浅野直樹の学習日記

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平成27(2015)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(民事)

問題

([設問1]から[設問4]までの配点の割合は、14:10:18:8)

 

司法試験予備試験用法文を適宜参照して、以下の各設問に答えなさい。

 

〔設問1〕
 弁護士Pは、Xから次のような相談を受けた。 なお、別紙の不動産売買契約書「不動産の表示」記載の土地を以下「本件土地」といい、解答に おいても、「本件土地」の表記を使用してよい。

 

【Xの相談内容】
 「私は、平成26年9月1日、Yが所有し、占有していた本件土地を、Yから、代金250万 円で買い、同月30日限り、代金の支払と引き換えに、本件土地の所有権移転登記を行うこと を合意しました。
 この合意に至るまでの経緯についてお話しすると、私は、平成26年8月中旬頃、かねてか らの知り合いであったAからYが所有する本件土地を買わないかと持ちかけられました。当初, 私は代金額として200万円を提示し、Yの代理人であったAは350万円を希望したのですが、同年9月1日のAとの交渉の結果、代金額を250万円とする話がまとまったので、別紙 のとおりの不動産売買契約書 (以下「本件売買契約書」という。) を作成しました。Aは、その 交渉の際に、Yの記名右横に実印を押印済みの本件売買契約書を持参していましたが、本件売 買契約書の金額欄と日付欄 (別紙の斜体部分) は空欄でした。Aは、その場で、交渉の結果を 踏まえて、金額欄と日付欄に手書きで記入をし、その後で、私が自分の記名右横に実印を押印しました。
 平成26年9月30日の朝、Aが自宅を訪れ、登記関係書類は夕方までに交付するので、代金を先に支払ってほしいと懇願されました。私は、旧友であるAを信用して、Yの代理人であ るAに対し、本件土地の売買代金額250万円全額を支払いました。ところが、Aは登記関係 書類を持ってこなかったので、何度か催促をしたのですが、そのうちに連絡が取れなくなって しまいました。そこで、私は、同年10月10日、改めてYに対し、所有権移転登記を行うよ うに求めましたが、Yはこれに応じませんでした。
 このようなことから、私は、Yに対し、本件土地の所有権移転登記と引渡しを請求したいと考えています。」

 

 上記 (Xの相談内容】 を前提に、弁護士Pは、平成27年1月20日、Xの訴訟代理人として、 Yに対し、本件土地の売買契約に基づく所有権移転登記請求権及び引渡請求権を訴訟物として、本件土地の所有権移転登記及び引渡しを求める訴え (以下「本件訴訟」という。) を提起することにした。
 弁護士Pは、本件訴訟の訴状 (以下「本件訴状」という。) を作成し、その請求の原因欄に、次の①から④までのとおり記載した。なお、①から③までの記載は、請求を理由づける事実 (民事訴訟規則第53条第1項) として必要かつ十分であることを前提として考えてよい。
 ① Aは、平成26年9月1日、Xに対し、本件土地を代金250万円で売った(以下「本件売買契約」という。)。
 ② Aは、本件売買契約の際、Yのためにすることを示した。
 ③ Yは、本件売買契約に先立って、Aに対し、本件売買契約締結に係る代理権を授与した。
 ④ よって、Xは、Yに対し、本件売買契約に基づき、(以下記載省略) を求める。

 

 以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。
(1) 本件訴状における請求の趣旨 (民事訴訟法第133条第2項第2号) を記載しなさい (付随的申立てを記載する必要はない。)。
(2) 弁護士Pが、本件訴状の請求を理由づける事実として、上記①から③までのとおり記載したのはなぜか、理由を答えなさい。

 

〔設問2〕
 弁護士Qは、本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。

 

【Yの相談内容】
Ⅰ  「私は、Aに対し、私が所有し、占有している本件土地の売買に関する交渉を任せましたが、当初希望していた代金額は350万円であり、Xの希望額である200万円とは隔たりがありました。その後、Aから交渉の経過を聞いたところ、Xは代金額を上げてくれそうだ ということでした。そこで、私は、Aに対し、280万円以上であれば本件土地を売却して よいと依頼しました。しかし、私が、平成26年9月1日までに、Aに対して本件土地を250万円で売却することを承諾したことはありません。ですから、Xが主張している本件売 買契約は、Aの無権代理行為によるものであって、私が本件売買契約に基づく責任を負うこ とはないと思います。」
Ⅱ 「Xは、平成26年10月10日に本件売買契約に基づいて、代金250万円を支払った ので、所有権移転登記を行うように求めてきました。しかし、私は、Xから本件土地の売買代金の支払を受けていません。そこで、私は、念のため、Xに対し、同年11月1日到着の 書面で、1週間以内にXの主張する本件売買契約の代金全額を支払うように催促した上で同月15日到着の書面で、本件売買契約を解除すると通知しました。ですから、私が本件売 買契約に基づく責任を負うことはないと思います。」

 

 上記 【Yの相談内容】 を前提に、弁護士Qは、本件訴訟における答弁書 (以下「本件答弁書」という。)を作成した。

 

