浅野直樹の学習日記

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平成28年司法試験予備試験論文(刑事訴訟法)答案練習

問題

 次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

 

【事 例】
 平成28年3月1日,H県J市内のV方が放火される事件が発生した。その際,V方玄関内から火の手が上がるのを見た通行人Wは,その直前に男が慌てた様子でV方玄関から出てきて走り去るのを目撃した。
 V方の実況見分により,放火にはウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶が使用されたこと,V方居間にあった美術品の彫刻1点が盗まれていることが判明した。
 捜査の過程で,平成21年1月に住宅に侵入して美術品の彫刻を盗みウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用して同住宅に放火したとの事件により,同年4月に懲役6年の有罪判決を受けた前科(以下「本件前科」という。)を有する甲が,平成27年4月に服役を終え,J市に隣接するH県K市内に単身居住していることが判明した。そこで,警察官が,甲の写真を含む多数の人物写真をWに示したところ,Wは,甲の写真を指し示し,「私が目撃したのはこの男に間違いありません。」と述べた。
 甲は,平成28年3月23日,V方に侵入して彫刻1点を盗みV方に放火した旨の被疑事実(以下「本件被疑事実」という。)により逮捕され,同月25日から同年4月13日まで勾留されたが,この間,一貫して本件被疑事実を否認し,他に甲が本件被疑事実の犯人であることを示す証拠が発見されなかったことから,同月13日,処分保留で釈放された。
 警察官は,甲が釈放された後も捜査を続けていたところ,甲が,同年3月5日に,V方で盗まれた彫刻1点を,H県から離れたL県内の古美術店に売却していたことが判明した。
 ①甲は,同年5月9日,本件被疑事実により逮捕され,同月11日から勾留された。間もなく甲は,自白に転じ,V方に侵入して,居間にあった彫刻1点を盗み,ウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を玄関ホールの床板にたたきつけてV方に放火した旨供述した。検察官は,同月20日,甲を本件被疑事実と同旨の公訴事実により公判請求した。
 公判前整理手続において,甲及びその弁護人は,「V方に侵入したことも放火したこともない。彫刻は,甲が盗んだものではなく,友人から依頼されて売却したものである。」旨主張した。
 そこで,検察官は,甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するため,②本件前科の内容が記載された判決書謄本の証拠調べを請求した。

 

〔設問1〕
 ①の逮捕及び勾留の適法性について論じなさい。

 

〔設問2〕
 ②の判決書謄本を甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するために用いることが許されるかについて論じなさい。

 

練習答案

以下刑事訴訟法については条数のみを示す。

[設問1]
第1 逮捕及び勾留一般の適法性
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる(199条1項)。甲が平成28年3月5日に、V方で盗まれた彫刻1点を、H県から離れたL県内の古美術店に売却していたことから、相当な理由があると言える。本件被疑事実は同条但書には該当しない。逮捕されてから72時間以内に勾留されているので205条2項に反しておらず、その他勾留についても一般的に違法な点は見当たらない。
第2 再逮捕及び再勾留の適法性
 199条3項の文言からして再逮捕は想定されている。もっとも、逮捕から勾留までに時間制限があることを無に帰さないために、逮捕を繰り返すことがあってはならない。新しい重要証拠が発見されて状況が大きく変わった時のみに再逮捕が許されると解すべきである。本件がまさにそのような例である。よって①の逮捕は再逮捕に当たるものの適法である。
 勾留については再勾留が想定されていると読める条文がなく、また身柄拘束も最大20日(特定の罪に関しては25日)と長期に及ぶため、再逮捕よりも厳格に判断して、原則的に許されないと解すべきである。本件では新証拠が発見されているが、そのようなことはよくあることであり、これで再勾留が適法となってはいけない。
 再逮捕と再勾留とで異なるのはおかしいのではないかという反論が予想されるが、逮捕しても証拠が不十分なら勾留の請求をしなければよいと言える。
 以上より、①の逮捕は適法であるが、勾留は違法である。

[設問2]
 事実の認定は証拠により(317条)、証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねる(318条)。ただし、証明力以前に証拠には証拠能力が備わっていなければならない。要証事実と証拠との間に自然的連関性がない場合は証拠能力がない。
 ②の証拠の要証事実は、甲が平成28年3月23日、V方に侵入して彫刻1点を盗みV方に放火したことである。その彫刻とは美術品の彫刻であり、放火の方法はウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用するというものである。②の判決書謄本に記された本件前科でも住宅に侵入して美術品の彫刻を盗みウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用して同住宅に放火したと書かれている。現金や有価証券ではなく美術品の彫刻を盗み、その場でガソリンをまいたり業務用の容器で火炎瓶を作ったりするのではなくウィスキーの瓶にガソリンを入れて火炎瓶を作るというのは特徴的な犯行手口である。知識や技術がなければそのようなことはできない。②の判決書謄本により甲がそうした知識や技術をもっていて、実行したことがあるとわかるので、自然的連関性を有していると言えるので証拠能力が肯定され、甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するために用いることが許される。
 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、又はその内容を引用してはならない(256条6項)と規定されている。この趣旨からすると単に前科があるとか悪性格であるとかいったことを示すための証拠は証拠能力を否定されるべきであるが、②の判決書謄本はそうした目的ではなく特徴的な犯行手口を示すために必要なので、許容される。

以上

 

 

修正答案

以下刑事訴訟法については条数のみを示す。

[設問1]
第1 逮捕及び勾留一般の適法性
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる(199条1項)。甲が平成28年3月5日に、V方で盗まれた彫刻1点を、H県から離れたL県内の古美術店に売却していたことから、相当な理由があると言える。本件被疑事実は同条但書には該当しない。逮捕されてから72時間以内に勾留されているので205条2項に反しておらず、その他勾留についても一般的に違法な点は見当たらない。
第2 再逮捕及び再勾留の適法性
 199条3項の文言からして再逮捕は想定されている。もっとも、逮捕から勾留までに時間制限があることを無に帰すような不当な逮捕の繰り返しを許してはならない。被疑者の負担を考慮して、重大犯罪に限り、新しい重要証拠が発見されるなどして状況が大きく変わった時のみに再逮捕が許されると解すべきである。本件被疑事実は現住建造物等放火罪を構成するので重大犯罪であると言える。また、甲が同年3月5日にV方で盗まれた彫刻1点をH県から離れたL県内の古美術店に売却していたことは新しい重要証拠である。よって①の逮捕は再逮捕に当たるものの適法である。
 再逮捕が予定されているのだから、再勾留についても想定されていると考えられる。しかし身柄拘束が最大20日(特定の罪に関しては25日)と長期に及ぶため、再逮捕よりも厳格に判断すべきである。甲は平成28年3月25日から同年4月13日まで20日間の勾留を受けており、再び勾留されてまた20日間の身柄拘束をされるという負担は非常に大きい。確かに先述したように新しい重要証拠が発見されているが、本来であれば最初の逮捕前、せめて最初の勾留中にこの証拠を発見して、それも踏まえて最初の勾留中に取り調べをすべきであった。そうせずに最初の勾留を最大の20日間行って、そこで自白が得られなかったとなって新証拠を探し、その新証拠に基づいて再勾留するというのは不当な蒸し返しである。よって①の勾留は違法である。
 再逮捕と再勾留とで異なるのはおかしいのではないかという反論が予想されるが、逮捕しても証拠が不十分なら勾留の請求をしなければよいと言える。
 以上より、①の逮捕は適法であるが、勾留は違法である。

[設問2]
 事実の認定は証拠により(317条)、証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねる(318条)。ただし、証明力以前に証拠には証拠能力が備わっていなければならない。そこで②本件前科の内容が記載された判決書謄本に法律上証拠能力が認められるかを検討する。
 ②の証拠の要証事実は、甲が平成28年3月23日、V方に侵入して彫刻1点を盗みV方に放火したことである。その彫刻とは美術品の彫刻であり、放火の方法はウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用するというものである。②の判決書謄本に記された本件前科でも住宅に侵入して美術品の彫刻を盗みウィスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用して同住宅に放火したと書かれている。現金や有価証券ではなく美術品の彫刻を盗み、その場でガソリンをまいたり業務用の容器で火炎瓶を作ったりするのではなくウィスキーの瓶にガソリンを入れて火炎瓶を作るというのは特徴的な犯行手口である。知識や技術がなければそのようなことはできない。②の判決書謄本により甲がそうした知識や技術をもっていて、実行したことがあるとわかるので、自然的連関性を有していると言えるので証拠能力が肯定され、甲が前記公訴事実の犯人であることを立証するために用いることが許される。
 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、又はその内容を引用してはならない(256条6項)と規定されている。この趣旨からすると単に前科があるとか悪性格であるとかいったことを示すための証拠は証拠能力を否定されるべきであるが、②の判決書謄本はそうした目的ではなく特徴的な犯行手口を示すために必要なので、許容される。

以上

 

 

