平成22年司法試験論文民事系第2問答案練習

問題

〔第2問〕(配点:200〔〔設問1〕から〔設問5〕までの配点の割合は,3.5:4:3.5:6.5:2.5〕)
次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問5〕までに答えなさい。

 


【事実】
1.印刷や製版の工場を個人で営むAとその妻であるBとの間には,昭和58年8月20日にC男が生まれた。やがて平成5年にBが病没すると,Aは,平成6年2月にDと婚姻した。この時,Dには子としてE女があり,Eは,昭和60年2月6日生まれである。
 Aには,主な資産として,工場とその敷地のほかに,当面は使用する予定がない甲土地があり,また,甲土地の近くにある乙土地とその上に所在する丙建物も所有しており,丙建物は,事務所を兼ねた商品の一時保管の場所として用いられてきた。これら甲,乙及び丙の各不動産は,いずれもAを所有権登記名義人とする登記がされている。

2.Cは,大学卒業後,いったんは大手の食品メーカーに就職したが,やがて,小さくてもよいから年来の希望であった出版の仕事を自ら手がけたいと考え,就職先を辞め,雑誌出版の事業を始めた。そして,事業が軌道に乗るまで,出版する雑誌の印刷はAの工場で安価に引き受けてもらうことになった。

3.そのころ,Aは,事業を拡張することを考えていた。そこで,Aは,金融の事業を営むFに資金の融資を要請し,両者間で折衝が持たれた結果,平成19年3月1日に,AとFが面談の上,FがAに1500万円を融資することとし,その担保として甲,乙及び丙の各不動産に抵当権を設定するという交渉がほぼまとまり,同月15日に正式な書類を調えることになった。なお,このころになって,Cの出版の事業も本格的に動き出し,そのための資金が不足になりがちであった。

4.ところが,平成19年3月15日にAに所用ができたことから,前日である14日にAはFに電話をし,「自分が行けないことはお詫びするが,息子のCを赴かせる。先日の交渉の経過を話してあり,息子も理解しているから,後は息子との間でよろしく進めてほしい。」と述べ,これをFも了解した。

5.平成19年3月15日午前にFと会ったCは,Fに対し,「父の方で資金の需要が急にできたことから,融資額を2000万円に増やしてほしい。」と述べた。そこで,Fは,一応Aの携帯電話に電話をして確認をしようとしたが,Aの携帯電話がつながらなかったことから,Aの自宅に電話をしたところ,Aは不在であり,電話に出たDは,Fの照会に対し「融資のことはCに任せてあると聞いている。」と答えた。これを受けFは,同日に,融資額を2000万円とし,最終の弁済期を平成22年3月15日として融資をする旨の金銭消費貸借の証書を作成し,また,2000万円を被担保債権の額とし,甲,乙及び丙の各不動産に抵当権を設定する旨の抵当権設定契約の証書が作成され,Cが,これらにAの名を記してAの印鑑を押捺した。

6.この2000万円の貸付けの融資条件は,返済を3度に分けてすることとされ,第1回は平成20年3月15日に500万円を,次いで第2回は平成21年3月15日に1000万円を,そして第3回は平成22年3月15日に500万円を支払うべきものとされた。また,利息は,年365日の日割計算で年1割2分とし,借入日にその翌日から1年分の前払をし,以後も平成20年3月15日及び平成21年3月15日にそれぞれの翌日から1年分の前払をすることとした。なお,遅延損害金については,同じく年365日の日割計算で年2割と定められた。

7.同じ3月15日の午後にAの銀行口座にFから2000万円が振り込まれた。これを受けCは,同日中に,日ごろから銀行口座の管理を任されているAの従業員を促し500万円を引き出させた上で,それを同従業員から受け取った。
 また,甲,乙及び丙の各不動産に係る抵当権の設定の登記も,同日中に申請された。これらの抵当権の設定の登記は,甲土地については,数日後に申請のとおりFを抵当権登記名義人とする登記がされた。しかし,乙及び丙の各不動産については,添付書面に不備があるため登記官から補正を求められたが,その補正はされなかった。その後,【事実】9に記すとおり,AF間に被担保債権をめぐり争いが生じたことから,乙及び丙の各不動産について抵当権の設定の登記の再度の申請がされるには至らなかった。

8.翌4月になって,甲,乙及び丙の各不動産の登記事項証明書を調べて不審を感じたAは,Cを問いただした。Cは,乙及び丙の各不動産について手続の手違いがあって登記の手続が遅れていると説明し,また,自分の判断で2000万円の借入れを決めたことを認めた。

9.借入れの経過に納得しないAは,弁護士Pに相談した。そして,Aは弁護士Pを訴訟代理人に選任した上で,平成19年6月1日,Fに対し,平成19年3月15日付けの消費貸借契約(以下「本件消費貸借契約」という。)に基づきAがFに対して負う元本返還債務が1500万円を超えては存在しないことの確認を求める訴え(以下「第1訴訟」という。)をJ地方裁判所に提起した。

