令和3(2021)年司法試験予備試験論文再現答案民法

再現答案

 以下民法についてはその条数のみを示す。

 

〔設問1〕

第1 本件ワイン売買契約について

 Aが、本件ワイン売買契約の解除を主張する根拠は、542条1項1号である。本件ワインは飲用に適さない程度に劣化しており、本件ワインと同種同等のワインは他に存在しないため、債務の全部の履行が不能であるときに当たる。

 Bは、そのことに自分の責任はないと反論するかもしれない。しかし、543条に債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは契約の解除をすることができないと規定されており、その反対解釈から、それ以外の場合には契約の解除をすることができると解されるので、Bの反論は当たらない。

第2 本件賃貸借契約について

 Aは、本件賃貸借契約は本件ワイン売買契約と一体として1つのものであり、そうすると542条1項3号に該当するので、契約を解除すると主張する。

 Bは、あくまでも本件賃貸借契約は本件ワイン売買契約とは別個のものであり、賃貸借契約の履行は可能なので、契約を解除することができないと反論することが想定される。

 しかしながら、本件賃貸借契約は、先行する本件ワイン売買契約に付随して締結されたものであり、もっぱら本件ワインを保管するためのものだったので、社会通念上1つの契約であると認められる。そして、本件ワインが飲用に適さない程度に劣化しており、株式会社Aは高級ワインの取扱いを新しく開始することができなくなっているので、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときに当たる。よってAの主張が認められる。

 そうすると、第1で述べたこととは異なり、本件ワイン売買契約の部分も、本件賃貸借契約と一体として1つの契約になるので、542条1項1号ではなく、同項3号に該当することになる。

 以上より、Aは、本件ワイン売買契約及び本件賃貸借契約を、一体のものとして解除することができる。

 

〔設問2〕

(1) まず、譲渡担保契約自体は、民法で明定されていないが、必要性があって害がないので、有効である。変動する集合物についての譲渡担保契約も、場所や品目によって特定されていれば有効であると解する。本件では、倉庫丙内にある全ての酒類ということで対象物が特定されており、本件譲渡担保契約は有効である。

 動産の対抗要件は引渡しである(178条)。①の主張により、占有改定(183条)によって、倉庫丙内の動産である酒類がAからCに引き渡されていると言える。

 以上より、Cは、本件譲渡担保契約の有効性について、第三者に対して主張することができる。

(2) Dの③の主張は、本件ウイスキーは代金の完済まで所有権がDに留保されており、本件譲渡担保契約の効力が及ばないというものである。そもそも、所有権留保契約は、民法上明定されていないが、必要性と害のなさから、有効に成立する。本件ウイスキー売買契約は所有権留保契約である。

 もっとも、DはAに対して、本件ウイスキーの引渡日以降、本件ウイスキーの全部又は一部を転売することを承諾しており、転売されたウイスキーの所有権を主張して取り戻すことは予定されていない。令和3年10月20日、本件ウイスキーが倉庫丙に搬入された時点で、その所有権はCに移転している。Aは、これにより経済的利益を得ているので、転売であると言ってよい。

 以上より、Dは、Cに対して、本件ウイスキーの所有権を主張することができない。

以上

 

感想

 〔設問1〕は2つの契約を一体のものとして考えられるかどうかが最大の争点だとすぐに気づきましたが、その判断基準がよくわからず、本件ワイン売買契約のことを先に書き始めたこともあり、記述がまとまっていないです。〔設問2〕は考えたことがないことだったので、本文中の事情をできるだけ使うようにしました。

 




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