浅野直樹の学習日記

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2020 / 5月

令和元(2019)年司法試験予備試験論文振り返り

令和元(2019)年の司法試験予備試験論文を振り返ります。

 

この振り返り作業を通じて司法試験予備試験答案の書き方2 – 浅野直樹の学習日記をまとめることができました。

 

憲法

F評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案憲法 – 浅野直樹の学習日記

それなりに書いたつもりだったのにF評価でどうしようかと思いました。憲法の人権は型が定まっており、特に答案の書き方が重要になりそうです。

20条1項前段の「信教の自由」は宗教的行為の自由を含む、宗教的行為をする義務が課されてそれに従わない場合に不利益を被ることは宗教的行為の自由の間接的な制約となる、宗教的行為の自由は他の人権との調整に服する(政教分離原則)、不利益の程度や代替措置の可能性などで違憲かどうか判断、といった解釈を示せればよかったのでしょうか。

 

行政法

D評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案行政法 – 浅野直樹の学習日記

かなり怪しいところがありながらも、行訴法9条の解釈を示すことができていたのでD評価だったのだと思われます。〔設問2〕では「委任の趣旨に反すれば無効」という解釈を示せればよかったはずです。「委任の趣旨に反すれば無効」のように、行政法は条文に書いていないことが多いので難しいです。

 

民法

F評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案民法 – 浅野直樹の学習日記

これは論外の答案ですのでF評価も納得です。177条の適用を激しく間違えていますし、法定地上権に触れることもできていません。要件事実への意識も薄かったです。

 

商法

A評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案商法 – 浅野直樹の学習日記

あまり意識はしていなかったのですが、適用条文を提示し、その条文を解釈して、問題文の事例に当てはめるということができていたように思われます。

 

民事訴訟法

F評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案民事訴訟法 – 浅野直樹の学習日記

闇雲にがんばっても仕方ないという結果です。〔設問1〕では40条の共同訴訟、124条の類推適用、〔設問2〕では114条の既判力の解釈、115条1項4号の類推適用を挙げなければなりませんでした。

 

刑法

F評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案刑法 – 浅野直樹の学習日記

これも手応えと結果が食い違っていました。それらしいことを書いたつもりでいました。中途半端に論点らしきものを覚えて吐き出しても意味がないということでしょう。条文に即して丁寧に解釈することが求められます。条文に直接書いていない「委託信任関係」や「不法領得の意思」が難しく感じます。

また、判例と同じ結論ならさらっと書いてもよいところを、判例と異なる結論を取るならかなり丁寧に論じなければならないという傾向もあるのかもしれません。

 

刑事訴訟法

E評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案刑事訴訟法 – 浅野直樹の学習日記

先行する逮捕の適法性が勾留の適法性の検討材料になることを条文に即して書いたことにいくらか点が入ったのでしょう。実質逮捕の部分は答案の書き方次第でもっと点があったかもしれません。「強制処分とは個人の意思を制圧して身体など重要な利益を侵害することであり、身柄を拘束する逮捕はこれに含まれる」といった記述を最初にしておくべきでした。

 

法律実務基礎科目

C評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(民事) – 浅野直樹の学習日記令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(刑事) – 浅野直樹の学習日記

基本的にはっきりとした正解があり、答案の書き方が最も影響しない科目です。

 

一般教養科目

F評価:令和元(2019)年司法試験予備試験論文再現答案一般教養科目 – 浅野直樹の学習日記

結果に納得できません。ひょっとすると答案の書き方の影響が大きいのでしょうか。

 

 

 

 



司法試験予備試験答案の書き方2

私は法学部出身ではなく、予備校にも通わず、独学で勉強しながら司法試験予備試験を受け続けています。

 

論文式試験の答案の書き方に苦労しています。実際に試験を受けた手応えと結果とが一致しないのもそれが原因だと思われます。

 

令和元年(2019年)司法試験予備試験論文の振り返りをして、答案の書き方が少し見えてきた気がしました。

 

