
 仮に事後強盗罪が成立するとしても、事後強盗罪の既遂にはならず、せいぜい未遂にとどまるとの主張があり得る。事後強盗罪(238条)の既遂か未遂かは、財物の取得の点により決める。言い換えると、同条の「窃盗」が既遂か未遂かで判断するということである。いわゆる万引きについては、精算せずにレジを通過して店外へ出た時点で既遂となると解する。
 本件では、甲は本件液晶テレビをトートバッグに入れたのだけれども、精算せずに店外に持ち出す前にFに見つかったと思って、箱ごと陳列棚に戻している。よって、窃盗が未遂であるから、事後強盗罪も未遂である。

第2 強盗の機会
 事後強盗罪の暴行又は脅迫は、強盗の機会になされる必要がある。そうでなければ窃盗罪と暴行罪又は脅迫罪がそれぞれ別々に成立するにとどまる。
 本件では、甲はE店から約400メートル離れた公園で約10分間とどまっており、誰も追ってこなかった。それ以降にE店に戻ってから甲はFの胸部を押すという暴行を加えているので、強盗(窃盗)の機会になされたとは言えず、事後強盗罪は成立しない。

第3 暴行の程度
 事後強盗罪の暴行は、一般に反抗を抑圧するに足りる程度のものであることが必要である。本件では、35歳の女性である甲が、同じく35歳の女性であるFの胸部を1回押しているだけである。35歳の女性が同年代の女性の胸部を1回押すということは、一般に反抗を抑圧するに足りない。よって事後強盗罪は成立しない。

以上

感想

 記述の正確性や美しさはともかくとして、論じるべき点は論じられたかなという手応えです。




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