感想

[設問1]では最初の直感に従って再逮捕は適法、再勾留は違法と書きましたが、収まりが悪いような気もします。[設問2]で練習では自然的連関性と書いてしまいましたが、どちらかというと法律的関連性ですね。判決書謄本が323条1号の書面かどうかといった論点もあり得るでしょうが、出題趣旨では触れられていなかったので、論じなくてもよいようです。

 



平成28年司法試験予備試験論文(刑法)答案練習

問題

以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。

 

1 甲(40歳,男性)と乙(35歳,男性)は,数年来の遊び仲間で,働かずに遊んで暮らしていた。甲は,住宅街にある甲所有の2階建て木造一軒家(以下「甲宅」という。)で一人で暮らしており,乙も,甲がそのような甲宅に一人で住んでいることを承知していた。乙は,住宅街にある乙所有の2階建て木造一軒家(以下「乙宅」という。)で内妻Aと二人で暮らしており,甲も,乙がそのような乙宅にAと二人で住んでいることを承知していた。甲宅と乙宅は,直線距離で約2キロメートル離れていた。

2 甲と乙は,某年8月下旬頃,働かずに遊びに使う金を手に入れたいと考え,その相談をした。そして,甲と乙は,同年9月1日に更に話合いをし,設定した時間に発火し,その火を周囲の物に燃え移らせる装置(以下「発火装置」という。)を製作し,これを使って甲宅と乙宅に放火した後,正当な請求と見せ掛けて,甲宅と乙宅にそれぞれ掛けてある火災保険の保険金の支払を請求して保険会社から保険金をだまし取り,これを折半することにした。その後,甲と乙は,二人でその製作作業をして,同月5日,同じ性能の発火装置2台(以下,それぞれ「X発火装置」,「Y発火装置」という。)を完成させた上,甲宅と乙宅に放火する日を,Aが旅行に出掛けて乙宅を留守にしている同月8日の夜に決めた。

3 Aは,同日昼,旅行に出掛けて乙宅を留守にした。

4 甲と乙は,同日午後7時,二人で,甲宅内にX発火装置を運び込んで甲宅の1階の居間の木製の床板上に置き,同日午後9時に発火するように設定した。その時,甲宅の2階の部屋には,甲宅内に勝手に入り込んで寝ていた甲の知人Bがいたが,甲と乙は,Bが甲宅にいることには気付かなかった。
 その後,甲と乙は,同日午後7時30分,二人で,乙宅の敷地内にあって普段から物置として使用している乙所有の木造の小屋(以下「乙物置」という。)内にY発火装置を運び込んで,乙物置内の床に置かれていた,洋服が入った段ボール箱(いずれも乙所有)上に置き,同日午後9時30分に発火するように設定した。なお,乙物置は,乙宅とは屋根付きの長さ約3メートルの木造の渡り廊下でつながっており,甲と乙は,そのような構造で乙宅と乙物置がつながっていることや,乙物置及び渡り廊下がいずれも木造であることを承知していた。
 その後,甲と乙は,乙宅の敷地内から出て別れた。

5 甲宅の2階の部屋で寝ていたBは,同日午後8時50分に目を覚まし,甲宅の1階の居間に行ってテレビを見ていた。すると,X発火装置が,同日午後9時,設定したとおりに作動して発火した。Bは,その様子を見て驚き,すぐに甲宅から逃げ出した。その後,X発火装置から出た火は,同装置そばの木製の床板に燃え移り,同床板が燃え始めたものの,その燃え移った火は,同床板の表面の約10センチメートル四方まで燃え広がったところで自然に消えた。なお,甲と乙は,終始,Bが甲宅にいたことに気付かなかった。

6 Y発火装置は,同日午後9時30分,設定したとおりに作動して発火した。乙は,その時,乙宅の付近でうろついて様子をうかがっていたが,Y発火装置の発火時間となって,「このままだと自分の家が燃えてしまうが,やはりAには迷惑を掛けたくない。それに,その火が隣の家に燃え移ったら危ないし,近所にも迷惑を掛けたくない。こんなことはやめよう。」と考え,火を消すために乙物置内に入った。すると,Y発火装置から出た火が同装置が置いてある前記段ボール箱に燃え移っていたので,乙は,乙物置内にある消火器を使って消火活動をし,同日午後9時35分,その火を消し止めた。乙物置内で燃えたものは,Y発火装置のほか,同段ボール箱の一部と同箱内の洋服の一部のみで,乙物置には,床,壁,天井等を含め火は燃え移らず,焦げた箇所もなかった。また,前記渡り廊下及び乙宅にも,火は燃え移らず,焦げた箇所もなかった。

7 その後,甲と乙は,甲宅と乙宅にそれぞれ掛けてある火災保険の保険金を手に入れることを諦め,保険会社に対する保険金の支払の請求をしなかった。

 

 

練習答案

以下刑法については条数のみを示す。

第1 共犯(共同正犯、60条)
 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする(60条)。このように犯罪の一部実行であっても正犯として責任を問うのは、共同することにより犯罪の実行が容易になるからである。共同して犯罪を実行したと言うためには犯罪行為についての意思連絡が必要である。本件では放火の罪と詐欺罪の成否が問題となり得るところ、その双方の犯罪行為について甲と乙は意思の連絡をしている。そして発火装置の製作及び設置を共同して行っている。よって上記の犯罪が成立するとすれば、甲と乙は共同正犯(60条)となる。

第2 詐欺罪(246条)
 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する(246条1項)。甲も乙も保険会社に対する保険金の支払いの請求をしなかったので欺もう行為に着手していない。よって詐欺罪の実行行為に着手していないため、本罪は不成立である。

第3 放火の罪
 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物(中略)を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する(108条)。放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物(中略)を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する(109条1項)。
 (1)現住性
 108条の「現に人が住居に使用し」というのは人がそこで食事をとったり寝たりすることを指している。旅行などで一時的にたまたまそこにいなかったとしてもこの現住性は否定されない。よって乙宅に関してはAが現住していると言えるので、108条の客体となる。他方で108条の「人」とは放火犯人以外の人だと解釈するのが適当である。犯人自身は保護法益に含まれないと考えるのが自然だからである。すると甲宅に関しては108条ではなく109条の客体となる。先に述べたように甲及び乙は共同正犯なので、一体として考える(乙にとっても109条の客体である)。甲宅は甲所有であるが火災保険が掛けられてあるので「自己の所有に係る」(109条2項)とは言えないので、109条1項の客体となる。
 (2)建造物
 甲宅の居間は当然に建造物である。乙物置については、長さ約3メートルの木造の渡り廊下で乙宅とつながっているので、構造上一体となって建造物となる。
 (3)放火
 某年8月5日に発火装置2台を完成させた時点で、108条及び109条1項の予備罪(113条)が成立する。
 その後、同月8日のそれぞれ午後7時、7時30分に甲宅の1階の居間の木製の床板上及び乙物置内に発火装置を置いた時点で、放火するという実行行為に着手している。発火装置が作動して発火するのがその数時間後だとしても、発火装置を置くだけで焼損の危険は大きいので、その時点で実行の着手だと判断すべきである。
 (4)焼損
 108条及び109条の焼損とは、損壊せずに建造物から取り外せない物が独立して燃焼することであると判例では解されている。甲宅1階の居間の木製の床板が燃え始めて表面の約10センチメートル四方まで燃え広がっているので、上記の基準から焼損したと言える。乙物置内で燃えたものは、Y発火装置のほか、段ボール箱の一部と同箱内の洋服の一部のみであり、これらは損壊せずとも建造物から取り外せるものなので、焼損したとは言えない。
 (5)故意
 甲宅には客観的にはBという人がいたが、甲乙ともにそのことを認識していなかったので、108条ではなく109条1項を適用する。
 (6)中止犯
 自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する(43条後段)。乙はAや近所に迷惑を掛けたくないという自己の意思により、消火活動をして乙物置の火を消し止めた。中止したと言えるためには実行の着手後は発生した危険を除去しなければならないが、乙はそうしたと言える。
 中止犯は責任に関する規定なので、共同正犯であっても個別に作用する。

第4 結論
 甲及び乙には、甲宅の放火につき109条1項の非現住建造物等放火罪の既遂が、乙宅の放火につき、108条の現住建造物放火罪の未遂が成立し、これらは併合罪となる。甲宅と乙宅は約2キロメートル離れていることからしても別の罪である。そして乙には中止犯による減軽又は免除がある。

以上

 

 

 

修正答案

以下刑法については条数のみを示す。

第1 共犯(共同正犯、60条)
 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする(60条)。このように犯罪の一部実行であっても正犯として責任を問うのは、共同することにより犯罪の実行が容易になるからである。共同して犯罪を実行したと言うためには犯罪行為についての意思連絡が必要である。本件では放火の罪と詐欺罪の成否が問題となり得るところ、その双方の犯罪行為について甲と乙は意思の連絡をしている。そして発火装置の製作及び設置を共同して行っている。よって上記の犯罪が成立するとすれば、甲と乙は共同正犯(60条)となる。