 

〔設問1〕 【事実】1から9までを前提として,Fが,第1訴訟において,AがCに借入れの代理権でその金額に限度のないものを授与したとする主張,及びAがCに借入れの代理権でその金額の限度を1500万円とするものを授与したとする主張とを選択的にしたとする場合,それぞれの主張にとって,次に掲げる事実①及び事実②は法律上の意義を有するか,また,それを有すると考えられるときに,どのような法律上の意義を有するか,それぞれ理由を付して解答しなさい。
① 【事実】4に記す事実のうち,AがFに電話をして,3月15日に赴かせるCには交渉の経過を話してあり,それをCが理解しているから,後はCとの間でよろしく進めてほしい,と述べたこと。
② 【事実】5に記す事実のうち,Fが,Aの携帯電話に電話をして融資額の変更を確認しようとしたが,Aの電話がつながらなかったこと。

 

Ⅱ 【事実】1から9までに加え,以下の【事実】10から14までの経緯があった。
【事実】
10.Eは,AとDが婚姻して以来,A,D及びCと同居しており,その後は,Cと年齢が近かったこともあって,お互いに様々な悩みについて相談し合ったり,進路についてアドバイスをし合ったりしていたが,平成19年6月中旬ころ,Cの勧めもあって,Eは,Aらとの同居をやめて独立し,幼なじみのG女を誘って一緒に事業を始めることを決意した。そして,Eは,同月,アパートを借りてGと同居生活を始めた。

11.平成19年7月,Aは,乙土地及び丙建物につきFを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされていないことに乗じて,Eに対し,「いつもCの相談相手になり,励ましてくれてありがとう。私としては,今後もCにとって信頼できる友人として付き合ってほしいと願っている。また,独立して自分の道を歩もうとする君を大いに支援したいので,乙土地及び丙建物を君に贈与したい。」と述べた。

12.Eは,AがFから金銭を借り入れた事情や,その担保として甲土地,乙土地及び丙建物にFのための抵当権を設定する契約が結ばれたものの,乙土地及び丙建物については抵当権の設定の登記がされていないことなどについて,平成19年4月ころにAとCが話しているのを耳にしており,同年7月の時点でも,乙土地及び丙建物については抵当権の設定の登記がされていないことを知っていた。

13.しかし,Eは,Aから乙土地及び丙建物の贈与を受けることができれば,丙建物を取り壊して自分の住居を建築することができると算段し,乙土地及び丙建物にFのための抵当権の設定の登記がされていない事情を十分に認識した上で,Aによる乙土地及び丙建物の贈与の申出を受け入れ,平成19年7月27日,乙土地及び丙建物につき,贈与を登記原因としてAからEへの所有権移転登記がされた。

14.平成19年8月19日,Eは,乙土地上に自己の居住用建物を建築するため,同土地上にあった丙建物を取り壊した。これを知ったFは,弁護士Qを訴訟代理人に選任した上で,Eに対し,抵当権の侵害による不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起することとした。

 

〔設問2〕 【事実】1から14までを前提として,以下の⑴及び⑵に答えなさい。
⑴ 【事実】14に記す訴えに係る訴訟においてFの損害をどのようにとらえるべきかを検討するに当たり,留意すべき事項を挙げ,それらの事項についてどのように考えるべきか,想定される反論も考慮しつつ論じなさい。
⑵ 弁護士Qは,【事実】14に記す訴えに係る訴訟において,Eから,「丙建物については,Fのために抵当権の設定の登記がされていなかったので,Fは,Eに対し,Eの不法行為を理由とする損害賠償を請求することができない。」と反論されることを想定した。この反論の当否について,どのような再反論をすることができるかを含め,論じなさい。

 

Ⅲ 【事実】1から14までに加え,以下の【事実】15から17までの経緯があった。
【事実】
15.平成19年9月10日,Fは「被告E」と訴状に記載して,【事実】14に記す訴え(以下「第2訴訟」という。)をJ地方裁判所に提起した。第2訴訟は,被告側に訴訟代理人が選任されないまま進行した。第1回口頭弁論期日が開かれた後,口頭弁論が続行され,第3回口頭弁論期日までの間に,双方から事実に関する主張及びそれに対する認否が行われた。

16.弁護士Qは,第4回口頭弁論期日にこれまでどおり出頭し,J地方裁判所の法廷入口に用意された期日の出頭票の原告訴訟代理人氏名欄に自らの名前をボールペンで書き入れようとした際,これまでの口頭弁論期日にEとして出頭していた人物が,同じく出頭票の被告氏名欄にボールペンで「G」という氏名を記載した後に,慌ててその名前を塗りつぶして,「E」と記載したところを目撃した。
 そこで,弁護士Qは,不審に思い,第4回口頭弁論期日の冒頭において,Eとして出頭した人物に対し,「あなたは,先ほど,出頭票に「G」という今まで見たことがない名前を書いていませんでしたか。訴状には,「被告E」と記載されています。あなたは,本当にEさんですか。」と問いただした。すると,Eとして出頭した人物は,「実は,私は,Eと同居しているGです。」と述べ,次回期日には,Eを連れてくる旨を確約した。裁判所は,口頭弁論を続行することとし,第5回口頭弁論期日が指定された。

