平成27(2015)年司法試験予備試験論文再現答案一般教養科目

問題

 次の文章は、東ヨーロッパ諸国の社会主義体制が1960年代から1970年代に経験した困難について述べたものである。これを読んで、後記の各設問に答えなさい。

 

(省 略)

 

〔設間1〕
 下線部から読み取れる内容を踏まえ、市場機構の機能に関する著者の見解を10行程度でまとめなさい。

 

〔設問2〕
 20世紀末の社会主義体制の瓦解後、市場機構は、名実ともに世界経済の中心的・主導的な機構 となった。その一方で、それが、各種の社会問題の温床となっているとの批判もある。これに関連して、経済社会の在り方をめぐって、以下の2つの理論的立場が想定される。

 A:市場機構に、社会的な規制を加える必要はない。
 B:市場機構に、社会的な規制を加える必要がある。

 ここで、仮にBの立場を取るとすれば、その正当性はいかに主張できるであろうか。具体的な 事例 (Bの主張の論拠となる事例) を取り上げつつ、15行程度で立論しなさい。

 

【出典】猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』

 

再現答案

[設問1]
 著者によると、市場機構の機能とは、価格という圧縮された形の情報を通じ、経済活動の様々な調整を、特定の人に依存するのではなく、匿名的に行うことである。
 経済活動は過去の反復ではなく、多くの不確実性が存在する。生産現場の人間が持っている、時々刻々変化するような情報が経済活動に大きな影響を及ぼすこともあるが、このような知識はデータとして誰かに伝えて活用することはできない。市場機構では、そうした様々な情報を価格に反映させて、その価格に応じて各人が経済活動をすることにより、その結果として、特定の人が政治的に決定するのではなく、経済活動が調整されるのである。

 

[設問2]
 著者によると、市場機構では、価格という情報を通じて、経済活動が調整される。よって、価格が適正につけられるように、社会的な規制を加える必要があると主張できる。
 例えば、ある商品市場において、独占的な供給者が存在すれば(あるいは多数の供給者が協定を結んで価格を決定することができれば)、その商品が稀少でなくても、価格をつり上げることができる。そのようにして供給者の利益が増大するが、全体としてはそれ以上の損害が生じる。こうした事態を避けるために、実際に、多くの国で独占禁止法が制定されている。
 また別の例として、賃金(労働力商品の価格)が挙げられる。その売り手である労働者は、命をつなぐために、安くてもそれを売らなければならない状況がある。買い手がそこにつけ込むと、希少性などの合理性から決まる水準よりも賃金が低くなってしまうことが想定される。実際、これに対しても、各種の労働法で対応がなされている。

以上

 

感想

よく書けていると自分では感じたのですがどうでしょうか。[設問2]では「20世紀末の社会主義体制の瓦解後…」といった前置きがあったので、このような古典的な例よりも、環境問題などを出して外部不経済の話をしたほうがよかったかなとも少し思いましたが、昔からの強い議論を使いました。

 

 



  • こんにちは、今年の予備試験を受けてきた者です。再現答案をこんなに早く作成されているなんて、感服です。

    ところで、一般教養の設問2ですが、「20世紀末の社会主義体制の瓦解後…」とあることから、市場機構がうまく機能しないことによる問題(独占や外部不経済など市場の失敗)よりも、むしろ市場機構が機能していることによって生じる問題を論じてほしかったのではないかと思いました。
    市場機構は均衡価格において各経済主体による最大限の努力を可能とし、それによって経済全体としての効率性をもたらすシステムです。他方、市場機構は各経済全体間の公平性に配慮するものではないので、貧富の格差が問題となります。そこで法律による市場機構の規制が必要となる、ということかと。
    経済学で重視される効率性と法学で重視される公平性との間でいかに折り合いをつけるか、というのが法と経済学における問題意識の核心だと思いますので。

    以上、なんとなく思ったところを書かせていただきました。お目汚し失礼致しました。

  • いい湯様

    やっぱり「20世紀末の社会主義体制の瓦解後…」が気になりますよねぇ。昨年は「エリート(選良)という言葉は,今日,両義的な意味合いで用いられる。」という前フリを意識した答案を作ったのに、出題趣旨ではその点に触れられていなかったので、今回は思い切って前フリを無視してみました。

    もっとも、貧富の格差といった問題が、市場機構がうまく機能しないことによる問題なのか、市場機構が機能していることによって生じる問題なのかは、どちらとも言えそうにも思えます。貧富の格差が生じるのは、労働市場がうまく機能しないからだと考えるのか、市場というのはそのようなもの(弱肉強食的なもの)だと考えて、市場外での対応を考えるかの違いです。言い換えると、著者が主張するような市場を通じた調整は、公平も含めて調整するのか、それとも効率重視で公平は含めないのかという、どちらの解釈もできるということです。私は前者に立っていました。

    考え出すと深みにはまってしまいそうです。


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