第2 詐欺罪(246条)
 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する(246条1項)。甲も乙も保険会社に対する保険金の支払いの請求をしなかったので欺罔行為に着手していない。よって詐欺罪の実行行為に着手していないため、本罪は不成立である。

第3 放火の罪
 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物(中略)を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する(108条)。放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物(中略)を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する(109条1項)。
 (1)現住性
 108条の「現に人が住居に使用し」というのは人がそこで起臥寝食の場所として日常使用していることを指している。旅行などで一時的にたまたまそこにいなかったとしてもこの現住性は否定されない。よって乙宅に関してはAが現住していると言えるので、108条の客体となる。他方で108条の「人」とは放火犯人以外の人だと解釈するのが適当である。犯人自身は保護法益に含まれないと考えるのが自然だからである。すると甲宅に関しては108条ではなく109条の客体となる(客観的にはBという人が甲宅にはいたわけであるが、そのことについては故意という項目で述べる)。先に述べたように甲及び乙は共同正犯なので、一体として考える(乙にとっても109条の客体である)。甲宅は甲所有であるが火災保険が掛けられてあるので「自己の所有に係る」(109条2項)とは言えないので、109条1項の客体となる。
 (2)建造物
 甲宅の居間は当然に建造物である。乙物置については、長さ約3メートルの木造の渡り廊下で乙宅とつながっているので、構造上一体となって建造物となる。
 (3)放火
 某年8月5日に発火装置2台を完成させた時点で、108条及び109条1項の予備罪(113条)が成立する。
 その後、同月8日のそれぞれ午後7時、7時30分に甲宅の1階の居間の木製の床板上及び乙物置内に発火装置を置いた時点で、放火するという実行行為に着手している。発火装置が作動して発火するのがその数時間後だとしても、発火装置を置くだけでその後に障害となるような事情も見当たらず焼損の危険は大きいので、その時点で実行の着手だと判断すべきである。
 (4)焼損
 108条及び109条の焼損とは、損壊せずに建造物から取り外せない物が独立して燃焼することであると判例では解されている。甲宅1階の居間の木製の床板が燃え始めて表面の約10センチメートル四方まで燃え広がっているので、上記の基準から焼損したと言える。乙物置内で燃えたものは、Y発火装置のほか、段ボール箱の一部と同箱内の洋服の一部のみであり、これらは損壊せずとも建造物から取り外せるものなので、焼損したとは言えない。
 (5)故意
 甲宅には客観的にはBという人がいたが、甲乙ともにそのことを認識していなかったので、108条ではなく109条1項を適用する。このような抽象的事実の錯誤に関しては、構成要件が重なりあう部分で軽いほうの罪についての故意を認めるのが判例の立場である。108条と109条1項とでは構成要件が重なっており、109条1項のほうの罪が軽い。
 (6)中止犯
 自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する(43条後段)。乙はAや近所に迷惑を掛けたくないという自己の意思により、消火活動をして乙物置の火を消し止めた。中止したと言えるためには実行の着手後は結果の発生を防止するための積極的行為をしなければならないが、乙はそうしたと言える。
 中止犯は責任に関する規定なので、共同正犯であっても個別に作用する。

第4 結論
 甲及び乙には、甲宅の放火につき109条1項の非現住建造物等放火罪の既遂が、乙宅の放火につき、108条の現住建造物放火罪の未遂が成立し、これらは併合罪となる。甲宅と乙宅は約2キロメートル離れていることからしても別の罪である。そして乙には中止犯による減軽又は免除がある。

以上

 

感想

まずまず論点を拾えたかなという感触がありました。

 



平成28年司法試験予備試験論文(行政法)答案練習

問題

 株式会社X(代表取締役はA)は,Y県で飲食店Bを経営しているところ,平成28年3月1日,B店において,Xの従業員Cが未成年者(20歳未満の者)であるDら4名(以下「Dら」という。)にビールやワイン等の酒類を提供するという事件が起きた。
 Y県公安委員会は,Xに対し,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法」という。【資料1】参照。)第34条第2項に基づく営業停止処分をするに当たり,法第41条及び行政手続法所定の聴聞手続を実施した。聴聞手続においては,以下のとおりの事実が明らかになった。

① 未成年者の飲酒に起因する事故等が社会的な問題となり,飲食店業界においても,未成年者の飲酒防止のために積極的な取組が行われているところ,B店では,未成年者に酒類を提供しないよう,客に自動車運転免許証等を提示させて厳格に年齢確認を実施していた。
② 事件当日には,未成年者であるDらとその友人の成年者であるEら4名(以下「Eら」という。)が一緒に来店したために,Cは,Dらが未成年者であることを確認した上で,DらのグループとEらのグループを分けて,それぞれ別のテーブルに案内した。
③ Cは,Dらのテーブルには酒類を運ばないようにしたが,二つのテーブルが隣接していた上に,Cの監視が行き届かなかったこともあって,DらはEらから酒類を回してもらい,飲酒に及んだ。
④ その後,B店では,このような酒類の回し飲みを防ぐために,未成年者と成年者とでフロアを分けるといった対策を実施した。

 聴聞手続に出頭したAも,これらの事実について,特に争うところはないと陳述した。その後,聴聞手続の結果を受けて,Y県公安委員会は,法第34条第2項に基づき,Xに対し,B店に係る飲食店営業の全部を3か月間停止することを命じる行政処分(以下「本件処分」という。)をした。
 その際,本件処分に係る処分決定通知書には,「根拠法令等」として「法第32条第3項,第22条第6号違反により,法第34条第2項を適用」,「処分の内容」として「平成28年5月1日から同年7月31日までの間(3か月間),B店に係る飲食店営業の全部の停止を命ずる。」,「処分の理由」として,「Xは,平成28年3月1日,B店において,同店従業員Cをして,Dらに対し,同人らが未成年者であることを知りながら,酒類であるビール及びワイン等を提供したものである。」と記されてあった。
 Y県公安委員会は,「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基準」(以下「本件基準」という。【資料2】参照)を定めて公表しているところ,本件基準によれば,未成年者に対する酒類提供禁止違反(法第32条第3項,第22条第6号)の量定は「Bランク」であり,「40日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は,3月。」と定められていた(本件基準1,別表[飲食店営業]〈法(中略)の規定に違反する行為〉(10))。
 Aは,処分決定通知書を本件基準と照らし合わせてみても,どうしてこのように重い処分になるのか分からないとして,本件処分に強い不満を覚えるとともに,仮に,B店で再び未成年者に酒類が提供されて再度の営業停止処分を受ける事態になった場合には,本件基準2の定める加重規定である「最近3年間に営業停止命令を受けた者に対し営業停止命令を行う場合の量定は,(中略)当該営業停止命令の処分事由について1に定める量定の長期及び短期にそれぞれ最近3年間に営業停止命令を受けた回数の2倍の数を乗じた期間を長期及び短期とする。」が適用され,Xの経営に深刻な影響が及ぶおそれがあるかもしれないことを危惧した。
 そこで,Xは,直ちに,Y県を被告として本件処分の取消訴訟を提起するとともに,執行停止の申立てをしたが,裁判所は「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」とは認められないとして,この申立てを却下した。
 Xの立場に立って,以下の設問に答えなさい。
 なお,法の抜粋を【資料1】,本件基準の抜粋を【資料2】として掲げるので,適宜参照しなさい。

 

〔設問1〕
 本件処分の取消訴訟の係属中に営業停止期間が満了した後には,いかなる訴訟要件が問題となり得るか。また,当該訴訟要件が満たされるためにXはどのような主張をすべきか,想定されるY県の反論を踏まえつつ検討しなさい。

 

〔設問2〕
 本件処分の取消訴訟につき,本案の違法事由としてXはどのような主張をすべきか,手続上の違法性と実体上の違法性に分けて,想定されるY県の反論を踏まえつつ検討しなさい。なお,本件処分について行政手続法が適用されること,問題文中の①から④までの各事実については当事者間に争いがないことをそれぞれ前提にすること。

 

【資料1】
○ 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 す る 法 律 ( 昭 和 2 3 年 法 律 第 1 2 2 号 )
( 抜 粋 )
(禁止行為)
第22条 風俗営業を営む者は,次に掲げる行為をしてはならない。
一~五 (略)
六 営業所で二十歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。
(深夜における飲食店営業の規制等)
第32条
1・2 (略)
3 第22条(第3号を除く。)の規定は,飲食店営業を営む者について準用する。(以下略)
(指示等)
第34条
1 (略)
2 公安委員会は,飲食店営業者〔(注)「飲食店営業者」とは,「飲食店営業を営む者」をいう。〕若しくはその代理人等が当該営業に関し法令(中略)の規定に違反した場合において,(中略)少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき(中略)は,当該飲食店営業者に対し,当該施設を用いて営む飲食店営業について,6月を超えない範囲内で期間を定めて営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
(聴聞の特例)
第41条 公安委員会は,(中略)第34条第2項,(中略)の規定により営業の停止を(中略)命じようとするときは,行政手続法 (平成5年法律第88号)第13条第1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず,聴聞を行わなければならない。
2~4(略)