17.その後,第2訴訟に係る経緯をGから聞いたEは,訴訟代理人として弁護士Rを選任した。そして,第5回口頭弁論期日には,弁護士Q並びにE,G及び弁護士Rが出頭した。
 第5回口頭弁論期日においては,E本人が訴状の送達を受け,Gに対応を相談したところ,Gが,「この裁判は,あなたの身代わりとして私がするから任せてほしい。」と申し出たので,EがGに対し「任せる。」とこたえた,という事実が確認された。
 そして,弁護士Rは,「これまでにGがした訴訟行為は,すべて無効である。」と主張し,裁判所に対し,これを前提として手続を進めることを求めた。
 これに対し,弁護士Qは,「弁護士Rの主張は認められない。Gがした訴訟行為の効力はEに及ぶ。」と主張した。

 

〔設問3〕 【事実】1から17までを前提として,第2訴訟において,訴状の送達後,Gが第3回口頭弁論期日までの間にした訴訟行為の効力がEに及ぶかどうかについて,理由を付して論じなさい。

 

Ⅳ 【事実】1から9までに加え,以下の【事実】18から20までの経緯があった。
【事実】
18.第1訴訟の第1回口頭弁論期日は,平成19年7月27日に開かれ,訴状の陳述などが行われた。その後数回の期日を経て,平成20年4月11日に口頭弁論が終結し,同年6月2日にAの請求を全部認容する旨の終局判決が言い渡され,この判決が確定した。

19.平成21年4月23日に,Aは,弁護士Pを訴訟代理人に選任した上で,Fに対し,被担保債権(被担保債権は,【事実】9に記した本件消費貸借契約上の貸金返還請求権のみであるとする。)の全額が弁済により消滅したことを理由として,J地方裁判所に,甲土地の所有権に基づき甲土地に係る抵当権の設定の登記の抹消登記手続を求める訴え(以下「第3訴訟」という。)を提起した。

20.第3訴訟の第1回口頭弁論期日において,弁護士Pは,被担保債権に関し,「本件消費貸借契約に基づきAがFに対して負う元本返還債務の金額は1500万円であるところ,AはFに対し,平成20年3月15日に500万円,平成21年3月15日に1000万円をそれぞれ弁済した。」と主張した。
 この期日において,弁護士Pは,裁判長の釈明に対し,「平成20年3月15日にされた弁済が第1訴訟において主張されなかったのは,Aが,同弁済が第1訴訟において意味がある事実だとは思わなかったので,私に連絡を怠ったためである。」と陳述した。
 これに対し,Fの訴訟代理人である弁護士Qは,弁護士Pの被担保債権に関する主張のうち,平成20年3月15日の弁済については次回の口頭弁論期日まで認否を留保し,その余は認める旨の陳述をした。

 

〔設問4〕 【事実】1から9まで及び18から20までを前提として,第3訴訟に関する次の⑴及び⑵に答えなさい。
⑴ 第3訴訟の第1回口頭弁論期日後数日してされた次の弁護士Qと司法修習生Sの会話を読んだ上で,あなたが司法修習生Sであるとして,弁護士Qが示した課題(会話中の下線を引いた部分)を検討した結果を理由を付して述べなさい。
 ただし,信義則違反については論ずる必要がない。
 なお,貸金返還請求権については,利息及び遅延損害金を考慮に入れないものとする。

 

Q: 第1訴訟の確定判決の既判力が第3訴訟で作用することは理解できますか。

S: 第3訴訟の訴訟物は,所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権ですから,抵当権が消滅したかどうかが争点になります。そして,抵当権が消滅したかどうかを判断するためには,抵当権の付従性から,被担保債権が消滅したかどうかを判断しなければなりません。つまり,被担保債権である本件消費貸借契約上の貸金返還請求権の存否が,訴訟物である抵当権設定登記抹消登記請求権の存否にとって,いわゆる先決関係にあるということになります。

Q: そのとおりです。ですから,第1訴訟の確定判決の既判力の作用によって,私たちは,第3訴訟で,第1訴訟の口頭弁論が終結した平成20年4月11日の時点で,本件消費貸借契約上の元本返還請求権の金額が1500万円を超えていたことを主張できなくなります。この点は分かりますか。

S: はい。

Q: ところが,Aは,第3訴訟で,第1訴訟の口頭弁論終結前の平成20年3月15日にされた弁済を主張してきましたね。このような主張は許されてよいものでしょうか。

S: 確かにそうですね。信義則に反すると思います。

Q: いきなり信義則違反に飛び付くのは,いかがなものでしょうか。最終的には,信義則違反の主張をすることになるかもしれませんが,その前に,Aの弁済の主張が第1訴訟で生じた既判力によって遮断されるかどうかを検討すべきではないでしょうか。

