平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案憲法

以下日本国憲法についてはその条数のみを示す。

 

第一 法律上の争訟性
 76条1項及びそれを受けた裁判所法3条1項の「法律上の争訟」とは、権利義務又は法律関係の紛争で、法令の適用により終局的に解決できるもののことである。地方議会のような団体には私的自治が認められるべきであるが、32条の裁判を受ける権利からしても、市民社会上の権利義務に関わることについては法律上の争訟に当たる。本件において、Xは処分2により除名されており、市民社会上の権利が奪われているので、法律上の争訟になる。

 

第二 21条で保障されるべき議員としての活動の自由
 1.Xの憲法上の主張
  21条で表現の自由が保障されているのは、前文及び1条の国民主権を担保することをその大きな目的としている。市議会議員として活動することはまさにそれである。よって、そのような表現の自由を制約するためには、やむにやまれぬ事由がなければならない。本件ではそうした事由がないのにXの議員としての活動の自由が処分2により制約されているので、違憲である。
 2.想定される反論
  表現の自由といえども、他の権利との調整といった内在的な制約に服する。特に内容中立的な規制が求められる場面は多々ある。本件においても、Dやその他の議員が安心して発言できるように、処分2が必要だった。
 3.私自身の見解
  上記のどちらの議論ももっともである。しかし表現(言論)には表現(言論)で対抗するのが基本である。本件においてXは除名処分を受けて言論の場そのものを奪われている。そのような制約をするにはやむにやまれぬ事由がなければならない。仮に処分1が正当だとしても、地方自治法135条3号の出席停止などの処分をすることもできた。出席停止処分をしても侮辱発言を繰り返すようなら除名もやむを得ないかもしれないが、そうではない本件において除名をする処分2は違憲である。

 

第三 19条で保障されるべき思想・良心の自由
 1.Xの憲法上の主張
  特定の内容の陳謝文を公開の議場において朗読されられることは、19条で保障されるべき思想・良心の自由を侵害して違憲である。
 2.想定される反論
  思想・良心の自由は、個人の内面にとどまる限り、絶対的に保障されるが、外的行為に関してはそうではない。国会の制定した立法や裁判所の判決に従って一定の外的行為が求められる場合もある。
 3.私自身の見解
  裁判の判決で謝罪広告を命じることは、その内容が一般的な謝罪の文言にとどまる限り、思想・良心の自由を侵害して違憲とならないという判例がある。本件の謝罪文の文言も、一般的な謝罪の文言である。よって処分1が思想・良心の自由を侵害して違憲となることはない。もっとも、自分の肉声で朗読することは、活字で掲載することよりも、思想・良心の自由を侵害する度合いが大きいと考えられる。しかし、国会で制定された地方自治法がそうした陳謝を想定しているのであって、やはり処分1が違憲となることはない。

以上




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