 

【資料2】
○ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基準(抜粋)
[飲食店営業]
(量定)
1 営業停止命令の量定の区分は,次のとおりとし,各処分事由に係る量定は,別表に定めるところによるものとする。
Aランク 6月の営業停止命令。
Bランク 40日以上6月以下の営業停止命令。基準期間は3月。
Cランク~H3ランク (略)
(常習違反加重)
2 最近3年間に営業停止命令を受けた者に対し営業停止命令を行う場合の量定は,その処分事由に係る量定がAランクに相当するときを除き,当該営業停止命令の処分事由について1に定める量定の長期及び短期にそれぞれ最近3年間に営業停止命令を受けた回数の2倍の数を乗じた期間を長期及び短期とする。ただし,その長期は,法定の期間を超えることができない。
(営業停止命令に係る期間の決定)
3 営業停止命令により営業の停止を命ずる期間は,次のとおりとする。
(1) 原則として,量定がAランクに相当するもの以外のものについて営業停止命令を行う場合は,1に定める基準期間(2に規定する場合は当該処分事由について定められた基準期間の2倍の期間を基準期間とする。)によることとする。
(2) 量定がAランクに相当するもの以外のものについて営業停止命令を行う場合において次に掲げるような処分を加重し,又は軽減すべき事由があるときは,(1)にかかわらず,情状により,1に定める量定の範囲内において加重し,又は軽減するものとする。
ア 処分を加重すべき事由とは,例えば,次のようなものである。
(ア) 最近3年間に同一の処分事由により行政処分に処せられたこと。
(イ) 指示処分の期間中にその処分事由に係る法令違反行為と同種の法令違反行為を行ったこと。
(ウ) 処分事由に係る行為の態様が著しく悪質であること。
(エ) 従業者の大多数が法令違反行為に加担していること。
(オ) 悔悛の情が見られないこと。
(カ) 付近の住民からの苦情が多数あること。
(キ) 結果が重大であり,社会的反響が著しく大きいこと。
(ク) 16歳未満の者の福祉を害する法令違反行為であること。
イ 処分を軽減すべき事由とは,例えば,次のようなものである。
(ア) 他人に強いられて法令違反行為を行ったこと。
(イ) 営業者(法人にあっては役員)の関与がほとんどなく,かつ,処分事由に係る法令違反行為を防止できなかったことについて過失がないと認められること。
(ウ) 最近3年間に処分事由に係る法令違反行為を行ったことがなく,悔悛の情が著しいこと。
(エ) 具体的な営業の改善措置を自主的に行っていること。
(3) 量定がAランクに相当するもの以外のものについて,処分を軽減すべき事由が複数あり,営業停止処分を行うことが著しく不合理であると認められるときは,(1)(2)にかかわらず,営業停止処分を行わないこととする。

 

別表(抜粋)
[飲食店営業]
<法若しくは法に基づく命令又は法に基づく条例の規定に違反する行為>
(10) 未成年者に対する酒類・たばこ提供禁止違反(第32条第3項,第22条第6号)の量定 Bランク

 

 

練習答案

以下行政手続法を行手法、行政事件訴訟法を行訴法と表記する。

[設問1]
 本件処分の取消訴訟の係属中に営業停止期間が満了した後には、「当該処分(中略)の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分(中略)の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分(中略)の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)」(行訴法9条1項)という訴えの利益の訴訟要件が問題となり得る。
 この訴訟要件が満たされるために、Xは、本件処分が取消されると本件基準2の定める常習違反過重が適用されなくなるという法律上の利益を有すると主張すべきである。
 この主張に対しては、法34条2項に基づく営業停止処分にはY県の効果裁量があり、Xには回復すべき法律上の利益はないというY県の反論が想定される。
 この反論に対しては、Y県の効果裁量があるとしても、それは限りなく小さく、それを考慮してもなお回復すべき法律上の利益はあると再反論できる。というのも、本件基準2の常習違反過重を適用するかどうかには文言からして裁量がなく、原則としてランクに応じた基準期間によることになり(本件基準3)、常習違反過重でその基準期間も2倍になるからである。各ランクの上限も2倍になってしまう。Y県に裁量があるといっても、違反行為の類型により自動的にランクが決まり、そのランクの上限期間を超えることはできない。
 以上より、訴えの利益という訴訟要件を検討した上でも、Xは訴訟要件を満たす。

[設問2]
第1 手続上の違法性
 Xは、聴聞を経てされる不利益処分の手続の違法を主張すべきである。「行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない」(行手法26条)。上記の参酌を十分にしていないとXは主張すべきである。Y県としては十分に参酌した上で本件処分をしたと反論するであろうが、後述するように①〜④の内容が本件聴聞に現れていたのであり、これらを前提とすると本件処分の内容は違法なので、やはり十分に参酌していないのではないかとXは主張できる。
第2 実体上の違法性
 Xは、本件処分につきY件の裁量の逸脱・濫用があったと主張すべきである。具体的には、本件基準3(2)柱書に「量定がAランクに相当するもの以外のものについて営業停止処分を行う場合において次に掲げるような処分を加重し、又は軽減すべき事由があるときは、(1)にかかわらず、情状により、1に定める量定の範囲内において加重し、又は軽減するものとする」とある。この文言は「軽減することができる」ではなく「軽減するものとする」なのでここに裁量はない。そして本件では同項アの加重事由は見当たらず、イの軽減事由が複数ある。①〜③よりXの役員の関与がほとんどなく、年齢確認や別テーブルへの案内などをしていたので未成年者への酒類提供という違反行為を防止できなかったことについて過失がないと認められるので、同項(イ)に該当する。また、④より具体的な営業の改善措置を自主的に行っているので、同項(エ)に該当する。それにもかかわらず、本件処分ではBランクの基準期間を軽減せずにそのまま適用しているので、裁量を逸脱・濫用しているので違法である。Y県はBランクに定める期間内であり、そもそも本件基準は行政内部の基準にすぎないと反論するだろう。しかし本件基準は公表されているものであり、それへの信頼も保護しなければ行手法12条の趣旨が損なわれてしまうので、特段の事情のない限り公表した基準に従わなければならないと再反論できる。

 

以上

 

 

修正答案

以下行政手続法を行手法、行政事件訴訟法を行訴法と表記する。

[設問1]
 本件処分の取消訴訟の係属中に営業停止期間が満了した後には、「当該処分(中略)の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分(中略)の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分(中略)の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)」(行訴法9条1項)という狭義の訴えの利益の訴訟要件が問題となり得る。
 この訴訟要件が満たされるために、Xは、本件処分が取消されると本件基準2の定める常習違反過重が適用されなくなるという法律上の利益を有すると主張すべきである。
 この主張に対しては、常習違反過重が適用されなくなるというのはあくまでも行政の内部文書である本件基準においての話であり、これは法律上の利益ではないというY県の反論が想定される。
 この反論に対しては、本件基準は公表されているものであり、それへの信頼も保護しなければ行手法12条の趣旨が損なわれてしまうので、特段の事情のない限り公表した基準に従わなければならないと再反論できる。行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的としており(行手法1条)、その一環で行手法12条1項2項で不利益処分の処分基準が事前に具体的にわかるようにされているのである。となると本件基準は法と一体となってA市を拘束するので、そこに規定されている常習違反過重が適用されなくなるということは法律上の利益に該当する。
 さらに、本件基準2の常習違反過重を適用するかどうかには文言からして裁量がなく、原則としてランクに応じた基準期間によることになり(本件基準3)、常習違反過重でその基準期間も2倍になることに加え、各ランクの上限も2倍になってしまう。Y県に裁量があるとしても、違反行為の類型により自動的にランクが決まり、そのランクの上限期間を超えることはできない。
 以上より、狭義の訴えの利益という訴訟要件を検討した上でも、Xは訴訟要件を満たす。

