浅野直樹の学習日記

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2021 / 7月

令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案一般教養科目

再現答案

〔設問1〕

 本文における筆者の主張は、文学に関して存在する、文学とは誰もが読むべきものだという前提と、文学とは誰にでも読めるものだという前提を、ともに否定するというものである。

 文学とは面白いから読むものである。その文学を享受することは、歴史的に、少数者の特権であったのであるが、民主主義の時代になってから、ふつうの人たちも文学を享受しようとしたのである。

 文学を読むということは、字面を追ったりあらすじを把握したりすることではなく、文学を面白く読むということである。文学を面白く読めるということは幸福を知ることと同義である。文学を実際に読んでいる人の中で、幸福を知り文学を面白く読んでいる人は少数であり、多くの人は幸福を知らずその外観にしがみついて文学を読む人もいる。だからこそ、幸福を知り文学を面白く読めることは貴重なのである。

 

〔設問2〕

 私は、本文における筆者の主張に対して反対し、文学とは誰もが読むべきものであり、誰にでも読めるものだと主張する。

 後者から先に述べる。ここで文学を読めるということは、筆者が主張しているのと同じように、文学を面白く読め、幸福を知ることである。ただし、文学とは、出版社から正式に出版された紙の本に限らず、インターネット上の文字も含む。文学にとって、文字が紙媒体に載せられるということが本質的であるはずはない。現代において、事実上誰もが、SNS等のインターネット上の文字を面白く読んでいる。インターネット上には多種多様な書き手が存在し、自分の幸福に合ったものが存在するのである。

 誰にでも文学を読めるのだとすると、誰もが文学を読むべきであり、強制されなくても読むはずである。確かに伝統的には少数者しか文学を享受できなかったのであるが、現代では、生産力の増大とともに、余暇時間も増えており、原理的にはすべての人に文学を読む時間を確保することもできる。労働に追われるなどしてどう工夫しても文学を読む時間を作れないのだとしたら、それは不幸なことである。

 以上より、私は、文学とは誰もが読むべきものであり、誰にでも読めるものだと主張する。

 

感想

 今年は初めて読むような内容でした。著者の皮肉的な部分は敢えて削ぎ落として平板に記述しましたが、どう評価されるかは不明です。



令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案刑事訴訟法

再現答案

 以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

 日本国憲法33条で現行犯として逮捕される場合が除かれているのは、その人が犯罪を行ったということが明白であり、誤認逮捕のおそれがないからである。212条2項も、各号の一にあたることを前提として、その人が犯罪を行ったということが明白であり、誤認逮捕のおそれがない場合に許されるという趣旨である。この観点から、以下では212条2項に沿って検討する。

 「贓物」とは盗品等のことである。本件バッグはそれに当たり、甲はそのバッグを所持していたので、同項2号に該当する。甲は、本件バッグを投棄したが、Pが甲に声をかけた時点では所持していたので、この結論でよい。

 「誰何されて」とは、文字通りに「誰であるか」と問われることだけでなく、その前段階の「話を聞いてもいいですか」といった問いかけも含まれる。本件では、Pは、甲に対し、「話を聞きたいので、ちょっといいですか」と声をかけたら甲はいきなり逃げ出したので、同項4号にも該当する。

 本件では、P自身が犯行現場を現認していないが、犯行から約20分後の記憶が新しいうちに被害者であるVから犯人らの特徴と奪われたバッグの特徴を聞き出し、その特徴を防犯カメラでも確認し、犯行現場から5キロメートル離れた場所で犯行から2時間後に、前記特徴と一致する甲らを発見している。よって、甲が本件住居侵入、強盗傷人の犯罪を行ったことが明白であり、誤認逮捕のおそれはないため、①の逮捕は適法である。仮に甲が本件バックを別の真犯人から譲り受けて所持していた理由を合理的に説明していたとしたら話は別であるが、本件ではそうしたことはなかった。

 

〔設問2〕

 被告人の弁護人依頼権は、日本国憲法37条3項で保障されている重要な権利である。被告人の弁護人依頼権を保障するためには、被疑者の段階から弁護人と接見することが重要であり、39条1項で接見交通権が規定されている。

 もっとも、被疑者の身柄は一つしかないため、捜査機関が捜査をする必要とも調整をしなければならない。その調整の規定が同条3項であり、「捜査のため必要があるとき」とは、現に捜査をしているとか、捜査が間近に迫っているとかして、被疑者の身柄が一つしかないために捜査に支障が生じる場合のことである。

