浅野直樹の学習日記

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平成29(2017)年司法試験予備試験論文(行政法)答案練習

問題

 産業廃棄物の処分等を業とする株式会社Aは,甲県の山中に産業廃棄物の最終処分場(以下「本件処分場」という。)を設置することを計画し,甲県知事Bに対し,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第15条第1項に基づく産業廃棄物処理施設の設置許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。
 Bは,同条第4項に基づき,本件申請に係る必要事項を告示し,申請書類及び本件処分場の設置が周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類(Aが同条第3項に基づき申請書に添付したもの。以下「本件調査書」という。)を公衆の縦覧に供するとともに,これらの書類を踏まえて許可要件に関する審査を行い,本件申請が法第15条の2第1項所定の要件を全て満たしていると判断するに至った。
  しかし,本件処分場の設置予定地(以下「本件予定地」という。)の周辺では新種の高級ぶどうの栽培が盛んであったため,周辺の住民及びぶどう栽培農家(以下,併せて「住民」という。)の一部は,本件処分場が設置されると,地下水の汚染や有害物質の飛散により,住民の健康が脅かされるだけでなく,ぶどうの栽培にも影響が及ぶのではないかとの懸念を抱き,Bに対して本件申請を不許可とするように求める法第15条第6項の意見書を提出し,本件処分場の設置に反対する運動を行った。
 そこで,Bは,本件申請に対する許可を一旦留保した上で,Aに対し,住民と十分に協議し,紛争を円満に解決するように求める行政指導を行った。これを受けて,Aは,住民に対する説明会を開催し,本件調査書に基づき本件処分場の安全性を説明するとともに,住民に対し,本件処分場の安全性を直接確認してもらうため,工事又は業務に支障のない限り,住民が工事現場及び完成後の本件処分場の施設を見学することを認める旨の提案(以下「本件提案」という。)をした。
 本件提案を受けて,反対派住民の一部は態度を軟化させたが,その後,上記の説明会に際してAが,(ア)住民のように装ったA社従業員を説明会に参加させ,本件処分場の安全性に問題がないとする方向の質問をさせたり意見を述べさせたりした,(イ)あえて手狭な説明会場を準備し,賛成派住民を早めに会場に到着させて,反対派住民が十分に参加できないような形で説明会を運営した,という行為に及んでいたことが判明した。
 その結果,反対派住民は本件処分場の設置に強く反発し,Aが本件処分場の安全性に関する説明を尽くしても,円満な解決には至らなかった。他方で,建設資材の価格が上昇しAの経営状況を圧迫するおそれが生じていたことから,Aは,本件提案を撤回し,説明会の継続を断念することとし,Bに対し,前記の行政指導にはこれ以上応じられないので直ちに本件申請に対して許可をするように求める旨の内容証明郵便を送付した。
 これを受けて,Bは,Aに対し,説明会の運営方法を改善するとともに再度本件提案をすることにより住民との紛争を円満に解決するように求める行政指導を行って許可の留保を継続し,Aも,これに従い,月1回程度の説明会を開催して再度本件提案をするなどして住民の説得を試みたものの,結局,事態が改善する見通しは得られなかった。そこで,Bは,上記の内容証明郵便の送付を受けてから10か月経過後,本件申請に対する許可(以下「本件許可」という。)をした。
 Aは,この間も建設資材の価格が上昇したため,本件許可の遅延により生じた損害の賠償を求めて,国家賠償法に基づき,甲県を被告とする国家賠償請求訴訟を提起した。
 他方,本件予定地の周辺に居住するC1及びC2は,本件許可の取消しを求めて甲県を被告とする取消訴訟を提起した。原告両名の置かれている状況は,次のとおりである。C1は,本件予定地から下流側に約2キロメートル離れた場所に居住しており,居住地内の果樹園で地下水を利用して新種の高級ぶどうを栽培しているが,地下水は飲用していない。C2は,本件予定地から上流側に約500メートル離れた場所に居住しており,地下水を飲用している。なお,環境省が法第15条第3項の調査に関する技術的な事項を取りまとめて公表している指針において,同調査は,施設の種類及び規模,自然的条件並びに社会的条件を踏まえて,当該施設の設置が生活環境に影響を及ぼすおそれがある地域を対象地域として行うものとされているところ,本件調査書において,C2の居住地は上記の対象地域に含まれているが,C1の居住地はこれに含まれていない。
 以上を前提として,以下の設問に答えなさい。
 なお,関係法令の抜粋を【資料】として掲げるので,適宜参照しなさい。

〔設問1〕
 Aは,上記の国家賠償請求訴訟において,本件申請に対する許可の留保の違法性に関し,どのような主張をすべきか。解答に当たっては,上記の許可の留保がいつの時点から違法になるかを示すとともに,想定される甲県の反論を踏まえつつ検討しなさい。

〔設問2〕
 上記の取消訴訟において,C1及びC2に原告適格は認められるか。解答に当たっては,①仮に本件処分場の有害物質が地下水に浸透した場合,それが,下流側のC1の居住地に到達するおそれは認められるが,上流側のC2の居住地に到達するおそれはないこと,②仮に本件処分場の有害物質が風等の影響で飛散した場合,それがC1及びC2の居住地に到達するおそれの有無については明らかでないことの2点を前提にすること。

【資料】 ○ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)(抜粋)

(目的)
第1条 この法律は,廃棄物の排出を抑制し,及び廃棄物の適正な分別,保管,収集,運搬,再生,処分等の処理をし,並びに生活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
(産業廃棄物処理施設)
第15条 産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設,産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は,当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は,環境省令で定めるところにより,次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。
一~九 (略)
3 前項の申請書には,環境省令で定めるところにより,当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。(以下略)
4 都道府県知事は,産業廃棄物処理施設(中略)について第1項の許可の申請があつた場合には,遅滞なく,第2項(中略)に掲げる事項,申請年月日及び縦覧場所を告示するとともに,同項の申請書及び前項の書類(中略)を当該告示の日から1月間公衆の縦覧に供しなければならない。
5 (略)
6 第4項の規定による告示があつたときは,当該産業廃棄物処理施設の設置に関し利害関係を有する者は,同項の縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに,当該都道府県知事に生活環境の保全上の見地からの意見書を提出することができる。
(許可の基準等)
第15条の2 都道府県知事は,前条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ,同項の許可をしてはならない。
一 その産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準に適合していること。
二 その産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が当該産業廃棄物処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされたものであること。
三 申請者の能力がその産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画に従つて当該産業廃棄物処理施設の設置及び維持管理を的確に,かつ,継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
四 (略)
2~5 (略)

○ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)(抜粋)

(生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類)
第11条の2 法第15条第3項の書類には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 設置しようとする産業廃棄物処理施設の種類及び規模並びに処理する産業廃棄物の種類を勘案し,当該産業廃棄物処理施設を設置することに伴い生ずる大気質,騒音,振動,悪臭,水質又は地下水に係る事項のうち,周辺地域の生活環境に影響を及ぼすおそれがあるものとして調査を行つたもの(以下この条において「産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目」という。)
二 産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目の現況及びその把握の方法
三 当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響の程度を予測するために把握した水象,気象その他自然的条件及び人口,土地利用その他社会的条件の現況並びにその把握の方法
四 当該産業廃棄物処理施設を設置することにより予測される産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目に係る変化の程度及び当該変化の及ぶ範囲並びにその予測の方法
五 当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響の程度を分析した結果
六 大気質,騒音,振動,悪臭,水質又は地下水のうち,これらに係る事項を産業廃棄物処理施設生活環境影響調査項目に含めなかつたもの及びその理由
七 その他当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査に関して参考となる事項

 

再現答案

以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを記す。

〔設問1〕
 本件申請の根拠となっている廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)15条の2の文言は、「許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない」となっていて、「許可の申請が次の各号のいずれにも適合している認めるときは、同項の許可をしなければならない」ではないので、甲県知事Bには許可に関して裁量がある。
 その許可申請があれば、申請年月日や縦覧場所などを告示し、当該告示の日から1月間公衆の縦覧に供しなければならない(法15条4項)。そしてその縦覧期間終了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに、意見書を提出することができる(法15条6項)。本件においては、その意見書が提出されている。このように法に定められているのだから、この時点で許可の留保が違法となることはない。
 意見書の提出が予定されているということは、意見書の提出後に調整を行うことも当然に予定されている。その調整は、行政指導(行政手続法(以下「行手法」という。)第4章)で行うのが適切であり、本件でもそうされている。Aはしばらくの間その行政指導に任意で従っていて、その間は許可の留保が違法とはならない。
 しかし、Aは、行政指導にはこれ以上応じられないので直ちに本件申請に対して許可をするように求める旨の内容証明郵便を送付した。申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない(行手法33条)。本件の行政指導は、申請の内容の変更を求める行政指導である。甲県知事Bは行政指導に携わる者である。上記のようにAは当該行政指導に従う意思がない旨を表明した。よって、当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならなくなるので、この時点から許可の留保は違法となる。
 甲県としては、許可に関して裁量があるのだから、違法にはならないと反論するだろう。しかし行政指導に従わないことを考慮することは、行手法33条の規定を無に帰すこととなるので、他事考慮であり違法である。また、Aは内容証明郵便送付後も任意で行政指導に従っているではないかとの反論も考えられるが、内容証明郵便を送付するということは通常真しな意思の表示であるので、やはりこの時点から違法になる。

〔設問2〕
 C1及びC2は処分の直接の名あて人ではないので、9条2項に従って原告適格が判断される。これは、当該法令及び関係法令を参酌して、個別的な法律上の利益が保護されているのか、それとも一般公益に含まれるに過ぎないのかを判断するという趣旨である。
 当該法令である法の目的は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上である(法1条)。これだけでは漠然としていてはっきりとしないので、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という。)を参酌する。これは法の細部を規定するものであり、関係法令である。法15条3項の書類には、地下水について記載しなければならない(規則11条の2第1号)。C2の居住地は法15条3項の調査の対象内であり、その調査書類には地下水のことが書かれているはずである。そして仮に地下水に有害物質が混入すれば、地下水を飲用しているC2は生命や身体に危険が生じる。よってC2の利益は保護されるべき法律上の利益であると言えるので、原告適格が認められる。他方でC1の居住地はこの調査の対象外であり、C2は地下水を飲用しておらずぶどう栽培に使用しているだけなので、有害物質が混入したとしてもせいぜいが財産的な被害である。よってC1に原告適格は認められない。以上は地下水について述べたが、大気質でも同様である。よって①及び②の事実を前提としても結論は変わらない。つまり、法15条3項の調査の対象内であるかどうかと、危険にさられるのが生命・身体なのか財産なのかということが判断の分かれ目となる。

以上

修正答案

以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを記す。

〔設問1〕
 Aは、上記の国家賠償請求訴訟において、本件申請に対する許可の留保の違法性に関し、行政手続法33条に反し違法であると主張すべきである。
第1 申請者であるAが当該行政指導に従う意思がない旨を表明したかどうか
 この意思表明は真摯かつ明確なものであることが必要である(判例)。本件提案に基づいて、問題文から窺える限りでは最初の説明会の開催時までは、Aが本件行政指導に従う意思がない旨の表明はなかった。その後、Aは、Bに対し、本件行政指導にはこれ以上応じられないので直ちに本件申請に対して許可をするように求める旨の内容証明郵便を送付した。このように内容証明郵便を送付するということは、真摯かつ明確な意思表示である。よって、この時点で、申請者であるAが当該行政指導に従う意思がない旨を表明したと言える。
第2 特段の事情
 第1で述べたことを前提にすると、それ以後に、Bが、行政指導を継続し、許可の留保を継続した時点で、原則的には行政手続法33条に反して違法となる。しかしながら、行政指導の目的や必要性と行政指導を継続することにより申請者が被る不利益とを比較考量して、申請者に社会通念上正義の観念に反するような特段の事情があれば、例外的に違法とならない場合がある、とBは反論するだろう。そこで次に、その特段の事情について検討する。
 本件行政指導の目的は地域住民の健康などのために生活環境を守ることであり、それらが侵害されるという懸念から現に住民の間で反対運動が起こっているため、必要性もある。他方で申請者であるAが被る不利益は、資材価格高騰による財産的な損害である。そしてAには問題文(ア)、(イ)のような、本件行政指導に基づく説明会を無意味にするような社会通念上正義の観念に反する特段の事情があった。以上より、行政指導を継続して許可の留保を継続しても、例外的に違法とはならないと考えられる。

〔設問2〕
 9条1項の「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害されるおそれのある者のことであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、そのような利益も法律上保護された利益に当たる。そして、C1及びC2は、処分の名宛人ではないため、9条2項に沿って判断される。
 当該法令である廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)の目的は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上である(法1条)。この目的の中心は健康や生命であると解される。法15条3項では、調査書に周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付しなければならないと規定されている。よって、その調査対象となる周辺住民の健康や生命を中心とする生活環境は、個別的利益として保護すべきものとされていると言える。法の細部を規定するものであり関係法令である廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という。)を参酌すると、大気質や地下水などが生活環境に影響を及ぼすおそれのある事項として列挙されている(規則11条の2第1号)。
 C2の居住地は法15条3項の調査の対象内であり、地下水はそこに到達しないとのことであるが、大気質が到達するおそれがないとは言えない。よってC2の生命や健康といった利益は保護されるべき法律上の利益であると言えるので、原告適格が認められる。
 他方でC1の居住地はこの調査の対象外である。地下水がそこまで到達するおそれが認められるとのことであるが、C1は地下水を飲用しておらずぶどう栽培に使用しているだけなので、有害物質が混入したとしてもせいぜいが財産的な被害である。よってC1に原告適格は認められない。

以上

 



平成29(2017)年司法試験予備試験論文(憲法)答案練習

問題

次の文章を読んで,後記の〔設問〕に答えなさい。

 A県の特定地域で産出される農産物Xは,1年のうち限られた時期にのみ産出され,同地域の気 候・土壌に適応した特産品として著名な農産物であった。Xが特別に豊作になる等の事情があると, 価格が下落し,そのブランド価値が下がることが懸念されたことから,A県は,同県で産出される Xの流通量を調整し,一定以上の価格で安定して流通させ,A県産のXのブランド価値を維持し, もってXの生産者を保護するための条例を制定した(以下「本件条例」という。)。
 本件条例では,①Xの生産の総量が増大し,あらかじめ定められたXの価格を適正に維持できる 最大許容生産量を超えるときは,A県知事は,全ての生産者に対し,全生産量に占める最大許容生 産量の超過分の割合と同じ割合で,収穫されたXの廃棄を命ずる,②A県知事は,生産者が廃棄命 令に従わない場合には,法律上の手続に従い,県においてXの廃棄を代執行する,③Xの廃棄に起 因する損失については補償しない,旨定められた。
 条例の制定過程では,Xについて一定割合を一律に廃棄することを命ずる必要があるのか,との 意見もあったが,Xの特性から,事前の生産調整,備蓄,加工等は困難であり,迅速な出荷調整の 要請にかなう一律廃棄もやむを得ず,また,価格を安定させ,Xのブランド価値を維持するために は,総流通量を一律に規制する必要がある,と説明された。この他,廃棄を命ずるのであれば,一 定の補償が必要ではないか等の議論もあったが,価格が著しく下落したときに出荷を制限すること はやむを得ないものであり,また,本件条例上の措置によってXの価格が安定することにより,X のブランド価値が維持され,生産者の利益となり,ひいてはA県全体の農業振興にもつながる等と 説明された。
 20××年,作付け状況は例年と同じであったものの,天候状況が大きく異なったことから,X の生産量は著しく増大し,最大許容生産量の1.5倍であった。このため,A県知事は,本件条例 に基づき,Xの生産者全てに対し,全生産量に占める最大許容生産量の超過分の割合に相当する3 分の1の割合でのXの廃棄を命じた(以下「本件命令」という。)。
 甲は,より高品質なXを安定して生産するため,本件条例が制定される前から,特別の栽培法を 開発し,天候に左右されない高品質のXを一定量生産しており,20××年も生産量は平年並みで あった。また,甲は,独自の顧客を持っていたことから,自らは例年同様の価格で販売できると考 えていた。このため,甲は,本件命令にもかかわらず,自らの生産したXを廃棄しないでいたとこ ろ,A県知事により,甲が生産したXの3分の1が廃棄された。納得できない甲は,本件条例によ ってXの廃棄が命じられ,補償もなされないことは,憲法上の財産権の侵害であるとして,訴えを 提起しようと考えている。

