浅野直樹の学習日記

この画面は、簡易表示です

司法試験予備試験の学習記録(科目別)

司法試験予備試験の短答試験が終わって1週間以上経ちました。結果はわかれば報告するとして、短答試験までにどのような学習をしたのか科目別にまとめます。よろしければ浅野直樹の学習日記 | 司法試験予備試験の学習記録(時系列)も参考にしてください。

 

1.憲法

やはりまずは芦部信喜『憲法』でしょう。


憲法


作 者: 

出版社: 岩波書店

発売日: 2011年05月20日

以前に一度読んでいたということもあり、すっきりと頭の中に入ってきました。

 

しかし過去問を解いてみるとこれだけでは足りず、判例を詳しく押さえる必要があると感じました。そこで『判例百選』を読むことにしました。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日

この『判例百選』は読み応えがあります。興味深く読めるのですが、予想以上に時間がかかり、結局短答試験までに全部は読みきれませんでした。

 

2.行政法

行政書士試験の際には宇賀克也『行政法』が重宝しました。


行政法


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2012年07月09日

同著者の『地方自治法概説』もいい本ですが、予備試験の短答となると地方自治法からの出題はほとんどないので、そこまで読む必要もないでしょう。論文も見据えてしっかりと行政法を学習するなら同著者の『行政法概説』シリーズを読むべきでしょう。とはいえ上記の『行政法』だけでも最低限はどうにかなるかなという感触があるので、この本がいかにまとまっているかということを改めて認識しました。

 

3.民法

民法の基本書には悩みます。一人の著者で全部をカバーしていることと、図などが豊富で読みやすいことから、内田貴『民法』シリーズを選びました。


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2008年06月25日


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2011年07月01日


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2005年10月21日


民法


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2004年04月20日

最初のうちはあまり理解できないままにどうにか読み進めたので、ある程度理解した現時点でもう一度読み返したいところです。

 

4.商法(会社法)

商法総則・商行為の部分は後述の『判例六法』を読んだだけでした。会社法はさらっと一通りだけ確認したかったので、神田秀樹『会社法』をざっと読みました。


会社法


作 者: 

出版社: 弘文堂

発売日: 2013年03月28日

評判通りの読みやすい本でした。腰を据えてじっくり取り組むなら江頭憲治郎『株式会社法』なのかもしれませんが、とてもその余裕はありませんでした。

 

5.民事訴訟法

実務に興味があり、最近売り出し中という噂を聞いたので、藤田広美『講義 民事訴訟』に決めました。


講義民事訴訟


作 者: 

出版社: 東京大学出版会

発売日: 2011年09月14日

私が読んだのは上記の第二版ですが、今は第三版が出ています。民事訴訟のまったくの素人だったので、この本を選んでよかったのかなと思っています。

 

6.刑法

刑法の基本書選びに最も苦労しました。基本書まとめWiki@司法試験板 – トップページを見ると、刑法に関しては行為無価値と結果無価値で大きく分けられていたので面食らいました。それぞれの意味をネットでぱっと調べて、結果無価値のほうがよさそうだと思ったので、その一番上に書いてあった山口厚『刑法』(青本)を読んだのですが、記述がまとめられすぎていて今ひとつ理解できませんでした。同じ著者の二分冊になっている『刑法総論』『刑法各論』もちらっと見てみましたが、何となくしっくりきませんでした。

 

そこで次に西田典之『刑法総論』『刑法各論』を試しました。こちらはフィットしました。


刑法総論


作 者: 

出版社: 弘文堂

発売日: 2013年06月26日


刑法各論


作 者: 

出版社: 弘文堂

発売日: 2013年06月26日

特に各論のほうは非常に読みやすかったです。

 

7.刑事訴訟法

事前に基本書の評判を読んでいると、白取祐司『刑事訴訟法』がリベラルな立場で書かれているということがわかりました。自分の価値観に合いそうだと思ってこれを選びました。頻繁に改定されていることもこの選択を後押ししました。


刑事訴訟法


作 者: 

出版社: 日本評論社

発売日: 2012年11月02日

実際に読んでみておよそ評判通りだと思いました。著者の立場がはっきりしているというのも悪くないです。

 