[設問2]
第1 手続上の違法性
 Xは、不利益処分の理由の提示の不備を主張すべきである。「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない」(行手法14条1項前段)と規定されている。これは名あて人が不服申立てをする際の便宜を図ると同時に、客観的に理由が明らかになることを求めることで行政運営における公正の確保と透明性の向上を目指すものでもある。それゆえ書面での提示も求められている(同条3項)。この趣旨からすると、そこでの理由の提示は名あて人にとっても第三者にとっても十分明らかである程度でなければならない。
 Y県は、十分な理由を書面で示したと反論するだろう。しかし「Xは,平成28年3月1日,B店において,同店従業員Cをして,Dらに対し,同人らが未成年者であることを知りながら,酒類であるビール及びワイン等を提供したものである。」という記載だけではBランクに該当することは明らかであるものの、そのランク内でどのような処分の量定になるかはわからない。よって理由の提示に不備があると言える。
 また、Y県は、仮に理由の提示に不備があったとしても、Xは実際に聴聞に参加して処分の量定の詳細を知っていたのであるし、処分後には取消訴訟に及んでいるのだから、理由不備の瑕疵は治癒されたとの反論もするかもしれない。しかし、Xの主張のところで述べたように、理由の提示が名あて人だけでなく第三者にもわかるようにすることで行政運営の公正と透明性を担保しようとしているので、名あて人がたまたま理由の詳細を知っていたとしても違法であることに変わりはない。
第2 実体上の違法性
 Xは、本件処分につきY件の裁量の逸脱・濫用があったと主張すべきである。具体的には、本件基準3(2)柱書に「量定がAランクに相当するもの以外のものについて営業停止処分を行う場合において次に掲げるような処分を加重し、又は軽減すべき事由があるときは、(1)にかかわらず、情状により、1に定める量定の範囲内において加重し、又は軽減するものとする」とある。この文言は「軽減することができる」ではなく「軽減するものとする」なのでここに裁量はない。そして本件では同項アの加重事由は見当たらず、イの軽減事由が複数ある。①〜③よりXの役員の関与がほとんどなく、年齢確認や別テーブルへの案内などをしていたので未成年者への酒類提供という違反行為を防止できなかったことについて過失がないと認められるので、同項(イ)に該当する。また、④より具体的な営業の改善措置を自主的に行っているので、同項(エ)に該当する。処分を軽減すべき事由が複数あれば営業停止処分を行わないこともあり得る(本件基準3(3))。Xに不利な情状も見当たらない。それにもかかわらず、本件処分ではBランクの基準期間を軽減せずにそのまま適用しているので、裁量を逸脱・濫用しているので違法である。Y県はBランクに定める期間内であり、そもそも本件基準は行政内部の基準にすぎないと反論するだろう。しかし[設問1]でも述べたように、本件基準は公表されているものであり、それへの信頼も保護しなければ行手法12条の趣旨が損なわれてしまうので、特段の事情のない限り公表した基準に従わなければならないと再反論できる。そしてそのような特段の事情は見受けられない。

以上

 

感想

[設問2]の手続上の違法性で理由の不備を書くことができませんでした。[設問1]と[設問2]の記述のすみ分けも悩ましいです。

 



平成28年司法試験予備試験論文(憲法)答案練習

問題

 次の文章を読んで,後記の〔設問〕に答えなさい。

 A市は,10年前に,少子化による人口減少に歯止めをかけるためA市少子化対策条例(以下「本件条例」という。)を制定し,それ以降,様々な施策を講じてきた。その一つに,結婚を希望する独身男女に出会いの場を提供したり,結婚相談に応じたりする事業(以下これらを「結婚支援事業」という。)を行うNPO法人等に対する助成があった。しかし,A市では,近年,他市町村に比べ少子化が急速に進行したため,本件条例の在り方が見直されることになった。その結果,本件条例は,未婚化・晩婚化の克服と,安心して家庭や子どもを持つことができる社会の実現を目指す内容に改正され,結婚支援事業を行うNPO法人等に対する助成についても,これまで十分な効果を上げてこなかったことを踏まえ,成婚数を上げることを重視する方向で改められた。これに伴い,助成の実施について定めるA市結婚支援事業推進補助金交付要綱も改正され,助成に際し,「申請者は,法律婚が,経済的安定をもたらし,子どもを生みやすく,育てやすい環境の形成に資することに鑑み,自らの活動を通じ,法律婚を積極的に推進し,成婚数を上げるよう力を尽くします。」という書面(以下「本件誓約書」という。)を提出することが新たに義務付けられた。
 結婚支援事業を行っているNPO法人Xは,本件条例の制定当初から助成を受けており,助成は活動資金の大部分を占めていた。しかし,Xは,結婚に関する価値観は個人の自由な選択に委ねるべきであるから,結婚の形にはこだわらない活動方針を採用しており,法律婚だけでなく,事実婚を望む者に対しても,広く男女の出会いの場を提供し,相談に応じる事業を行っていた。このため,Xは,改正後の本件条例に基づく助成の申請に際し,本件誓約書を提出できず,申請を断念したので,A市からの助成は受けられなくなった。
 そこで,Xは,A市が助成の要件として本件誓約書を提出させることは,自らの方針に沿わない見解を表明させるものであり,また,助成が受けられなくなる結果を招き,Xの活動を著しく困難にさせるため,いずれも憲法上問題があるとして,訴訟を提起しようとしている。

 

〔設問〕
 Xの立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,あなた自身の見解を述べなさい。なお,条例と要綱の関係及び訴訟形態の問題については論じなくてよい。

 

 

練習答案

以下日本国憲法については条数のみを示す。

第1 Xの立場からの憲法上の主張
 (1)思想及び良心の自由(19条)
 A市が助成の要件として本件誓約書を提出させることは、自らの方針に沿わない見解を表明させるものであり、思想及び良心の自由を侵害するので違憲である。
 (2)平等権(14条)
 本件誓約書の内容は、法律婚を不当に優遇するものであり、平等権に違反する。
 (3)職業選択の自由(22条1項)
 本件誓約書を提出できず、申請を断念したので、A市からの助成を受けられなくなったために結婚支援事業という営業ができなくなったので、職業選択の自由が侵害され違憲である。

第2 想定される反論((1)〜(3)は第1の(1)〜(3)に対応する)
 (1)
 本件誓約書の提出は、外面的な行為であり、思想及び良心の自由を侵害しない。
 (2)
 本件誓約書の内容は、法秩序といった社会的必要性から法律婚を優遇しているため正当であり、平等権に違反しない。
 (3)
 Xが勝手に申請を断念したのであり、自己責任である。Xの結婚支援事業を何ら制約していないので職業選択の自由を侵害していない。

第3 私自身の見解((1)〜(3)は第1の(1)〜(3)に対応する)
 (1)
 本件誓約書を提出させることは思想及び良心の自由を侵害しないと私は考える。
 思想及び良心の自由は、その人の内面にとどまる限り、絶対的に保障される。しかし外面的な行為は、そこに思想及び良心が現れている可能性があるとはいえ、絶対的に保障されるものではない。例えば、裁判所による謝罪広告の強制は、思想及び良心の自由を侵害するものではないという判例がある。
 本件誓約書は、謝罪広告と同様に、文言が定型的であり特に何らかの思想を強く打ち出すものではない。そこでは法律婚の推進が書かれているだけで事実婚がおとしめられているわけではない。Xとしても、これまで同様事実婚と法律婚の両方を推進するというスタンスから十分に受け入れ可能なものであると私には思われる。また、裁判所による謝罪広告の強制とは違って、強制されるものではなく自主的な申請に伴うものである。これは違憲ではないという方向に作用する。
 (2)
 平等権に関しては、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」という14条に列挙されているものに基づく差別的取扱いについては違憲の推定が働くとしても、本件では法律婚と事実婚という区別なので、列挙されている項目ではない。法律婚と事実婚は生まれつき決まっているものでもなく、その人の意思により選べる。よってその区別に合理性があれば違憲ではない。民法その他の規定を見てもわかるように、法律婚を優遇することは法秩序から要請される合理的な区別である。よって違憲ではない。
 また、本件ではXが法律婚であるか事実婚であるかは問われておらず、Xの事業の対象となる不特定の第三者の平等に関わっている。
 (3)
 営業の自由は職業選択の自由に含まれると解されている。その点でXの主張は正当である。
 しかし、本件ではXによる結婚支援事業が禁止されるといったことはなく、助成金が受けられなくなるという制約に過ぎない。助成金を受ける権利があるわけではない。申請者が多数いれば抽選や何らかの基準で選ばれる。確かにXは10年前から本件助成を受けてきたので、その地位を保障すべきだとも考えられる。それでも助成金という性質上、財政事情その他の変化により中止されたり縮小されたり変更されたりすることは当然に予定されているので、内在的な制約であり、Xは受忍すべきである。よってこの点からも違憲ではない。

以上

 

 

修正答案

以下日本国憲法については条数のみを示す。

第1 Xの立場からの憲法上の主張
 (1)消極的表現の自由(21条1項)
 A市が助成の要件として本件誓約書を提出させることは、自らの方針に沿わない見解を表明させるものであり、消極的表現の自由を侵害するので違憲である。
 (2)結社の自由(21条1項)
 本件誓約書を提出できず、申請を断念したので、A市からの助成を受けられなくなったために、Xは活動資金の大部分を失い存続の危機に瀕している。これは結社の自由への侵害であり、違憲である。

第2 想定される反論((1)〜(2)は第1の(1)〜(2)に対応する)
 (1)
 本件誓約書の提出は、形式的な行為であって表現ではないので、消極的表現の自由を侵害しない。
 (2)
 Xが勝手に申請を断念したのであり、自己責任である。そもそもXにA市から助成金を受ける権利はないので、Xの結社の自由を何ら制約していない。