〔設問〕
 甲の立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,あな た自身の見解を述べなさい。なお,法律と条例の関係及び訴訟形態の問題については論じなく てよい。

 

再現答案

以下日本国憲法については条数のみを示す。

第1 甲の立場からの憲法上の主張
 財産権は、これを侵してはならない(29条1項)ので、本件条例は違憲である。仮に本件条例が違憲でないとしても、A県知事により甲が生産したXの3分の1が廃棄された処置は違憲である。仮にこれも違憲でないとしても、私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる(29条3項)ところ、何らの補償もなされなかったことは違憲である。

第2 想定される反論
 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める(29条2項)のであって、法律と同じように議会で制定された条例によって制限することができる。そもそも財産権は法律(条例)によって定められるものであって、絶対不可侵ではない。よって本件条例は違憲ではない。また、本件でのA県知事の処置も、この違憲でない条例に則って行われたものなので、違憲ではない。また、本件条例による制約は、財産権に内在する制約であり、特別の犠牲とは言えないので、損失補償も不要である。

第3 私自身の見解
 (1)本件条例の合憲性
 第2で述べたように、条例で財産権を制約することは許される。そうはいっても無制限の制約が許されるわけではなく、その目的と手段を検討しなければならない。本件条例の目的は、A県産のXのブランド価値を維持し、もってXの生産者を保護することである。これは積極目的であり、議会の広範な裁量が認められる。そのための手段として①から②が定められている。この手段は合理的である。①から②のようにすればXの流通量が調整され、それによりA県産のXのブランド価値が維持できるからである。以上より、本件条例は合憲である。
 (2)A県知事の甲に対する処置の合憲性
 甲は、高品質のXを生産していて独自の販路も持っているのでXを廃棄しないでいたところ、A県知事によって自分が生産したXの3分の1が廃棄されたという処置が違憲であると主張している。高品質であるとはいえXはXであり、一律に対処しなければ意味がないので、A県知事の処置は本件条例に則っているので、合憲である。
 (3)損失補償
 本件条例には損失補償に関する規定がないのだけれども、甲が主張するように、29条3項を根拠にして直接損失補償を請求することができるとするのが判例の立場である。しかし第2で述べたように、財産権に内在する制約であって特別の犠牲と言えなければ損失補償を要しない。本件においては、Xの生産者は、最大許容生産量を超えるときに超過分の割合と同じ割合でXの廃棄を命じられる。このようにXの生産者に一律に課される制約であり、特別の犠牲とは言えない。ため池の所有者が、その堤とうで耕作をしてはいけないと一律に禁止されることは財産権に内在する制約であり、特別の犠牲とは言えないとした判例もある。本件では、この制約はXの生産者の利益にもなるので、なおさら違憲ではない。以上より、損失補償がないことも違憲とはならない。

以上

修正答案

以下日本国憲法については条数のみを示す。

第1 甲の立場からの憲法上の主張
 「財産権は、これを侵してはならない」(29条1項)。ここでの「財産権」には、私有財産制という制度だけでなく、個々人の具体的な財産に対する権利も含まれる。よって、X生産者のXに対する権利を侵害する本件条例は違憲である。仮に本件条例が違憲でないとしても、A県知事により甲が生産したXの3分の1が廃棄された処置は、合理的でないので違憲である。仮にこれも違憲でないとしても、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」(29条3項)ところ、この損失補償の規定のない本件条例は違憲であり、本件で甲が何らの補償もなされなかったことは違憲である。

第2 想定される反論
 「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」(29条2項)のであって、法律と同じように議会で制定された条例によって制限することができる。そもそも財産権は法律(条例)によって定められるものであって、絶対不可侵ではない。よって本件条例は違憲ではない。また、本件でのA県知事の処置も、この違憲でない条例に則って行われたものなので、違憲ではない。また、甲が主張する29条3項の損失補償は、特定人が特別の犠牲を強いられた場合にのみ適用されるものであり、本件のように一般的な受忍すべき制約の場合は損失補償も不要である。

第3 私自身の見解
 (1)本件条例の合憲性
 第2で述べた公共の福祉による制約とは、財産権それ自体に内在する制約のほか、立法機関が多種多様な利害調整のために定める規制に服するということである。よって、財産権を制約する条例の合憲性は、そうした多種多様な利害を総合考慮して判断すべきであり、立法機関の判断を尊重すべきである。そこで、その目的が正当でない場合か、目的が正当であってもそのための手段が合理的でない場合にのみ違憲になると考える。
 本件条例の目的は、A県産のXのブランド価値を維持し、もってXの生産者を保護することである。これは社会経済政策上の積極目的であり、議会の広範な裁量が認められる。地域の特産物の生産者を保護するということはこの裁量の範囲内であり、この目的が正当でないとは言えない。
 そのための手段として①から②が定められている。①から②のようにすればXの流通量が調整され、それによりA県産のXのブランド価値が維持できるということである。需要に比して供給が多すぎると値崩れして生産者が損害を被るということは十分に考えられ、②のようにXの廃棄を代執行しなければ闇市場が発生して実質的な値崩れを防げないと想定されるので、この手段はXの生産者を保護するという目的に対して合理的である。以上より、本件条例は合憲である。
 (2)A県知事の甲に対する処置の合憲性
 甲は、高品質のXを生産していて独自の販路も持っているのでXを廃棄しないでいたところ、A県知事によって自分が生産したXの3分の1が廃棄されたという処置が違憲であると主張している。高品質であるとはいえXはXであり、一律に対処しなければ意味がないので、A県知事の処置は合理的であり、合憲である。その都度高品質がどうかを判定して廃棄量を個別事情に応じて決定していたのでは迅速な調整ができない。
 (3)損失補償
 本件条例には損失補償に関する規定がないのだけれども、29条3項を根拠にして直接損失補償を請求することができるとするのが判例の立場である。言い換えると、損失補償の規定を欠く条例であったとしても、条例そのものが違憲となるわけではないということである。しかし、財産権の性質からして、第2で述べたように損失補償を要するのは、公共の福祉のためにする一般的な制限ではなく、特定人に特別の犠牲を強いる場合に限られる。
 本件においては、Xの生産者は、最大許容生産量を超えるときに超過分の割合と同じ割合でXの廃棄を命じられる。これはXの生産者に一律に課される制約であり、特定人に課せられたものではない。さらに、本件で問題となっているのはXの全量の廃棄ではなく、むしろ利益の総計が増えるような分量の廃棄であり、通常は特別の犠牲とは言えない。
 しかしながら、より高品質なXを安定して生産するため、本件条例が制定される前から、特別の栽培法を開発し、天候に左右されない高品質のXを一定量生産していた甲にとっては事情が異なる。甲は、一般的なXの生産者ではなく、本件条例制定前から労力を投入して高品質のXを開発してきた者である。そしてその甲が生産するXの性質上、この年の好天によっても生産量が増えなかった。それにもかかわらずXの3分の1の廃棄をするとなると、甲には利益になるどころか損害が生じている。以上より、甲との関係では、本件処置は特別の犠牲に当たり、損失補償が必要である。

以上

 

 

 



商法(会社法)論証集のための判例引用リンク集

法人格否認の法理

最判昭和44.2.27

 およそ社団法人において法人とその構成員たる社員とが法律上別個の人格であることはいうまでもなく、このことは社員が一人である場合でも同様である。しかし、およそ法人格の付与は社会的に存在する団体についてその価値を評価してなされる立法政策によるものであつて、これを権利主体として表現せしめるに値すると認めるときに、法的技術に基づいて行なわれるものなのである。従つて、法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場合を生じるのである。そして、この点に関し、株式会社については、特に次の場合が考慮されなければならないのである。
 思うに、株式会社は準則主義によつて容易に設立され得、かつ、いわゆる一人会社すら可能であるため、株式会社形態がいわば単なる藁人形に過ぎず、会社即個人であり、個人則会社であつて、その実質が全く個人企業と認められるが如き場合を生じるのであつて、このような場合、これと取引する相手方としては、その取引がはたして会社としてなされたか、または個人としてなされたか判然しないことすら多く、相手方の保護を必要とするのである。ここにおいて次のことが認められる。すなわち、このような場合、会社という法的形態の背後に存在する実体たる個人に迫る必要を生じるときは、会社名義でなされた取引であつても、相手方は会社という法人格を否認して恰も法人格のないと同様、その取引をば背後者たる個人の行為であると認めて、その責任を追求することを得、そして、また、個人名義でなされた行為であつても、相手方は敢て商法五〇四条を俟つまでもなく、直ちにその行為を会社の行為であると認め得るのである。けだし、このように解しなければ、個人が株式会社形態を利用することによつて、いわれなく相手方の利益が害される虞があるからである。

 

法人格否認の法理による判決効の拡張

最判昭和53.9.14

 しかしながら、上告会社が訴外会社とは別個の法人として設立手続、設立登記を経ているものである以上、上記のような事実関係から直ちに両会社が全く同一の法人格であると解することは、商法が、株式会社の設立の無効は一定の要件の下に認められる設立無効の訴のみによつて主張されるべきことを定めていること(同法四二八条)及び法的安定の見地からいつて是認し難い。
 もつとも、右のように上告会社の設立が訴外会社の債務の支払を免れる意図の下にされたものであり、法人格の濫用と認められる場合には、いわゆる法人格否認の法理により被上告人は自己と訴外会社間の前記確定判決の内容である損害賠償請求を上告会社に対しすることができるものと解するのが相当である。しかし、この場合においても、権利関係の公権的な確定及びその迅速確実な実現をはかるために手続の明確、安定を重んずる訴訟手続ないし強制執行手続においては、その手続の性格上訴外会社に対する判決の既判力及び執行力の範囲を上告会社にまで拡張することは許されないものというべきである(最高裁昭和四三年(オ)第八七七号同四四年二月二七日第一小法廷判決・民集二三巻二号五一一頁参照)。

 

事業譲渡

最判昭和40.9.22

 (一)よつて、まず、右(一)の所論(法令違反)について判断する。商法二四五条一項一号【引用者注:現会社法四六七条一項一号、二号】によつて特別決議を経ることを必要とする営業の譲渡とは、同法二四条【引用者注:現会社法二一条】以下にいう営業の譲渡と同一意義であつて、営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること、詳言すれば、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによつて、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法二五条に定める競業避止業務を負う結果を伴うものをいうものと解するのが相当である。
 所論は、要するに、右判示のような見解を採るときは、譲渡会社またはその株主の利益が害される危険があることを力説した上、営業の譲渡とは、いわゆる機能的財産の移転を目的とする契約であり、営業が譲受人に移転し受継されるのを通例とするが、必ずしもそのように狭く解すべきではなく、かかる機能的財産を構成している重要な営業用財産が一括して譲渡され、その結果譲渡会社の運命に重大な影響を及ぼすような場合、たとえば譲渡会社がその結果営業を遂行できなくなるような場合において、当事者がその結果を予見しているときは、いわゆる狭義の「営業譲渡」の場合に準じて、該当会社の株主総会の特別決議を要するものと解するのが相当である、というにある。
 しかしながら、商法二四五条一項一号の規定の制定およびその改正の経緯に照しても、右法条に営業の譲渡という文言が採用されているのは、商法総則における既定概念であり、その内容も比較的に明らかな右文言を用いることによつて、譲渡会社がする単なる営業用財産の譲渡ではなく、それよりも重要である営業の譲渡に該当するものについて規制を加えることとし、併せて法律関係の明確性と取引の安全を企図しているものと理解される。前示所論のように解することは、明らかに前示法条の文理に反し、法解釈の統一性、安定牲を害するばかりでなく、その譲渡が無効であるかどうかが、譲渡の相手方または第三者にとつては必ずしも詳らかにしえない譲渡会社の内部的事情によつて左右される結果を認めることとなり、前判示のように解する場合に比較して、法律関係の明確性ないし取引の安全を害するおそれも多く、右所論のような拡張解釈は、法解釈の限度を逸脱するものというほかはない。所論は、立法政策としては考慮の余地があるとしても、現行法の解釈論としては、とうてい採用することをえない。
 されば、右判示と見解を同じくする原判決には、商法二四五条一項一号の解釈を誤つた違法はない。

 

表見法理と会社の登記

最判昭和49.3.22

 商法は、商人に関する取引上重要な一定の事項を登記事項と定め、かつ、商法一二条【引用者注:現会社法九〇八条】において、商人は、右登記事項については、登記及び公告をしないかぎりこれを善意の第三者に対抗することができないとするとともに、反面、登記及び公告をしたときは善意の第三者にもこれを対抗することができ、第三者は同条所定の「正当ノ事由」のない限りこれを否定することができない旨定めている(もつとも昭和二四年法律一三七号「法務局及び地方法務局の設置に伴う関係法律の整理に関する法律」附則一〇項により、「商法一二条の規定の適用については、登記の時に登記及び公告があつたものとみなす。」こととされている。)。商法が右のように定めているのは、商人の取引活動が、一般私人の場合に比し、大量的、反復的に行われ、一方これに利害関係をもつ第三者も不特定多数の広い範囲の者に及ぶことから、商人と第三者の利害の調整を図るために、登記事項を定め、一般私法である民法とは別に、特に登記に右のような効力を賦与することを必要とし、又相当とするからに外ならない。
 ところで、株式会社の代表取締役の退任及び代表権喪失は、商法一八八条及び一五条【引用者注:現会社法九一一条及び九一五条】によつて登記事項とされているのであるから、前記法の趣旨に鑑みると、これについてはもつぱら商法一二条のみが適用され、右の登記後は同条所定の「正当ノ事由」がないかぎり、善意の第三者にも対抗することができるのであつて、別に民法一一二条を適用ないし類推適用する余地はないものと解すべきである。
 これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、本件約束手形は、上告人会社代表取締役Dが取締役を退任して代表権を喪失し、その登記がなされた後に、同人により会社の代表者名義をもつてE組ことFに宛てて振出され、更にFから株式会社G商店を経て被上告人に裏書譲渡されたというのであるから、被上告人は、Fにおいて、Dより右手形の振出交付を受けた際、右代表権の喪失につき善意であり、かつ、商法一二条所定の「正当ノ事由」があつたことを主張立証することによつてのみ上告人会社に右手形金を請求することができるにとどまり、Fの善意無過失を理由に民法一一二条を適用ないし類推適用して上告人会社の表見代理責任を追及することは許されないものといわなければならない。

 

会社の承認がない譲渡制限株式譲渡の効力

最判昭和63.3.15

 商法二〇四条一項但し書【引用者注:現会社法一〇七条一項一号】に基づき定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の譲渡制限の定めがおかれている場合に、取締役会の承認をえないでされた株式の譲渡は、譲渡の当事者間においては有効であるが、会社に対する関係では効力を生じないと解すべきであるから(最高裁昭和四七年(オ)第九一号同四八年六月一五日第二小法廷判決・民集二七巻六号七〇〇頁)、会社は、右譲渡人を株主として取り扱う義務があるものというべきであり、その反面として、譲渡人は、会社に対してはなお株主の地位を有するものというべきである。そして、譲渡が競売手続によつてされた場合の効力については、商法は特別の規定をおいていないし、会社の利益を保護するために会社にとつて好ましくない者が株主となることを防止しようとする同法二〇四条一項但し書の立法趣旨に照らすと、右の場合における譲渡の効力について、任意譲渡の場合と別異に解すべき実質的理由もないから、譲渡が競売手続によつてされた場合の効力についても、前記と同様に解すべきである。