8.六法

実は学習をかなり進めるまで六法を持っていませんでした。今ではインターネット上で最新の条文が見られるから必要ないと思っていたのです。しかし友人のすすめで判例六法を持つことにしました。


有斐閣判例六法


作 者: 

出版社: 有斐閣

発売日: 2012年11月01日

今から振り返ると、短答対策としてはこれが大正解でした。上で紹介した基本書を読んでからこの『判例六法』を読むと短答が解けるようになりました。商法総則・商行為もこれで大丈夫だろうという手応えを得ました。持つべきものは友人です。

 

9.過去問

(新)司法試験の過去問は全部やりました。『法学セミナー』のシリーズを活用しました。2006、2007は増刊、2008以降は別冊です。





作 者: 

出版社: 

発売日: 1970年01月01日


司法試験の問題と解説2012


作 者: 

出版社: 日本評論社

発売日: 2013年02月15日

これらには論文試験も収録されているのでお得感があります。

 

以上です。こうやってまとめてみると、堅実な学習を積み重ねてきたのだなと感じます。先人のレビューのおかげでほぼ最短ルートを走ってくることができました。この記事もお役に立てれば幸いです。

 



司法試験予備試験の学習記録(時系列)

約2週間後に行われる司法試験予備試験を受験します。受験票も届いていよいよ試験モードになって最後の詰めをしているところです。記憶の新しいうちにどのような学習をしてきたかまとめておきます。

 

1.受験申し込み以前

司法試験予備試験の受験申し込みは1月下旬にしました。受験するかどうかぎりぎりまで迷っていたのですが、共に勉強している同志の後押しで締め切り当日に申し込みました。

 

この受験申し込み以前にどのようなレベルだったかを簡単に書きます。

 

中学の公民、高校の現代社会(政治経済)は得意なほうでした。また、新聞等で時事問題を常日頃から気にかけていました。十年以上かけてこうした基礎を築いてきました。

 

大学は教養学部だったので法律も含めて幅広い事柄を見聞きしました。教える仕事をいろいろとしてきたということもあり、予備試験の教養問題は特に対策をしなくても自信がありました。哲学(倫理)、文章理解、英語、地理、政治学、経済学、数学、判断推理あたりはかなりの得意分野ですし、問題によっては歴史、地学、生物学、化学あたりも解けます。

 

公務員試験を受けたときに憲法はある程度勉強しました。しかし民法や刑法はほんの少し触れたくらいでしたし、ましてや民訴法や刑訴法はノータッチでした。

 

社労士試験を受けたときには労基法を手厚くやったものの、あとは記憶に頼る部分が大きかったので、法的な訓練にはあまりなりませんでした。

 

他方で行政書士試験のときにした勉強は大いに役立ちました。行政法に関しては予備試験(司法試験)と行政書士試験とでほぼ同レベルだと感じています。憲法、民法、商法(会社法)はさすがにレベルが違いますが、基礎はこのときに形作ることができました。

 

今年1月末の司法試験予備試験申し込み時の状態をまとめると以下の通りです。

  • 教養や時事問題の知識は十分な水準に達していた
  • 行政法はまずまずの水準に達していた
  • 憲法、民法、商法(会社法)の概要くらいは知っていた
  • 民訴法、刑法、刑訴法は何も知らないに等しかった

 

 

2.受験申し込み(1月末)から4月上旬まで

司法試験(予備試験)は未知の世界だったので、学習計画を練るところから始めました。そのためには目標を設定する必要があります。過去問やデータを見ると、行政法以外はほぼ解けない、民訴法や刑訴法に関しては何の話かさえわからない状態から、6割くらいは正解できるところまで行かなければならないことがわかりました。

 

こうなると基本書を読んで一から勉強するしかありません。新司法試験・上位合格者のメソッド(勉強法・基本書等)基本書まとめWiki@司法試験板 – トップページを参考にして各科目の基本書を選んでいきました。そして1月末から4月上旬までのおよそ3ヶ月でその基本書をほぼ全部よみました。実際にどの本を読んだのかは別の記事で紹介します。

