令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案刑事訴訟法

再現答案

 以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

 日本国憲法33条で現行犯として逮捕される場合が除かれているのは、その人が犯罪を行ったということが明白であり、誤認逮捕のおそれがないからである。212条2項も、各号の一にあたることを前提として、その人が犯罪を行ったということが明白であり、誤認逮捕のおそれがない場合に許されるという趣旨である。この観点から、以下では212条2項に沿って検討する。

 「贓物」とは盗品等のことである。本件バッグはそれに当たり、甲はそのバッグを所持していたので、同項2号に該当する。甲は、本件バッグを投棄したが、Pが甲に声をかけた時点では所持していたので、この結論でよい。

 「誰何されて」とは、文字通りに「誰であるか」と問われることだけでなく、その前段階の「話を聞いてもいいですか」といった問いかけも含まれる。本件では、Pは、甲に対し、「話を聞きたいので、ちょっといいですか」と声をかけたら甲はいきなり逃げ出したので、同項4号にも該当する。

 本件では、P自身が犯行現場を現認していないが、犯行から約20分後の記憶が新しいうちに被害者であるVから犯人らの特徴と奪われたバッグの特徴を聞き出し、その特徴を防犯カメラでも確認し、犯行現場から5キロメートル離れた場所で犯行から2時間後に、前記特徴と一致する甲らを発見している。よって、甲が本件住居侵入、強盗傷人の犯罪を行ったことが明白であり、誤認逮捕のおそれはないため、①の逮捕は適法である。仮に甲が本件バックを別の真犯人から譲り受けて所持していた理由を合理的に説明していたとしたら話は別であるが、本件ではそうしたことはなかった。

 

〔設問2〕

 被告人の弁護人依頼権は、日本国憲法37条3項で保障されている重要な権利である。被告人の弁護人依頼権を保障するためには、被疑者の段階から弁護人と接見することが重要であり、39条1項で接見交通権が規定されている。

 もっとも、被疑者の身柄は一つしかないため、捜査機関が捜査をする必要とも調整をしなければならない。その調整の規定が同条3項であり、「捜査のため必要があるとき」とは、現に捜査をしているとか、捜査が間近に迫っているとかして、被疑者の身柄が一つしかないために捜査に支障が生じる場合のことである。

 そして、初回の接見は、弁護人依頼権のために特に重要であるため、捜査をずらす、短時間であっても接見させるなど、可能な限り希望に近い形での接見を認めなければ違法になると解する。

 本件において、甲は、身柄の拘束を受けている被疑者である。甲の父親は、被疑者甲の直系の親族であり、独立して弁護人を選任することができる。よって、S弁護士は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者である。以上より、39条1項より、甲はSと接見できるのが原則である。

 Rは司法警察員であり、39条3項に規定される主体である。Rは、S弁護士から接見を求める電話を受けた午後5時頃の時点で、甲にナイフの投棄場所を案内させて、ナイフの発見、押収及び甲を立会人としたその場所の実況見分を実施するために出発しようとしていたので、捜査が間近に迫っており、被疑者甲の身柄が一つしかないために捜査に支障が生じる場合に当たる。

 本件では、甲にとって初回接見であり、39条3項ただし書も踏まえて捜査をずらす、短時間であっても接見させるなど、可能な限り希望に近い形での接見を認めなければならない。この時期のこの時間には辺りが暗くなるのは仕方のないことであり、捜査を翌日にずらすと甲の記憶が薄れたり共犯者に先にナイフを回収されてしまう可能性があり、午後5時頃から短時間ならともかく午後5時30分からの接見を認めると辺りが暗くなって捜査ができなくなってしまい、S弁護士の予定に照らし合わせて最も早い翌日の午前9時以降にしてほしい旨を伝えているので、、可能な限り希望に近い形での接見を認めている。

 以上より、②の措置は適法である。

以上

 

感想

 〔設問1〕の準現行犯逮捕は数年前に出題されたときよりはよく書けたと思います。〔設問2〕も、記述の上手下手はともかく、題意に沿っているはずです。




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