第3 私自身の見解((1)〜(2)は第1の(1)〜(2)に対応する)
 (1)
 本件誓約書を提出させることは消極的表現の自由を侵害しないと私は考える。
 本件誓約書の提出が表現行為であるか否かが対立点となっている。およそどのような行為でもそこに表現を読み取ることができる。例えば人を殺す行為に来世での魂の救済という思想の表現を読み取ることも可能である。そのような表現を全て保障することは現実的でない。そこで21条1項で保障される表現とは、特定の思想を外部に向けて表明する行為に限定すべきである。
 本件誓約書の提出は、特定の思想を外部に向けて表明する行為ではないので、21条1項で保障される表現ではない。本件誓約書の内容からは法律婚の優遇という思想が読み取れるものの、全体としてはA市の結婚支援事業を推進しますという誓約であり、公表が予定されているものでもないので、その誓約書の提出が外部に向けた思想の表明であるとは言えない。一般人からすると、本件誓約書の提出は助成金の申請のための形式的な行為であると捉えられ、思想の表明であるとは受け取りがたい。また、裁判所による謝罪広告の強制とは違って、本件誓約書の提出は強制されるものではなく自主的な申請に伴うものである。これは違憲ではないという方向に作用する。
 (2)
 本件誓約書を提出できず、申請を断念したので、A市からの助成を受けられなくなったために、Xは活動資金の大部分を失い存続の危機に瀕していることからすると、本件誓約書の提出義務付けによりXの結社の自由が侵害されているように見える。
 しかし、本件ではXの活動が禁止されるといったことはなく、助成金が受けられなくなるという事実上の制約に過ぎない。Xに本来的に助成金を受ける権利があるわけではない。申請者が多数いれば抽選や何らかの基準で選ばれる。確かにXは10年前から本件助成を受けてきたので、その地位を保障すべきだとも考えられる。それでも助成金という性質上、財政事情その他の変化により中止されたり縮小されたり変更されたりすることは当然に予定されているので、内在的な制約であり、Xは受忍すべきである。よってこの点からも違憲ではない。

以上

 

感想

出題趣旨に書かれていた消極的表現の自由も結社の自由も思いつきませんでした。これらを修正した答案を作ってみましたが、これでよいのか自信がありません。

 



平成25年司法試験論文民事系第1問答案練習

問題

〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕の配点の割合は,3:4:3〕)
次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。

 


【事実】
1.甲土地は,平成22年5月当時,Aが所有しており,Aを所有権登記名義人とする登記がされていた。また,乙土地は,その頃,Bが所有しており,Bを所有権登記名義人とする登記がされていた。

2.Bは,医療機器の製造と販売を主たる事業としていたが,事業用の建物を賃貸して収益を得たいとも考えていた。Bは,事業用の建物を所有するのには甲土地が立地として適しているのに対し乙土地が必ずしも適さないことから,乙土地を売却処分して甲土地を取得したいと考え,Aとの間で甲土地の売買について交渉を試みた。この交渉において,Bは,Aに対し,代金を支払うための資金を乙土地の売却処分により調達する予定であることを説明し,Aは,その事情に理解を示すとともに,代金債務の担保として適当な連帯保証人を立てることを求めた。

3.この交渉の結果として,A及びBは,平成22年6月11日,代金を6000万円として甲土地をAがBに売る旨の契約を締結した。この契約においては,代金のうち1500万円は同月中にBがAに支払うこと,残代金4500万円の支払の期限は平成22年8月10日とすること並びに代金の全部が支払われた後に甲土地についての所有権の移転の登記及び甲土地の引渡しをするものとすることが約された。

4.また,保証人を立てることについて,Bは,Aに対し,Bの友人であるCを連帯保証人とすることを提案した。Bは,このことについてCの了解を得ていなかったが,Bと長く交友関係があったCに事情を説明すれば,甲土地を入手するためにCが協力をしてくれるものと想定していた。
 Aは,Bの提案を了承し,【事実】3の売買契約が締結された平成22年6月11日,A及びBは,Cがその売買契約に係る代金債務の連帯保証人になる旨の書面を作成した。その書面は,2通作成され,それらの内容は同じものである。すなわち,そこには,【事実】3の売買契約に基づきBが負う代金債務についてCが連帯して保証する旨が記され,A及びBが署名し,Bの署名には,BがCの代理人である旨が示されていた。A及びBは,この書面をそれぞれ1通ずつ持ち帰ることとした。Bは,この書面を作成する際,Cが連帯保証人になることについて,Cから代理権を授与されてはいないが,Cの追認を速やかに得たい,とAに説明した。

5.Bは,平成22年6月15日,Cと会い,Cに対し,【事実】4の連帯保証の書面を示し,その書面に記されているとおり,【事実】3の売買契約に基づきBが負う代金債務についてCが連帯して保証する旨の契約をしたこと,及び連帯保証人になることについてのCの追認を後日に得たいとAに告げたことを説明した。その上で,Bは,Cに対し,Cを連帯保証人にする旨の契約をしたことを認めて欲しい,と要請した。Cは,これを承諾して,その席からAに電話をし,連帯保証人になることに異存はない旨を告げた。

6.【事実】3の売買契約の代金のうち1500万円は,平成22年6月25日,BがAに支払った。しかし,残代金の支払のためにBが進めた乙土地の売却処分は実現しないまま,やがて平成22年8月10日が到来した。そこで,Aは,同月18日,Bに対し残代金4500万円を速やかに支払うよう求めるとともに,Cに対し同じ額の支払を求めた。
 これに対し,Cは,AC間の連帯保証契約は書面でされておらず,その効力を生じないからAの求めに応ずるつもりがないことを告げた。

 

〔設問1〕 【事実】1から6までを前提として,次の問いに答えなさい。
Aが,Cに対し,保証債務の履行を請求するには,どのような主張をする必要があるかを検討し,また,その主張に含まれる問題点を踏まえてその当否を論じなさい。

 

Ⅱ 【事実】1から6までに加え,以下の【事実】7から16までの経緯があった。
【事実】
7.その後,Bは,乙土地の売却について目途がついたことから,Aと話し合い,Aとの間において,【事実】3の売買契約の残代金を支払う期限を平成22年12月15日とすることに合意した。Bは,乙土地の売却処分によって得た資金を用い,平成22年12月10日,残代金をAに支払った。同日,甲土地はAからBへ引き渡され,また,同月18日,甲土地についてAからBへ売買を原因とする所有権の移転の登記がされた。

8.そこで,Bは,甲土地上に建物を建設するため,銀行であるD及び建設業を営む株式会社であるEと折衝を始めた。
 まず,建設資金の融資をBから要請されたDは,平成23年1月頃,甲土地及びその上に建設される建物について第1順位の抵当権の設定を受けることを条件として,Bに対し,建物の建設資金として8000万円を融資する旨の意向を示した。
 また,B及びEは,平成23年2月28日,Eが甲土地の上に建物を建設し,これに対する報酬としてBがEに1億3000万円を支払う旨の請負契約を締結した。

9.【事実】8の請負契約に基づき,Eは,甲土地上に建物を建設し,平成23年8月31日,Bに対し,この建物(以下「丙建物」という。)を引き渡した。同日,DはBに8000万円を貸し渡し,Bは,Bが別に用意した5000万円を加え,請負の報酬として1億3000万円をEに支払った。

10.また,DによるBへの金銭の貸渡しに係る消費貸借の返済条件は,毎月78万円の元利均等払で期間は10年とされた。また,この貸金の返済について2回の債務不履行がある場合にはBは期限の利益を失い,返済されていない額の全部を直ちにDに返済することも約された。
 そして,B及びDは,この消費貸借に基づく貸金債権を担保するため,平成23年8月31日,甲土地について抵当権を設定する旨の契約を締結した。これに基づき,同日,甲土地について,Dを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた。この抵当権に優先する担保権の登記はされていない。
 丙建物は,平成23年9月14日,Bを登記名義人とする所有権の保存の登記がされた。同日,B及びDは,上記の消費貸借に基づく貸金債権を担保するため,丙建物について抵当権を設定する旨の契約を締結し,これに基づき,Dを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた。この抵当権に優先する担保権の登記はされていない。

11.Bは,Fとの間において,平成23年10月1日,丙建物の1階部分について,コーヒーショップとして使用することを目的とし,賃料を月額40万円として,これをFに賃貸する旨の契約を締結した。この賃貸借契約においては,各月の賃料を前月の25日に支払うものとすることが約された。この賃貸借契約に基づき,同日,Bは,Fに対し丙建物の1階部分を引き渡した。

12.Bは,Gとの間において,平成23年11月1日,丙建物の2階部分について,学習塾として使用することを目的とし,賃料を月額30万円として,これをGに賃貸する旨の契約を締結した。この賃貸借契約においては,各月の賃料を前月の25日に支払うものとすることが約された。この賃貸借契約に基づき,同日,Bは,Gに対し丙建物の2階部分を引き渡した。