S: すみません。先走り過ぎました。

Q: 第1回口頭弁論期日が終わってから,私なりに既判力について考えてみました。その結果,二つの法律構成が残ったのですが,そこから先の検討がまだ済んでいないのです。第2回口頭弁論期日のための準備書面をそろそろ書き始めなければなりませんので,あなたにも協力してほしいのです。

S: 分かりました。

Q: では,二つの法律構成を説明します。
 第1の法律構成(法律構成①)は,第1訴訟の訴訟物は元本返還債務の全体であって,Aの「1500万円を超えては存在しない」ことの確認を求めるという請求の趣旨は,例えば「1200万円を超えては存在しない」というような,より原告に有利な判決を求めないという意味において,原告が自ら,請求の認容の範囲を限定したものにすぎない,というものです。このように考えると,既判力の対象はあくまでも,元本返還債務の全体ですから,第1訴訟の確定判決の既判力によって,「平成20年4月11日の時点で元本債務は1500万円であった」ということが確定されることになります。
 第2の法律構成(法律構成②)も,やはり第1訴訟の訴訟物は元本返還債務の全体であるとするのですが,同債務のうち1500万円についてはAが請求を放棄したために,実際に審判対象となったのは1500万円を超える部分だというものです。このように考える場合には,第1訴訟の確定判決の既判力の客観的範囲は元本返還債務のうち1500万円を超える部分だけになりますが,請求の放棄,正確には請求の一部放棄の既判力により,元本債務の金額が1500万円であったことが確定されることになります。
 理解できましたか。

S: はい。

Q: それでは,これから,あなたにお願いする課題を説明します。法律構成①と法律構成②のそれぞれについて,長所と短所を検討してください。ただし,最高裁判所の判例に適合的であるから良い,あるいは,最高裁判所の判例に反するから駄目だ,というような紋切り型の答えでは困ります。

S: 分かりました。頑張ってみます。

 

⑵ 審理の結果,被担保債権の元本が500万円残っているとの結論に至った場合,裁判所は,Fに対し,AがFに500万円を支払うことを条件として,抵当権の設定の登記の抹消登記手続をすることを命ずる判決をすることができるか,Aの請求を全部棄却することと比較しながら,論じなさい。
 なお,貸金返還請求権については,利息及び遅延損害金を考慮に入れないものとする。

 

Ⅴ 【事実】1から9までに加え,以下の【事実】21から25までの経緯があった。
【事実】
21.Dは平成20年2月16日に病没した。

22.Aは,外国に住んでいる親族の結婚式に出席するため,5日間の外国旅行に出ることとなった。Aは,出発前夜である平成22年1月12日に,CとEを呼び,「今まで隠していたが,実はEは私とDとの間にできた子で,私はEを認知することにした。認知届の書類にもすべて私が必要な項目を埋めて署名押印しておいたから,Eは,私が旅行に出ている間に,認知届の日付を埋めた上で必ず市役所に提出しておいてほしい。」と告げた。突然の話にEは驚いたものの,了解し,認知届の提出に必要な書類一式をAから受け取った。

23.翌朝,Aは旅行に出発した。同月14日,Aは事故に巻き込まれ,死亡した。Eは,この件の事後処理に忙殺され,認知届を提出しないままになっている。

24.Aの遺品を整理していたCは,同年2月3日に,Aの愛用していた机の引出しの奥に,「遺言」と表面に書かれた1通の封書を見つけた。この封書には自筆証書遺言として適式な証書が入っていて,そこには,「私が死亡したときは,私の遺産はCを2,Eを1とする割合で分けること。」とAの筆跡で記されていた。遺言の日付は平成20年4月6日となっていた。

25.Hは生前のAに対し600万円を貸し付けており,平成22年4月現在,この貸金債権の弁済期は既に到来している。平成22年5月になって,Hが,前記貸金債権に係る元本の返済をC及びEに対し請求してきた。

 

〔設問5〕 【事実】1から9まで及び21から25までを前提として,C及びEはHに対し元本の支払義務を負うか,支払義務を負うとした場合,いくらの支払義務を負うか,これらについて,EがAの子であるかどうかにも言及しつつ論じなさい。

 

練習答案

以下民法についてはその条数のみを示す。

 