 

新株(新株予約権)発行の差止

最決平成19.8.7(ブルドックソース事件)

 本件新株予約権無償割当てが,株主平等の原則から見て著しく不公正な方法によるものといえないことは,これまで説示したことから明らかである。また,相手方が,経営支配権を取得しようとする行為に対し,本件のような対応策を採用することをあらかじめ定めていなかった点や当該対応策を採用した目的の点から見ても,これを著しく不公正な方法によるものということはできない。その理由は,次のとおりである。
 すなわち,本件新株予約権無償割当ては,本件公開買付けに対応するために,相手方の定款を変更して急きょ行われたもので,経営支配権を取得しようとする行為に対する対応策の内容等が事前に定められ,それが示されていたわけではない。確かに,会社の経営支配権の取得を目的とする買収が行われる場合に備えて,対応策を講ずるか否か,講ずるとしてどのような対応策を採用するかについては,そのような事態が生ずるより前の段階で,あらかじめ定めておくことが,株主,投資家,買収をしようとする者等の関係者の予見可能性を高めることになり,現にそのような定めをする事例が増加していることがうかがわれる。しかし,事前の定めがされていないからといって,そのことだけで,経営支配権の取得を目的とする買収が開始された時点において対応策を講ずることが許容されないものではない。本件新株予約権無償割当ては,突然本件公開買付けが実行され,抗告人による相手方の経営支配権の取得の可能性が現に生じたため,株主総会において相手方の企業価値のき損を防ぎ,相手方の利益ひいては株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしてもこれを採用する必要があると判断されて行われたものであり,緊急の事態に対処するための措置であること,前記のとおり,抗告人関係者に割り当てられた本件新株予約権に対してはその価値に見合う対価が支払われることも考慮すれば,対応策が事前に定められ,それが示されていなかったからといって,本件新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない。
また,株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別のある新株予約権無償割当てが,会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものである場合には,その新株予約権無償割当ては原則として著しく不公正な方法によるものと解すべきであるが,本件新株予約権無償割当てが,そのような場合に該当しないことも,これまで説示したところにより明らかである。

 

新株発行の無効

最判平成9.1.28

 原審の適法に確定したところによれば、上告会社の昭和六三年六月の新株発行については、(一) 新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知がされておらず、(二) 新株発行を決議した取締役会について、取締役Dに招集の通知(同法二五九条ノ二)がされておらず、(三) 代表取締役Aが来る株主総会における自己の支配権を確立するためにしたものであると認められ、(四) 新株を引き受けた者が真実の出資をしたとはいえず、資本の実質的な充実を欠いているというのである。
 原判決は、このうち(三)及び(四)の点を理由として右新株発行を無効としたが、原審のこの判断は是認することができない。けだし、会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株発行は、それが著しく不公正な方法によってされたものであっても有効であるから(最高裁平成二年(オ)第三九一号同六年七月一四日第一小法廷判決・裁判集民事一七二号七七一頁参照)、右(三)の点は新株発行の無効原因とならず、また、いわゆる見せ金による払込みがされた場合など新株の引受けがあったとはいえない場合であっても、取締役が共同してこれを引き受けたものとみなされるから(同法二八〇条ノ一三第一項)、新株発行が無効となるものではなく(最高裁昭和二七年(オ)第七九七号同三〇年四月一九日第三小法廷判決・民集九巻五号五一一頁参照)、右(四)の点も新株発行の無効原因とならないからである。
 しかしながら、新株発行に関する事項の公示(同法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知)は、株主が新株発行差止請求権(同法二八〇条ノ一〇)を行使する機会を保障することを目的として会社に義務付けられたものであるから(最高裁平成元年(オ)第六六六号同五年一二月一六日第一小法廷判決・民集四七巻一〇号五四二三頁参照)、新株発行に関する事項の公示を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となると解するのが相当であり、右(三)及び(四)の点に照らせば、本件において新株発行差止請求の事由がないとはいえないから、結局、本件の新株発行には、右(一)の点で無効原因があるといわなければならない。

 

議決権の代理行使

最判昭和43.11.1

 しかし、同条項は、議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由がある場合に、定款の規定により、相当と認められる程度の制限を加えることまでも禁止したものとは解されず、右代理人は株主にかぎる旨の所論上告会社の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によつて攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、右商法二三九条三項に反することなく、有効であると解するのが相当である。論旨は、右と異なる見解に立つて、原審の判断を攻撃するものであつて、採用できない。

 

重要な財産

最判平成6.1.20

 商法二六〇条二項一号【引用者注:現会社法三六二条四項一号】にいう重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、本件株式の帳簿価額は七八〇〇万円で、これは上告人の前記総資産四七億八六四〇万円余の約一・六パーセントに相当し、本件株式はその適正時価が把握し難くその代価いかんによっては上告人の資産及び損益に著しい影響を与え得るものであり、しかも、本件株式の譲渡は上告人の営業のため通常行われる取引に属さないのであるから、これらの事情からすると、原判決の挙示する理由をもって、本件株式の譲渡は同号にいう重要な財産の処分に当たらないとすることはできない。さらに、本件株式はEの発行済み株式の七・五六パーセントに当たり、Eは上告人の発行済み株式の一七・八六パーセントを有しているのであり、甲第一一号証によればEは平成二年五月三〇日に開催された上告人の株主総会に出席した上取締役選任に関する動議を提出したことがうかがわれるのであるから、本件株式の譲渡は上告人とEとの関係に影響を与え、上告人にとって相当な重要性を有するとみることもできる。また、甲第一〇号証によれば本件株式譲渡の翌日である同年一月一九日に開催された上告人の取締役会において本件株式及び上告人の有するG酒造株式会社の株式四〇〇株をHに譲渡することの承認決議がされたことがうかがわれ、甲第一八号証によれば昭和六三年六月一五日に上告人の取締役会でされた上告人の有する株式の譲渡承認決議は株式会社I商店の額面五〇円の株式四〇〇〇株及びJ株式会社の額面五〇円の株式一万三五〇〇株を対象とするものであることがうかがわれるのであり、上告人においてはその保有株式の譲渡については少額のものでも取締役会がその可否を決してきたものとみることもできる。

 

取締役会の決議のない取引の効力

最判昭和40.9.22

 株式会社の一定の業務執行に関する内部的意思決定をする権限が取締役会に属する場合には、代表取締役は、取締役会の決議に従つて、株式会社を代表して右業務執行に関する法律行為をすることを要する。しかし、代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する点にかんがみれば、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、内部的意思決定を欠くに止まるから、原則として有効であつて、ただ、相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限つて、無効である、と解するのが相当である。

 

忠実義務

最判昭和45.6.24(八幡製鉄政治献金事件)

 商法二五四条ノ二【引用者注:現会社法三五五条】の規定は、同法二五四条三項【引用者注:現会社法三三〇条】民法六四四条に定める善管義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまるのであつて、所論のように、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものとは解することができない。

 

監視義務

最判昭和48.5.22

 株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有するものと解すべきである。

 

利益相反取引と株主全員の合意

最判昭和49.9.26

 しかしながら、商法二六五条が取締役と会社との取引につき取締役会の承認を要する旨を定めている趣旨は、取締役がその地位を利用して会社と取引をし、自己又は第三者の利益をはかり、会社ひいて株主に不測の損害を蒙らせることを防止することにあると解されるところ、原審の適法に確定したところによると、Dから上告人への株式の譲渡は、Dの実質上の株主の全員であるEら前記五名の合意によつてなされたものというのであるから、このように株主全員の合意がある以上、別に取締役会の承認を要しないことは、上述のように会社の利益保護を目的とする商法二六五条の立法趣旨に照らし当然であつて、右譲渡の効力を否定することは許されないものといわなければならない。

 

利益相反取引の効力

最判昭和43.12.25

 そして、取締役が右規定に違反して、取締役会の承認を受けることなく、右の如き行為をなしたときは、本来、その行為は無効と解すべきである。このことは、同条は、取締役会の承認を受けた場合においては、民法一〇八条の規定を適用しない旨規定している反対解釈として、その承認を受けないでした行為は、民法一〇八条違反の場合と同様に、一種の無権代理人の行為として無効となることを予定しているものと解すべきであるからである。
 取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引にあつては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかつたことを理由として、その行為の無効を主張し得ることは、前述のとおり当然であるが、会社以外の第三者と取締役が会社を代表して自己のためにした取引については、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社は、その取引について取締役会の承認を受けなかつたことのほか、相手方である第三者が悪意(その旨を知つていること)であることを主張し、立証して始めて、その無効をその相手方である第三者に主張し得るものと解するのが相当である。

 

退職慰労金

最判昭和39.12.11

 原判決は、従来被上告会社(被控訴会社)において退職した役員に対し慰労金を与へるには、その都度株主総会の議に付し、株主総会はその金額、時期、方法を取締役会に一任し、取締役会は自由な判断によることなく、会社の業績はもちろん、退職役員の勤続年数、担当業務、功績の軽重等から割り出した一定の基準により慰労金を決定し、右決定方法は慣例となつているのであるが、辞任した常任監査役Dに対する退職慰労金に関する本件決議に当つては、右慣例によつてこれを定むべきことを黙示して右決議をなしたというのであり、右事実認定は、挙示の証拠により肯認できる。株式会社の役員に対する退職慰労金は、その在職中における職務執行の対価として支給されるものである限り、商法二八〇条、同二六九条【引用者注:現会社法三六一条】にいう報酬に含まれるものと解すべく、これにつき定款にその額の定めがない限り株主総会の決議をもつてこれを定むべきものであり、無条件に取締役会の決定に一任することは許されないこと所論のとおりであるが、被上告会社の前記退職慰労金支給決議は、その金額、支給期日、支給方法を無条件に取締役会の決定に一任した趣旨でなく、前記の如き一定の基準に従うべき趣旨であること前示のとおりである以上、株主総会においてその金額等に関する一定の枠が決定されたものというべきであるから、これをもつて同条の趣旨に反し無効の決議であるということはできない。

 

取締役の同意のない報酬減額

最判平成4.12.18

 株式会社において、定款又は株主総会の決議(株主総会において取締役報酬の総額を定め、取締役会において各取締役に対する配分を決議した場合を含む。)によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当である。この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に右株主総会決議がされた場合であっても異ならない。

 

善管注意義務と経営判断の原則

最判平成22.7.15(アパマンショップ株主代表訴訟)

 前記事実関係によれば,本件取引は,AをBに合併して不動産賃貸管理等の事業を担わせるという参加人のグループの事業再編計画の一環として,Aを参加人の完全子会社とする目的で行われたものであるところ,このような事業再編計画の策定は,完全子会社とすることのメリットの評価を含め,将来予測にわたる経営上の専門的判断にゆだねられていると解される。そして,この場合における株式取得の方法や価格についても,取締役において,株式の評価額のほか,取得の必要性,参加人の財務上の負担,株式の取得を円滑に進める必要性の程度等をも総合考慮して決定することができ,その決定の過程,内容に著しく不合理な点がない限り,取締役としての善管注意義務に違反するものではないと解すべきである。
 以上の見地からすると,参加人がAの株式を任意の合意に基づいて買い取ることは,円滑に株式取得を進める方法として合理性があるというべきであるし,その買取価格についても,Aの設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば,払込金額である5万円を基準とすることには,一般的にみて相応の合理性がないわけではなく,参加人以外のAの株主には参加人が事業の遂行上重要であると考えていた加盟店等が含まれており,買取りを円満に進めてそれらの加盟店等との友好関係を維持することが今後における参加人及びその傘下のグループ企業各社の事業遂行のために有益であったことや,非上場株式であるAの株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるAの企業価値の増加も期待できたことからすれば,株式交換に備えて算定されたAの株式の評価額や実際の交換比率が前記のようなものであったとしても,買取価格を1株当たり5万円と決定したことが著しく不合理であるとはいい難い。そして,本件決定に至る過程においては,参加人及びその傘下のグループ企業各社の全般的な経営方針等を協議する機関である経営会議において検討され,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践されているのであって,その決定過程にも,何ら不合理な点は見当たらない。
 以上によれば,本件決定についての上告人らの判断は,参加人の取締役の判断として著しく不合理なものということはできないから,上告人らが,参加人の取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。

 

取引債務と取締役の責任

最判平成21.3.10

 昭和25年法律第167号により導入された商法267条【引用者注:現会社法八四七条】所定の株主代表訴訟の制度は,取締役が会社に対して責任を負う場合,役員相互間の特殊な関係から会社による取締役の責任追及が行われないおそれがあるので,会社や株主の利益を保護するため,会社が取締役の責任追及の訴えを提起しないときは,株主が同訴えを提起することができることとしたものと解される。そして,会社が取締役の責任追及をけ怠するおそれがあるのは,取締役の地位に基づく責任が追及される場合に限られないこと,同法266条1項3号は,取締役が会社を代表して他の取締役に金銭を貸し付け,その弁済がされないときは,会社を代表した取締役が会社に対し連帯して責任を負う旨定めているところ,株主代表訴訟の対象が取締役の地位に基づく責任に限られるとすると,会社を代表した取締役の責任は株主代表訴訟の対象となるが,同取締役の責任よりも重いというべき貸付けを受けた取締役の取引上の債務についての責任は株主代表訴訟の対象とならないことになり,均衡を欠くこと,取締役は,このような会社との取引によって負担することになった債務(以下「取締役の会社に対する取引債務」という。)についても,会社に対して忠実に履行すべき義務を負うと解されることなどにかんがみると,同法267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役の地位に基づく責任のほか,取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれると解するのが相当である。

 

429条の第三者に対する責任

最判昭和44.11.26

 しかし、法は、株式会社が経済社会において重要な地位を占めていること、しかも株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存するものであることを考慮して、第三者保護の立場から、取締役において悪意または重大な過失により右義務に違反し、これによつて第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社がこれによつて損害を被つた結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被つた場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接に第三者に対し損害賠償の責に任ずべきことを規定したのである。
 このことは、現行法が、取締役において法令または定款に違反する行為をしたときは第三者に対し損害賠償の責に任ずる旨定めていた旧規定(昭和二五年法律第十六七号による改正前の商法二六六条二項)を改め、右取締役の責任の客観的要件については、会社に対する義務違反があれば足りるものとしてこれを拡張し、主観的要件については、重過失を要するものとするに至つた立法の沿革に徴して明らかであるばかりでなく、発起人の責任に関する商法一九三条および合名会社の清算人の責任に関する同法一三四条ノ二の諸規定と対比しても十分に首肯することができる。
 したがつて、以上のことは、取締役がその職務を行なうにつき故意または過失により直接第三者に損害を加えた場合に、一般不法行為の規定によつて、その損害を賠償する義務を負うことを妨げるものではないが、取締役の任務懈怠により損害を受けた第三者としては、その任務懈怠につき取締役の悪意または重大な過失を主張し立証しさえすれば、自己に対する加害につき故意または過失のあることを主張し立証するまでもなく、商法二六六条ノ三の規定により、取締役に対し損害の賠償を求めることができるわけであり、また、同条の規定に基づいて第三者が取締役に対し損害の賠償を求めることができるのは、取締役の第三者への加害に対する故意または過失を前提として会社自体が民法四四条の規定によつて第三者に対し損害の賠償義務を負う場合に限る必要もないわけである。

 