 以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。なお、各問いにおいて抗弁に該当する具体的事実 を記載する必要はない。
(1) 弁護士Qが前記Iの事実を主張した場合、裁判所は、その事実のみをもって、本件訴訟における抗弁として扱うべきか否かについて、結論と理由を述べなさい。
(2) 弁護士Qが前記Iの事実を主張した場合、裁判所は、その事実のみをもって、本件訴訟における抗弁として扱うべきか否かについて、結論と理由を述べなさい。

 

〔設問3〕
 本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、本件訴状と本件答弁書が陳述された。また、その口頭 弁論期日において、弁護士Pは、XとAが作成した文書として本件売買契約書を書証として提出し。 これが取り調べられたところ、弁護士Qは、本件売買契約書の成立を認める旨を陳述し、その旨の陳述が口頭弁論調書に記載された。
 そして、本件訴訟の弁論準備手続が行われた後、第2回口頭弁論期日において、本人尋問が実 施され、Xは、【Xの供述内容】のとおり、Yは、【Yの供述内容】のとおり、それぞれ供述した (A の証人尋問は実施されていない。)。
 その後、弁護士Pと弁護士Qは、本件訴訟の第3回口頭弁論期日までに、準備書面を提出することになった。
 

【Xの供述内容】
 「私は、本件売買契約に関する交渉を始めた際に、Aから、Aが本件土地の売買に関するす べてをYから任されていると聞きました。また、Aから、それ以前にも、Yの土地取引の代理 人となったことがあったと聞きました。ただし、Aから代理人であるという委任状を見せられたことはありません。
 当初、私は代金額として200万円を提示し、Yの代理人であったAは350万円を希望し ており、双方の希望額には隔たりがありました。その後、Aは、Yの希望額をで 300万円に引き下げると伝えてきたので、私は、250万円でないと資金繰りが困難であると返答しました。 私とAは、平成26年9月1日に交渉したところ、Aは、何とか280万円にしてほしいと要求してきました。しかし、私が、それでは購入を諦めると述べたところ、最終的には、本件土地の代金額を250万円とする話がまとまりました。
 Aは、その交渉の際に、Yの記名右横に実印を押印済みの本件売買契約書を持参していまし たが、本件売買契約書の金額欄と日付欄 (別紙の斜体部分) は空欄でした。Aは、Yが実印を 押印したのは250万円で本件土地を売却することを承諾した証であると述べていたので、A が委任状を提示していないことを気にすることはありませんでした。そして、Aは、その場で 金額欄と日付欄に手書きで記入をし、その後で、私が自分の記名右横に実印を押印しました。」

 

【Yの供述内容】
 「私は、Aに本件土地の売買に関する交渉を任せましたが、当初希望していた代金額は350万円であり、Xの希望額である200万円とは隔たりがありました。私は、それ以前に、A を私の所有する土地取引の代理人としたことがありましたが、その際はAを代理人に選任する 旨の委任状を作成していました。しかし、本件売買契約については、そのような委任状を作成したことはありません。
 その後、私が希望額を300万円に値下げしたところ、Aから、Xは代金額を増額してくれそうだと聞きました。たしか、250万円を希望しており、資金繰りの関係で、それ以上の増額は難しいという話でした。
 そこで、私は、Aに対し、280万円以上であれば本件土地を売却してよいと依頼しました。 しかし、私が、本件土地を250万円で売却することを承諾したことは一度もありません。
 Aから。平成26年9月1日よりも前に、完成前の本件売買契約書を見せられましたが、金 額欄と日付欄は空欄であり、売主欄と買主欄の押印はいずれもありませんでした。本件売買契 約書の売主欄には私の実印が押印されていることは認めますが、私が押印したものではありません。私は、実印を自宅の鍵付きの金庫に保管しており、Aが持ち出すことは不可能です。た だ、同年8月頃、別の取引のために実印をAに預けたことがあったので、その際に、Aが勝手 に本件売買契約書に押印したに違いありません。もっとも、その別の取引は、交渉が決裂して しまったので、その取引に関する契約書を裁判所に提出することはできません。Aは、現在行 方不明になっており、連絡が付きません。」

 

 以上を前提に、以下の各問いに答えなさい。
(1) 裁判所が、本件売買契約書をAが作成したと認めることができるか否かについて、結論と理由を記載しなさい。
(2) 弁護士Pは、第3回口頭弁論期日までに提出予定の準備書面において、前記 【Xの供述内容】及び 【Yの供述内容】 と同内容のXYの本人尋問における供述、並びに本件売買契約書に基づ いて、次の【事実】が認められると主張したいと考えている。弁護士Pが、上記準備書面に記載すべき内容を答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい(なお、解答において、[設問2] の 【Yの相談内容】 については考慮しないこと。)。
【事案】
 「Yが、Aに対し、平成26年9月1日までに、本件土地を250万円で売却することを承諾した事実」

 

〔設問4〕
 弁護士Pは、訴え提起前の平成26年12月1日、Xに相談することなく、Yに対し、差出人を 「弁護士P」とする要旨以下の内容の「通知書」と題する文書を、内容証明郵便により、Yが勤務 するZ社に対し、送付した。
1
以上を前提に、以下の問いに答えなさい。
 弁護士Pの行為は弁護士倫理上どのような問題があるか、司法試験予備試験用法文中の弁護士職 務基本規程を適宜参照して答えなさい。