同じような悩みを持つ方に、また、試験を受けるつもりはなくても法律家の思考回路を知っておきたいという方のために、私が何回も司法試験予備試験を受験することで見えてきたことをまとめます。

 

以前にまとめた司法試験予備試験答案の書き方よりもクリアになっていると思います。

 

結論から言うと、(1)適用可能性のある条文の提示、(2)その条文中のわかりづらい語句や条文には書いていないことの解釈、(3)その解釈に従った問題文に対する一定の結論づけ、というものです。

 

俗に(1)論点抽出、(2)規範定立、(3)当てはめ、と呼ばれているものを、私なりに言い替えた理解です。

 

令和元年予備試験論文式憲法参考答案などの参考答案をよく拝見しているstudywebさんは、こう書いています。

 

(1)基本論点を抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範を明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

 

私はこれを次のように理解しました。

 

(1)適用可能性のある条文を挙げられている。
(2)(問題文の事案を解決するために必要な限りで)その条文中のわかりづらい語句や条文には書いていないことの解釈が示されている。
(3)その解釈に従って問題文の事情を当てはめ、一定の結論を導いている。

 

法律等の条文は万人に公開されています。それでも法律家が必要とされるのは、その条文の解釈が難しい場合があるからです。その解釈は、判例を通じて確立されていることも多いです。趣旨に遡って考えるということも有効です。

 

上記(1)〜(3)を心がければ、「法的三段論法」と呼ばれる形になります。

 

余談ですが、私は「三段論法」という名称が誤解を招くと考えています。

 

まず、解釈を積み重ねるなどして、四段論法や五段論法になることもあることが挙げられます。

 

次に、数学的な三段論法と混同してしまうことが挙げられます。

 

数学的な三段論法では、「A=C」を示したいとして、「A=B、B=C、ゆえにA=C」としても、「B=C、A=B、ゆえにA=C」としても問題ありません。

 

しかし、法的三段論法では、「ソクラテスは死すべきものである」ことを示したいとして、「すべての人間は死すべきものである、ソクラテスは人間である、ゆえにソクラテスは死すべきものである」という順番を守らなければならず、「ソクラテスは人間である、すべての人間は死すべきものである、ゆえにソクラテスは死すべきものである」という順番は認められません。

 

私の答案が読みにくいと言われるのはこの順番を守っていなかったからだと気づきました。

 

この答案の書き方が有効かどうか、次の機会に試してみたいです。

 

 



消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方設例解説

私は、塾講師を長くやりつつ、一昨年から、とある法人の経理事務員としても勤務しています。

 

3月決算の法人だと、この時期は消費税計算が待っています。

 

簡易課税ではありながらも、8%と10%の消費税が混在している今年度の計算は難しかったです。

 

昨年に8%だけの計算を前任者に教えてもらいながら経験していてよかったです。

 

国税庁が公表している201910_02.pdf(消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方)を熟読するということに尽きるのですが、そこで挙げられている設例を、苦しんだ末に理解できたので、つまづきやすい点などをここに共有します。

 

0.基本的な考え方と作業の全体像

売上からそこにかかる消費税を算出し、仕入にかかる消費税を控除して、納付すべき消費税額を確定させるというのが大まかな作業の流れです。

 

簡易課税の場合は、仕入にかかる消費税額を、レシートなどから逐一計算するのではなく、事業の種類によって一律に定められているみなし仕入率から計算します。

 

201910_02.pdf(消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方)p.6の設例のように、事業年度が8%の時期と10%の時期の両方にまたがっている場合は、以下のような順番で進めることになります。

 

付表4−2前半

 

付表4−1前半

 

付表5−2

 

付表5−1

 

付表4−2後半

 

付表4−1後半

 

第二表

 

第一表

 

最終目標は第一表ではありますが、急がばまわれで、この順番で作業することを強くおすすめします。

 

1.付表4−2前半(旧税率の売上にかかる消費税額の計算)