[設問1]
 第1訴訟におけるFの、AがCに借入れの代理権でその金額に限度のないものを授与したとする主張(以下「主張①」とする)は、代理権授与の表示による表見代理(109条)を根拠に請求棄却を求めるものであるのに対して、AがCに借入れの代理権でその金額の限度を1500万円とするものを授与したとする主張(以下「主張②」とする)は、権限外の行為の表見代理(110条)を根拠に請求棄却を求めるものである。
 主張①にとって、事実①はFに対してAがCに本件借入れの代理権を与えた旨を表示したことを基礎付ける法律上の意義を有する。事実②は法律上の意義を有さない。
 主張②にとって、事実①は基本代理権(CがAのために1500万円を限度としてFから借入れをするという代理権)の存在を基礎づけるという法律上の意義と、FがCにAのために2000万円の借入れをする代理権があると信ずべき正当な理由があることを基礎づける法律上の意義を有する。事実②は、上記正当な理由がないことを基礎づける法律上の意義を有する。

 

[設問2]
 (1)
 不法行為に基づく損害賠償は、権利利益の侵害によって生じた損害の賠償である(709条)。損害が生じたか否かということに留意すべきである。
 抵当権とは、被抵当物の交換価値を担保にするものなので、その交換価値が毀損されれば損害が生じたと考えるべきである。
 しかし他方で抵当権は質権と異なり、抵当権設定者が被抵当物を使用し続けられるところに特徴があり、その使用は所有権の性質からして自由であるべきだという反論が想定される。しかしながら所有権も抵当権を設定することによって制約され得るのであって、殊更に被抵当物の交換価値を損なうような使用は制限されるべきである。
 本件について見ると、丙建物の取り壊しは被抵当物である丙建物の交換価値をゼロにする行為であり、殊更に交換価値を損なう行為である。
 以上より、本件ではFの損害が生じていると言える。
 (2)
 設問中のEの反論は、不動産に関する物件の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができないという177条をその根拠にしている。丙建物が不動産で抵当権が物件であることに争いはないはずだから、Eが第三者に当たるかどうかが問題となる。
 177条は真実の権利と取引の安全の調整規定である。よってこの2つの観点から第三者の範囲が画定されるべきである。
 本件では、真実の権利者であるFは本件の抵当権を登記するために自分の側としてできることはしていたと考えられる。登記官から求められた補正をすれば登記できるところまで進んでいたにもかかわらず、Aとの間に争いが生じたためにそのままになっていたのである。他方でEはこうした事情を全て知っていた。登記を見て抵当権が存在しないと誤信していたわけではない。むしろ登記がなされていないことを希貨【原文ママ】としてFの抵当権を害そうとする意図さえ窺える。いわゆる背信的悪意者である。
 以上より、Eは177条の第三者には当たらないので、この反論は不当である。

[設問3]
 実体的にも形式的にも被告はEであり、Gが被告になる余地はない。また本件第2訴訟はJ地方裁判所に提起されているので、法定代理人か弁護士でなければ訴訟代理人になれない(民事訴訟法54条1項本文)ところ、Gは法定代理人でも弁護士でもない。Gが補佐人(民事訴訟法60条)として裁判所から許可を得たということもない。
 こうした事情からすると、Gが第3回口頭弁論期日までの間にした訴訟行為は無効とせざるを得ない。仮にこれを有効とすると本人になりすますことで容易に弁護士でもない者が訴訟行為をすることができるようになってしまい、法秩序が乱されるおそれが生じる。
 弁護士Qが、Gがした訴訟行為の効力はEに及ぶと主張している理由は、これまでに積み上げた訴訟行為を無に帰して今より不利な立場に立ちたくないということだと推測できる。これに関しては、弁護士Rの主張如何では時期に遅れた攻撃防御(民事訴訟法156条)として裁判所が取り上げないということで、一定弁護士Qのけねんに対応できる。

 

[設問4]
 (1)
 1.法律構成①の長所と短所
 法律構成①の長所は、一挙にはっきりと紛争を解決できるということである。短所は訴訟係属中に弁済があるとそれを取り込んで訴えの変更をしなければならず、手続が面倒になるということである。
 本件では、第1訴訟の口頭弁論終結時である平成20年4月11日の時点で、AのFに対する債務が1500万円であったことが確定する。そして以後の訴訟でこれと矛循【原文ママ】する主張は既判力によって遮断されるので、Aの弁済の主張は失当となる。Aとしては平成20年3月15日に500万円を弁済した時点で、平成19年3月15日付けの消費貸借契約に基づきAがFに対して負う元本返還債務が1000万円を超えては存在しないことの確認を求める訴えに変更すべきであったのである。
 2.法律構成②の長所と短所
 法律構成②の長所は訴訟をシンプルにできるということである。短所は紛争を一挙に解決できず後に紛争の種を残すことである。
 本件では、第1訴訟の口頭弁論終結時である平成20年4月11日の時点で、AのFに対する債務が1500万円を超えては存在しないことが確定する。Aによる請求の一部放棄が認められればAの弁済の主張は既判力により遮断されるが、認められなければ1500万円の部分には既判力が及ばないのでAの弁済の主張を第3訴訟で審判対象としなければならなくなる。
 (2)
 当事者主義の原則から、裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。もっとも、当事者が申し立てた範囲で一部認容判決はすることができるので、設問の事例が当事者の申し立ての範囲外なのか、それとも範囲内の一部認容なのかを考えることになる。
 司法修習生Sの発言にもあるように、第3訴訟では抵当権が消滅したかどうかが争点になり、抵当権の付従性から被担保債権が消滅したかどうかを判断しなければならない。実際、Aはその被担保債権である本件消費貸借契約に基づきAがFに対して負う元本返還債務の金額は1500万円であるところ、AはFに1500万円を弁済したと主張している。そうすると1500万円より低い500万円を支払うことを条件として、抵当権の設定の登記の発症登記手続をすることを命ずる判決は一部認容であると言える。
 仮にAの請求を全部棄却すると、Aとしてはあといくら払えば抵当権の設定の登記の抹消ができるかわからないし、それがわかって弁済したとしても、Fが任意に協力しなければもう一度提訴しなければならず、Aの期待からも訴訟経済からも不合理である。