 

 

2

 

 

再現答案

以下民法についてはその条数のみを示す。

 

[設問1]
(1)被告は、原告に対し、平成26年9月1日売買を原因とした、本件土地の所有権移転登記手続をせよ。
 被告は、原告に対し、本件土地を引き渡せ。
(2)本件土地の売買契約に基づく所有権移転登記請求権及び引渡請求権が訴訟物なので、XはAとの売買契約の成立を主張する必要がある。売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(555条)ので、①の記載が必要である。売買契約は、要物契約ではなく、諾成契約なので、意思表示だけでよい。
 本件訴訟の被告はYであるので、上記売買契約がYに帰属することを主張する必要がある。代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生じ(99条1項)、第三者が代理人に対してした意思表示も同様である(99条2項)。そこでAの顕名(Yのためにすることを示したこと)を主張する必要があるので、②の記載が必要である。「代理人がその権限内において」したことを示すために、③の記載も必要である。
 弁護士Pが、本件訴状の請求を基礎づける事実として、上記①から③までのとおり記載したのは、以上のような理由からである。

 

[設問2]
(1)弁護士QがⅠの事実を主張した場合、裁判所は、その事実のみをもって、本件訴訟における抗弁として扱うべきではない。Aの無権代理であるという主張は、[設問1]の③の記載と両立しないので、抗弁ではなく、否認である。
(2)弁護士QがⅡの事実を主張した場合、裁判所は、その事実のみをもって、本件訴訟における抗弁として扱うべきである。本件売買契約の解除という主張は、原告の主張と両立するので、抗弁である。一見すると売買契約の成立を否定しているように見えるが、事実レベルでは原告の主張と両立している(一旦有効に売買契約が成立した後に、それを解除している)。

 

[設問3]
(1)裁判所は、本件売買契約書をAが作成したとは認めることができない。
 私文書は、本人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する(民事訴訟法228条4項)。そして、本人の所持する印章による印影が現出していれば、本人が押印したと推定される(いわゆる二段の推定)。本件売買契約書は私文書である。そこにYの所持する実印(印章)による印影が現出していることに争いはない。よって、Yの記名しかなく署名はないが、押印があると推定されるので、真正に成立したものと推定される。Yはこの推定を反証により覆すことができるが、Yの供述内容からは反証に成功していない。この推定によりYに立証責任があるので、真偽不明の場合は、真正に成立したものと推定される。
 以上より、本件売買契約書は、Yが作成したと認められ、Aが作成したとは認められない。
(2)Yが、Aに対し、280万円以上で本件土地を売却することを承諾していたことに争いはない。また、Xが、250万円を希望しており、資金繰りの関係で、それ以上の増額は難しいということを、Yは、Aから聞いていた(そのことはYも認めている)。金額欄と日付欄が空欄であり、売主欄と買主欄の押印はいずれもなかった完成前の本件売買契約書をAが所持していたこともYは知っていた。これらは平成26年9月1日以前のことである。
 (1)より、本件売買契約書は、Yが作成したと認められる。そして、平成26年9月1日の、XとAとの交渉時には、AがYの記名押印済みで、金額欄と日付欄が空欄の本件売買契約書を持参していたことはほぼ間違いない(Yはそのことを積極的に争っていない)。そこから、常識的な金額で売買契約を締結することを承諾していたことが推認される。YはXが250万円を希望していることを聞いていたのだから、250万円というのは常識的な金額である。
 以上より、Yが、Aに対し、平成26年9月1日までに、本件土地を250万円で売却することを承諾した事実が認められる。なお、委任状がなかったということは何ら問題とならない。委任状がなくても本件土地を280万円以上で売却することについては承諾していたのであり、280万円で売却するには委任状が不要であるが、250万円で売却するためには必要であるというのは明らかに不合理である。

 

[設問4]
 弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める(弁護士職務基本規程(以下「規程」とする)6条)。弁護士Pがこのようなどうかつまがいの通知書を送ったことは、廉潔や品位にもとる行為であり、規程6条に反するという問題がある。
 また、弁護士は依頼者の意思を尊重するものとされ(規程22条1項)、事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告して、依頼者と協議しなければならない(規程36条)。弁護士Pが、Xに相談することなくこのような通知書を送ったことは、これらに反するという問題がある。

以上

 

 

感想

時間が足りず[設問4]は急いで書きました。[設問3]の(2)は何を論じてほしいのかがいまいちつかめませんでした。全体的に確信が持てません。

 



平成27(2015)年司法試験予備試験論文再現答案一般教養科目

問題

 次の文章は、東ヨーロッパ諸国の社会主義体制が1960年代から1970年代に経験した困難について述べたものである。これを読んで、後記の各設問に答えなさい。

 

(省 略)

 

〔設間1〕
 下線部から読み取れる内容を踏まえ、市場機構の機能に関する著者の見解を10行程度でまとめなさい。

 

〔設問2〕
 20世紀末の社会主義体制の瓦解後、市場機構は、名実ともに世界経済の中心的・主導的な機構 となった。その一方で、それが、各種の社会問題の温床となっているとの批判もある。これに関連して、経済社会の在り方をめぐって、以下の2つの理論的立場が想定される。