カッコつきの数字はすべて201910_02.pdf(消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方)に対応していますので、それを手元に置きながらこの記事を読んでください。

 

「*」をつけた部分は私の一言コメントです。

 

(1) 旧税率(6.3%)の課税売上高÷1.08=課税資産の譲渡等の対価の額①-1

* 「×100/108」よりも「÷1.08」のほうが、考えやすく、電卓の操作も楽です。

(2) (1)の百の位を切り捨て=課税標準額①

(3) (2)×6.3%=消費税額②

(4) 貸倒回収に係る消費税額③

* この設例では貸倒回収がありません

(5) 課税売上の対価の返還等÷1.08×6.3%=返還等対価に係る税額⑤

* 消費税額本体を計算する際には百の位を切り捨ててから6.3%をかけましたが、ここでは切り捨てずに一気に6.3%をかけます。

 

2.付表4−1前半(新税率の売上にかかる消費税額の計算)

* 基本的に先ほどの付表4−2前半の計算と同じです。かけたり割ったりする数字が違う点にだけ注意してください。

(1) 6.24%適用分の課税売上高÷1.08=課税資産の譲渡等の対価の額①-1

   7.8%適用分の課税売上高÷1.1=課税資産の譲渡等の対価の額①-1

(2) (1)の百の位をそれぞれ切り捨て=課税標準額①

(3) (2)×6.24%=消費税額②

   (2)×7.8%=消費税額②

(4) 貸倒回収に係る消費税額③

(5) 課税売上の対価の返還等÷1.08×6.24%=返還等対価に係る税額⑤

   課税売上の対価の返還等÷1.1×7.8%=返還等対価に係る税額⑤

* ここでいちいち合計を計算すると面倒なので、各付表の合計金額は、最後に付表だけを見てまとめて計算することをおすすめします。

 

3.付表5−2(旧税率の仕入にかかる消費税額の計算)

■1 控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額を付表4−2から転記して計算

■2 1種類の事業の専業者の場合の控除対象仕入税額

* 設例はここに該当せず。私が勤務している法人はここに該当したのでまだ楽でした。

■3 (1) 旧税率(6.3%)の課税売上高÷1.08−課税売上の対価の返還等÷1.08=事業区分別の課税売上高(税抜き)

  これを合計額と事業区分別とで繰り返し

* 数学的に考えて、(旧税率(6.3%)の課税売上高−課税売上の対価の返還等)÷1.08とすると、端数が合わなくなることがあるので注意。設例の注2を参照。

(2) 旧税率(6.3%)の課税売上高÷1.08×6.3%−課税売上の対価の返還等÷1.08×6.3%=事業区分別の課税売上高にかかる消費税額

  これを合計額と事業区分別とで繰り返し

* 201910_02.pdf(消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方)ではここで付表5−1に移りますが、このまま付表5−2の2ページ目を完成させたほうがわかりやすいです。

iii

■1 (2)で求めた事業区分別の消費税額×その事業区分のみなし仕入率をそれぞれ足したもの×(控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額/(2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額)

* (2)で求めた事業区分別の消費税額×その事業区分のみなし仕入率をそれぞれ足したものだけでよさそうに思えるのですが、控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額と(2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額が異なるので、控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額/(2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額を最後にかけて調整すると考えるとまだ理解しやすいかもしれません。

■2 控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額×(2)で求めた事業区分別の消費税額のうち75%以上を占めるもののみなし仕入率

■3 ((2)で求めた事業区分別の消費税額のうち合計して75%以上を占める二つのもののうちみなし仕入率が高い方のもの×その事業区分のみなし仕入率+((2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額−(2)で求めた事業区分別の消費税額のうち合計して75%以上を占める二つのもののうちみなし仕入率が高い方のもの)×もう一つの事業区分のみなし仕入率)×(控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額/(2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額)

* これを言葉で説明するのはややこしすぎるので201910_02.pdf(消費税及び地方消費税の申告書(簡易課税用)の書き方)の数値例を見てください。

v

■1から■3のいずれかから選択した金額を記載

* 最も大きい金額を選択するのが有利です。

 