 そして、初回の接見は、弁護人依頼権のために特に重要であるため、捜査をずらす、短時間であっても接見させるなど、可能な限り希望に近い形での接見を認めなければ違法になると解する。

 本件において、甲は、身柄の拘束を受けている被疑者である。甲の父親は、被疑者甲の直系の親族であり、独立して弁護人を選任することができる。よって、S弁護士は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者である。以上より、39条1項より、甲はSと接見できるのが原則である。

 Rは司法警察員であり、39条3項に規定される主体である。Rは、S弁護士から接見を求める電話を受けた午後5時頃の時点で、甲にナイフの投棄場所を案内させて、ナイフの発見、押収及び甲を立会人としたその場所の実況見分を実施するために出発しようとしていたので、捜査が間近に迫っており、被疑者甲の身柄が一つしかないために捜査に支障が生じる場合に当たる。

 本件では、甲にとって初回接見であり、39条3項ただし書も踏まえて捜査をずらす、短時間であっても接見させるなど、可能な限り希望に近い形での接見を認めなければならない。この時期のこの時間には辺りが暗くなるのは仕方のないことであり、捜査を翌日にずらすと甲の記憶が薄れたり共犯者に先にナイフを回収されてしまう可能性があり、午後5時頃から短時間ならともかく午後5時30分からの接見を認めると辺りが暗くなって捜査ができなくなってしまい、S弁護士の予定に照らし合わせて最も早い翌日の午前9時以降にしてほしい旨を伝えているので、、可能な限り希望に近い形での接見を認めている。

 以上より、②の措置は適法である。

以上

 

感想

 〔設問1〕の準現行犯逮捕は数年前に出題されたときよりはよく書けたと思います。〔設問2〕も、記述の上手下手はともかく、題意に沿っているはずです。



令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案刑法

再現答案

以下刑法についてはその条数のみを示す。

第1 乙の罪責

 乙は、某月30日、殺意をもって、両手でXの首を強く締め付け続けた。その結果、Xは窒息死した。乙は、Xが本心では死を望んでいないことを認識しており、この行為の直前にも「あれはうそだ。やめてくれ」と言われている。よって、同意殺人罪(202条)ではなく殺人罪(199条)が成立する。

 

第2 甲の罪責

1.本件ダンボール箱をY宅から持ち出した行為

 この行為につき、窃盗罪(235条)の成否を検討する。

 「他人の財物」とは、「他人が占有する財物」のことである。一応平穏に占有しているという事実的な状態を保護すべきだからである。本件ダンボール箱は、甲が所有する物であるが、Yが占有していた物であり、「他人の財物」に当たる。

 「窃取」とは、強制的に占有を自己に移転させることである。本件では、本件ダンボール箱をY宅から持ち出した時点で、甲は占有を確保して自己に移転させたと言え、窃取したと言える。

 窃盗罪が成立するためには、器物損壊罪(261条)との区別から、その物の経済的用法に従って利用処分するという不法領得の意思が必要であるところ、本件では得意先との取引に本件ダンボール箱の中に入っている本件帳簿が必要だったとのことであるため、不法領得の意思が認められる。

 以上より、窃盗罪の構成要件を満たす。

 次に、正当防衛(36条)が成立するかどうかを検討する。

 「急迫不正の侵害」とは、法益の侵害が現に存在するか間近に迫っていることである。本件でYが「返してほしければ100万円を持ってこい」と言うことは、恐喝罪(249条1項)に該当する行為であり、法益の侵害が現に存在しているため、急迫不正の侵害があると言える。

 甲は、自己の権利を防衛するためにこの行為に及んでいる。

 「やむを得ずにした行為」とは、その行為が相当であることである。本件において、この行為には、相当性が全くない。

 以上より、2項の過剰防衛も含めて、甲には36条の正当防衛は成立しない。

 よって、甲には窃盗罪が成立する。

2.本件帳簿にライターで火をつけてドラム缶の中に投入した行為

 この行為につき、建造物等以外放火罪(110条2項)の成否を検討する。

 本件帳簿にライターで火をつけて炎が発生しているので、放火して焼損したと言える。

 110条1項の「公共の危険」とは、108条及び109条に規定される物に延焼させることに限られず、周囲の物に燃え移るなどして不特定又は多数者の生命等に危険を生じさせることも含まれる。本件では、漁網が燃え上がり、5名の釣り人が発生した煙に包まれているので、公共の危険が発生したと言える。

 この公共の危険が発生することについての認識・認容までは必要ないが、周囲の物に燃え移る可能性についての認識・認容は必要である。甲は、漁網、原動機付自転車、釣り人5名の存在をいずれも認識していなかったので、故意(38条1項)が阻却される。