 

[設問5]
 1.EがAの子であるかどうか
 AがEを養子とした事実はなく、DがAと婚姻していた時期の子でもないので、AがEを認知しなければEはAの子とならない。
 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってし(781条1項)、また遺言によってもすることができる(781条2項)。
 本件ではAによって認知届が作成されたものの届け出はされておらず、遺言によっても認知はされていない。認知のような戸籍に関わるものは届け出により画一的に決定されるべきなので、意思表示があっても届け出がなければ無効である。よってEはAの子ではない。
 ただし、Eは認知の訴えを提起することができる(787条)。
 2.C及びEはHに対し元本の支払義務を負うか
 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(990条)。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条本文)。相続は死亡によって開始する(882条)。各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する(899条)。
 EはAの子でないから相続人ではないが、遺言により包括受遺者になるので相続人と同一の権利義務を有する。CはAの子であり相続人である。よってCとEはAのHに対する債務を承継する。これはAの一身に専属したものではないので896条但書には該当しない。Aが平成22年1月14日に死亡しているので相続は開始している。CとAの相続分は2:1である。以上よりCとEはHに対し元本の支払義務を負い、その義務はCが400万円、Eが200万円である。
 ここまではC及びEが単純承認をした場合について述べたが、もし限定承認をしていれば上記の義務は相続財産の限度で負い、相続放棄をしていれば初めから相続人とならなかったものとみなされるので上記の義務を負わない。

以上

 

修正答案

以下民法についてはその条数のみを示す。

 

[設問1]
 第1訴訟におけるFの、AがCに借入れの代理権でその金額に限度のないものを授与したとする主張(以下「主張①」とする)は、有権代理(99条)を根拠に請求棄却を求めるものであるのに対して、AがCに借入れの代理権でその金額の限度を1500万円とするものを授与したとする主張(以下「主張②」とする)は、権限外の行為の表見代理(110条)を根拠に請求棄却を求めるものである。
 主張①にとって、事実①はFに対してAがCに本件借入れの代理権を与えたことを推認させる間接事実であるという法律上の意義を有する。事実②は特段、法律上の意義を有さない。
 主張②にとって、事実①は基本代理権(CがAのために1500万円を限度としてFから借入れをするという代理権)の存在を推認させる間接事実であるという法律上の意義と、FがCにAのために2000万円の借入れをする代理権があると信ずべき正当な理由があることを推認させる間接事実であるという法律上の意義を有する。事実②は、CがAのために2000万円を借りようとしたところFが不審に思ってAに問い合わせたがAは電話に出なかったためにFはさらに不審に思ったはずだというように解釈できるので、上記正当な理由がないことを推認させる間接事実となり得るという法律上の意義を有する。

 

