令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案民事訴訟法

再現答案

 以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕

第1 ①の方法の適法性
 Xが当事者能力を有することを前提としても、Xが当事者として適切かどうかが問題となる。というのも、Xのような権利能力のない社団は、登記上、不動産の所有者になれないからである。もっとも、判例では、代表者名義の登記を求める訴えが認められており、甲土地の総有権の確認を求める本件訴えは、なおさら認められる。
 一般に、社団の代表者は、一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しているので、下線部の事情は問題とならない。問題になるとすれば、Xの内部で、A以外の訴えを提起することに反対している構成員が新たに代表者に選出され、その者が訴えを取り下げるということである。
 以上より、①の方法の訴えは適法である。
第2 ②の方法の適法性
 ②の方法のようにXの構成員らが原告となって甲土地の総有権の対外的な確認を求める訴えは、実体法的に合一にのみ確定すべきなので、40条1項の必要的共同訴訟である。必要的共同訴訟であるかどうかは、実体法を基準にして訴訟法的な調整をして判断するとしても、対外的な総有権の確認はどうしても合一にのみ確定すべきであり、調整の余地はない。しかも、これは、訴訟提起の段階から共同が求められる固有必要的共同訴訟である。
 Xの構成員全員が原告になれば訴えが適法であるが、下線部の事情からそれは不可能である。そうすると、②の方法の訴えは不適法であるようにも思われる。総有権ではなく入会権(固有必要的共同訴訟である)についてではあるが、その対外的な確認を求める訴えが、同調しない者を被告に回せば適法であると判断した判例がある。裁判を受ける権利を保障するためにそれが妥当である。
 その判例に従うと、本件では、訴えに反対する構成員を被告にして、賛成する構成員が原告になり、Xの構成員全員が当事者になれば、訴えが適法になる。

〔設問2〕
第1 本件別訴の適法性
 142条で重複起訴が禁止されているのは、裁判所の判断の矛盾を防ぐことが主な理由である。被告の応訴の労を省き、訴訟経済に資することも理由であるが、副次的な理由にすぎない。裁判所の判断の矛盾を防ぐという観点から、禁止される重複起訴に当たるかどうかは、当事者と訴訟物の同一性から判断する。
 当事者については、本件訴訟も、本件別訴も、XとYで同一である。被告と原告とが入れ替わっているが、裁判所の判断の矛盾を防ぐためには、当事者が同じであると考える。訴訟物については、本件訴訟は甲土地の総有権(所有権)、本件別訴は所有権に基づく甲土地の明渡請求権であり、異なっている。本件別訟が認容されたときの主文は、「Xは、Yに対し、本件土地を明け渡せ。」というものになり、本件訴訟が認容されたときの主文である本件土地がXの総有(所有)であることの確認と矛盾しない。既判力(114条1項)は、判決の主文に包含するものに限り生じるところ、これらの主文に矛盾がないからである。例えば、本件土地をXが総有(所有)していたとしても、何らかの事情によりXがYに対し本件土地を明け渡さなければならない可能性がある。
 以上より、本件別訴は、142条で禁止される重複起訴に当たらず、適法である。
第2 前訴判決の既判力の後訴に対する作用
 後訴では、既判力を前提にして判断しなければならず、既判力に反する判断をしてはならないという作用がある。
 前訴判決については、前訴の口頭弁論終結時に(民事執行法35条2項から既判力の基準時は口頭弁論終結時だと解される)、Xが甲土地の総有権(所有権)を有していなかったという判断について既判力が生じる。Yが甲土地を所有していたという判断に既判力が生じるわけではない。
 事案に即して検討すると、後訴では、前訴の口頭弁論終結時にXが甲土地の総有権(所有権)を有していなかったという判断を前提にして判断しなければならず、この判断に反する判断をしてはならないという作用が及ぶ。もっとも、前訴の口頭弁論終結時以降にXが所有権を取得したとか、XでもYでもない者(Xの構成員でもよい)が前訴の口頭弁論終結時から甲土地を所有しているとかの判断をすることは許される。
 以上より、前訴でXの請求を棄却する判決をYが得たとしても、上記の作用が及ぶだけであり、後訴のYの請求が認容されるとは限らない。

以上

感想

 一読したときは何を書いたらよいのだろうかと悩みましたが、一つずつ考えていき、結果的にはそれなりに書けたのではないかなというところまでたどり着きました。




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