429条と登記簿上の取締役

最判昭和62.4.16

 株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの、以下同じ。)二六六条ノ三第一項前段【引用者注:現会社法四二九条一項】に基づく損害賠償責任を負わないものというべきである(最高裁昭和三三年(オ)第三七〇号同三七年八月二八日第三小法廷判決・裁判集民事六二号二七三頁参照)が、右の取締役を辞任した者が、登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し、辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情が存在する場合には、右の取締役を辞任した者は、同法一四条【引用者注:現会社法九〇八条二項】の類推適用により、善意の第三者に対して当該株式会社の取締役でないことをもつて対抗することができない結果、同法二六六条ノ三第一項前段にいう取締役として所定の責任を免れることはできないものと解するのが相当である。

 

見せ金

最判昭和38.12.6

 よつて審案するに株式の払込は、株式会社の設立にあたつてその営業活動の基盤たる資本の充実を計ることを目的とするものであるから、これにより現実に営業活動の資金が獲得されなければならないものであつて、このことは、現実の払込確保のため商法が幾多の規定を設けていることに徴しても明らかなところである。従つて、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的の借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保されたことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備えているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有しないものといわなければならない。しかして本件についてこれを見るに、原判決の確定するところによれば、訴外D株式会社は資本金二〇〇万円全額払込ずみの株式会社として昭和二四年一一月五日その設立登記を経由したものであるが、被上告人Bは、発起人総代として同じく発起人たるその余の被上告人らから、設立事務一切を委任されて担当し、株式払込については、被上告人Bが主債務者としてその余の被上告人らのため一括して訴外E銀行Gから金二〇〇万円を借り受け、その後右金二〇〇万円を払込取扱銀行である右銀行支店に株式払込金として一括払い込み、同支店から払込金保管証明書の発行を得て設立登記手続を進め、右手続を終えて会社成立後、同会社は右銀行支店から株金二〇〇万円の払戻を受けた上、被上告人Bに右金二〇〇万円を貸し付け、同被上告人はこれを同銀行支店に対する前記借入金二〇〇万円の債務の弁済にあてたというのであつて、会社成立後前記借入金を返済するまでの期間の長短、右払戻金が会社資金として運用された事実の有無、或は右借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等、その如何によつては本件株式の払込が実質的には会社の資金とするの意図なく単に払込の外形を装つたに過ぎないものであり、従つて株式の払込としての効力を有しないものではないかとの疑いがあるのみならず、むしろ記録によれば、被上告人Bの前記銀行支店に対する借入金二〇〇万円の弁済は会社成立後間もない時期であつて、右株式払込金が実質的に会社の資金として確保されたものではない事情が窺われないでもない。然るに、原審がかかる事情につきなんら審理を尽さず、従つてなんら特段の事情を判示することなく、本件株式の払込につき単にその外形のみに着目してこれを有効な払込と認めて被上告人らの本件株式払込責任を否定したのは、審理不尽理由不備の違法があるものといわざるを得ず、その結果は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論点に対する判断を俟つまでもなく、破棄を免れない。

 

株主総会決議を経ない事業譲渡の効力

最判昭和61.9.11

 1 原審の確定した右の事実関係によれば、Dが被上告会社との間で締結した本件営業譲渡契約は、その契約の実質的な目的及び内容等にかんがみるならば、Dが上告会社の発起人組合の代表者として設立中の上告会社のために会社の設立を停止条件としてした積極消極両財産を含む営業財産を取得する旨の契約であると認められるから、本件営業譲渡契約は、商法一六八条一項六号【引用者注:現会社法二八条二項】の定める財産引受に当たるものというべきである。そうすると、本件営業譲渡契約は、上告会社の原始定款に同号所定の事項が記載されているのでなければ、無効であり、しかも、同条項が無効と定めるのは、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものであるから、本件営業譲渡契約は何人との関係においても常に無効であつて、設立後の上告会社が追認したとしても、あるいは上告会社が譲渡代金債務の一部を履行し、譲り受けた目的物について使用若しくは消費、収益、処分又は権利の行使などしたとしても、これによつて有効となりうるものではないと解すべきであるところ、原審の確定したところによると、右の所定事項は記載されていないというのであるから、本件営業譲渡契約は無効であつて、契約の当事者である上告会社は、特段の事情のない限り、右の無効をいつでも主張することができるものというべきである。
 2 つぎに、本件営業譲渡契約が譲渡の目的としたものは、原審の確定したところによると、たばこ製造機械・小型デイーゼルエンジンの製造販売を目的とする被上告会社の有する三工場のうち専ら小型デイーゼルエンジンの製造販売に当たつていたE工場の営業一切であるというのであるから、商法二四五条一項一号【引用者注:現会社法四六七条一項二号】にいう営業の「重要ナル一部」に当たるものというべきである。そうすると、本件営業譲渡契約は、譲渡をした被上告会社が商法二四五条一項に基づき同法三四三条【引用者注:現会社法三〇九条】に定める株主総会の特別決議によつてこれを承認する手続を経由しているのでなければ、無効であり、しかも、その無効は、原始定款に記載のない財産引受と同様、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものであるから、本件営業譲渡契約は何人との関係においても常に無効であると解すべきである。しかるところ、原審の確定したところによると、本件営業譲渡契約については事前又は事後においても右の株主総会による承認の手続をしていないというのであるから、これによつても、本件営業譲渡契約は無効であるというべきである。そして、営業譲渡が譲渡会社の株主総会による承認の手続をしないことによつて無効である場合、譲渡会社、譲渡会社の株主・債権者等の会社の利害関係人のほか、譲受会社もまた右の無効を主張することができるものと解するのが相当である。けだし、譲渡会社ないしその利害関係人のみが右の無効を主張することができ、譲受会社がこれを主張することができないとすると、譲受会社は、譲渡会社ないしその利害関係人が無効を主張するまで営業譲渡を有効なものと扱うことを余儀なくされるなど著しく不安定な立場におかれることになるからである。したがつて、譲受会社である上告会社は、特段の事情のない限り、本件営業譲渡契約について右の無効をいつでも主張することができるものというべきである。
 3 そこで、上告会社に本件営業譲渡契約の無効を主張することができない特段の事情があるかどうかについて検討するに、原審の確定した事実関係によれば、被上告会社は本件営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行ずみであり、他方上告会社は右の履行について苦情を申し出たことがなく、また、上告会社は、本件営業譲渡契約が有効であることを前提に、被上告会社に対し本件営業譲渡契約に基づく自己の債務を承認し、その履行として譲渡代金の一部を弁済し、かつ、譲り受けた製品・原材料等を販売又は消費し、しかも、上告会社は、原始定款に所定事項の記載がないことを理由とする無効事由については契約後約九年、株主総会の承認手続を経由していないことを理由とする無効事由については契約後約二〇年を経て、初めて主張するに至つたものであり、両会社の株主・債権者等の会社の利害関係人が右の理由に基づき本件営業譲渡契約が無効であるなどとして問題にしたことは全くなかつた、というのであるから、上告会社が本件営業譲渡契約について商法一六八条一項六号又は二四五条一項一号の規定違反を理由にその無効を主張することは、法が本来予定した上告会社又は被上告会社の株主・債権者等の利害関係人の利益を保護するという意図に基づいたものとは認められず、右違反に籍口して、専ら、既に遅滞に陥つた本件営業譲渡契約に基づく自己の残債務の履行を拒むためのものであると認められ、信義則に反し許されないものといわなければならない。したがつて、上告会社が本件営業譲渡契約について商法の右各規定の違反を理由として無効を主張することは、これを許さない特段の事情があるというべきである。

 

商人資格の取得時期

最判昭和33.6.19

 原判決が、所論摘録のとおり説示を附加し、また、原判決の引用した第一審判決が、所論摘録のとおり認定したことは、所論のとおりである。そして、右認定によれば、第一審被告Dは、上告人等組合のために被上告人に対し判示共同事業を説明して判示契約を申込み、被上告人もまた該共同事業を発展せしめうる助けになるならばと好意的に上告人等の本件申込を承諾したというのである。従つて、かかる事実関係の下において、原判決が本件担保利用契約を控訴人等(上告人等)の営業の準備行為と認め且つ特定の営業を開始する目的で、その準備行為をなした者は、その行為により営業を開始する意思を実現したものでこれにより商人たる資格を取得すべく、その準備行為もまた商人がその営業のためにする行為として商行為となるものとした判断は、正当であつて、論旨はすべて採るを得ない。

 

約款

最判昭和42.10.24

 そして保険契約者が、保険会社の普通保険約款を承認のうえ保険契約を申し込む旨の文言が記載されている保険契約の申込書を作成して保険契約を締結したときば、反証のないかぎり、たとい保険契約者が盲目であつて、右約款の内容を告げられず、これを知らなかつたとしても、なお右約款による意思があつたものと推定すべきものであるから、本件において、上告人Aが作成したものであることについて争いがない甲第一号証の一ないし四(各火災保険契約の申込書)に被上告人らの火災保険普通保険約款を承認のうえ火災保険契約を申し込む旨の文言が印刷されている事実を適法に確定し、右約款の規定は、本件各火災保険契約の内容をなすものであるとした原審の判断は相当である。

 

商事代理

最判昭和43.4.24

 民法は、法律行為の代理について、代理人が本人のためにすることを示して意思表示をしなければ、本人に対しその効力を生じないものとして、いわゆる顕名主義を採用している(同法九九条一項)が、商法は、本人のための商行為の代理については、代理人が本人のためにすることを示さなくても、その行為は本人に対して効力を生ずるものとして、顕名主義に対する例外を認めている(同法五〇四条本文)のである。これは、営業主が商業使用人を使用して大量的、継続的取引をするのを通常とする商取引において、いちいち、本人の名を示すことは煩雑であり、取引の敏活を害する虞れがある一方、相手方においても、その取引が営業主のためされたものであることを知つている場合が多い等の事由により、簡易、迅速を期する便宜のために、とくに商行為の代理について認められた例外であると解される。
 しかし、この非顕名主義を徹底させるときは、相手方が本人のためにすることを知らなかつた場合に代理人を本人と信じて取引をした相手方に不測の損害を及ぼす虞れがないとはいえず、かような場合の相手方を保護するため、同条但書は、相手方は代理人に対して履行の請求をすることを妨げないと規定して、相手方の救済を図り、もつて関係当事者間の利害を妥当に調和させているのである。そして、右但書は善意の相手方を保護しようとする趣旨であるが、自らの過失により本人のためにすることを知らなかつた相手方までも保護する必要はないものというべく、したがつて、かような過失ある相手方は、右但書の相手方に包含しないものと解するのが相当である。
 かように、代理人に対して履行の請求をすることを妨げないとしている趣旨は、本人と相手方との間には、すでに同条本文の規定によつて、代理に基づく法律関係が生じているのであるが、相手方において、代理人が本人のためにすることを知らなかつたとき(過失により知らなかつたときを除く)は、相手方保護のため、相手方と代理人との間にも右と同一の法律関係が生ずるものとし、相手方は、その選択に従い、本人との法律関係を否定し、代理人との法律関係を主張することを許容したものと解するのが相当であり、相手方が代理人との法律関係を主張したときは、本人は、もはや相手方に対し、右本人相手方間の法律関係の存在を主張することはできないものと解すべきである。もとより、相手方が代理人に対し同人との法律関係を主張するについては、相手方において、本人のためにすることを知らなかつたことを主張し、立証する責任があり、また、代理人において、相手方が本人のためにすることを過失により知らなかつたことを主張し、立証したときは、代理人はその責任を免れるものと解するのが相当である。

 

報酬請求権

最判昭和44.6.26

 一般に、宅地建物取引業者は、商法五四三条にいう「他人間ノ商行為ノ媒介」を業とする者ではないから、いわゆる商事仲立人ではなく、民事仲立人ではあるが、同法五〇二条一一号にいう「仲立ニ関スル行為」を営業とする者であるから同法四条一項の定めるところにより商人であることはいうまでもなく、他に特段の事情のない本件においては、上告人もその例外となるものではない。(なお、論旨は、媒介の委託を準委任ではないというが、これは法律行為でない事務の委託であるから民法六五六条に定める準委任たる性質を有するものである。)しかしながら、上告人は、前示のように被上告人の委託により、または同人のためにする意思をもつて、本件売買の媒介をしたものではないのであるから、被上告人に対し同法五一二条の規定により右媒介につき報酬請求権を取得できるものではなく、また同法五五〇条の規定の適用をみる余地はないものといわなければならない。なお、宅地建物取引業法一七条の規定は、宅地建物取引業者の受ける報酬額の最高限度に関するものであつて、その報酬請求権発生の根拠となるものではない。

 

運送の損害賠償責任と不法行為

最判昭和38.11.5

 論旨は、前記の場合債務不履行に基づく賠償請求権に不法行為に基づく賠償請求権が競合することを認めうるとしても、これが認められるのは、運送取扱人ないし運送人の側に故意又は重過失の存する場合に限られるべきであるのに、原判決は、故意にあらざることを判示しながら、右過失の軽重につき何ら判示することなく、たやすく不法行為に基づく賠償請求権の成立を認めたのは違法であると主張する。
 しかし、右請求権の競合が認められるには、運送取扱人ないし運送人の側に過失あるをもつて足り、必ずしも故意又は重過失の存することを要するものではない。

 

倉庫証券の要因性と文言性

最判昭和44.4.15

原審の確定したところによれば、本件各倉荷証券には、倉庫証券約款として、「受寄物の内容を検査することが不適当なものについては、その種類、品質および数量を記載しても当会社(被上告人)はその責に任じない」旨の免責条項の記載があつたというのであるが、右免責条項の効力を認めたうえ、倉庫営業者は、該証券に表示された荷造りの方法、受寄物の種類からみて、その内容を検査することが容易でなく、または荷造りを解いて内容を検査することによりその品質または価格に影響を及ぼすことが、一般取引の通念に照らして、明らかな場合にかぎり、右免責条項を援用して証券の所持人に対する文言上の責任を免れうると解すべきものとした原審の判断、ならびに原審の確定した事実関係(その事実認定は、原判決挙示の証拠関係によつて首肯するに足りる。)に照らせば、本件各証券に表象された木函入り緑茶は、その荷造りの方法および品物の種類からみて、一般取引の通念上、内容を検査することが不適当なものに該当する旨の原審の判断は、ともに正当として是認しうるものである。

 

手形と錯誤

最判昭和54.9.6

 ところで、手形の裏書は、裏書人が手形であることを認識してその裏書人欄に署名又は記名捺印した以上、裏書としては有効に成立するのであつて、裏書人は、錯誤その他の事情によつて手形債務負担の具体的な意思がなかつた場合でも、手形の記載内容に応じた償還義務の負担を免れることはできないが、右手形債務負担の意思がないことを知つて手形を取得した悪意の取得者に対する関係においては、裏書人は人的抗弁として償還義務の履行を拒むことができるものと解するのが相当であり、被上告人の前記主張も、右のような趣旨に帰着するものと解される。そこで、被上告人は、錯誤によつて手形債務負担の意思がなかつたことを理由にして本件手形金全部の償還義務の履行を拒むことができるかどうかであるが、前記のように、被上告人が金額一五〇〇万円の本件手形を金額一五〇万円の手形と誤信して裏書したものであるとすれば、被上告人には、本件手形金のうち一五〇万円を超える部分については手形債務負担の意思がなかつたとしても、一五〇万円以下の部分については必ずしも手形債務負担の意思がなかつたとはいえず、しかも、本来金銭債務はその性質上可分なものであるから、少なくとも裏書に伴う債務負担に関する限り、本件手形の裏書についての被上告人の錯誤は、本件手形金のうち一五〇万円を超える部分についてのみ存し、その余の部分については錯誤はなかつたものと解する余地があり、そうとすれば、特段の事情のない限り、被上告人が悪意の取得者に対する関係で錯誤を理由にして本件手形金の償還義務の履行を拒むことができるのは、本件手形金のうち一五〇万円を超える部分についてだけであつて、その全部についてではないものといわなければならない(手形の一部裏書を禁止した手形法一二条二項の規定は、上記の解釈を妨げるものではない。)。