司法試験予備試験の学習記録(科目別)(2013年6月3日追記)

 

仕事やその他の用事があってなかなか勉強時間は確保できなかったのですが、丸一日の休みがあれば基本書を一冊くらいは読むといった感じでした。そのことを知人に伝えると驚かれたので、読むのは速いほうかもしれません。

 

 

3.4月上旬から短答試験日(5月中旬)まで

各科目の基本書を読んでから過去問を見ると何の話をしているのかはわかるようになっていました。実力で正解できる問題もいくらかありましたし、根拠をもって二択や三択くらいまで絞れる問題もたくさんありました。5割くらいの得点は取れるかなというところまでは来ていました。

 

しかしこれではまだ足りません。あと1~2割上げる必要があります。時期も迫っていたので(新)司法試験の過去問をひたすらやりました。不得意科目(民法の物権や商法、会社法)では解説を読んでもよくわからない問題が多かったです。それでも吸収できるものは吸収しようとしました。

 

同時並行で『有斐閣判例六法』で必要なところを通読しました。過去問を解いていて気になったところももちろん調べました。また、憲法に関しては判例を深く学習していないと話にならないことがわかったので、『判例百選』にも手を出しました。

 

 

というところでどうにか勝負にはなるところに到達しつつあるかなという手応えを感じている今日この頃です。残り時間でやるだけのことはやりたいです。短答を突破しないことには始まらないので、今はそのことしか考えていません。

 

 



司法試験予備試験の過去問と解答

(2021年6月10日最終更新)

 

司法試験予備試験の過去問と解答は法務省のサイトにアップされているのですが、別々の場所にあって見づらいです。そこでここにリンクをまとめました。クリックするとPDFファイルが開きます。

 

《短答式試験》

 

 

 

 

《論文式試験》

 

 

 

 

 

 

 

《口述試験》

 

新司法試験については新司法試験過去問題・解答集: Shoot me!でまとめられています。

 



残業代をエクセルで計算する

・2013年11月12日更新

休日労働をチェックボックスで切り替えられるようにしました。

 

・2013年10月26日更新

コメント欄でご指摘いただいた、休日労働が時間外労働としてもカウントされてしまうという不具合の対処法を赤字で追記しました。休日に関してはI列とJ列の数値を消してください。

 

・2013年6月3日更新

ご指摘をいただき深夜時間(早朝時間)の計算式を5:00以前に退勤した場合にも適用できるように修正しました。その部分は赤字で示してあります。

 

残業代の計算を頼まれることがたびたびあるので、計算方法をまとめておきます。退職してからでも請求できるので、興味のある方はこの記事を読んでまずは計算してみてください。

 

残業代計算ソフト(エクセルシート)「給与第一」|京都第一法律事務所(京都弁護士会所属)残業代が簡単に計算できるエクセルシート「給料ふえる君」(無料) – 沖縄県労連の活動に残業代を計算してくれるエクセルファイルが公開されていますが、自分で理屈をわかったほうがよいので、計算方法を解説しながらエクセルファイルを作ってみます。変形労働時間制や60時間以上の残業代5割増しといった例外的なルールは考慮していませんが、以下の理屈を理解すれば自分で応用できるはずです。

 

最初に私が作ったファイルを置いておきます。

 

zangyo_20130603

zangyo_20131112(休日労働チェックボックス作成前)

zangyo_20131112b(休日労働チェックボックス作成後)

 

背景が白の部分を入力すると自動的に計算されるようにしています。その仕組みは以下で解説します。

 

1.時給を計算する

残業代の計算はすべて時給ベースで行うので、最初に時給を算出する必要があります。もともと時給制の人は簡単ですね。月給制の人は月給を一月あたりの所定労働時間で割ります。年俸制ならば年俸を一年あたりの所定労働時間で割ります。手当ては給料に含めるものもあれば含めないものもあるので、詳しくは別のところで調べてください。私の作ったファイルではC3セル(各月1日のところ)に時給を入力すると、C列はそれぞれ1つ上のセルを参照して自動的に埋まるようになっています。もしも月の途中で時給が変わったならそこに入力するとそれ以降はその新しい時給になります。

