再現答案
以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを示す。
〔設問1〕
第1 本件条件の法的性質
本件条件の法的性質は、その根拠となった廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)14条の4第11項の文言から、本件許可処分に付された講学上の負担である。本件条件単独で効力が発生することはなく、本件許可処分と一体となってはじめて効力を発するものである。
第2 考えられる取消訴訟
1.本件許可処分の取消
第1で述べたことからすると、本件許可処分の取消訴訟を提起すべきだと思われる。この取消判決の効力は、本件許可処分がなかったことになるというものである。つまり、Aの事業範囲の変更がされず、ポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の積替え・保管を除く収集運搬業のままになるということである。これだとAの希望には沿わない。
2.本件条件部分のみの取消
そこで、本件条件部分のみの取消訴訟について検討する。このような処分の一部の取消訴訟が可能かどうか問題となり得るも、その必要性があり、論理的に考えて処分全体の取消ができるのであればその一部の取消もできるはずであるから、可能であると解する。この取消判決の効力は、事業範囲の変更が制約なしに認められるというものであり、PCB廃棄物の積替え・保管もできるようになるので、Aの希望を満たすことができる。
〔設問2〕
Aは、取消訴訟において、本件条件の違法性について、裁量権の逸脱・濫用及び信義則違反の主張をすべきである。
1.裁量権の逸脱・濫用
30条に沿って検討する。
本件条件は、その根拠となった法14条の4第11項に「生活環境の保全上必要な条件を付することができる」という文言からしても、また生活環境の保全のためには地域に応じた専門技術性が要求されるという性質からも、行政庁であるB県知事に裁量が認められる。
B県は、近隣の県では本件条件のような内容の条件は付されていないとしても、本件条件はその裁量の範囲内であり、申請書類に記載されていないことを考慮することも許されると反論することが想定される。
これに対し、Aとしては、近隣の県では本件条件のような内容の条件は付されていないことからして他者搬搬入・搬出をしないことが生活環境の保全のために必須の条件であるわけではなく、それを踏まえてもAが適切にPCB廃棄物を処理することができるかどうかを検討しなかったのは考慮不尽であり裁量権の逸脱・濫用であると主張すべきである。また、申請書類に記載されていないことを考慮することが直ちに違法となることはないにしても、もっぱらそのことだけを考慮するのは、他事考慮として裁量権の逸脱・濫用であるとも主張すべきである。
2.信義則違反
まず、行政庁の処分にも、信義則といった一般条項が適用される。
本件では、Aは、積替え・保管施設の建設に関し、他者搬入・搬出も目的としていることを明確に伝えた上でB県の関係する要綱等に従って複数回にわたり事前協議を行い、B県内のA所有地に高額な費用を投じ、B県知事から協議終了通知を送付されている。この時点で、Aには、他者搬入・搬出を含めてPCB廃棄物の収集運搬業を適法に営むことができるという期待が発生しており、この期待は保護されるべきである。にもかかわらず本件条件を付したのは信義則違反であると主張する。
これに対し、B県としては、事前協議後に従来の運用を変更するという事情変動が生じており、その新しい運用に従って公平に判断したと反論することが想定される。
Aは、そのような扱いは、それまでの経過を考慮すると、公平な扱いではないと再反論すべきである。
以上
感想
〔設問1〕では問題文の指示から義務付け訴訟は検討すべきでないと判断し、これしかないかなと思って書きました。〔設問2〕はわざわざ収録されている施行規則をに全く触れられず、記述が薄いような気がします。