 A:市場機構に、社会的な規制を加える必要はない。
 B:市場機構に、社会的な規制を加える必要がある。

 ここで、仮にBの立場を取るとすれば、その正当性はいかに主張できるであろうか。具体的な 事例 (Bの主張の論拠となる事例) を取り上げつつ、15行程度で立論しなさい。

 

【出典】猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』

 

再現答案

[設問1]
 著者によると、市場機構の機能とは、価格という圧縮された形の情報を通じ、経済活動の様々な調整を、特定の人に依存するのではなく、匿名的に行うことである。
 経済活動は過去の反復ではなく、多くの不確実性が存在する。生産現場の人間が持っている、時々刻々変化するような情報が経済活動に大きな影響を及ぼすこともあるが、このような知識はデータとして誰かに伝えて活用することはできない。市場機構では、そうした様々な情報を価格に反映させて、その価格に応じて各人が経済活動をすることにより、その結果として、特定の人が政治的に決定するのではなく、経済活動が調整されるのである。

 

[設問2]
 著者によると、市場機構では、価格という情報を通じて、経済活動が調整される。よって、価格が適正につけられるように、社会的な規制を加える必要があると主張できる。
 例えば、ある商品市場において、独占的な供給者が存在すれば(あるいは多数の供給者が協定を結んで価格を決定することができれば)、その商品が稀少でなくても、価格をつり上げることができる。そのようにして供給者の利益が増大するが、全体としてはそれ以上の損害が生じる。こうした事態を避けるために、実際に、多くの国で独占禁止法が制定されている。
 また別の例として、賃金(労働力商品の価格)が挙げられる。その売り手である労働者は、命をつなぐために、安くてもそれを売らなければならない状況がある。買い手がそこにつけ込むと、希少性などの合理性から決まる水準よりも賃金が低くなってしまうことが想定される。実際、これに対しても、各種の労働法で対応がなされている。

以上

 

感想

よく書けていると自分では感じたのですがどうでしょうか。[設問2]では「20世紀末の社会主義体制の瓦解後…」といった前置きがあったので、このような古典的な例よりも、環境問題などを出して外部不経済の話をしたほうがよかったかなとも少し思いましたが、昔からの強い議論を使いました。

 

 



平成27(2015)年司法試験予備試験論文再現答案刑事訴訟法

問題

 次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕 〔設問2〕 及び に答えなさい。

 

【事 例】
 甲は,平成27年2月1日,L県M市内の路上において,肩が触れて口論となったVに対し,携帯していたサバイバルナイフで左腕を切り付け,1か月間の加療を要する傷害を負わせた。司法警察員Pらは,前記事実で逮捕状及び捜索差押許可状(捜索すべき場所及び差し押さえるべき物の記載内容は,後記のとおり)の発付を受けた上,同月2日,甲を立ち回り先で逮捕した。また,Pらは,同日,甲と同居する乙を立会人として,甲方の捜索を行った。
 甲方の捜索に際し,Pは,玄関内において,乙に捜索差押許可状を呈示するとともに,部下の司法警察員Qに指示して,呈示された同許可状を乙が見ている状況を写真撮影した(①)。続いて,Pは,玄関脇の寝室に立ち入ったが,同寝室内には,机とベッドが置かれていた。Pは,Qに指示して,同寝室内全体の写真を撮影した上,前記机の上段の引出しを開けたが,その際,引出し内の手前側中央付近に,血の付いたサバイバルナイフを発見し,その左横に,甲名義の運転免許証及び健康保険証を認めた。Pは,その状況を写真撮影することとし,Qに指示して,前記サバイバルナイフ及び運転免許証等を1枚の写真に収まる形で近接撮影した(② )。Pは,引き続き,前記机の下段の引出しを開けたところ,覚せい剤の使用をうかがわせる注射器5本及び空のビニール小袋1枚を認めた。そこで,Pは,Qに指示して,前記注射器及びビニール小袋を1枚の写真に収まる形で近接撮影した(③ )。その後,Pは,前記サバイバルナイフを押収し,捜索を終了した。
 前記サバイバルナイフに付いた血がVのものと判明したことなどから 検察官Rは 同月20日 ,,,L地方裁判所に甲を傷害罪で公判請求した。甲は 「身に覚えがない。サバイバルナイフは乙の物 ,だ 」旨供述して犯行を否認している。 。

 

(捜索すべき場所及び差し押さえるべき物の記載内容)
捜索すべき場所 L県M市N町○○番地甲方
差し押さえるべき物 サバイバルナイフ

 

〔設問1〕
 【事例】中の①から③に記載された各写真撮影の適法性について論じなさい。

 

〔設問2〕
 Pは,捜索終了後 「甲方の寝室内には,机及びベッドが置かれていた。机には,上下2段の ,引出しがあり,このうち,上段の引出しを開けたところ,手前側中央付近に,サバイバルナイフ1本が置かれており,その刃の部分には血液が付着していた。そして,同サバイバルナイフの左横に,甲名義の運転免許証及び健康保険証があった。」旨の説明文を記した上 【事例】中の②の写真を添付した書面を作成した。Rは,同書面によって前記サバイバルナイフと甲との結び付きを立証したいと考えた。同書面の証拠能力について論じなさい(②に記載された写真撮影の適否が与える影響については,論じなくてよい。)。