13.Fは,【事実】11の賃貸借契約の締結に当たり,丙建物の1階部分の内装について,飲食店の内装工事を専門とし,内装業を営むHに相談し,Bから丙建物の設計図を取り寄せるなどして,Hと共に内装の仕様及び施工方法を検討した。その上で,Fは,その検討結果の概要をBに説明し,それに従いHに内装工事を行わせることについてBの承諾を得た。これを受けて,Fは,平成23年10月3日,Hに内装工事を発注し,同月25日に工事が完了した。そこで,Fは,平成23年11月1日,丙建物の1階部分において,営業を始めた。

14.平成24年2月末頃,丙建物の1階部分で雨漏りが発生するようになった。

15.Fから雨漏りを防ぐ措置を求められたBは,Eに調査を依頼した。この調査の結果,【事実】13の工事の際にHが誤って丙建物の一部に亀裂を生じさせたことが雨漏りの原因であることが明らかとなった。

16.Bは,このままでは丙建物の維持に支障が生じると考え,Eに【事実】15の亀裂の修繕を発注し,その修繕の工事は,平成24年3月20日に完了した。そこで,Bは,それに対する報酬として100万円をEに支払った。このBがEに支払った報酬の額は,【事実】15の亀裂の修繕に要する工事の対価として,適正なものである。

 

〔設問2〕 【事実】1から16までを前提として,Bは,【事実】16においてEに支払った報酬に相当する金銭の支払をFに対し求めるために,どのような主張をすることが考えられるか。また,それに対し,Fは,どのような主張をすることが考えられるか。それぞれの主張の根拠を説明し,いずれの主張が認められるかを検討しなさい。

 

Ⅲ 【事実】1から16までに加え,以下の【事実】17及び18の経緯があった。
【事実】
17.その後,Bは,医療機器の製造販売の事業に失敗して,資金が不足するようになり,Dに対する平成24年6月分及び7月分の貸金の返済について遅滞が生じた。そこで,Dは,抵当権に基づく物上代位によって貸金の回収を図ることを考え,差し当たり丙建物の2階部分の賃料について,丙建物を目的とする【事実】10の抵当権に基づく物上代位による貸金の回収を始めることとした。また,丙建物の1階部分の賃料については,【事実】16の修繕費用をめぐる問題が解決してから,同様の手順を採ることを考えた。
 そこで,Dは,平成24年9月18日,抵当権に基づく物上代位権の行使として,BがGに対して有する賃料債権のうち,平成24年9月25日以降に弁済期が到来する同年10月分から平成25年9月分までについて差押えの申立てをした。この差押えに係る差押命令は,平成24年9月21日,B及びGに送達された。

18.この送達がされる前の平成24年9月初旬,大型で強い台風が襲い,丙建物の2階部分は,暴風のため窓が損傷し,外気が吹き込む状態となった。そのままでは丙建物の2階部分で児童や生徒に対し授業をすることにも支障が生ずるため,Gは,すぐにこの状況をBに知らせようとしたが,Bの所在を把握することができなかった。
 Gは,やむなくEに連絡を取って相談をし,E及びGは,平成24年9月8日,Eが丙建物の2階部分の修繕をし,それに対する報酬としてGがEに対し30万円を支払うことを約した。この報酬の額は,修繕に要する工事の対価として,適正なものである。翌9日にEがこの修繕を完了したことから,同日,Gは,Eに対し30万円を支払った。

 

〔設問3〕 【事実】1から18までを前提として,次の問いに答えなさい。
平成24年12月7日,Dは,同年10月分から同年12月分までの賃料(それぞれ同年9月25日,同年10月25日及び同年11月25日に弁済期が到来したもの)の合計額である90万円の支払をGに対して求めたが,Gは,【事実】18の報酬の相当額である30万円を差し引き,60万円のみを支払うと主張した。これに対して,Dは,「まず,Gが,報酬の相当額を支払うようBに対し請求する権利を有することについて,説明して欲しい。また,仮にそのような権利があるとしても,判例によれば,それと賃料債権を相殺することをもって,Dに対抗することはできないから,GはDに対して90万円全額の支払義務を負うはずである。」と反論した。Dが依拠する判例とは,下記に【参考】として示すものである。
 このDの反論を踏まえた上で,Gがどのような主張をしたらよいか,理由を付して説明しなさい。

 

【参考】
最高裁判所第三小法廷平成13年3月13日判決・最高裁判所民事判例集55巻2号363頁
〔事案の概要〕
 PがQに対して負う貸金債務を担保するため,Pが所有する建物について根抵当権が設定され,その登記がされた後,当該建物の1階部分について,Pを賃貸人とし,第三者Rを賃借人とする賃貸借契約が締結され,3150万円の保証金がRからPに預託された。
 その後,P及びRは,当該建物の1階部分について,それまでの賃貸借契約をいったん解約し,改めて賃料を月額33万円とする賃貸借契約を締結し,その際,保証金を330万円に減額した。その結果,Pは,Rに対し差額の2820万円の返還債務を負った。しかし,この返還債務をPが履行することができなかったため,PがRに対して負う保証金返還債務の一部については,以後3年間,RがPに対して負う賃料債務と,賃料支払期日ごとに対当額で相殺することがPR間で合意された。
 さらにその後,Qは,上記の根抵当権に基づく物上代位権の行使として,PがRに対して有する賃料債権のうち,差押命令送達時以降900万円に満つるまでのものを差し押さえ,差押命令がP及びRに送達された。
 そして,Qは,Rに対し,5か月分の賃料の支払を求めて訴えを提起したが,これに対して,Rは,Pとの相殺合意に基づく相殺を主張して争った。
 第1審及び第2審では,いずれもQが勝訴し,Rの上告を受けた最高裁判所は,次のとおり判示して上告を棄却する判決を言い渡した。

〔判旨〕
「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。」

 

 

練習答案

以下民法についてはその条数のみを記す。

[設問1]
 Aが、Cに対し、保証債務の履行を請求するには、当該保証契約の成立、主たる債務の存在、期限の到来の3つを主張する必要がある。事実3で示されているように甲土地をAがBに売る契約が締結されているので、BがAに代金を支払うという債務が存在している。同時履行の抗弁権は付着していない。そしてその債務の期限は平成22年8月10日であり、事実6の時点でその日は到来している。主たる債務は甲土地の売買の残代金4500万円である。
 このように、主たる債務の存在と期限の到来に関しては問題点がない。問題点があるのは保証契約に関してである。以下では論点別にそれらを検討する。
 1.代理
 本件保証契約はBがCを代理して締結された。しかもCから代理権を授与されていない無権代理である。ただ、事実5で示されているように、CがBの無権代理を追認し、それを相手方であるAに通知している。よって第113条により、本件保証契約はAとCの双方にとって効力を生じる。その効力は契約の時にさかのぼって生じる(第116条)。第三者の権利を害するという事情もない。
 2.書面
 事実6でCが主張しているように、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」(第446条第2項)。本件ではBがCを代理して締結した保証契約は書面でなされているが、その代理(無権代理)のCによる追認は口頭でなされている。この場合に、保証契約を書面でしたことになるかが問題となる。
 保証契約は書面でしなければその効力を生じないと規定されているのは保証人を保護する趣旨である。人間関係のしがらみから断りづらい状況で、主たる債務が返済されるだろうから大丈夫だと安易に保証契約を結んで効力が生じてしまわないようにするためである。本件がまさにそのよな状況である。確かにBがCを代理して締結した保証契約は書面でなされており、Cの追認によりこれが有効になってはいるが、Cが事実上の意思表示を行ったのは口頭であるから、上記の保証人を保護する趣旨からして本件の保証契約は書面でされているとは言えない。Aはこうした事情をすべて知っていたのだから、そうなっても酷ではない。AはCの追認を得てからそれを書面にすることもできたはずである。
 なお、本件保証契約は連帯保証契約なので、これが有効だとしたらCは催告の抗弁権(第452条)や検索の抗弁権(第453条)は有しない(第454条)。

 

