問題
以下の[A][B]の文章を読んで,後記の各設問に答えなさい。
[A] インターネットの普及によって人々は,様々な情報に簡単にアクセスできるようになってきている。その一方で 「知識」と「情報」を概念的に区分することに固有の関心=利害(interest)を持つ人々も,いまだに存在する。例えば法律・医療・会計などの領域では,各種の専門家が一定の条件下で知識を独占的に運用し続けている。個々の学問分野において研究者が果たしている役割も,基本的にこれと同じである。すなわち研究者は 「斯界の権威」として学問的知識の生産や流通にコミットし続けている。
〔設問1〕
一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには,何が求められるであろうか。学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ,15行程度で論述しなさい。
[B] インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と,手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている。その一方で (地理的・空間的に)身近な人々との関係が より疎遠になる傾向が認められる 人々が中間的な集団から解放されることを「個人化(individualization 」と呼ぶならば,グローバル化は個人化と軌を一にしている。グローバル化=個人化は今日,社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。例えば家族や地域のコミュニティーは,その中で恒常的な解体圧力にさらされている。
〔設問2〕
グローバル化=個人化が進行する中で 「国家」はいかなる立場に置かれているであろうか。 具体的な事象を取り上げつつ,15行程度で論述しなさい。
練習答案
〔設問1〕
一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには、反証可能性に開かれていることが求められる。専門家集団が反証を試みてきた中で、その反証に耐えた知識が現時点での最良の「学問的知識」となる。このプロセスにより、「学問的知識」はたえずよりよいものになっていくのである。
「学問的知識」と「情報」との違いもそこにある。論文に代表される「学問的知識」には出典や実験方法などが必ず記されていて、読者が反証を試みることができる。もっとも、実際に反証を試みるのはたいていの場合で専門家集団であろう。そうなると論文執筆者も専門家集団の目を意識してできるだけ客観的になろうと努めるはずである。他方で「情報」には出典や実験方法などが基本的には書かれていない。そうなるとその情報を主観的に信じるか信じないかということになり、客観性や進歩が保証されない。
〔設問2〕
グローバル化=個人化が進行する中で、「国家」は影響が低下するという立場に置かれている。
「国家」はグローブ(地球)でも個人でもないので、中間的な集団である。家族や地域のコミュニティーよりも規模が大きく、強大な主権を有しているとはいえ、「国家」もやはり影響力が低下している。
タックスヘイブンがその具体的な事象である。投資会社やIT企業は、インターネットを活用することにより、事業所をどこに置くこともできる。そうなると法人税等の税金が最も低いところに事業所を構えるだろう。これがタックスヘイブンである。このようにして国家の徴税権が無効化されるのである。これについては、グローバルに対処するか、諦めて個人化の進むままにするかのどちらかしかない。
感想
出題趣旨を読んでもどう修正すればよいかわかりませんでした。「グローバル社会においては,国家そのものが「中間的な集団」として位置付けられつつあることを前提に,グローバル化(個人化)が,国家的な結合を弱める側面と再強化する側面を併せ持つことにつき,適切な具体例を挙げつつ説明することが求められる」と出題趣旨にありますが、結合を再強化する側面があるという根拠が不明です。