 

再現答案

以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

 

[設問1]
 司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとされる(189条2項)、捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる(197条1項前段)が、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない(197条1項後段)。強制の処分とは、有形力の行使のみならず、プライバシーの侵害など重大な権利を侵害するような行為も含む。司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索をすることができる(218条1項前段)。これが197条1項前段の特別の定である。事前に裁判官の審査に服させるということである。司法警察員Pらは、本件で捜索差押許可状(以下「本件令状」とする)の発布を受け、それを捜索場所である甲方の管理権者である乙に呈示している。
 ①の写真撮影は、乙が写っており、乙のプライバシーを侵害している。容ぼうをみだりに撮影されないことは判例でも認められた重大なプライバシーの権利である。本件令状は、甲がVに傷害を負わせたことについてのものであり、それが裁判官に審査されている。乙については審査の範囲外である。以上より、①の写真撮影は違法である。
 ②の写真撮影は、甲の運転免許証等が撮影されている。運転免許等はプライバシーに関わることが記載されており、それを撮影することはプライバシーを侵害する。しかし、本件令状により甲方の捜索が許可されているので、そこにある物が捜索者の目に触れることは当然に予定されている。確かに運転免許証等を写真撮影してそこに記載された文字等を取得することは見ることとは異なるが、②の写真撮影は差し押さえるべき物であるサバイバルナイフの発見状況を記録するために必要であり、そのナイフ及び運転免許証等が1枚の写真に収まるような相当なやり方で撮影されているので、適法である。
 ③の写真撮影は、注射器及びビニール小袋が撮影されている。これは差し押さえるべき物であるサバイバルナイフとは何の関係もない。確かにそれらも捜索者の目に触れることは予定されているが、写真撮影することまで許可されているわけではない。仮にこのような写真撮影を許容すると、別件捜索を助長してしまう。よって③の写真撮影は違法である。
 以上より、①、③の写真撮影は違法であり、②の写真撮影は適法である。

 

[設問2]
 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる(298条1項)が、その証拠が要証事実と自然的連関性を有していないと、証拠能力が否定される。本件写真は、本件サバイバルナイフが甲の運転免許証等と同じ引き出しに保管されていたことを示すものである。一般に運転免許証のような大事なものを保管している場所にあるものは同じ人の所有物であると考えられるので、本件サバイバルナイフと甲との結びつきという要証事実との自然的連関性を有しており、証拠能力が肯定される。
 公判期日における供述に代えた書面は、伝聞法則により、証拠とすることができない(320条1項)。よって本件書面についても、証拠とせずに、Pを公判期日に尋問するのが筋である。しかし、これには一定の例外(伝聞例外)が認められている。本件書面は、司法警察職員Pが、自ら五感を通じて知覚したことを記載した書面なので、検証の結果を記載した書面だと考えて、321条3項により、Pが公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。
 以上より、本件書面の証拠能力は肯定される。

以上

 

感想

捜索時の写真撮影の適法性については、(新)司法試験の過去問で検討したことがあったので、しめたと思いました。[設問2]は改めて再現してみると記述が少ないので、何か論じ損ねているのかもしれません。

 

 



平成27(2015)年司法試験予備試験論文再現答案刑法

問題

以下の事例に基づき,甲,乙,丙及び丁の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く 。)。

 

1 甲は,建設業等を営むA株式会社(以下「A社」という。)の社員であり,同社の総務部長として同部を統括していた。また,甲は,総務部長として,用度品購入に充てるための現金(以下「用度品購入用現金」という。)を手提げ金庫に入れて管理しており,甲は,用度品を購入する場合に限って,その権限において,用度品購入用現金を支出することが認められていた。
 乙は,A社の社員であり,同社の営業部長として同部を統括していた。また,乙は,甲の職場の先輩であり,以前営業部の部員であった頃,同じく同部員であった甲の営業成績を向上させるため,甲に客を紹介するなどして甲を助けたことがあった。甲はそのことに恩義を感じていたし,乙においても,甲が自己に恩義を感じていることを認識していた。
 丙は,B市職員であり,公共工事に関して業者を選定し,B市として契約を締結する職務に従事していた。なお,甲と丙は同じ高校の同級生であり,それ以来の付き合いをしていた。
 丁は,丙の妻であった。

2 乙は,1年前に営業部長に就任したが,その就任頃からA社の売上げが下降していった。乙は,某年5月28日,A社の社長室に呼び出され,社長から,「6月の営業成績が向上しなかった場合,君を降格する。」と言い渡された。

3 乙は,甲に対して,社長から言われた内容を話した上, 「お前はB市職員の丙と同級生なんだろう。丙に,お礼を渡すからA社と公共工事の契約をしてほしいと頼んでくれ。お礼として渡す金は,お前が総務部長として用度品を買うために管理している現金から,用度品を購入したことにして流用してくれないか。昔は,お前を随分助けたじゃないか。」などと言った。甲は,乙に対して恩義を感じていたことから,専ら乙を助けることを目的として,自己が管理する用度品購入用現金の中から50万円を謝礼として丙に渡すことで,A社との間で公共工事の契約をしてもらえるよう丙に頼もうと決心し,乙にその旨を告げた。