[設問2]
 (1)
 不法行為に基づく損害賠償は、権利利益の侵害によって生じた損害の賠償である(709条)。損害が生じたか否かということに留意すべきである。本件では特に、①金額的に損害が生じたかということと、②時期的に損害が生じたかということが問題となる。
 ①金額的に損害が生じたかどうか
 本件消費貸借契約では、甲、乙、丙の3つの不動産に抵当権が設定されている。Eは丙建物を取り壊したが、甲、乙の土地は残存している。それら不動産の価額が本件消費貸借契約の価額を超えていれば損害が発生していないという反論もあり得る。しかしながら、不動産価額の下落なども想定してFは甲、乙、丙の3つの不動産に抵当権を設定したのであるから、その一部でも毀損されれば、それは損害が生じたことになる。よって、抵当権が設定された複数の不動産のうちの一つだけが滅失し、残りの不動産の現在価額だけでも被担保債権の額を超えている場合であったとしても、損害が生じたと言うべきである。
 ②時期的に損害が生じたかどうか
 本件消費貸借契約の第1回の弁済日は平成20年3月15日であり、Eが丙建物を取り壊したのは平成19年8月19日であるので、まだ弁済が滞っていない段階で損害の発生を認めてもよいのかという問題がある。弁済期にはきちんと弁済されるはずであり、それまでは抵当目的物を所有者が自由に使えるべきではないという反論である。しかし、抵当目的物についての妨害排除請求権を抵当権者が行使できると結論づけた、この反論に対抗する判例がある。その判例の理屈からすると、Eが丙建物を不法占拠したりその中に備え付けてある機械などを運びだそうとしていたら、Fは抵当権に基づきEの妨害を排除できたはずである。この仮定の場合より侵害の度合いが大きい取壊しがEによってされているのだから、損害が発生しないとする道理はない。
 以上より、本件では金額的にも時期的にも損害が生じていると言うべきである。
 (2)
 設問中のEの反論は、不動産に関する物件の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができないという177条をその根拠にしている。そこでは丙建物が不動産で抵当権が物件であることに争いはないはずだから、Eが177条に規定される第三者に当たるかどうかが問題となる。
 177条は真実の権利と取引の安全の調整規定である。よってこの2つの観点から177条の第三者は登記の不存在を主張する正当な利益を有する者に限定されるべきである。
 本件では、真実の権利者であるFは本件の抵当権を登記するために自分の側としてできることはしていたと考えられる。登記官から求められた補正をすれば登記できるところまで進んでいたにもかかわらず、Aとの間に争いが生じたためにそのままになっていたのである。他方でEはこうした事情を全て知っていた。登記を見て抵当権が存在しないと誤信していたわけではない。むしろ登記がされていないことを奇貨としてFの抵当権を害そうとする意図さえ窺える。事実11からAにはFの抵当権を害そうとする意図がはっきりと見て取れるところ、Eも十分に事情を認識した上でこのAの意図に応じているのである。これらよりEはいわゆる背信的悪意者である。
 以上より、Eは177条の第三者(登記の不存在を主張する正当な利益を有する第三者)には当たらないので、この反論は不当である。

[設問3]
 民事訴訟の被告は明確に定まったほうがよいので、原則的には訴状に被告として記載された者が被告になる。訴状に被告として記載された者が知らない間に別の者が被告として振る舞い不利な訴訟行為が積み重ねられた場合などは別様に考えるべきかもしれないが、本件ではGが被告として訴訟行為をしていることを当初よりEは認識していた。よって原則通りにEが被告となる。
 EはGに対して「(第2訴訟の遂行を)任せる。」と言っているので、Gの行為がEの代理人として有効になる可能性がある。しかし本件第2訴訟はJ地方裁判所に提起されているので、法定代理人か弁護士でなければ訴訟代理人になれない(民事訴訟法54条1項本文)ところ、Gは法定代理人でも弁護士でもない。Gが補佐人(民事訴訟法60条)として裁判所から許可を得たということもない。
 こうした事情からすると、Gが第3回口頭弁論期日までの間にした訴訟行為は無効とせざるを得ない。仮にこれを有効とすると本人になりすますことで容易に弁護士でもない者が訴訟行為をすることができるようになってしまい、法秩序が乱されるおそれが生じる。
 弁護士Qが、Gがした訴訟行為の効力はEに及ぶと主張している理由は、これまでに積み上げた訴訟行為を無に帰して今より不利な立場に立ちたくないということだと推測できる。これに関しては、弁護士Rの主張如何では時期に遅れた攻撃防御(民事訴訟法156条)として裁判所が取り上げないということで、一定弁護士Qの懸念に対応できる。

 

