平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案民法

以下民法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
第1 ①の請求根拠
 AはCと雇用関係にある。雇用なのか請負なのかは契約の名称にとらわれず、被雇用者が雇用者の指揮監とく下にあるかどうかで判断する。雇用(623条)の本質は命を受けて労働に従事することにあり、請負(632条)の本質は方法は自由であってもよく仕事の完成にあるからである。本件において、Cは、Aに対し、重機や器具等を提供し、作業の場所、内容及び具体的方法について指示を与えていたので、AはCの指揮監とく下にあり、雇用だと言える。
 雇用契約には、付随義務として、雇用者が被雇用者の安全に配慮する義務が認められる。その安全配慮義務は、本件で具体的に言うと、このような事故を防ぐための命綱や安全ネットを用意したりすることである。Cはその義務を果たしていなかった。そのせいでAに損害が生じたので、債務不履行(415条)により、Cは、Aに生じた損害を賠償する責任を負う。
 損害賠償の範囲は、通常損害(416条1項)と予見可能な特別損害(416条2項)である。これは債権なので、消滅時効は10年である(167条1項)。消滅時効の起算点は、平成26年2月1日である。

第2 ②の請求根拠
 BにはAの撤去作業が終了しないうちに、本件家屋の1階壁面を重機で破壊し始めたという過失がある。Aの身体は法律上保護される利益である。Bの過失とAの損害との間には、社会通念上相当な因果関係がある。よって、Bは、Aに対し、その損害を賠償する責任を負う。
 先述したように、BとCは雇用関係にある。仮にそれが認められなくても、少なくとも、Cは使用者に代わって事業を監督する者である。先に述べたBの過失によるAの損害は、本件家屋の解体という事業の執行についてのものだといえる。「事業の執行につき」とは外形的に事業の執行であればよく、本件では問題なく認められるからである。以上より、Cは、使用者責任により、Aの損害を賠償する責任を負う(715条1項、2項)。Cは、命綱や安全ネットを用意するなどしていればAの損害を防ぐことができたと考えられるので、同条但書には該当しない。
 不法行為の賠償範囲は、416条が類推適用されると解されている。消滅時効は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年である(724条)。

第3 Aにとっての有利・不利
 平成26年2月1日から3年後の平成29年5月1日が経過しているので、消滅時効の観点からは、被害者であるAが損害及び加害者を知った時は平成26年2月1日ではなく同年10月1日だと主張できないことはないかもしれないが、①の請求のほうが有利である。また、立証責任の観点からも、②の請求ではBの過失を立証しなければならないので、やはり①の請求のほうが有利である。

[設問2]
第1 ㋐について
 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる(736条)。離婚に関して本件と関係するような要件は他に存在しない。そして協議離婚の際には、財産分与を請求することができる(768条1項)。夫婦には同居義務があるが(752条)、逆に夫婦でない者たちが同居してはいけないという決まりはない。このように、身分行為は当事者の意思を最大限尊重すべきなので、離婚は認められる。

第2 ㋑について
 財産分与は、身分行為であると同時に、財産行為でもある。よって、一定の場合には詐害行為取消権(424条1項、2項)の対象となる。その一定の場合というのは、財産分与に仮託して、不相応な財産を分与する場合である。本件土地は婚姻前からのCの特有財産であった。本件建物は婚姻後にCとFとの協力の下に建築したものである。特段の事情のない限り、夫婦の寄与は半々であると解すべきである。財産分与は離婚後の生活保障という意味合いもあるが、本件では離婚前後を通じて生活状況は変わっていないので、それを考慮する必要はない。
 債務者Cは、債権者Aを害することを知って、本件財産分与をした。転得者FもAを害することを知っていた。以上より、Aは、Cが行った財産分与を、本件土地の全部と本件建物の半分の範囲で、取り消すことを裁判所に請求することができる。

以上

 




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。