 以上より、甲には、建造物等以外放火罪は成立しない。

3.乙を制止せずにその場から立ち去ったこと

 まず何罪が成立し得るか考える。甲は、Xが本心から死を望んでいると思っていたので、殺人罪は成立せず、同意殺人罪が成立し得るにとどまる。また、甲はXが死亡することについての認識・認容があったので、遺棄等致死罪(219条)は成立しない。

 同意殺人罪は作為の形式で定められており、このような場合に不作為により罪が成立するためには、法律などにより作為義務が存在し、その作為が容易であって、作為に及んでいたら高い可能性で結果を防止できたという、作為と同視できる条件が必要である。本件では、甲はXの子であり、民法上扶養義務が認められ、Xが死なないようにする義務があった。そして、甲にとって容易に採り得る措置を講じた場合には、乙の犯行を直ちに止めることができた可能性が高く、直ちに乙の犯行を止めてXの救命治療を要請していれば、Xを救命できたことは確実であった。乙を制止せずにその場から立ち去ったことは、それ自体は積極的な行動であり作為であるが、同意殺人罪にとっては意味をなさず不作為である。よって、甲には同意殺人罪が成立する。*

 なお、共同正犯(60条)が成立するためには意思連絡が相互に必要であり、乙は甲が帰宅したことに気付いていなかったので、共同正犯とはならない。

 また、甲は正犯となるので、従犯(62条1項)にはならない。

4.罪数関係

 以上より、甲には窃盗罪と同意殺人罪が成立し、これらは併合罪(45条)となる。

 

*に以下を挿入

 甲は、客観的には殺人罪を実行し、主観的には同意殺人罪の故意であったが、そのような錯誤は構成要件が重なり合う範囲では阻却されない。

以上

 

感想

 乙の罪責の記述があまりにも短くて不安になりました。本件帳簿にライターで火をつけてドラム缶の中に投入した行為については、他にも検討すべき罪があるような気がしましたが、時間の関係であれだけの記述にしました。



令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案行政法

再現答案

 以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

第1 本件条件の法的性質

 本件条件の法的性質は、その根拠となった廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)14条の4第11項の文言から、本件許可処分に付された講学上の負担である。本件条件単独で効力が発生することはなく、本件許可処分と一体となってはじめて効力を発するものである。

第2 考えられる取消訴訟

1.本件許可処分の取消

 第1で述べたことからすると、本件許可処分の取消訴訟を提起すべきだと思われる。この取消判決の効力は、本件許可処分がなかったことになるというものである。つまり、Aの事業範囲の変更がされず、ポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の積替え・保管を除く収集運搬業のままになるということである。これだとAの希望には沿わない。

2.本件条件部分のみの取消

 そこで、本件条件部分のみの取消訴訟について検討する。このような処分の一部の取消訴訟が可能かどうか問題となり得るも、その必要性があり、論理的に考えて処分全体の取消ができるのであればその一部の取消もできるはずであるから、可能であると解する。この取消判決の効力は、事業範囲の変更が制約なしに認められるというものであり、PCB廃棄物の積替え・保管もできるようになるので、Aの希望を満たすことができる。

 

〔設問2〕

 Aは、取消訴訟において、本件条件の違法性について、裁量権の逸脱・濫用及び信義則違反の主張をすべきである。

1.裁量権の逸脱・濫用

 30条に沿って検討する。

 本件条件は、その根拠となった法14条の4第11項に「生活環境の保全上必要な条件を付することができる」という文言からしても、また生活環境の保全のためには地域に応じた専門技術性が要求されるという性質からも、行政庁であるB県知事に裁量が認められる。

 B県は、近隣の県では本件条件のような内容の条件は付されていないとしても、本件条件はその裁量の範囲内であり、申請書類に記載されていないことを考慮することも許されると反論することが想定される。

 これに対し、Aとしては、近隣の県では本件条件のような内容の条件は付されていないことからして他者搬搬入・搬出をしないことが生活環境の保全のために必須の条件であるわけではなく、それを踏まえてもAが適切にPCB廃棄物を処理することができるかどうかを検討しなかったのは考慮不尽であり裁量権の逸脱・濫用であると主張すべきである。また、申請書類に記載されていないことを考慮することが直ちに違法となることはないにしても、もっぱらそのことだけを考慮するのは、他事考慮として裁量権の逸脱・濫用であるとも主張すべきである。