 

手形と代理

最判昭和36.12.12

 しかしながら、約束手形が代理人によりその権限を踰越して振出された場合、民法一一〇条によりこれを有効とするには、受取人が右代理人に振出の権限あるものと信ずべき正当の理由あるときに限るものであつて、かゝる事由のないときは、縦令、その後の手形所持人が、右代理人にかゝる権限あるものと信ずべき正当の理由を有して居つたものとしても、同条を適用して、右所持人に対し振出人をして手形上の責任を負担せしめ得ないものであることは、大審院判例(大審院大正一三年(オ)第六〇一号、同一四年三月一二日判決、同院民集四巻一二〇頁)の示す所であつて、いま、これを改める要はない。

 

手形の偽造

最判昭和27.10.21

手形の被偽造者は偽造手形により何ら手形上の義務を負うものではなく、このことは被偽造者に重大な過失があつたと否と、また受取人が善意であつたと否とにかかわらない。更に所論のような手形の社会上の地位もこの原則を左右するものではない。論旨は右と異なる独自の見解に立脚し、又は判旨に添わない主張をなすものであるから、いずれの点も採用することができない。

 

融通手形

最判昭和34.7.14

 論旨は、原判決には手形法一七条但書の解釈適用を誤つた違法があると主張する。しかし、所論原判示のいわゆる融通手形なるものは、被融通者をして該手形を利用して金銭を得もしくは得たと同一の効果を受けさせるためのものであるから、該手形を振出したものは、被融通者から直接請求のあつた場合に当事者間の合意の趣旨にしたがい支払いを拒絶することができるのは格別、その手形が利用されて被融通者以外の人の手に渡り、その者が手形所持人として支払いを求めて来た場合には、手形振出人として手形上の責任を負わなければならないこと当然であり、融通手形であるの故をもつて、支払いを拒絶することはできない。しかも、このことは、手形振出人になんら手形上の責任を負わせない等当事者間の特段の合意があり所持人がかゝる合意の存在を知つて手形を取得したような場合は格別、その手形所持人が単に原判示のような融通手形であることを知つていたと否とにより異るところはないのである。しからば、本件手形二通はいずれもいわゆる融通手形であることを認定し、右と同趣旨の理由で上告人の所論悪意の抗弁を排斥した原判決の判断は正当であり、所論は理由がない。その他の主張は、原判決の右の判断が正当である以上、その前提を欠くことに帰し、採用し得ない。

 

善意者と戻裏書

最判昭和40.4.9

 しかし、本件にあつては、善意の取得者たる前示銀行から裏書譲渡を受けたEは、もともと右銀行に対し本件手形を裏書譲渡したものであり、更に同銀行より戻裏書を受けた関係にあるから、事実関係が原判決参照の前記判例の場合と異るものといわねばならない。手形の振出人が手形所持人に対して直接対抗し得べき事由を有する以上、その所持人が該手形を善意の第三者に裏書譲渡した後、戻裏書により再び所持人となつた場合といえども、その手形取得者は、その裏書譲渡以前にすでに振出人から抗弁の対抗を受ける地位にあつたのであるから、当該手形がその後善意者を経て戻裏書により受け戻されたからといつて、手形上の権利行使について、自己の裏書譲渡前の法律的地位よりも有利な地位を取得すると解しなければならない理はない。それ故、本件にあつては、振出人たる上告人は、戻裏書により再び所持人となつたEに抗弁事由を対抗できるものといわねばならず、Eから被上告人に対する裏書譲渡が隠れた取立委任によるものであるとすれば被上告人に対してもこれを対抗しうることになるわけである。(当裁判所昭和三六年(オ)第一二七〇号同三九年一〇月一六日第二小法廷判決参照)。

 

 



民事訴訟法論証集のための判例引用リンク集

非訴事件

最決昭和40.6.30

 憲法八二条は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」旨規定する。そして如何なる事項を公開の法廷における対審及び判決によつて裁判すべきかについて、憲法は何ら規定を設けていない。しかし、法律上の実体的権利義務自体につき争があり、これを確定するには、公開の法廷における対審及び判決によるべきものと解する。けだし、法律上の実体的権利義務自体を確定することが固有の司法権の主たる作用であり、かかる争訟を非訟事件手続または審判事件手続により、決定の形式を以て裁判することは、前記憲法の規定を回避することになり、立法を以てしても許されざるところであると解すべきであるからである。
 家事審判法九条一項乙類は、夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する事件を婚姻費用の分担、財産分与、扶養、遺産分割等の事件と共に、審判事項として審判手続により審判の形式を以て裁判すべき旨規定している。その趣旨とするところは、夫婦同居の義務その他前記の親族法、相続法上の権利義務は、多分に倫理的、道義的な要素を含む身分関係のものであるから、一般訴訟事件の如く当事者の対立抗争の形式による弁論主義によることを避け、先ず当事者の協議により解決せしめるため調停を試み、調停不成立の場合に審判手続に移し、非公開にて審理を進め、職権を以て事実の探知及び必要な証拠調を行わしめるなど、訴訟事件に比し簡易迅速に処理せしめることとし、更に決定の一種である審判の形式により裁判せしめることが、かかる身分関係の事件の処理としてふさわしいと考えたものであると解する。しかし、前記同居義務等は多分に倫理的、道義的な要素を含むとはいえ、法律上の実体的権利義務であることは否定できないところであるから、かかる権利義務自体を終局的に確定するには公開の法廷における対審及び判決によつて為すべきものと解せられる(旧人事訴訟手続法〔家事審判法施行法による改正前のもの〕一条一項参照)。従つて前記の審判は夫婦同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提として、例えば夫婦の同居についていえば、その同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定める処分であり、また必要に応じてこれに基づき給付を命ずる処分であると解するのが相当である。けだし、民法は同居の時期、場所、態様について一定の基準を規定していないのであるから、家庭裁判所が後見的立場から、合目的の見地に立つて、裁量権を行使してその具体的内容を形成することが必要であり、かかる裁判こそは、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審及び判決によつて為すことを要しないものであるからである。すなわち、家事審判法による審判は形成的効力を有し、また、これに基づき給付を命じた場合には、執行力ある債務名義と同一の効力を有するものであることは同法一五条の明定するところであるが、同法二五条三項の調停に代わる審判が確定した場合には、これに確定判決と同一の効力を認めているところより考察するときは、その他の審判については確定判決と同一の効力を認めない立法の趣旨と解せられる。然りとすれば、審判確定後は、審判の形成的効力については争いえないところであるが、その前提たる同居義務等自体については公開の法廷における対審及び判決を求める途が閉ざされているわけではない。従つて、同法の審判に関する規定は何ら憲法八二条、三二条に牴触するものとはいい難く、また、これに従つて為した原決定にも違憲の廉はない。それ故、違憲を主張する論旨は理由がなく、その余の論旨は原決定の違憲を主張するものではないから、特別抗告の理由にあたらない。

 

忌避

最判昭和30.1.28

 原審における裁判長たる裁判官が、原審における被上告組合の訴訟代理人の女壻であるからといつて、右の事実は民訴三五条所定事項に該当せず、又これがため直ちに民訴三七条にいわゆる裁判官につき裁判の公正を妨ぐべき事情があるものとはいえないから、所論は理由がない。

 

死者名義訴訟の承継

最判昭和51.3.15

 本件記録によると、(一)被上告人の先代Dから昭和四三年一二月二七日適法に訴訟委任を受けた弁護士佐治良三ほか四名の訴訟代理人が、同月三〇日Dが死亡したことを知らずに、昭和四四年三月一一日亡Dを原告、上告人を被告と表示した本件訴状を第一審裁判所へ提出し、これが上告人に送達されたこと、(二)同年五月一三日亡Dの相続人たる被上告人ほか二名からの申立により第一審裁判所が被上告人ほか二名の原告としての訴訟承継を認めて審理判決したこと、(三)原審において、遺産分割の結果被上告人だけが本件土地の権利を承継したので被上告人以外の当事者が訴を取り下げ、上告人がこれに同意したこと、がそれぞれ認められる。このような事実関係のもとにおいては、民訴法八五条【引用者注:現五八条】、二〇八条【引用者注:現一二四条】の規定を類推適用して、本訴提起は適法なものであり、亡Dの相続人において本訴を承継したものと解するのが相当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、叙上と反する独自の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。

 

法人格のない団体(権利能力なき社団)

最判昭和39.10.15(引揚者更生生活協同組合連盟杉並支部事件)

 法人格を有しない社団すなわち権利能力のない社団については、民訴四六条【引用者注:現二九条】がこれについて規定するほか実定法上何ら明文がないけれども、権利能力のない社団といいうるためには、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によつて代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならないのである。しかして、このような権利能力のない社団の資産は構成員に総有的に帰属する。そして権利能力のない社団は「権利能力のない」社団でありながら、その代表者によつてその社団の名において構成員全体のため権利を取得し、義務を負担するのであるが、社団の名において行なわれるのは、一々すべての構成員の氏名を列挙することの煩を避けるために外ならない(従つて登記の場合、権利者自体の名を登記することを要し、権利能力なき社団においては、その実質的権利者たる構成員全部の名を登記できない結果として、その代表者名義をもつて不動産登記簿に登記するよりほかに方法がないのである。)。

 

訴訟代理権と和解

最判昭和38.2.21

 原審が当事者間に争いのない事実として確定したところによれば、本件においていわゆる前事件(徳島地方裁判所富岡支部昭和三元年(ワ)第一八号貸金請求事件)において上告人が訴訟代理人弁護士埴渕可雄に対し民訴八一条二項【引用者注:現五五条二項】所定の和解の権限を授与し、かつ、右委任状(書面)が前事件の裁判所に提出されているというのである。また原審が適法に認定したところによれば、右前事件は、前事件原告(本件被上告人先代)Dから前事件被告(本件控訴人、上告人)に対する金銭債権に関する事件であり、この弁済期日を延期し、かつ分割払いとするかわりに、その担保として上告人所有の不動産について、被上告人先代のために抵当権の設定がなされたものであつて、このような抵当権の設定は、訴訟物に関する互譲の一方法としてなされたものであることがうかがえるのである。しからば、右のような事実関係の下においては、前記埴渕弁護士が授権された和解の代理権限のうちに右抵当権設定契約をなす権限も包含されていたものと解するのが相当であつて、これと同趣旨に出た原判決の判断は、正当であり、この点に関する原判決の説示はこれを是認することができる。

 

形式的形成訴訟

最判平成7.3.7

 しかしながら、境界確定を求める訴えは、公簿上特定の地番により表示される甲乙両地が相隣接する場合において、その境界が事実上不明なため争いがあるときに、裁判によって新たにその境界を定めることを求める訴えであって、裁判所が境界を定めるに当たっては、当事者の主張に拘束されず、控訴された場合も民訴法三八五条【引用者注:現三〇四条】の不利益変更禁止の原則の適用もない(最高裁昭和三七年(オ)第九三八号同三八年一〇月一五日第三小法廷判決・民集一七巻九号一二二〇頁参照)。右訴えは、もとより土地所有権確認の訴えとその性質を異にするが、その当事者適格を定めるに当たっては、何ぴとをしてその名において訴訟を追行させ、また何ぴとに対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決すべきであるから、相隣接する土地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、その当事者となるのである。したがって、右の訴えにおいて、甲地のうち境界の全部に接続する部分を乙地の所有者が時効取得した場合においても、甲乙両地の各所有者は、境界に争いがある隣接土地の所有者同士という関係にあることに変わりはなく、境界確定の訴えの当事者適格を失わない。なお、隣接地の所有者が他方の土地の一部を時効取得した場合も、これを第三者に対抗するためには登記を具備することが必要であるところ、右取得に係る土地の範囲は、両土地の境界が明確にされることによって定まる関係にあるから、登記の前提として時効取得に係る土地部分を分筆するためにも両土地の境界の確定が必要となるのである(最高裁昭和五七年(オ)第九七号同五八年一〇月一八日第三小法廷判決・民集三七巻八号一一二一頁参照)。

 

将来の給付の訴え

最判昭和56.12.16(大阪国際空港事件)

 民訴法二二六条【引用者注:現一三五条】はあらかじめ請求する必要があることを条件として将来の給付の訴えを許容しているが、同条は、およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。このような規定の趣旨に照らすと、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権についても、例えば不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合のように、右請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、債務者による占有の廃止、新たな占有権原の取得等のあらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについては請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない点において前記の期限付債権等と同視しうるような場合には、これにつき将来の給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえない。しかし、たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であつても、それが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができるとともに、その場合における権利の成立要件の具備については当然に債権者においてこれを立証すべく、事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものについては、前記の不動産の継続的不法占有の場合とはとうてい同一に論ずることはできず、かかる将来の損害賠償請求権については、冒頭に説示したとおり、本来例外的にのみ認められる将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有するものとすることはできないと解するのが相当である。

 

確認の利益

最判昭和47.2.15

 よつて按ずるに、いわゆる遺言無効確認の訴は、遺言が無効であることを確認するとの請求の趣旨のもとに提起されるから、形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、請求の趣旨がかかる形式をとつていても、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうるものと解するのが相当である。けだし、右の如き場合には、請求の趣旨を、あえて遺言から生ずべき現在の個別的法律関係に還元して表現するまでもなく、いかなる権利関係につき審理判断するかについて明確さを欠くことはなく、また、判決において、端的に、当事者間の紛争の直接的な対象である基本的法律行為たる遺言の無効の当否を判示することによつて、確認訴訟のもつ紛争解決機能が果たされることが明らかだからである。

 

形成の訴えの利益の喪失

最判昭和58.6.7

 株主総会決議取消の訴えのような形成の訴えは、法律に規定のある場合に限つて許される訴えであるから、法律の規定する要件を充たす場合には訴えの利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により右利益を喪失するに至る場合のあることは否定しえないところである。しかして、被上告人らの上告人に対する本訴請求は、昭和四五年一一月二八日に開催された上告会社の第四二回定時株主総会における「昭和四五年四月一日より同年九月三〇日に至る第四二期営業報告書、貸借対照表、損益計算書、利益金処分案を原案どおり承認する」旨の本件決議について、その手続に瑕疵があることを理由として取消を求めるものであるところ、その勝訴の判決が確定すれば、右決議は初めに遡つて無効となる結果、営業報告書等の計算書類については総会における承認を欠くことになり、また、右決議に基づく利益処分もその効力を有しないことになつて、法律上再決議が必要となるものというべきであるから、その後に右議案につき再決議がされたなどの特別の事情かない限り、右決議取消を求める訴えの利益が失われることはないものと解するのが相当である。
 そこで、叙上の見地に立つて、本件につきかかる特別の事情が存するか否かについて検討する。この点に関し、論旨は、本件決議が取り消されたとしても、右決議ののち第四三期ないし第五四期の各定時株主総会において各期の決算案は承認されて確定しており、右決議取消の効果は、右第四三期ないし第五四期の決算承認決議の効力に影響を及ぼすものではないから、もはや本件決議取消の訴えはその利益を欠くに至つたというのであるが、株主総会における計算書類等の承認決議がその手続に法令違反等があるとして取消されたときは、たとえ計算書類等の内容に違法、不当がない場合であつても、右決議は既往に遡つて無効となり、右計算書類等は未確定となるから、それを前提とする次期以降の計算書類等の記載内容も不確定なものになると解さざるをえず、したがつて、上告会社としては、あらためて取消された期の計算書類等の承認決議を行わなければならないことになるから、所論のような事情をもつて右特別の事情があるということはできない。また、論旨は、修正動議無視の瑕疵は、その後右動議にいう水俣病補償積立金及び水俣病対策積立金以上の額の水俣病の補償金及び対策費が支出され、右動議の目的がすでに達成されているので、右瑕疵は治癒され訴えの利益は失われたというが、被上告人らの上告人に対する本訴請求は、株主の入場制限及び修正動議無視という株主総会決議の手続的瑕疵を主張してその効力の否認を求めるものであるから、右修正動議の内容が後日実現されたということがあつても、そのことをもつて右特別の事情と認めるに足りず、他に右特別の事情を認めるに足る事実関係のない本件においては、訴えの利益を欠くに至つたものと解することはできない。これと同旨の原審の判断は、正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