4.付表5−1(新税率の仕入にかかる消費税額の計算)

■1 控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額を付表4−1から転記して計算

■2 1種類の事業の専業者の場合の控除対象仕入税額

■3 (1) 新税率(6.24%)の課税売上高÷1.08−課税売上の対価の返還等÷1.08=事業区分別の課税売上高(税抜き)

     新税率(7.8%)の課税売上高÷1.1−課税売上の対価の返還等÷1.1=事業区分別の課税売上高(税抜き)

  これを合計額と事業区分別とで繰り返し

  (2) 新税率(6.24%)の課税売上高÷1.08×6.24%−課税売上の対価の返還等÷1.08×6.24%=事業区分別の課税売上高にかかる消費税額

     新税率(7.8%)の課税売上高÷1.1×7.8%−課税売上の対価の返還等÷1.1×7.8%=事業区分別の課税売上高にかかる消費税額

  これを合計額と事業区分別とで繰り返し

iv

* iiiとまったく同じ計算です。

■1 (2)で求めた事業区分別の消費税額×その事業区分のみなし仕入率をそれぞれ足したもの×(控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額/(2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額)

■2 控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額×(2)で求めた事業区分別の消費税額のうち75%以上を占めるもののみなし仕入率

■3 ((2)で求めた事業区分別の消費税額のうち合計して75%以上を占める二つのもののうちみなし仕入率が高い方のもの×その事業区分のみなし仕入率+((2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額−(2)で求めた事業区分別の消費税額のうち合計して75%以上を占める二つのもののうちみなし仕入率が高い方のもの)×もう一つの事業区分のみなし仕入率)×(控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額/(2)で求めた事業区分別の合計額の消費税額)

vi

■1から■3のいずれかから選択した金額を記載

 

 

5.付表4−2後半(納付(還付)税額の計算)

(1) 控除対象仕入税額を付表5−2より転記

(2) 課税売上のうち貸倒処理した金額÷1.08×6.3%=貸倒れに係る税額

(3)〜(6) 付表4−2に印字されている指示に従って計算・記入

(7) 合計差引地方消費税の課税標準となる消費税額÷63×17

* 8%の消費税のうち、地方消費税が1.7%、残る部分が6.3%ということです。

 

6.付表4−1後半(納付(還付)税額の計算)

(1) 控除対象仕入税額を付表5−1より転記

(2) 貸倒れに係る税額の計算

* 設例では新税率の貸倒はないです。

(3)〜(6) 付表4−1に印字されている指示に従って計算・記入

(7) 合計差引地方消費税の課税標準となる消費税額÷78×22

* 10%の消費税のうち、地方消費税が2.2%、残る部分が7.8%ということです。軽減税率の場合は、8%の消費税のうち、地方消費税が1.76%、残る部分が6.24%ということで、いずれにしても同じ比率になっています。

 

7.第二表

下準備1 付表4−2と付表5−2の一番右の列の旧税率分小計を完成

* 設例では旧税率が6.3%だけなのでただ写すだけです。

下準備2 下準備1で完成させた旧税率分小計をそれぞれ付表4−2と付表5−2に転記し、それも含めて一番右の列の合計欄を完成

付表4−1、4−2から必要な情報を転記して第二表を完成させる

 

8.第一表

第二表、付表4−1、付表5−1から必要な情報を転記し、第一表の印字に従い計算をして、⑮と⑯以外の必要な箇所を完成

* ⑮は①とほぼ同じ金額になりますが、設例のように免税売上があると結構ずれます。

* ⑯は2年前のこの第一表を探し出して、その2年前の⑮に相当する金額を書きます。

 

 

お疲れさまでした。遠回りに見えても、意味を理解しながら付表を埋めることさえできれば、第二表と第一表はすぐに完成できます。

 

この記事を、自分で簡易課税の消費税計算をしなければならないすべての経理事務員に捧げます。




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