浅野直樹の学習日記

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2022 / 7月

令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案行政法

再現答案

 以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

第1 Dが当該取消訴訟の提起を断念した理由
 本件処分が3条2項の処分に当たることを前提にすると、Dが当該取消訴訟の提起を断念した理由は、出訴期間(14条1項、2項)であると考えられる。以下で詳しく見る。
 Dが本件処分があったことを知った日は、C古墳が指定文化財に指定されたことが当時のDの代表者に通知された平成18年4月14日である。本件処分の日も、平成18年4月14日である。現在は、平成31年3月5日以降なので、平成18年4月14日から6か月も1年も経過している。以上より、正当な理由(14条1項ただし書、2項ただし書)がない限り、Dは取消訴訟を提起することができない。
 そもそも出訴期間が定められているのは、公益上の必要性から、行政庁の行為を早期に確定させて安定させるためである。よって、正当な理由は、その公益上の必要性を上回るものでなければならない。本件ではそのような正当な理由は見当たらない。
 以上より、出訴期間から、Dは当該取消訴訟の提起を断念したと考えられる。

第2 原告適格
(1)法律上の利益
 36条の「法律上の利益を有する者」とは、処分の無効確認を求める場合、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益が侵害され、または必然的に侵害される者のことをいう。そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益に解消するにとどめず、これが帰属する個々人の具体的利益としてこれを保護する趣旨を含む場合は、そのような利益も法律上保護された利益に当たる。処分の相手方以外については、明文の準用規定はないものの、9条2項に沿って判断する。処分の無効確認は処分の取消と類似しているからである。
 本件処分の根拠は、本件条例4条1項である。同条3項では、その処分(指定)は、当該文化財の所有者および権原に基づく占有者に通知して行うとされている。本件条例3条で関係者の所有権その他の財産権の尊重が掲げられており、この指定があると、本件条例13条より、指定文化財の変更を自由にできなくなるから通知をするとされているからだと考えられる。所有者や占有者はその物を自由に利用処分、変更できるのが原則であるところ、このような制約は大きな制約である。よって、本件条例4条3項で通知を受ける者の所有者・占有者としての利益は、個々人の具体的利益として保護されるという趣旨が含まれているので法律上保護された利益に当たると解される。Dは、本件条例4条3項の通知を受ける者である。よって、その点で原告適格が認められる。
(2)現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの
 現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものというのは、民事訴訟や他の抗告訴訟よりも無効確認訴訟のほうがより直截的であるもののことを指す。本件では、Dが本件工事をすることができることの確認を求める訴訟(4条)を提起することが考えられなくもないが、本件処分の無効確認のほうがより直截的である。
(3)結論
 以上より、Dには、当該無効確認訴訟の原告適格が認められる。

〔設問2〕
第1 本件処分の手続
 Dは、本件処分は、本件条例4条2項で諮問しなければならないとされているのに、その諮問を経ていないので重大な違法があると主張する(処分の無効確認訴訟では単なる違法ではなく重大な違法があると主張する必要がある)。これに対し、B町は、Eの意見聴取を経たことにより、本件条例4条2項の諮問手続きを実質的に履践したものといえると反論することが想定される。Dは、文字通りに考えると諮問を経ていないことに加え、諮問というのは複数人の意見を出し合うところに意義があるのだから、一人だけの意見を聞くことは実質的にも不備があると再反論する。本件条例20条1項で保護委員会の委員は10人以内とすると規定されており、10人に近い人数が予定されている。4条1項の指定には、考古学だけでなく歴史学や民俗学等の知見も必要であり、その点からも複数人の意見が求められる。

第2 本件処分の内容の明確性
 Dは、本件処分が盛土を含むかどうかが曖昧で、その内容は不明確であり、無効であると主張することが考えられる。B町は、古墳といえば通常盛土を含むのであって、本件処分の内容は不明確ではないと反論する。これに対し、Dは、一般的にはそうであるとしても、C古墳の構造からはそのように言えず、やはり不明確であると再反論する。

以上

感想

 〔設問2〕ではC古墳の構造を具体的に書いたり、本件条例22条2項に触れたりしたほうがよかったなと後で気づきました。〔設問1〕の第1の部分で時間を使いすぎたかもしれません。



令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案憲法

再現答案

 以下日本国憲法についてはその条数のみを示す。

第1 争議行為の禁止規定
 地方鉄道維持特措法案における争議行為の禁止規定が、団体行動をする権利を保障した28条に適合するかどうかが問題となる。ストライキなどの争議行為は団体行動である。
 まず、公務員も勤労者であることに変わりなく、基本的に28条の労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)が保障されるとした判例がある。特別公的管理鉄道会社の従業員は公務員でないので、なおさら労働三権が保障されるというのが大原則である。
 次に、公務員は全体の奉仕者であり、賃金その他の基本的な労働条件は国民主権に基づく立法により決められるのであって、中立的な人事院により調整されるという代替措置もあり、公務員の団体行動権を認めないことも憲法に適合するとした判例がある。本件では、賃金その他の基本的な労働条件を決定承認するのは、中立的な人事院ではなく、国土交通大臣である。また、現代においては、労働組合が職場のハラスメントの防止などを要求することも多く、それは特別公的管理鉄道会社が決定することである。従業員には団結権はもちろん、団体交渉権も労働協約締結権も認められるとのことであるが、団体行動が控えているからこそ団体交渉が機能するという側面がある。だから28条では労働三権がセットで保障されているのである。争議行為(団体行動)が禁止されると、団体交渉がうまく機能しないおそれがある。
 争議行為により住民の生活に重大な悪影響を与えることが不適切であるというのは理解できるが、それは純粋な私鉄その他の民間企業でも同じであり、28条が予定しているところである。
 以上より、争議行為の禁止規定は、憲法28条に適合しない。

第2 争議行為のあおり、そそのかしの処罰規定
 争議行為のあおり、そそのかしの処罰規定が憲法28条に反さないかが問題となる。
 第1で述べたように、私は争議行為の禁止規定が違憲であると考えるのだが、ここでは争議行為の禁止規定自体は合憲であるとする。それでも、処罰で臨むことが憲法28条に反さないかが問題となる。
 争議行為のあおり、そそのかしの処罰規定については、違法性の高い争議行為に限り、争議行為の開始、遂行の原因を作り、争議行為に対する原動力を与えるといった首謀者的な行為に限定して、合憲だと判断した判例がある。「争議行為」と「あおり、そそのかし」の2つの点で絞りをかけているので、二重の絞りと呼ばれたりもする。
 31条から、処罰される基準は明確でなければならない。二重の絞りは、処罰するのに不明確だという問題がある。合法だとされている団体交渉で強めの発言をしたら、判例の二重の基準からすれば処罰されないだろうといっても、字義通りに解釈すると「争議行為」「あおり、そそのかし」に該当するとも考えられ、萎縮して団体交渉での発言を控えてしまうことも考えられる。
 以上より、争議行為のあおり、そそのかしの処罰規定は、憲法28条に適合しない。

以上

感想

 労働法選択者として頑張らねばと思いつつも、行政法でかなり時間を使ってしまっていたこともあり、これだけしか書けませんでした。再現答案を作ってからおさらいをして理解を深めたいです。

 




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