4 甲は,同年6月3日,丙と会って,「今度発注予定の公共工事についてA社と契約してほしい。 もし,契約を取ることができたら,そのお礼として50万円を渡したい。」 などと言った。丙は,甲の頼みを受け入れ,甲に対し, 「分かった。何とかしてあげよう。」などと言った。
 丙は,公共工事の受注業者としてA社を選定し,同月21日,B市としてA社との間で契約を締結した。なお,その契約の内容や締結手続については,法令上も内規上も何ら問題がなかった。

5 乙は,B市と契約することができたことによって降格を免れた。
 甲は,丙に対して謝礼として50万円を渡すため,同月27日,手提げ金庫の用度品購入用現金の中から50万円を取り出して封筒に入れ,これを持って丙方を訪問した。しかし,丙は外出しており不在であったため,甲は,応対に出た丁に対し,これまでの経緯を話した上,「御主人と約束していたお礼のお金を持参しましたので,御主人にお渡しください。」と頼んだ 。丁は,外出中の丙に電話で連絡を取り,丙に対して,甲が来訪したことや契約締結の謝礼を渡そうとしていることを伝えたところ,丙は,丁に対して,「私の代わりにもらっておいてくれ。」と言った。
 そこで,丁は,甲から封筒に入った50万円を受領し,これを帰宅した丙に封筒のまま渡した。

 

再現答案

以下刑法についてはその条数のみを示す。

 

第1 丙の罪責
 丙は、B市職員という公務員である。A社にB市の公共工事を発注することは、そのBの職務に関している。「もし、(A社がB市の発注する公共工事の)契約を取ることができたら、そのお礼として50万円渡したい」という甲の発言に対し、丙は「分かった。何とかしてあげよう」と答えているので、賄賂の約束をしている。同時に請託も受けている。よって、この時点で、丙には受託収賄罪(197条1項後段)が成立する。その契約の内容や締結手続については、法令上も内規上も何ら問題がなかったと問題文に書かれているので、加重収賄罪(197条の3第1項)は成立しない。なお、その後、丁を通じて甲から50万円を受け取ったことは、不可罰的事後行為であるが、没収又は追徴の対象にはなる(197条の5)。
第2 丁の罪責
 丁は、上記の丙の収賄罪の経緯を甲から聞いた上で、「御主人と約束していたお礼のお金を持参しましたので、御主人にお渡しください」と甲から言われ、丙に電話で「私の代わりにもらっておいてくれ」と言われて、甲から封筒に入った50万円を受領し、これを帰宅した丙に封筒のまま渡した。これは正犯の丙の収賄罪を助けているので、幇助(62条1項)に当たる。故意がなかったということはない。
 丁は公務員ではないので、収賄罪が成立するかどうかが問題となる。収賄罪の公務員という身分は構成的身分なので、65条1項を文言通りに適用して、丁は収賄罪の共犯となる。
 以上より、丁は受託収賄罪(197条1項後段)の幇助が成立する。なお、その犯罪の企画・利益は丙に帰属し、丁は偶然それを助けたに過ぎない(丙が在宅時に甲が訪ねて来ていたら丙が自ら受領していたと考えられる)ので、共同正犯(60条)にはならない。
第3 甲の罪責
 丙に受託収賄罪(197条1項後段)が成立するのは先に述べた通りであるので、甲は賄賂を約束した者となり、贈賄罪(198条)が成立する。50万円を渡した行為は、丙と同様に、不可罰的事後行為である。
 自己の占有する他人の物を横領した者には横領罪が成立する。「横領した」と言えるためには、他の財産に対する罪と同じように、不法領得の意思が必要である。また、財産的損害も必要である。
 甲が用度品購入用現金を占有していたのは、A社の用度品を購入するという業務上である。その現金はA社という他人の物である。その中から50万円を丙に交付したので、横領したと言える。そのおかげで乙は降格を免れたのであり、甲としては営業成績を向上させてもらったお礼を乙にするためにこの行為に及んでいるので、不法領得の意思があると言ってよい。A社にはこの50万円分の財産的損害が生じているし、仮にB市との契約からの利益でそれをまかなうことができるとしても、贈収賄が表に出ると企業のマイナスイメージなどで大きな損害を被るので、財産的損害が生じていると言える。よって甲には業務上横領罪(253条)が成立する。
 以上より、甲には贈賄罪と業務上横領罪が成立し、これらは1個の行為ではないので、併合罪(45条)となる。
第4 乙の罪責
 上で検討した甲の罪責は、乙が企画し、問題文の3にあるように乙にその実行を頼んでいる。このように共謀があり、二人以上共同して犯罪を実行したと言えるので、乙は共同正犯(60条)となる。二人以上共同して犯罪を実行した者はすべて正犯とするのは、共同することで犯罪が容易になるので、一部しか分担してない者にも全部の責任を負わすという趣旨である。実際、乙は実行行為を担当していないが、甲にやり方を示すなど犯罪を容易にしているので、共同正犯になるのが妥当である。
 横領罪について、乙は業務上でも占有してもいなかった。占有という身分は構成的身分なので65条1項により乙には横領罪が成立し、業務上という身分は加減的身分なので65条2項により通常の横領罪(252条1項)の刑が課される。
 以上より、乙には贈賄罪と横領罪(252条1項)が成立し、これら併合罪となる。共謀は1個の行為であるが、共犯の者の間で差がつかないほうが合理的なので、実行行為を基準にして考えるべきだからである。