 

任意的訴訟担当

最判昭和45.11.11

 ところで、訴訟における当事者適格は、特定の訴訟物について、何人をしてその名において訴訟を追行させ、また何人に対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決せられるべきものである。したがつて、これを財産権上の請求における原告についていうならば、訴訟物である権利または法律関係について管理処分権を有する権利主体が当事者適格を有するのを原則とするのである。しかし、それに限られるものでないのはもとよりであつて、たとえば、第三者であつても、直接法律の定めるところにより一定の権利または法律関係につき当事者適格を有することがあるほか、本来の権利主体からその意思に基づいて訴訟追行権を授与されることにより当事者適格が認められる場合もありうるのである。
 そして、このようないわゆる任意的訴訟信託については、民訴法上は、同法四七条【引用者注:現三七条】が一定の要件と形式のもとに選定当事者の制度を設けこれを許容しているのであるから、通常はこの手続によるべきものではあるが、同条は、任意的な訴訟信託が許容される原則的な場合を示すにとどまり、同条の手続による以外には、任意的訴訟信託は許されないと解すべきではない。すなわち、任意的訴訟信託は、民訴法が訴訟代理人を原則として弁護士に限り、また、信託法一一条が訴訟行為を為さしめることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨に照らし、一般に無制限にこれを許容することはできないが、当該訴訟信託がこのような制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合には許容するに妨げないと解すべきである。
 そして、民法上の組合において、組合規約に基づいて、業務執行組合員に自己の名で組合財産を管理し、組合財産に関する訴訟を追行する権限が授与されている場合には、単に訴訟追行権のみが授与されたものではなく、実体上の管理権、対外的業務執行権とともに訴訟追行権が授与されているのであるから、業務執行組合員に対する組合員のこのような任意的訴訟信託は、弁護士代理の原則を回避し、または信託法一一条の制限を潜脱するものとはいえず、特段の事情のないかぎり、合理的必要を欠くものとはいえないのであつて、民訴法四七条による選定手続によらなくても、これを許容して妨げないと解すべきである。したがつて、当裁判所の判例(昭和三四年(オ)第五七七号・同三七年七月一三日言渡第二小法廷判決・民集一六巻八号一五一六頁)は、右と見解を異にする限度においてこれを変更すべきものである。
 そして、本件の前示事実関係は記録によりこれを肯認しうるところ、その事実関係によれば、民法上の組合たる前記企業体において、組合規約に基づいて、自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を執行する権限を与えられた業務執行組合員たる上告人は、組合財産に関する訴訟につき組合員から任意的訴訟信託を受け、本訴につき自己の名で訴訟を追行する当事者適格を有するものというべきである。しかるに、これと異なる見解のもとに上告人が右の当事者適格を欠くことを理由に本件訴を不適法として却下した原判決は、民訴法の解釈を誤るもので、この点に関する論旨は理由がある。したがつて、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、更に本件を審理させるためこれを原審に差し戻すこととする。

 

相殺の抗弁と重複起訴の禁止

最判平成10.6.30

 1 民訴法一四二条(旧民訴法二三一条)が係属中の事件について重複して訴えを提起することを禁じているのは、審理の重複による無駄を避けるとともに、同一の請求について異なる判決がされ、既判力の矛盾抵触が生ずることを防止する点にある。そうすると、自働債権の成立又は不成立の判断が相殺をもって対抗した額について既判力を有する相殺の抗弁についても、その趣旨を及ぼすべきことは当然であって、既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することが許されないことは、原審の判示するとおりである(前記平成三年一二月一七日第三小法廷判決参照)。
 2 しかしながら、他面、一個の債権の一部であっても、そのことを明示して訴えが提起された場合には、訴訟物となるのは右債権のうち当該一部のみに限られ、その確定判決の既判力も右一部のみについて生じ、残部の債権に及ばないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和三五年(オ)第三五九号同三七年八月一〇日第二小法廷判決・民集一六巻八号一七二〇頁参照)。この理は相殺の抗弁についても同様に当てはまるところであって、一個の債権の一部をもってする相殺の主張も、それ自体は当然に許容されるところである。
 3 もっとも、一個の債権が訴訟上分割して行使された場合には、実質的な争点が共通であるため、ある程度審理の重複が生ずることは避け難く、応訴を強いられる被告や裁判所に少なからぬ負担をかける上、債権の一部と残部とで異なる判決がされ、事実上の判断の抵触が生ずる可能性もないではない。そうすると、右2のように一個の債権の一部について訴えの提起ないし相殺の主張を許容した場合に、その残部について、訴えを提起し、あるいは、これをもって他の債権との相殺を主張することができるかについては、別途に検討を要するところであり、残部請求等が当然に許容されることになるものとはいえない。
 しかし、こと相殺の抗弁に関しては、訴えの提起と異なり、相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり、相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから、一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存する場合を除いて、正当な防御権の行使として許容されるものと解すべきである。
 したがって、一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許されるものと解するのが相当である。

 

表見法理

最判昭和45.12.15

 ところで、所論は、まず、民法一〇九条、商法二六二条の規定により被上告会社についてDにその代表権限を肯認すべきであるとする。しかし、民法一〇九条および商法二六二条の規定は、いずれも取引の相手方を保護し、取引の安全を図るために設けられた規定であるから、取引行為と異なる訴訟手続において会社を代表する権限を有する者を定めるにあたつては適用されないものと解するを相当とする。この理は、同様に取引の相手方保護を図つた規定である商法四二条一項が、その本文において表見支配人のした取引行為について一定の効果を認めながらも、その但書において表見支配人のした訴訟上の行為について右本文の規定の適用を除外していることから考えても明らかである。したがつて、本訴において、Dには被上告会社の代表者としての資格はなく、同人を被告たる被上告会社の代表者として提起された本件訴は不適法である旨の原審の判断は正当である。
 そうして、右のような場合、訴状は、民訴法五八条【引用者注:現三七条】、一六五条【引用者注:現一〇二条】により、被上告会社の真正な代表者に宛てて送達されなければならないところ、記録によれば、本件訴状は、被上告会社の代表者として表示されたDに宛てて送達されたものであることが認められ、Dに訴訟上被上告会社を代表すべき権限のないことは前記説示のとおりであるから、代表権のない者に宛てた送達をもつてしては、適式を訴状送達の効果を生じないものというべきである。したがつて、このような場合には、裁判所としては、民訴法二二九条二項【引用者注:現一三八条】、二二八条一項【引用者注:現一三七条】により、上告人に対し訴状の補正を命じ、また、被上告会社に真正な代表者のない場合には、上告人よりの申立に応じて特別代理人を選任するなどして、正当な権限を有する者に対しあらためて訴状の送達をすることを要するのであつて、上告人において右のような補正手続をとらない場合にはじめて裁判所は上告人の訴を却下すべきものである。そして、右補正命令の手続は、事柄の性質上第一審裁判所においてこれをなすべきものと解すべきであるから、このような場合、原審としては、第一審判決を取り消し、第一審裁判所をして上告人に対する前記補正命令をさせるべく、本件を第一審裁判所に差し戻すべきものと解するを相当とする。しかるに、原審がDに被上告会社の代表権限がない事実よりただちに本件訴を不適法として却下したことは、民訴法の解釈を誤るものであつて、この点に関する論旨は理由がある。

 

信義則

最判昭和51.3.23

 右の事実関係に照らすと、被上告人が、上告人の主張に沿つて、本件売買契約の無効、取消、解除の主張を撤回し、右売買契約上の自己の義務を完全に履行したうえ、再反訴請求に及んだところ、その後に上告人は、一転して、さきに自ら否認し、そのため被上告人が撤回した取消、解除の主張を本件売買契約の効力を争うための防禦方法として提出したものであつて、上告人の右のような態度は、訴訟上の信義則に著しく反し許されないと解するのが、相当である。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解を主張するか、原判決の結論に影響を及ぼさない部分を非難するものに帰し、採用することができない。

 

釈明義務

最判平成7.10.24

 そこで、検討するのに、本件においては、公図の記載等によれば、本件係争部分がすべて上告人所有の本件(一)土地に該当するとの上告人の主位的主張を認めることは困難であるとしても、上告人及びその先代が、上告人耕作地は一体として本件(一)土地であるとの認識の下に、長年にわたりこれを平穏に占有してきたことは原審の認定するところであって、上告人が前記予備的主張を維持していれば、上告人が時効により本件係争部分の所有権を取得したとして、本件所有権確認請求が認容されることも十分に考えられる(ちなみに、被上告人がD外一名から本件(二)土地を買い受けたのが右時効完成後であるとしても、原審の認定によれば、同土地が本件係争部分に含まれるか否かもまた確定し得ないことになるから、必ずしも上告人が本件係争部分の時効取得を被上告人に対抗し得ないことになるものではない。)。
 そうすると、上告人がいったん取得時効の予備的主張を提出しながら、次回の口頭弁論期日に至ってこれを撤回したのは、上告人の誤解ないし不注意に基づくものとみられるのであって、原審としては、右撤回について上告人の真意を釈明し、その結果、上告人が右予備的主張を維持するというのであれば、その主張に係る取得時効の成否について更に審理を尽くした上、本件係争部分の所有権の帰属について判断すべきものである。
 したがって、原審が、右のような措置に出ることなく上告人の本件所有権確認請求を棄却したのは、釈明権の行使を怠り、ひいては審理不尽、理由不備の違法を犯したものといわなければならず、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。これと同旨をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中上告人敗訴の部分は破棄を免れない。そこで、本件については、右部分について更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻すこととする。

 

主要事実と間接事実

最判昭和46.6.29

 原告の請求をその主張した請求原因事実に基づかず、主張しない事実関係に基づいて認容し、または、被告の抗弁をその主張にかかる事実以外の事実に基づいて採用し原告の請求を排斥することは、所論弁論主義に違反するもので、許されないところであるが、被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もつて右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によつて主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもつぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかつたためであつて、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。本件についてこれをみるに、上告人において、訴外Dの被上告人に対する弁済を主張するについては、訴外Dにおいて債務の履行に適合する給付をしたことのほか、右給付が本件手形金債権によつて担保された原判示の原因債権に対応する債務の履行としてなされたものであることの二つの点を立証する責務を負うものであるところ、原判決は、その措辞に正鵠を欠く点はあるが、要するに、Dが被上告人に支払つた原判示の金員は、Dにおいて別に被上告人に対して負担していた五〇万円の借入金債務の内入れ弁済として支払つたものであることを認定することにより、上告人の抗弁は、後者の点についての立証を欠くものとしてこれを排斥したものと認められる。してみれば、原判決にはなんら弁論主義違背のかどはないものというべきである。また、原判決は、Dの支払にかかる金員は別口の債務に全額充当されることを確定したのであるから、原審が所論法定充当の規定の適用を考慮する余地はなかつたものであり、この点においても原判決に所論の違法はない。なお、口頭弁論を再開しなかつた原審の措置を違法として非難する所論は、裁判所の裁量に属する行為について不服を述べるものにすぎず、また、Dが前記金員の支払に際し、これを本件手形金の支払に充当すべき旨指定をしたとして、原審の事実認定を非難する所論は、記録によるも右指定をなした事実が原審で主張された事実は認められないから、その前提を欠くことに帰する。したがつて、論旨は、いずれも採用することができない。

 

間接事実の自白

最判昭和41.9.22

 上告人の父Dの被上告人らに対する三〇万円の貸金債権を相続により取得したことを請求の原因とする上告人の本訴請求に対し、被上告人らが、Dは右債権を訴外Eに譲渡した旨抗弁し、右債権譲渡の経緯について、Dは、Eよりその所有にかかる本件建物を代金七〇万円で買い受けたが、右代金決済の方法としてDが被上告人らに対して有する本件債権をEに譲渡した旨主張し、上告人が、第一審において右売買の事実を認めながら、原審において右自白は真実に反しかつ錯誤に基づくものであるからこれを取り消すと主張し、被上告人らが、右自白の取消に異議を留めたことは記録上明らかである。
 しかし、被上告人らの前記抗弁における主要事実は「債権の譲渡」であつて、前記自白にかかる「本件建物の売買」は、右主要事実認定の資料となりうべき、いわゆる間接事実にすぎない。かかる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しないのはもちろん、自白した当事者を拘束するものでもないと解するのが相当である。しかるに、原審は、前記自白の取消は許されないものと判断し、自白によつて、DがEより本件建物を代金七〇万円で買い受けたという事実を確定し、右事実を資料として前記主要事実を認定したのであつて、原判決には、証拠資料たりえないものを事実認定の用に供した違法があり、右違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

自白の撤回

最判昭和25.7.11

 当事者の自白した事実が真実に合致しないことの証明がある以上その自白は錯誤に出たものと認めることができるから原審において被上告人の供述其他の資料により被上告人の自白を真実に合致しないものと認めた上之を錯誤に基くものと認定したことは違法とはいえない。論旨は独自の見解に基くものであるから採用し難い。

 

証言拒絶権

最決平成18.10.3(NHK記者証言拒絶事件)

 民訴法は,公正な民事裁判の実現を目的として,何人も,証人として証言をすべき義務を負い(同法190条),一定の事由がある場合に限って例外的に証言を拒絶することができる旨定めている(同法196条,197条)。そして,同法197条1項3号は,「職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合」には,証人は,証言を拒むことができると規定している。ここにいう「職業の秘密」とは,その事項が公開されると,当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解される(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。もっとも,ある秘密が上記の意味での職業の秘密に当たる場合においても,そのことから直ちに証言拒絶が認められるものではなく,そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められると解すべきである。そして,保護に値する秘密であるかどうかは,秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべきである。
 報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので,取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして,当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。
そして,この比較衡量にあたっては,次のような点が考慮されなければならない。
 すなわち,報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の知る権利に奉仕するものである。したがって,思想の表明の自由と並んで,事実報道の自由は,表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることはいうまでもない。また,このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには,報道の自由とともに,報道のための取材の自由も,憲法21条の精神に照らし,十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和44年(し)第68号同年11月26日大法廷決定・刑集23巻11号1490頁参照)。取材の自由の持つ上記のような意義に照らして考えれば,取材源の秘密は,取材の自由を確保するために必要なものとして,重要な社会的価値を有するというべきである。そうすると,当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段,方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり,証人は,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。

 

文書の成立の真正(二段の推定)

最判昭和50.6.12

 私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、右印影は名義人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されるところ(最高裁昭和三九年(オ)第七一号同年五月一二日第三小法廷判決・民集一八巻四号五九七頁ほか参照)、右にいう当該名義人の印章とは、印鑑登録をされている実印のみをさすものではないが、当該名義人の印章であることを要し、名義人が他の者と共有、共用している印章はこれに含まれないと解するのを相当とする。
 これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実によれば、「本件各修正申告書の上告人名下の印影を顕出した印章は、上告人ら親子の家庭で用いられている通常のいわゆる三文判であり、上告人のものと限つたものでない」というのであるから、右印章を本件各申告書の名義人である上告人の印章ということはできないのであつて、その印影が上告人の意思に基づいて顕出されたものとたやすく推定することは許されないといわなければならない。

 

