再現答案
以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。
〔設問1〕
(1) 本件訴訟は、債権者代位権(民法423条1項)に基づいて提起されている。この場合、債権者のXは、債務者Yの法定訴訟担当であると解される。そして、民法423条の6により、XはYに対して訴訟告知をしているはずである。
訴訟告知を受けて訴訟に参加する場合は、補助参加(42条)によることが多いが、だからといって共同訴訟参加(52条)が許されないということではない。そこで、52条1項の要件に沿って検討する。
本件訴訟の目的である、本件不動産のZの持分2分の1について、ZからYに対して遺産分割を原因とする所有権移転登記手続請求権は、当事者の一方であるX及び第三者Yについて合一にのみ確定すべき場合に当たる。よって、Yは、本件訴訟に共同訴訟参加をすることができる。
Yは、XY間に債権債務関係はないと考えており、もしそうであるなら本件訴訟の前提となっている被代位債権が存在しないことになるので、共同訴訟参加をすることができないようにも思われる。しかし、Yが主観的にそのように考えているということは、共同訴訟参加の際の訴訟資料には顕出されないため、共同訴訟参加をすることができると解する。
もっとも、本件訴訟が確定すると、信義則により、Yは後訴で本件貸付債権の不存在を主張することができなくなると解されるので、共同訴訟参加ではなく、独立当事者参加(47条1項)をするほうが望ましい。
(2) 独立当事者参加の要件は47条1項に規定されている。以下では前段と後段に分けて検討する。
① 47条1項前段について
既判力は、主文に包含するものに限り発生するので(114条1項)、被代位債権の判断について既判力は生じない。そうすると、後訴で本件貸付債権の不存在を主張することができるため、その点につき、訴訟の結果によって権利が害されることはない。
Xが敗訴した場合、ZからYに対して遺産分割を原因とする所有権移転登記手続を求めることができなくなるが、Yとしては、Zに対して登記名義の移転を求めるつもりはないので、訴訟の結果によって権利が害されることはない。
Xが勝訴して、本件不動産に執行をかけられると、YがZから責任を追及されるおそれがある。しかし、それは後訴で本件貸付債権の不存在を主張することによって防ぐべきことであり、本件訴訟の結果によって権利が害されるとは言えない。
② 47条1項後段について
本件訴訟の目的である、本件不動産のZの持分2分の1について、ZからYに対しての遺産分割を原因とする所有権移転登記手続請求権について、Yは自己の権利であることを主張していないため、要件を満たさない。
以上より、Yは、本件訴訟に独立当事者参加をすることはできない。
〔設問2〕
第1 本件判決の既判力がYに及ぶか否か
先述したように、債権者代位訴訟は、法定訴訟担当なので、当事者であるXが他人であるYのために原告となった場合に当たり、その他人であるYに既判力が及ぶ。
仮にYに既判力が及ばないとしても、Yは訴訟告知を受けているので、53条4項により、46条の参加的効力が及ぶ。この参加的効力は、敗訴責任の分担という補助参加の制度趣旨から、被参加人敗訴の場合は、主文に包含するものだけでなく、それを導くための理由についても効力が生じると解されている。既判力以上の効力である。本件では、被参加人Xが敗訴しており、Yに既判力以上の参加的効力が及ぶので、既判力が及ぶと言ってよい。
第2 本件判決の効力がAに及ぶか否か
繰り返し述べているように、債権者代位訴訟は、被代位債権の債務者のために債権者が訴訟を遂行するものである。第1で述べたように、本件判決の既判力がYに及ぶのだから、Yを介してその効力はAに及ぶ。
以上
感想
法律実務基礎科目に続いて債権者代位なのかと思い、準備してきた人なら正解筋をすらすらと書くことができるのだろうなと想像しました。私は準備をしておらず、よくわからないまま、全体の整合性もあまり考えず、目の前の記述に集中しました。