以上

 

感想

書いているうちに共犯と身分といったいろいろな論点が見えてきて、多少ちぐはぐになりながらも、どうにか盛り込みました。

 



平成27(2015)年司法試験予備試験論文再現答案行政法

問題

 A県に存するB川の河川管理者であるA県知事は,1983年,B川につき,河川法第6条第1項第3号に基づく河川区域の指定(以下「本件指定」という。)を行い,公示した。本件指定は,縮尺2500分の1の地図に河川区域の境界を表示した図面(以下「本件図面」という。)によって行われた。
 Cは,2000年,B川流水域の渓谷にキャンプ場(以下「本件キャンプ場」という。)を設置し,本件キャンプ場内にコテージ1棟(以下「本件コテージ」という。)を建築した。その際,Cは,本件コテージの位置につき,本件図面が作成された1983年当時と土地の形状が変化しているため不明確ではあるものの,本件図面に表示された河川区域の境界から数メートル離れており,河川区域外にあると判断し,本件コテージの建築につき河川法に基づく許可を受けなかった。そして,河川法上の問題について,2014年7月に至るまで,A県知事から指摘を受けることはなかった。
 2013年6月,A県知事は,Cに対し,本件コテージにつき建築基準法違反があるとして是正の指導(以下「本件指導」という。)をした。Cは,本件指導に従うには本件コテージの大規模な改築が必要となり多額の費用を要するため,ちゅうちょしたが,本件指導に従わなければ建築基準法に基づく是正命令を発すると迫られ,やむなく本件指導に従って本件コテージを改築した。Cは,本件コテージの改築を決断する際,本件指導に携わるA県の建築指導課の職員Dに対し,「本件コテージは河川区域外にあると理解しているが間違いないか。」と尋ねた。Dは,A県の河川課の担当職員Eに照会したところ,Eから「測量をしないと正確なことは言えないが,今のところ,本件コテージは河川区域外にあると判断している。」旨の回答を受けたので,その旨をCに伝えた。
 2014年7月,A県外にある他のキャンプ場で河川の急激な増水による事故が発生したことを契機として,A県知事は本件コテージの設置場所について調査した。そして,本件コテージは,本件指定による河川区域内にあると判断するに至った。そこで,A県知事は,Cに対し,行政手続法上の手続を執った上で,本件コテージの除却命令(以下「本件命令」という。)を発した。
 Cは,本件命令の取消しを求める訴訟(以下「本件取消訴訟」という。)を提起し,本件コテージが本件指定による河川区域外にあることを主張している。さらに,Cは,このような主張に加えて,本件コテージが本件指定による河川区域内にあると仮定した場合にも,本件命令の何らかの違法事由を主張することができるか,また,本件取消訴訟以外に何らかの行政訴訟を提起することができるかという点を,明確にしておきたいと考え,弁護士Fに相談した。Fの立場に立って,以下の設問に答えなさい。なお,河川法及び同法施行令の抜粋を資料として掲げるので,適宜参照しなさい。

 

〔設問1〕
 本件取消訴訟以外にCが提起できる行政訴訟があるかを判断する前提として,本件指定が抗告訴訟の対象となる処分に当たるか否かを検討する必要がある。本件指定の処分性の有無に絞り,河川法及び同法施行令の規定に即して検討しなさい。なお,本件取消訴訟以外にCが提起できる行政訴訟の有無までは,検討しなくてよい。

 

〔設問2〕
 本件コテージが本件指定による河川区域内にあり,本件指定に瑕疵はないと仮定した場合,Cは,本件取消訴訟において,本件命令のどのような違法事由を主張することが考えられるか。また,当該違法事由は認められるか。

 

【資 料】
〇 河川法(昭和39年7月10日法律第167号)(抜粋)
(河川区域)
第6条 この法律において「河川区域」とは,次の各号に掲げる区域をいう。
一 河川の流水が継続して存する土地及び地形,草木の生茂の状況その他その状況が河川の流水が継続して存する土地に類する状況を呈している土地(中略)の区域
二 (略)
三 堤外の土地(中略)の区域のうち,第1号に掲げる区域と一体として管理を行う必要があるものとして河川管理者が指定した区域 〔注:「堤外の土地」とは,堤防から見て流水の存する側の土地をいう。〕
2・3 (略)
4 河川管理者は,第1項第3号の区域(中略)を指定するときは,国土交通省令で定めるところにより,その旨を公示しなければならない。これを変更し,又は廃止するときも,同様とする。
5・6 (略)
(河川の台帳)
第12条 河川管理者は,その管理する河川の台帳を調製し,これを保管しなければならない。
2 河川の台帳は,河川現況台帳及び水利台帳とする。
3 河川の台帳の記載事項その他その調製及び保管に関し必要な事項は,政令で定める。
4 河川管理者は,河川の台帳の閲覧を求められた場合においては,正当な理由がなければ,これを拒むことができない。
(工作物の新築等の許可)
第26条 河川区域内の土地において工作物を新築し,改築し,又は除却しようとする者は,国土交通省令で定めるところにより,河川管理者の許可を受けなければならない。(以下略)
2~5 (略)
(河川管理者の監督処分)
第75条 河川管理者は,次の各号のいずれかに該当する者に対して,(中略)工事その他の行為の中止,工作物の改築若しくは除却(中略),工事その他の行為若しくは工作物により生じた若しくは生ずべき損害を除去し,若しくは予防するために必要な施設の設置その他の措置をとること若しくは河川を原状に回復することを命ずることができる。
一 この法律(中略)の規定(中略)に違反した者(以下略)
二・三 (略)
2~10 (略)
第102条 次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 (略)
二 第26条第1項の規定に違反して,工作物の新築,改築又は除却をした者
三 (略)

