令和2(2020)年司法試験予備試験論文再現答案行政法

〔設問1〕
第1 本件条項の性質
 本件条項の性質は、行政手続法(以下「行手法」という。)2条6項の行政指導である。
 A市は行政機関である。本件条項は、その任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為である。行手法2条2項の処分とは、公権力の主体である国又は地方公共団体の行為のうち、その行為により、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を画定することが法律上認められているものであるところ、後述する理由で処分には該当しないからである。

第2 法の定める開発許可制度との関係
 地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる(日本国憲法94条)。普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、条例を制定することができる(地方自治法14条1項)。法律の範囲内であるかどうか、法令に違反しないかどうかは、法律と条例の文言のみによることなく、その目的、趣旨、効果などを総合的に考慮して判断する。
 都市計画法33条では、開発行為が基準に適合している場合には開発許可をしなければならないとされており、他の理由で開発許可をしないことを許さない趣旨である。だからこそ、A市開発事業の手続及び基準に関する条例(以下「条例」という。)には、開発許可をしないことを許す他の理由は規定されていないのである。
 そして、普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない(地方自治法14条2項)。本件条項は、条例に基づくものではないため、これにより直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を画定することが法律上認められているものではない。

第3 結論
 以上より、本件条項に法的拘束力は認められない。

 

〔設問2〕
 取消訴訟の対象となる処分(行政事件訴訟法3条2項)とは、公権力の主体である国又は地方公共団体の行為のうち、その行為により、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を画定することが法律上認められているものをいう。
 本件通知は、公権力の主体である地方公共団体のA市の行為である。その行為により、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を画定することが法律上認められているものであるかどうかが問題となる。
 A市は、本件通知は観念の通知という事実行為に過ぎず、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を画定することが法律上認められているものではないと反論することが想定される。
 確かに、これは観念の通知という事実行為であるようにも思われる。しかしながら、都市計画法33条に基づく、開発許可の申請に対する許可又は不許可の応答は処分であるところ、条例4条により事前協議を経なければ開発許可の申請ができないと解される。よって、本件通知は、国民であるBの、許可又は不許可の応答を求めるために開発許可の申請をすることができる地位を否定するものであり、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を画定することが法律上認められているものであると言える。仮に、本件通知が処分ではないとすると、Bは取消訴訟を提起することができなくなり、不当である。
 以上より、本件通知は、取消訴訟の対象となる処分に当たる。

以上




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