以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。
〔設問1〕
第1 訴訟承継
X2側としては、訴状を裁判所に提出した時点で訴えは係属しており(133条1項)、訴訟代理人がついている場合は当事者の死亡によっても代理権は消滅しないのであって(58条1項1号)、X1の相続人であるAなどに訴訟を承継させるべきであると主張すべきである(124条1項)。
第2 選定当事者
X2側としては、選定当事者(30条)として、X2の選定をすべきである。X1とX2はYから甲土地を共同で購入しているので、共同の利益を有する多数の者である。多数というのは二人以上であればよい。そしてX1及びX2は、団体としての組織を備えておらず、構成員の脱退によっても団体が存続することもないので、法人でない社団(29条)には該当しない。よって、そのX1及びX2の中から、全員のために原告となるべき一人として、X2を選定することができる(30条1項)。そうすると、X1は当初から訴訟行為を行っておらず、X1は当然に訴訟から脱退するので(30条2項)、X1の死亡は影響を及ぼさない。
〔設問2〕
第1 法人格否認の法理
Yは株式会社であり、会社は法人である(会社法3条)ので、Zとは別人格である。しかし、法人格が濫用されている場合や形がい化している場合には、法人格を否定するという法人格否認の法理が認められている。本件ではまさに強制執行を免れる目的で法人格が濫用されているので、Yの法人格が否定され、Zと別人格であるという主張ができなくなり、Zの主張を排斥できる。一般に、法人格否認の法理が主張されるのは、会社とその代表者との間のことであるが、本件ではY社の代表者であるBが関与してZに甲土地の所有権移転登記手続をしているので、YとZとの間で法人格を否認してもよい。
第2 対世効
会社に関する訴えでは、第三者に対しても効力を有するという対世効が定められている(会社法838条、846条の7等)。本件では、会社の組織に関する訴えではなく、通常の取引行為であるが、会社が関与していることに変わりはないので、X1らが対世効を主張することが考えられる。
第3 黙示の義務承継
YからZに対する贈与を原因とする所有権移転登記の存在を、前訴の係属中にX1らが知っていたとしたら、義務承継(50条1項)の申立てをしたはずである。そこで、X1らとしては、黙示の義務承継が成立していると主張したいところである。
第4 虚偽表示
YからZに対する贈与が、BとZとの通謀の虚偽表示により無効(民法94条)だと判断されると、Zの主張を排斥できる。
以上