[設問4]
 (1)
 法律構成①は審判対象も訴訟物も元本債務全体とすることで既判力を働かせるものであり、法律構成②は審判対象は元本債務のうち1500万円を超える部分であるが1500万円についてはAの請求放棄があったということで訴訟物は元本債務全体として既判力を働かせるものである。どちらの構成も、訴訟物が1500万円を超える部分だとして1500万円部分には既判力を働かせない判例とは異なっている。
 1.法律構成①の長所と短所
 法律構成①の長所は明確に既判力を働かせることができるということである。元本債務全体が審判対象になり、それについて審判が下され、その結果既判力が生じるという構成は非常にすっきりとしている。本件では、第1訴訟の口頭弁論終結時である平成20年4月11日の時点で、AのFに対する債務が1500万円であったことが確定し、以後の訴訟でこれと矛盾する主張は既判力によって遮断されるので、Aの弁済の主張は失当となる。
 短所は裁判の脱漏(民事訴訟法258条1項)、判決の理由不備(民事訴訟法312条2項6号)、判断の遺脱(民事訴訟法338条1項9号)であるとして、紛争を蒸し返される恐れがあることである。本件では、Aが自認している1500万円部分について、裁判の脱漏としてJ地裁に係属したままになっているので審理の再開を求める、審理不尽で判決の理由が不備であるとして上訴する、あるいは判断の遺脱として再審を申し立てるといったことがAによってなされるかもしれない。
 2.法律構成②の長所と短所
 法律構成②の長所は紛争を蒸し返される危険性が少ないということである。本件では、Aが1500万円部分については自認しているのでそれを請求の放棄だとみなせばもはやそれを蒸し返すことはできない。
 短所は既判力が明確には働かないおそれがあるということである。請求の放棄は調書に記載されたときに確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法267条)のであって、その反対解釈から調書に記載されなければ確定判決と同一の効力を有さないと解釈できる。また、確定判決と同一の効力を有するとして、それが確定判決と全く同じ既判力が生じるという意味なのかということにも争いが生じる余地があるし、既判力の基準がいつになるのかという問題もある。本件では、平成19年7月27日に開かれた第1回口頭弁論で訴状の陳述などが行われたので、Aの請求の放棄に当たる部分が調書に記載されたとは言えそうである。しかし請求の放棄は確定判決とは異なり錯誤無効が主張できるとの反論があり得るし、既判力の基準日は請求の放棄をした平成19年7月27日であって、平成20年3月15日にした弁済の主張を第3訴訟ですることは差し支えないという反論もあり得る。
 (2)
 当事者主義の原則から、裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない(民事訴訟法246条)。もっとも、当事者が申し立てた範囲で一部認容判決はすることができるので、設問の事例が当事者の申し立ての範囲外なのか、それとも範囲内の一部認容なのかを考えることになる。また、条件付給付判決は将来の給付を命ずる判決であるので、あらかじめその請求をする必要がある場合(民事訴訟法135条)なのかも検討しなければならない。そして条件の部分にも既判力が発生するのかも考えなければならない。
 司法修習生Sの発言にもあるように、第3訴訟では抵当権が消滅したかどうかが争点になり、抵当権の付従性から被担保債権が消滅したかどうかを判断しなければならない。実際、Aはその被担保債権である本件消費貸借契約に基づきAがFに対して負う元本返還債務の金額は1500万円であるところ、AはFに1500万円を弁済したと主張している。そうすると1500万円より低い500万円を支払うことを条件として、抵当権の設定の登記の発症登記手続をすることを命ずる判決は一部認容判決であると言える。被告のFにとっても弁済額を争った上で500万円の支払いが残っていると判断されることは不意打ちにならない。仮にAの請求を全部棄却すると、Aとしてはあといくら払えば抵当権の設定の登記の抹消ができるかわからないし、それがわかって弁済したとしても、Fが任意に協力しなければもう一度提訴しなければならず、Aの期待からも訴訟経済からも不合理である。
 被担保債権(本件消費貸借契約による債権)の弁済について争いがあり、Fによる抵当権抹消登記の任意の履行は期待できないので、あらかじめ請求をする必要がある場合に当たる。
 条件の部分は訴訟物ではないと考えられるので、既判力は生じない。ただし既判力が生じないとはいっても、実質的に紛争の蒸し返しとなるような主張を後訴ですることは信義則によって制限されることがある。
[設問5]
 1.EがAの子であるかどうか
 AがEを養子とした事実はなく、DがAと婚姻していた時期の子でもないので、AがEを認知しなければEはAの子とならない。
 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってし(781条1項)、また遺言によってもすることができる(781条2項)。
 本件ではAによって認知届が作成されたものの届け出はされておらず、遺言によっても認知はされていない。認知のような戸籍に関わるものは届け出により画一的に決定されるべきなので、意思表示があっても届け出がなければ無効である。よってEはAの子ではない。
 ただし、Eは認知の訴えを提起することができる(787条)。
 2.C及びEはHに対し元本の支払義務を負うか
 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(990条)。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条本文)。相続は死亡によって開始する(882条)。各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する(899条)。
 EはAの子でないから相続人ではないが、遺言により包括受遺者になるので相続人と同一の権利義務を有する。CはAの子であり相続人である。よってCとEはAのHに対する債務を承継する。これはAの一身に専属したものではないので896条但書には該当しない。Aが平成22年1月14日に死亡しているので相続は開始している。CとAの相続分は2:1である。以上よりCとEはHに対し元本の支払義務を負い、その義務はCが400万円、Eが200万円である。
 ここまではC及びEが単純承認をした場合について述べたが、もし限定承認をしていれば上記の義務は相続財産の限度で負い、相続放棄をしていれば初めから相続人とならなかったものとみなされるので上記の義務を負わない。

以上

 

 

感想

[設問1]は代理についての理解不足が明らかになりました。[設問2]はおよその問題点の所在はわかっていたものの、きれいな記述ができませんでした。 [設問3]はいわゆる表示説をもっと意識して書けばよかったです。[設問4]の(1)は法律構成②が判例と同じ立場(旧訴訟物理論)で、新訴訟物理論と旧訴訟物理論の対比かと思ったのですが、実際にはどちらも判例とは異なる立場だと出題趣旨を読んでようやく気づきました。(2)は将来給付や既判力について記述すべきとは思いつきませんでした。[設問5]は悪くはなかったかなと思います。

 




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