[設問2]
 本件では、BがFとの間において、丙建物の1階部分について賃貸借契約を締結している。また、FはHに内装工事を行わせており、これはFH間での請負契約に基づいていると推測できる。よって本来であればFが瑕疵修補請求権(第634条第1項)を行使してHにその修補をさせるべきところである。しかしBが丙建物の維持に支障が生じると考え、Hとは別のEに修繕の工事を発注し、その適正な対価を支払った。これらの事情を前提にして、以下ではBとFの主張を検討する。
 1.Bの主張
 ①委任
 BはFから雨漏りを防ぐ措置を求められたので、それが準委任(第656条、第643条)だとして費用の償還請求(第650条第1項)をすると主張することが考えられる。
 ②事務管理
 ①の委任が成立していないとしてもBは事務管理(第697条)をしたので、その費用の償還請求(第702条第1項)をすると主張することが考えられる。雨漏りを防ぐ工事はFにとって有益である。
 ③不法行為
 Fが過失によりBが所有する丙建物を損壊したとして損害賠償を請求する(第709条第1項)を主張することが考えられる。ただし、注文者は、注文又は指図について注文者に過失があったときに限りその責任を負う(第716条)ので、そのこともあわせて主張しなければならない。
 2.Fの主張
 ①委任
 Fは賃貸人であるBに対して雨漏りを防ぐ措置を求めただけで、委任をした覚えはないと主張することが考えられる。
 ②事務管理
 Fは事務管理の通知を受けていない(第699条)と主張することが考えられる。また、そもそもBには雨漏りを修繕する義務があると主張することも考えられる。
 ③不法行為
 Fは注文者である自分の注文や指図に過失がなかったと主張することが考えられる。
 ④必要費(賃貸物の修繕等)
 Fはそもそもこの雨漏りを防ぐ修繕はBが行わなければならないと主張することが考えられる。その根拠は第606条である。
 3.結論
 委任又は事務管理によりBの主張が認められる。というのも、本件修繕義務はHにあるのであってBにはない。つまり必要費(賃貸物の修繕等)には該当しない。そうなると委任の成立が認められる場合は委任が、そうでない場合は事務管理が成立することになる。

 

[設問3]
 1.GのBに対する請求権
 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(第606条第1項)。本件では台風という自然現象で窓が損壊したので、他に義務を負担する者はいない。そして賃借人であるGが賃借物について賃貸人であるBの負担に属する必要費を支出したので、直ちにその償還を請求することができる(第608条第1項)。
 2.賃料債権との相殺
 Dの反論を踏まえて、Gは、参考の判例とは事案が異なるので、賃料債権を相殺することができると主張したらよい。
 参考の判例は、賃貸人と賃借人とがその合意によって賃借人の賃貸人に対する債権を発生させている。これは詐害的な行為である。よって無資力者からの債権回収という枠組みで処理されたのである。本件はそうではなく、相対的に劣位な賃借人固有の債権であり、他の債権と同列に並べるわけにはいかない。

 

修正答案

以下民法についてはその条数のみを記す。

[設問1]
 Aが、Cに対し、保証債務の履行を請求するには、当該保証契約の成立、主たる債務の存在、期限の到来の3つを主張する必要がある。事実3で示されているように甲土地をAがBに売る契約が締結されているので、BがAに代金を支払うという債務が存在している。そしてその債務の期限は平成22年8月10日であり、事実6の時点でその日は到来している。主たる債務は甲土地の売買の残代金4500万円である。
 このように、主たる債務の存在と期限の到来に関しては問題点がない。問題点があるのは保証契約に関してである。以下では論点別にそれらを検討する。
 1.代理
 本件保証契約はBがCを代理して締結された。しかもCから代理権を授与されていない無権代理である。ただ、事実5で示されているように、CがBの無権代理を追認し、それを相手方であるAに通知している。よって第113条により、本件保証契約はAとCの双方にとって効力を生じる。その効力は契約の時にさかのぼって生じる(第116条)。第三者の権利を害するという事情もない。
 2.書面
 事実6でCが主張しているように、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」(第446条第2項)。本件ではBがCを代理して締結した保証契約は書面でなされているが、その代理(無権代理)のCによる追認は口頭でなされている。この場合に、保証契約を書面でしたことになるかが問題となる。
 保証契約は書面でしなければその効力を生じないと規定されているのは、保証人の慎重で主体的な意思表示を要求することにより、保証人を保護する趣旨である。人間関係のしがらみから断りづらい状況で、主たる債務が返済されるだろうから大丈夫だと安易に保証契約を結んで効力が生じてしまわないようにするためである。本件がまさにそのよな状況である。確かにBがCを代理して締結した保証契約は書面でなされており、Cの追認によりこれが有効になってはいるが、Cが事実上の意思表示を行ったのは口頭であるから、上記の保証人を保護する趣旨からして本件の保証契約は書面でされているとは言えない。Aはこうした事情をすべて知っていたのだから、そうなっても酷ではない。AはCの追認を得てからそれを書面にすることもできたはずである。

 

[設問2]
 本件では、BがFとの間において、丙建物の1階部分について賃貸借契約を締結している。また、FはHに内装工事を行わせており、これはFH間での請負契約に基づいていると推測できる。よって本来であればFが瑕疵修補請求権(第634条第1項)を行使してHにその修補をさせるべきところである。しかしBが丙建物の維持に支障が生じると考え、Hとは別のEに修繕の工事を発注し、その適正な対価を支払った。これらの事情を前提にして、以下ではBとFの主張を検討する。
 1.Bの主張
 ①債務不履行
 Bは債務不履行(415条)を原因としてFに対して損害賠償請求を主張することが考えられる。
 ②事務管理
 Bは事務管理(第697条)をしたので、その費用の償還請求(第702条第1項)をすると主張することが考えられる。
 ③不法行為
 Fが過失によりBが所有する丙建物を損壊したとして損害賠償を請求する(第709条第1項)を主張することが考えられる。
 2.Fの主張
 ①債務不履行
 Fに債務不履行がないこと、仮にあったとしても帰責性がないことを主張することが考えられる。
 ②事務管理
 Fは事務管理の通知を受けていない(第699条)と主張することが考えられる。また、そもそもBには雨漏りを修繕する義務があると主張することも考えられる。
 ③不法行為
 Fは注文者である自分の注文や指図に過失がなかったので賠償責任を負わない(716条)と主張することが考えられる。
 3.主張の当否
 ①債務不履行
 「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」(415条前段)。同条後段の類推適用及び419条3項の反対解釈から、この債務不履行の損害賠償には債務者の帰責性が要求される。
 賃借人の一義的な債務は賃料の支払いであるが、賃貸借の性質から賃借物の保管義務も付随的な債務として認められる。よって、丙建物が毀損され、Fに帰責性があれば、BがFに対して債務不履行の損害賠償を請求することができる。
 本件においては、Hが誤って丙建物の一部に亀裂を生じさせたことが雨漏りという丙建物の毀損の原因であった。これがFの帰責性と言えるかが問題となる。HはFが選んだ内装業者であり、Fの履行補助者であると言える。確かにBはFがHに内装工事を行わせることを承諾しているが、Fが主導者であり、Bは受動的に承諾しているに過ぎない。HはFが選んだF側の人物である。実際、本件亀裂の修繕をBはHではなくEに依頼している。よってFの履行補助者であるHの帰責性はFの帰責性と同視することができる。Fは、Bから債務不履行の損害賠償を請求されたとしても、Hに求償をすることができる。HはBよりもFと近しい関係にあるので、BがHに賠償を請求すべきだとするよりも、FがHに求償すべきだとしたほうが合理的である。
 ②事務管理
 「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」(606条1項)ので、Bには本件雨漏りを修繕する義務がある。よって通知を検討する以前に事務管理には該当しない。
 ③不法行為
 本件雨漏りは、請負人であるHがその内装の仕事について第三者であるBに加えた損害である。よって716条が適用される。注文者であるFに過失があったとは認められないので、Fは賠償責任を負わない。
 ④結論
 以上より、債務不履行の損害賠償というBの主張が認められる。

 

[設問3]
 1.GのBに対する請求権
 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(第606条第1項)。暴風のため窓が損傷し、外気が吹き込む状態となり、そのままでは丙建物の2階部分で児童や生徒に対し授業をすることにも支障が生じている。よって、賃貸人Bは、賃借人Gが丙建物の2階部分の使用及び収益をするために必要な修繕をする義務を負う。そして賃借人であるGがこのBの負担に属する必要費を支出したので、直ちにその償還を請求することができる(第608条第1項)。
 2.賃料債権との相殺
 Dの反論を踏まえて、Gは、参考の判例とは事案が異なるので、賃料債権を相殺することができると主張したらよい。
 参考の判例は、貸金債務間の優劣は登記の先後で決するというルールを述べたものである。判例のように判断しないとRのような抜け駆けの債権回収を許すことになり、登記によって抵当権を公示する機能が骨抜きにされてしまう。PがRに負う債務は敷金返還債務であるが、当事者の合意により敷金という名目で金銭を貸し付けることは容易であるため、貸金債務と同視してもよい。
 他方で本件でBがGに対して負っている債務は必要費返還債務であり、貸金債務と同視することはできない。建物の効用を維持するためには速やかに使用及び収益に必要な修繕をすることが望ましく、必要費を立て替えてもすぐに返還されるという安心感を賃借人に与えて、賃貸人よりも先に修繕の必要性に気づくであろう賃借人に速やかに修繕をしてもらうことが合理的である。このような必要費返還請求権を貸金債権と同列に並べて登記の先後で優劣を決するべきではない。
 以上より、Gは上記の理由で30万円を差し引き,60万円のみを支払うと主張したらよい。

 

 

感想

[設問1]はよいとしても、[設問2]と[設問3]は全然わかっていませんでした。

 

 




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