文書提出義務の範囲

最決平成11.11.12

 1 【要旨第一】ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二〇条四号ハ【引用者注:現二二〇条四号ニ】所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解するのが相当である。
 2 これを本件についてみるに、記録によれば、銀行の貸出稟議書とは、支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について、本部の決裁を求めるために作成されるものであって、通常は、融資の相手方、融資金額、資金使途、担保・保証、返済方法といった融資の内容に加え、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見などが記載され、それを受けて審査を行った本部の担当者、次長、部長など所定の決裁権者が当該貸出しを認めるか否かについて表明した意見が記載される文書であること、本件文書は、貸出稟議書及びこれと一体を成す本部認可書であって、いずれも抗告人がJに対する融資を決定する意思を形成する過程で、右のような点を確認、検討、審査するために作成されたものであることが明らかである。
 3 右に述べた文書作成の目的や記載内容等からすると、銀行の貸出稟議書は、銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成される文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。したがって、【要旨第二】貸出稟議書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解すべきである。そして、本件文書は、前記のとおり、右のような貸出稟議書及びこれと一体を成す本部認可書であり、本件において特段の事情の存在はうかがわれないから、いずれも「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるというべきであり、本件文書につき、抗告人に対し民訴法二二〇条四号に基づく提出義務を認めることはできない。

 

証明度

最判昭和50.10.24(ルンバール事件)

 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。

 

証明責任の転換

最判平成4.10.29(伊方原発訴訟)

 以上の点を考慮すると、右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
 原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。

 

争点効

最判昭和44.6.24

 所論の別件訴訟について上告人(別件訴訟の被上告人)勝訴の確定判決があつた事実は、当裁判所に顕著な事実である。しかし、右別件訴訟における上告人(別件訴訟の被上告人)の請求原因は、被上告人(別件訴訟の上告人)所有にかかる原判決末尾添付の別紙目録記載の建物(以下単に「本件建物」という。)およびその敷地(以下両者を指称するときは、単に「本件不動産」という。)について、被上告人と上告人との間に売買契約が締結され、その旨の所有権移転登記を経由したが、被上告人(別件訴訟の上告人)が約定の明渡期日に至つても、本件建物を明け渡さないので、上告人(別件訴訟の被上告人)は、右契約の履行として本件建物の明渡および約定の明渡期日の翌日以降の右契約不履行による損害賠償としての金銭支払を求める、というのであり、右別件訴訟の確定判決は、被上告人(別件訴訟の上告人)主張の右契約の詐欺による取消の抗弁を排斥して、上告人(別件訴訟の被上告人)の請求原因を全部認容したものである。されば、右確定判決は、その理由において、本件売買契約の詐欺による取消の抗弁を排斥し、右売買契約が有効であること、現在の法律関係に引き直していえば、本件不動産が上告人(別件訴訟の被上告人)の所有であることを確認していても、訴訟物である本件建物の明渡請求権および右契約不履行による損害賠償としての金銭支払請求権の有無について既判力を有するにすぎず、本件建物の所有権の存否について、既判力およびこれに類似する効力(いわゆる争点効、以下同様とする。)を有するものではない。一方、本件訴訟における被上告人の請求原因は、右本件不動産の売買契約が詐欺によつて取り消されたことを理由として、本件不動産の所有権に基づいて、すでに経由された前叙の所有権移転登記の抹消登記手続を求めるというにあるから、かりに、本件訴訟において、被上告人の右請求原因が認容され、被上告人勝訴の判決が確定したとしても、訴訟物である右抹消登記請求権の有無について既判力を有するにすぎず、本件不動産の所有権の存否については、既判力およびこれに類似する効力を有するものではない。以上のように、別件訴訟の確定判決の既判力と本件訴訟において被上告人勝訴の判決が確定した場合に生ずる既判力とは牴触衝突するところがなく、両訴訟の確定判決は、ともに本件不動産の所有権の存否について既判力およびこれに類似する効力を有するものではないから、論旨は採るをえない。なお、右説示のとおり、両訴訟の確定判決は、ともに本件不動産の所有権の存否について既判力およびこれに類似する効力を有するものではないから、上告人は、別に被上告人を被告として、本件不動産の所有権確認訴訟を提起し、右所有権の存否について既判力を有する確定判決を求めることができることは、いうまでもない。

 

一部請求

最判平成10.6.12

 一個の金銭債権の数量的一部請求は、当該債権が存在しその額は一定額を下回らないことを主張して右額の限度でこれを請求するものであり、債権の特定の一部を請求するものではないから、このような請求の当否を判断するためには、おのずから債権の全部について審理判断することが必要になる。すなわち、裁判所は、当該債権の全部について当事者の主張する発生、消滅の原因事実の存否を判断し、債権の一部の消滅が認められるときは債権の総額からこれを控除して口頭弁論終結時における債権の現存額を確定し(最高裁平成二年(オ)第一一四六号同六年一一月二二日第三小法廷判決・民集四八巻七号一三五五頁参照)、現存額が一部請求の額以上であるときは右請求を認容し、現存額が請求額に満たないときは現存額の限度でこれを認容し、債権が全く現存しないときは右請求を棄却するのであって、当事者双方の主張立証の範囲、程度も、通常は債権の全部が請求されている場合と変わるところはない。数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は、このように債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えれば、後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。したがって、右判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解するのが相当である。

 

基準時後の形成権

最判平成7.12.15

 借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時までに借地法四条二頃所定の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の右請求を認容する判決がされ、同判決が確定した場合であっても、賃借人は、その後に建物買取請求権を行使した上、賃貸人に対して右確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができるものと解するのが相当である。けだし、(1) 建物買買請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使することにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃借人の建物収去義務が消滅するに至るのである、(2) したがって、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当たるものではなく(最高裁昭和五二年(オ)第二六八号同五二年六月二〇日第二小法廷判決・裁判集民事一二一号六三頁)、訴訟法上も、前訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはないと解すべきものである、(3) そうすると、賃借人が前訴の事実訴口頭弁論終結時以後に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法三五条二項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当するものというべきであるからである。これと同旨の原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 

後遺症

最判昭和42.7.18

 一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合には、訴訟物は、右債権の一部の存否のみであつて全部の存否ではなく、従つて、右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である(当裁判所昭和三五年(オ)第三五九号、同三七年八月一〇日言渡第二小法廷判決、民集一六巻八号一七二〇頁参照)。ところで、記録によれば、所論の前訴(東京地方裁判所昭和三一年(ワ)第九五〇四号、東京高等裁判所同三三年(ネ)第二五五九号、第二六二三号)における被上告人の請求は、被上告人主張の本件不法行為により惹起された損害のうち、右前訴の最終口頭弁論期日たる同三五年五月二五日までに支出された治療費を損害として主張しその賠償を求めるものであるところ、本件訴訟における被上告人の請求は、前記の口頭弁論期日後にその主張のような経緯で再手術を受けることを余儀なくされるにいたつたと主張し、右治療に要した費用を損害としてその賠償を請求するものであることが明らかである。右の事実によれば、所論の前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべきであり、原判決に所論の違法は存しない。所論は、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用することができない。

 

反射効

最判昭和51.10.21

 所論は、要するに、上告人に対する前記判決は連帯保証債務の履行を命ずるものであるところ、その主債務は、右判決確定後、主債務関係の当事者である被上告人と右相続人ら間の確定判決により不存在と確定されたから、上告人は、連帯保証債務の附従性に基づき請求異議の訴により自己に対する前記判決の執行力の排除を求めることができる筋合であると主張する。そこで案ずるに、一般に保証人が、債権者からの保証債務履行請求訴訟において、主債務者勝訴の確定判決を援用することにより保証人勝訴の判決を導きうると解せられるにしても、保証人がすでに保証人敗訴の確定判決を受けているときは、保証人敗訴の判決確定後に主債務者勝訴の判決が確定しても、同判決が保証人敗訴の確定判決の基礎となつた事実審口頭弁論終結の時までに生じた事実を理由としてされている以上、保証人は右主債務者勝訴の確定判決を保証人敗訴の確定判決に対する請求異議の事由にする余地はないものと解すべきである。けだし、保証人が主債務者勝訴の確定判決を援用することが許されるにしても、これは、右確定判決の既判力が保証人に拡張されることに基づくものではないと解すべきであり、また、保証人は、保証人敗訴の確定判決の効力として、その判決の基礎となつた事実審口頭弁論終結の時までに提出できたにもかかわらず提出しなかつた事実に基づいてはもはや債権者の権利を争うことは許されないと解すべきところ、保証人敗訴判決の確定後において主債務者勝訴の確定判決があつても、その勝訴の理由が保証人敗訴判決の基礎となつた事実審口頭弁論の終結後に生じた事由に基づくものでない限り、この主債務者勝訴判決を援用して、保証人敗訴の確定判決に対する請求異議事由とするのを認めることは、実質的には前記保証人敗訴の確定判決の効力により保証人が主張することのできない事実に基づいて再び債権者の権利を争うことを容認するのとなんら異なるところがないといえるからである。

 

和解と錯誤

最判昭和33.6.14

 しかし、原判決の適法に確定したところによれば、本件和解は、本件請求金額六二万九七七七円五〇銭の支払義務あるか否かが争の目的であつて、当事者である原告(被控訴人、被上告人)、被告(控訴人、上告人)が原判示のごとく互に譲歩をして右争を止めるため仮差押にかかる本件ジヤムを市場で一般に通用している特選D印苺ジヤムであることを前提とし、これを一箱当り三千円(一罐平均六二円五〇銭相当)と見込んで控訴人から被控訴人に代物弁済として引渡すことを約したものであるところ、本件ジヤムは、原判示のごとき粗悪品であつたから、本件和解に関与した被控訴会社の訴訟代理人の意思表示にはその重要な部分に錯誤があつたというのであるから、原判決には所論のごとき法令の解釈に誤りがあるとは認められない。

 

和解の解除

最判昭和43.2.15

 訴訟が訴訟上の和解によつて終了した場合においては、その後その和解の内容たる私法上の契約が債務不履行のため解除されるに至つたとしても、そのことによつては、単にその契約に基づく私法上の権利関係が消滅するのみであつて、和解によつて一旦終了した訴訟が復活するものではないと解するのが相当である。従つて右と異なる見解に立つて、本件の訴提起が二重起訴に該当するとの所論は採用し得ない。

 

請求の交換的変更

最判昭和32.2.28

 然るに第一審判決が訴訟物として判断の対象としたものは前説示のとおり貸金債権であり、原審の認容した求償債権ではない。この両個の債権はその権利関係の当事者と金額とが同一であるというだけでその発生原因を異にし全然別異の存在たることは多言を要しない。そして本件控訴はいうまでもなく第一審判決に対してなされたものであり、原審の認容した求償債権は控訴審ではじめて主張されたものであつて第一審判決には何等の係りもない。原審が本件訴の変更を許すべきものとし、また求償債権に基づく新訴請求を認容すべしとの見解に到達したからとて、それは実質上初審としてなす裁判に外ならないのであるから第一審判決の当否、従つて本件控訴の理由の有無を解決するものではない。それ故原審は本件控訴を理由なきものとなすべきいわれはなく、単に新請求たる求償債権の存在を確定し「控訴人は被控訴人に対し金七一三、六二六円を支払わなければならない」旨の判決をなすべかりしものなのである。それは一見第一審判決と同旨の主文を徒らに繰り返えすが如き感を与えるかも知れないけれど、実は、法律上重大な意義を有する。けだし控訴を棄却する旨の判決は、民訴三八四条一項の法文上明らかなように第一審判決を相当とし維持さるべきことを宣告するものであり、この判決が確定することによつて第一審判決も確定し、その裁判の内容に従いそれに相応する既判力、執行力、形成力等を生ずるのである。同条二項にいわゆる「判決カ其ノ理由ニ依レハ不当ナル場合ニ於テモ他ノ理由ニ依リテ正当ナルトキ」とは、第一審判決でなされた判断そのものの正当性が判決の理由とするところによつては維持せられないが、他の理由によつて肯定される場合をいうのである。例えば第一審判決が原告主張の貸金債権が弁済により消滅したものとして原告の請求を排斥したものであるとき、控訴審においては弁済の事実は認められないけれど、免除の事実が認められ、結局当該貸金債権の消滅を確定した第一審判決の判断が維持し得るような場合をいうのであつて、本件のように第一審判決と第二審判決とがその判断の対象を異にし偶々その主文の文言が同一に帰するというが如き場合をも包含するものでないことは同条一項の法意に照らし疑なきところである。それ故原審が求償債権に基づく請求(新訴)を認容すべき旨を判示しながら主文で控訴棄却の判示をしたのは、前掲法条の適用を誤り理由齟齬の違法を来たしたものであり、原判決はこの点において破棄を免れず論旨は結局理由がある。
 なお貸金債権に基づく請求に関して附言する。原判決は既に説示したとおり主文で控訴を棄却する旨判示しているけれども、それは原審で新たに提起された求償債権に基づく新訴に対する裁判であつて貸金債権を認容した第一審判決の当否、換言すれば本件控訴の理由の有無については実質上何等の裁判もしてはいない。この事は原判文を一読して容易に了解し得るところである。それ故原判決に対する上告申立によつては、該請求は適法に当審に移審せられることはない。然らばこの請求についての訴訟関係如何というに、これを明確にすべき資料は記録上存在しない。従つて次に述べるが如く起り得べき各場合の事情に従い必ずしも単一ではない。すなわち被上告人は原審において前説示の如く訴の変更をしている。元来、請求の原因を変更するというのは、旧訴の繋属中原告が新たな権利関係を訴訟物とする新訴を追加的に併合提起することを指称するのであり、この場合原告はなお旧訴を維持し、新訴と併存的にその審判を求めることがあり、また旧訴の維持し難きことを自認し新訴のみの審判を求めんとすることがある。しかし、この後者の場合においても訴の変更そのものが許さるべきものであるというだけでは、これによつて当然に旧訴の訴訟繋属が消滅するものではない。けだし訴の変更の許否ということは旧訴の繋属中新訴を追加的に提起することが許されるか否かの問題であり、一旦繋属した旧訴の訴訟繋属が消滅するか否かの問題とは係りないところだからである。もし原告がその一方的意思に基づいて旧訴の訴訟繋属を消滅せしめんとするならば、法律の定めるところに従いその取下をなすか、或はその請求の拠棄をしなければならない。訴は原告の任意提起するところであるが、一旦提起した訴の繋属を消滅せしめんとするには、相手方の訴訟上受くべき利益も尊重さるべきであり、原告の意思のみに放任さるべきではない。それ故法律は原告の一方的意思に基づき訴訟繋属の消滅を来たすべき訴の取下、請求の拠棄等に関しては相手方の利益保護を考慮して、これが規定を設けている。すなわち「訴ノ取下ハ相手方カ本案ニ付準備書面ヲ提出シ、準備手続ユ於ナ申述ヲ為シ又ハ口頭弁論ヲ為シタル後ニ在リテハ相手方ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス」とされ(民訴二三六条二項、なお同条三項以下、並びに二三七条二項等参照)、また請求の抛棄はこれを調書に記載することによりその記載が確定判決と同一の効力を有するものとされているのである(同二〇三条)。されば原告が訴提起の当初から併合されていた請求の一につき既になしたる弁論の結果これを維持し得ないことを自認しこれを撤回せんとするならば、その請求を拠棄するか、または相手方の同意を得て訴の取下をしなければならない。このことは原告が訴の変更をなし、一旦旧訴と新訴につき併存的にその審判を求めた後、旧訴の維持すべからざることを悟つてその訴訟繋属を終了せしめんと欲する場合においても、その趣を異にするものではない。果して然りとすれば原告が交替的に訴の変更をなし、旧訴に替え新訴のみの審理を求めんとする場合においてもその理を一にするものといわなければならない。何となればただ原告が訴の変更と同時に旧訴の訴訟繋属を消滅せしめんと欲したというだけで、相手方保護の必要を無視して直ちに旧訴の訴訟繋属消滅の効果を認むべきいわれはないからである。