2.信義則違反

 まず、行政庁の処分にも、信義則といった一般条項が適用される。

 本件では、Aは、積替え・保管施設の建設に関し、他者搬入・搬出も目的としていることを明確に伝えた上でB県の関係する要綱等に従って複数回にわたり事前協議を行い、B県内のA所有地に高額な費用を投じ、B県知事から協議終了通知を送付されている。この時点で、Aには、他者搬入・搬出を含めてPCB廃棄物の収集運搬業を適法に営むことができるという期待が発生しており、この期待は保護されるべきである。にもかかわらず本件条件を付したのは信義則違反であると主張する。

 これに対し、B県としては、事前協議後に従来の運用を変更するという事情変動が生じており、その新しい運用に従って公平に判断したと反論することが想定される。

 Aは、そのような扱いは、それまでの経過を考慮すると、公平な扱いではないと再反論すべきである。

以上

 

感想

 〔設問1〕では問題文の指示から義務付け訴訟は検討すべきでないと判断し、これしかないかなと思って書きました。〔設問2〕はわざわざ収録されている施行規則をに全く触れられず、記述が薄いような気がします。

 



令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案憲法

再現答案

 以下日本国憲法についてはその条数のみを示す。

第1 表現の自由一般

 21条1項で表現の自由が保障されている。表現の自由の保障は、絶対無制約ではないが、一旦失われると民主的過程を通じて回復するのが困難なので、経済的自由権と比べて厳重に保障される。

第2 内容規制と内容中立規制

 表現内容に応じた制約は、公権力の主体たる国や公共団体によってし意的な運用がなされるおそれが大きいので、やむにやまれぬ利益のための必要最小限の制約のみ許されると解する。表現内容に関係なく時間や場所によってなされる内容中立規制の場合は、そのようなおそれが小さいので、重要な目的のために実質的に関係している手段による制約が許されると解する。

 本件では、広告物の掲示については、C地区という場所に着目した制約にも見えるが、市長が「特別規制区域の歴史的な環境を向上させるものと認められる」として許可を与える場合には、広告物を掲示することができるので、内容規制である。印刷物の配布については、C地区という場所に着目した内容中立規制である。

第3 パブリックフォーラム論

 路上でのビラ配布などは、安価に表現をする手段であり、伝統的に財力に乏しい人たちによって利用されてきた手段であるから、表現の自由の制約には慎重にならなければならないというパブリックフォーラム論が存在する。本件ではそれに該当し、内容中立規制であっても、重要な目的のために他のより制限的な手段が存在しない場合に限って表現の自由を制約することが許されると解する。

第4 不明確な制約

 表現の自由が不明確な形で制約されると、自分がしようとしている表現が制約されるものであるかどうかの判断がしづらく、それならばやめておこうかとい縮しがちである。特に刑罰が課される場合はそうである。表現の自由に対する不明確な制約は、それ自体で違憲であると解する。不明確であるかどうかは一般人を基準にして判断する。

第5 結論

 B市歴史的環境保護条例(以下「条例」という。)により、特別規制区域内で広告物を新たに掲示することが禁止され、表現の自由が制約される。先述したように、これは内容規制である。よって、やむにやまれぬ利益のための必要最小限の制約のみ許される。C地区の歴史的な環境を維持し向上させるという条例の目的は、重要なものとは言えるが、やむにやまれぬ利益であるとは言えない。以上より、条例の広告物に関する部分は違憲である。

 条例により、特別規制区域内の路上での印刷物の配布が原則禁止され、表現の自由が制約されている。これは内容中立規制であり、先述のパブリックフォーラム論から、重要な目的のために他のより制限的な手段が存在しない場合に限って表現の自由を制約することが許されると解する。先に検討したように、条例の目的は重要である。しかし、そのためにビラ配布自体を禁止するということは、過剰な制約である。ビラの配布行為自体を観察すると、そのビラの内容に関わらず、C地区の歴史的な環境を損なうとは考え難い。例えば、ビラが捨てられることによりC地区の歴史的な環境が損なわれるのであれば、ビラ配布自体ではなく、ビラを捨てることを禁止することで目的を達成できる。よって、印刷物の配布に関する部分も違憲である。

 また、「店舗の関係者」や「自己の営業を宣伝する」という文言は一般人を基準にして不明確であり、違反者は罰金刑に処せられるので、不明確な制約として、その点でも違憲である。

以上

 

感想

 たまには統治から出題されるかとも思いましたが、2年連続で表現の自由の直球的な問いかけでした。今年はそれらしく書いたつもりですが、これでよいのか自信はありません。




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