 

〇 河川法施行令(昭和40年2月11日政令第14号)(抜粋)
(河川現況台帳)
第5条 (略)
2 河川現況台帳の図面は,付近の地形及び方位を表示した縮尺2500分の1以上(中略)の平面図(中略)に,次に掲げる事項について記載をして調製するものとする。
一 河川区域の境界
二~九 (略)

 

再現答案

以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを示す。

 

[設問1]
 抗告訴訟の対象となる「処分」とは「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」である(3条2項)。その処分の内実は、行政庁が、国民を名あて人として、直接権利を与えたり義務を課したりすることであると、判例などを通じて解されている。このように解釈すると、行政事件訴訟法の対象となる処分を絞ることができ、適当である。また、ある行為が処分であるかどうかを判断する際には、行政庁の一連の行為の中のどの段階で訴訟の場で争うのが適切であるかという観点も重要である。
 本件指定をしたA県知事は行政庁である。本件指定は私人としての行為ではなく公権力の行使に当たる。本件指定は、表面的に、Cのような特定の個人(国民)を名あて人とはしていないが、本件指定の区域内で工作物を所有していたり建築しようとしていたりする者は特定されるので、国民を名あて人としていると言ってよい。河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除去しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならなくなり(河川法26条1項)、それに違反すると1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される(河川法102条柱書)ので、一見義務が課されているように思われる。しかし、この義務は抽象的な可能性にとどまり、直接義務を課されたとは言えない。河川法26条1項の許可の申請をした後に、その不許可処分や何らの処分もなされないことを訴訟で争うほうが適切であり、この段階という観点からも、本件指定は処分でないと考えたほうが適当である。
 以上より、本件指定に処分性は認められない。

 

[設問2]
 河川管理者は、河川法の規定に違反した者に対して、工作物の除去を命ずることができる(河川法75条1項柱書)。河川区域内の土地において工作物を新築しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない(河川法26条1項)。A県知事は河川管理者である。本件コテージが本件指定による河川区域内にあり、本件指定に瑕疵はないと仮定した場合、Cは許可を受けずに2000年に河川区域内の土地において工作物を新築したことになる。このようにCは河川法の規定に違反しているので、A県知事は本件コテージという工作物の除去を命ずることができる。つまり、本件命令の内容は適法ということになる。また、行政手続法上の手続を執ったと問題文にあるので、手続的にも適法である。
 行政庁の行為にも、信義則(民法2条2項、3項)の適用があると解されている。日本国憲法は、大日本帝国憲法とは異なり、行政庁の無びゅう性を前提としていないからである。ただ、公権力の行使という特性を踏まえて、慎重に信義則を適用しなければならない。
 Cとしては、本件コテージ建築の際に、本件図面に表示された河川区域の境界から数メートル離れており、河川区域外にあると判断した。そしてその後も2014年7月に至るまで、河川法上の問題についてA県知事から指摘を受けることがなかったばかりか、2013年6月に、A県の建築指導課の職員Dを通じて河川課の担当職員Eの「測量をしないと正確なことは言えないが、今のところ、本件コテージは河川区域外にあると理解している」旨の回答をCは聞いている。それにもかかわらず本件命令を行うことは、信義則に反し違法であるとCが主張することが考えられる。
 本件図面は、河川管理者のA県知事が調整・保管することが要求されているものであり(河川法12条1項)、閲覧も予定されている(河川法12条4項)ので、重要な資料ではあるが、河川という自然の性質上、寸分違わず記載されているとは期待できない。Eの発言にしても、「測量をしないと正確なことは言えないが」という留保付きであった。そして何より、本件コテージを除去しないと河川の急激な増水などで危険であり、それを踏まえると、信義則を適用して本件命令が違法だとするべきではない。
 以上より、Cは、本件取消訴訟において、本件命令は信義則に反して違法であると主張することが考えられるが、その違法事由は認められない。なお、取消訴訟の違法と国家賠償訴訟の違法とは必ずしも同じではないので、別途国家賠償請求訴訟で違法だと認定される可能性はある。

以上

 

感想

関連する判例も頭に思い浮かび、事実や河川法の条文もまずまずうまく拾えたので、練習した成果は発揮できたと思います。

 




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