 

主観的追加的併合

最判昭和62.7.17

 しかし、甲が、乙を被告として提起した訴訟(以下「旧訴訟」という。)の係属後に丙を被告とする請求を旧訴訟に追加して一個の判決を得ようとする場合は、甲は、丙に対する別訴(以下「新訴」という。)を提起したうえで、法一三二条【引用者注:現一五二条】の規定による口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきであり、仮に新旧両訴訟の目的たる権利又は義務につき法五九条【引用者注:現三八条】所定の共同訴訟の要件が具備する場合であっても、新訴が法一三二条の適用をまたずに当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできないというべきである。けだし、かかる併合を認める明文の規定がないのみでなく、これを認めた場合でも、新訴につき旧訴訟の訴訟状態を当然に利用することができるかどうかについては問題があり、必ずしも訴訟経済に適うものでもなく、かえって訴訟を複雑化させるという弊害も予想され、また、軽率な提訴ないし濫訴が増えるおそれもあり、新訴の提起の時期いかんによっては訴訟の遅延を招きやすいことなどを勘案すれば、所論のいう追加的併合を認めるのは相当ではないからである。

 

固有必要的共同訴訟の成否

最判昭和43.3.15

 被上告人の被告Dに対する本訴請求が本件土地の所有権に基づいてその地上にある建物の所有者である同被告に対し建物収去土地明渡を求めるものであることは記録上明らかであるから、同被告が死亡した場合には、かりにEが同被告の相続人の一人であるとすれば、Eは当然に同被告の地位を承継し、右請求について当事者の地位を取得することは当然である。しかし、土地の所有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、いわゆる固有必要的共同訴訟ではないと解すべきである。けだし、右の場合、共同相続人らの義務はいわゆる不可分債務であるから、その請求において理由があるときは、同人らは土地所有者に対する関係では、各自係争物件の全部についてその侵害行為の全部を除去すべき義務を負うのであつて、土地所有者は共同相続人ら各自に対し、順次その義務の履行を訴求することができ、必ずしも全員に対して同時に訴を提起し、同時に判決を得ることを要しないからである。もし論旨のいうごとくこれを固有必要的共同訴訟であると解するならば、共同相続人の全部を共同の被告としなければ被告たる当事者適格を有しないことになるのであるが、そうだとすると、原告は、建物収去土地明渡の義務あることについて争う意思を全く有しない共同相続人をも被告としなければならないわけであり、また被告たる共同相続人のうちで訴訟進行中に原告の主張を認めるにいたつた者がある場合でも、当該被告がこれを認諾し、または原告がこれに対する訴を取り下げる等の手段に出ることができず、いたずらに無用の手続を重ねなければならないことになるのである。のみならず、相続登記のない家屋を数人の共同相続人が所有してその敷地を不法に占拠しているような場合には、その所有者が果して何びとであるかを明らかにしえないことが稀ではない。そのような場合は、その一部の者を手続に加えなかつたために、既になされた訴訟手続ないし判決が無効に帰するおそれもあるのである。以上のように、これを必要的共同訴訟と解するならば、手続上の不経済と不安定を招来するおそれなしとしないのであつて、これらの障碍を避けるためにも、これを必要的共同訴訟と解しないのが相当である。また、他面、これを通常の共同訴訟であると解したとしても、一般に、土地所有者は、共同相続人各自に対して債務名義を取得するか、あるいはその同意をえたうえでなければ、その強制執行をすることが許されないのであるから、かく解することが、直ちに、被告の権利保護に欠けるものとはいえないのである。そうであれば、本件において、所論の如く、他に同被告の承継人が存在する場合であつても、受継手続を了した者のみについて手続を進行し、その者との関係においてのみ審理判決することを妨げる理由はないから、原審の手続には、ひつきよう、所論の違法はないことに帰する。したがつて、論旨は採用できない。

 

補助参加の要件

最決平成13.1.30

 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1)民訴法42条所定の補助参加が認められるのは,専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は補助参加は許されない(最高裁昭和38年(オ)第722号同39年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事71号271頁参照)。そして,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。
 (2)【要旨】取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許されると解するのが相当である。けだし,取締役の個人的な権限逸脱行為ではなく,取締役会の意思決定の違法を原因とする,株式会社の取締役に対する損害賠償請求が認められれば,その取締役会の意思決定を前提として形成された株式会社の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがあるというべきであり,株式会社は,取締役の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有するということができるからである。そして,株式会社が株主代表訴訟につき中立的立場を採るか補助参加をするかはそれ自体が取締役の責任にかかわる経営判断の一つであることからすると,補助参加を認めたからといって,株主の利益を害するような補助参加がされ,公正妥当な訴訟運営が損なわれるとまではいえず,それによる著しい訴訟の遅延や複雑化を招くおそれはなく,また,会社側からの訴訟資料,証拠資料の提出が期待され,その結果として審理の充実が図られる利点も認められる。

 

補助参加の効力

最判昭和45.10.22

 まず、民訴法七〇条【引用者注:現四六条】の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人が、その訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法七〇条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法七八条【引用者注:現五三条】が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法七〇条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。

 

独立当事者参加

最判昭和48.4.24

 思うに、債権者が民法四二三条一項の規定により代位権を行使して第三債務者に対し訴を提起した場合であつても、債務者が民訴法七一条により右代位訴訟に参加し第三債務者に対し右代位訴訟と訴訟物を同じくする訴を提起することは、民訴法二三一条【引用者注:現一四二条】の重複起訴禁止にふれるものではないと解するのが相当である。けだし、この場合は、同一訴訟物を目的とする訴訟の係属にかかわらず債務者の利益擁護のため訴を提起する特別の必要を認めることができるのであり、また、債務者の提起した訴と右代位訴訟とは併合審理が強制され、訴訟の目的は合一に確定されるのであるから、重複起訴禁止の理由である審判の重複による不経済、既判力抵触の可能性および被告の応訴の煩という弊害がないからである。したがつて、債務者の右訴は、債権者の代位訴訟が係属しているというだけでただちに不適法として排斥されるべきものと解すべきではない。もつとも、債権者が適法に代位権行使に着手した場合において、債務者に対しその事実を通知するかまたは債務者がこれを了知したときは、債務者は代位の目的となつた権利につき債権者の代位権行使を妨げるような処分をする権能を失い、したがつて、右処分行為と目される訴を提起することができなくなる(大審院昭和一三年(オ)第一九〇一号同一四年五月一六日判決・民集一八巻九号五五七頁参照)のであつて、この理は、債務者の訴提起が前記参加による場合であつても異なるものではない。したがつて、審理の結果債権者の代位権行使が適法であること、すなわち、債権者が代位の目的となつた権利につき訴訟追行権を有していることが判明したときは、債務者は右権利につき訴訟追行権を有せず、当事者適格を欠くものとして、その訴は不適法といわざるをえない反面、債権者が右訴訟追行権を有しないことが判明したときは、債務者はその訴訟追行権を失つていないものとして、その訴は適法ということができる。

 

承継人

最判昭和41.3.22

 賃貸人が、土地賃貸借契約の終了を理由に、賃借人に対して地上建物の収去、土地の明渡を求める訴訟が係属中に、土地賃借人からその所有の前記建物の一部を賃借し、これに基づき、当該建物部分および建物敷地の占有を承継した者は、民訴法七四条【引用者注:現五〇条】にいう「其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタル」者に該当すると解するのが相当である。けだし、土地賃借人が契約の終了に基づいて土地賃貸人に対して負担する地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含するものであり、当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は、第三者が土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによつて、第三者の土地賃貸人に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとつて、右両者間に移行し、第三者は当該紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したものと解されるからである。これを実質的に考察しても、第三者の占有の適否ないし土地賃貸人に対する退去義務の存否は、帰するところ、土地賃貸借契約が終了していないとする土地賃借人の主張とこれを支える証拠関係(訴訟資料)に依存するとともに、他面において、土地賃貸人側の反対の訴訟資料によつて否定されうる関係にあるのが通常であるから、かかる場合、土地賃貸人が、第三者を相手どつて新たに訴訟を提起する代わりに、土地賃借人との間の既存の訴訟を第三者に承継させて、従前の訴訟資料を利用し、争いの実効的な解決を計ろうとする要請は、民訴法七四条の法意に鑑み、正当なものとしてこれを是認すべきであるし、これにより第三者の利益を損うものとは考えられないのである。そして、たとえ、土地賃貸人の第三者に対する請求が土地所有権に基づく物上請求であり、土地賃借人に対する請求が債権的請求であつて、前者と後者とが権利としての性質を異にするからといつて、叙上の理は左右されないというべきである。されば、本件土地賃貸借契約の終了を理由とする建物収去土地明渡請求訴訟の係属中、土地賃借人であつた第一審被告亡Dからその所有の地上建物中の判示部分を賃借使用するにいたつた上告人Aに対して被上告人がした訴訟引受の申立を許容すべきものとした原審の判断は正当であり、所論は採用できない。

 

不利益変更禁止の原則

最判平成6.11.22

 特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、その数量的な一部を少なくともその範囲においては請求権が現存するとして請求するものであるので、右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、債権の総額からではなく、一部請求の額から減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で案分した額を控除して認容額を決することは、一部請求を認める趣旨に反するからである。
 そして、一部請求において、確定判決の既判力は、当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には及ばないとすること判例であり(最高裁昭和三五年(オ)第三五九号同三七年八月一〇日第二小法廷判決・民集一六巻八号一七二〇頁)、相殺の抗弁により自働債権の存否について既判力が生ずるのは、請求の範囲に対して「相殺ヲ以テ対抗シタル額」に限られるから、当該債権の総額から自働債権の額を控除した結果残存額が一部請求の額を超えるときは、一部請求の額を超える範囲の自働債権の存否については既判力を生じない。したがって、一部請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第一審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。
 そうすると、原審の適法に確定した事実関係の下において、被上告人の請求債権の総額を第一審の認定額を超えて確定し、その上で上告人が原審において新たに主張した相殺の自働債権の額を請求債権の総額から控除し、その残存額が第一審判決の認容額を超えるとして上告人の控訴を棄却した原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 



Shotcutの使い方(動画の切り貼り、字幕、音入れ)

動画を切り貼りしたり、字幕(キャプション)を入れたり、音を重ねたりするのに最適な無料ソフトを発見しました。Shotcutです。Windows, mac, Linuxのそれぞれに対応しています。インストールはShotcut – Downloadから行ってください。

 

せっかくのよいソフトなのに、日本語で解説しているサイトが少なく、慣れるまでに時間がかかりました。これから使い始める人の時間を節約するために、基本的な使い方を共有します。

 

1.基本構成

赤色の①プレビューは動画のプレビューを確認するメイン画面です。②の作業机とは具体的にはプレイリストとフィルタです。ここで場面ごとの動画を加工します。③のタイムラインでひとつながりの動画を作っていきます。もしこの3画面構成になっていなければ、メニューアイコンの「プレイリスト」や「タイムライン」をクリックしてください。

 

2.動画の切り貼り

下のようなNHKクリエイトの「2000年 新年各地のカウントダウン」を編集して

 

下のような短縮版を作ってみましょう。

 

Shotcutの「ファイルを開く」で、NHKクリエイトからダウンロードした元ファイルを開きます。するとプレビュー画面で自動的に再生が始まるので、一時停止ボタンで止めます。

 

この元動画は3つの場面から構成されているので、新年の3秒前から2秒前を第一部分、2秒前から1秒前を第二部分、1秒前から新年を第三部分から取るようにします。

 

シークバーの先端と終端をマウスでドラッグ操作して、欲しい部分だけが青くなるようにしてから、プレビュー画面をドラッグで作業机であるプレイリストに送りましょう。後で微調整できるので多めに切り取るとよいです。

同様に第二部分と第三部分をプレイリストに切り出します。

次に、プレイリストにある動画をタイムラインに送ります。プレイリストにある動画をダブルクリックしてプレビュー画面に表示させてから、+記号をクリックして現在のトラックに付加します。これを3つの動画それぞれに対して行えば、3つの動画をつなげることができます。タイムラインの白い縦線をドラッグして先頭にまで持っていってプレビュー画面の再生ボタンを押せば、3つの動画が連続して再生されるはずです。

最後に微調整をしましょう。私の場合は第二部分が長すぎたので調整します。プレビューで再生させながら第二部分の欲しいところまで再生させて一時停止します。そこで横長の長方形のマークをクリックしてプレイヘッドで分割します。すると下図のように第二部分が2つに分割されたので、いらないほうを右クリックして削除します。要はいらない部分をプレイヘッドの分割で区切ってあげて削除するということです。

最後にメニューアイコンのExportを押して作業机にエクスポート画面を出し、YouTubeを選んでファイルをExportをクリックすれば出来上がりです。長い動画だとここで時間がかかります。

複数のファイルから切り貼りする場合も、「ファイルを開く」からファイルを開いて必要な部分をプレイリストに送ることを繰り返せば同じようにできます。

 

3.字幕(キャプション)をつける

このように字幕(キャプション)をつけるのが目標です。NHKクリエイトの「ポケットベル」を利用しました。

 

プレビュー画面のシークバーの先端と終端を調整して必要な箇所を選択し、プレイリストに追加するところまでは先ほどと同じです。それからメニューアイコンの「フィルター」を押し、プラス記号をクリックして、ディスプレイマークの中からテキストを選びます。

デフォルトでは画面下部にtimecodeが表示されると思いますが、その代わりに表示したいテキストを入力し(日本語入力ができないようならメモ帳等に入力した文字をコピーペーストすればうまくいきます)、色を適当に変え、枠と位置を調整します。

さらに字幕を追加してみましょう。今度はバックグラウンドの色も指定しました。

 

先ほどと同じようにプラス記号でタイムラインに追加して、エクスポートをすれば完成です。

 

4.音入れ

次は音を入れてみましょう。

 

無音の動画に音をつけることもできますし、最初から音声が入っている動画に音を重ねることもできます。上の作業で作った2つの動画をプレイリストに入れ、タイムラインでつなげます(今はわかりやすいように一つずつ作業していますが、本来は元動画からの編集を一挙に行ってエクスポートは1回だけするほうがよいです)。

 

タイムラインの三本線をクリックしてオーディオトラック追加を行うと、タイムラインの下のほうにA1が追加されるはずです。

 

NHKクリエイトの「キャット・スキャット」を使わせてもらいます。これをダウンロードして、「ファイルを開く」から開いてプレイリストに追加します。先ほど追加したA1をクリックして選んだ状態でプラス記号を押すと音楽が追加されます。音楽のほうを動画の長さに合わせて10秒くらいだけに縮めてプレイリストに追加してからA1に加えたほうが見やすいと思います。音楽も動画と同様に、横長の長方形でプレイヘッドで分割して削除をすれば微調整できます。

これでいつものようにエクスポートすれば出来上がりです。元々動画に音声があるところに重ねたくなければその部分のA1の音楽を削除すればよいですし、元々の動画の音声を消したければ、先ほどの字幕と同じようにフィルタからミュートを選べばよいです。

 

5.応用編

例えばこのようなものが作れます。


メニューバーの「ファイル」→「他を開く」→「色」で単色の動画を作ることができます。これに字幕を載せればオープニング画面のようなものが作れます。

タイムラインを使いこなすことができればやりたいことができます。オープニング画面を2つ作り、後半には字幕を増やして、そこの切り替わり目でNHKクリエイトの鈴の音がなるようにしました。音は何重にも重ねることができます。

 

 

いかがだったでしょうか。3Dテキストとかフェードアウトとか凝りだすときりがありませんが、一通りのことはこれでできるはずです。

 

それでは楽しい動画ライフをお送りください。

 




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