WS000000

 

2.一日あたりの残業時間を計算する

一日あたりの法定労働時間は8時間です。まずは通常労働時間を求めましょう。退勤時刻から出勤時刻を引いて、そこから休憩時間を引けば労働時間が出ます。それが8時間を超えていれば残りは残業時間なので、通常労働時間は8時間になります。MIN関数で小さいほうを選ぶようにします。また、”8:00″と式中に表現しただけだと文字列になってしまうので、VALUE関数を使って時刻・時間形式(シリアル値)に変換します。念のためにセルを参照して計算している部分にもVALUE関数を使っておきます。これを第3行で具体的に計算すると、MIN(VALUE(E3-D3-F3),VALUE(“8:00”))です。残業時間はマイナスの値にならないようにMAX関数を用います。具体的にはMAX(VALUE(E3-D3-F3-“8:00”),VALUE(0))です。私の作ったファイルではD列の出勤時刻、E列の退勤時刻、F列の休憩時間を入力すると、自動的にI列の労働時間とJ列の一日あたり残業時間が算出されます。ちなみにエクセルでは「9:00」のように入力すると自動的に時刻として扱われるので便利です。

WS000001

 

3.一週あたりの残業時間を計算する

一週あたりの法定労働時間は40時間です。ここでは月曜日に週が始まり日曜日に週が終わると決めます。週の合計労働時間が40時間を超えると一週あたりの残業が発生します。ただしすでに一日あたりの残業としてカウントした分は週の計算をするときにはカウントしません。ですので具体的には月曜日から日曜日までの通常労働時間を合計して、そこから40時間を引くと、一週あたりの残業時間が計算できます。例えばSUM(I3:I9)-“40:00″といった具合です。これもマイナスの値になると困るのでMAX(VALUE(SUM(I3:I9)-“40:00″),VALUE(0))のようにMAX関数で処理します。これは日曜日ごとに計算すれば足りるので、他の曜日の部分では表示しないようにIF関数で場合分けしてIF(B9=”日”,MAX(VALUE(SUM(I3:I9)-“40:00″),VALUE(0)),””)のようにすると便利です。

WS000002

 

4.休日労働時間を計算する

休日労働は3割5分増しなので別に計算します。私の作ったファイルでは、もし休日労働があればI列で算出された労働時間をH列の休日労働時間に手入力で移してください。休日労働分は一週あたりの残業時間にはカウントしないので、I列とJ列の数値は消すようにしてください。

→この手作業をチェックボックスで実現できるようにしました(zangyo_20131112)。チェックを入れるとR列で休日かどうかの判定を行い、それに応じて値が入るようにIF関数で調整しました。チェックボックスの作成は面倒なのでマクロで行うようにしました。マクロを有効にしてから「休日チェックボックス作成」ボタンを押してください。チェックボックスそのものにはマクロが必要ありませんので、マクロが使えない環境ならチェックボックス作成後のファイル(zangyo_20131112b)でお試しください。

 

WS000003

 

5.深夜時間を計算する

深夜労働も合わせて計算します。22:00~5:00までが深夜労働です。前日から深夜労働に突入する場合と、その日から深夜労働を始める場合(0:00~5:00に出勤する場合)とに分けて考えます。

 

前日から深夜労働に突入する場合を考えましょう。例えば夜の8時から翌朝7時まで勤務したとすると、出勤時刻に20:00、退勤時刻に31:00と入力してください。休憩時間は通常通りに記入し、その内で深夜の時間帯の休憩時間があればその分を記入します。

 

まず退勤時刻が翌朝5時(29:00)を超える場合は29:00として計算するように関数を作ります。例えば11行目で行うなら、MIN(VALUE(E11),VALUE(“29:00”))です。退勤時刻から深夜休憩時間を引いたものが22:00を超えていたら深夜割増が発生します。そうでない場合は深夜割増は発生しません。これもMAX関数を用いて、かつ先ほどの計算式を活用すると、MAX(VALUE(MIN(VALUE(E11),VALUE(“29:00”))-G11-“22:00”),VALUE(0))となります。入れ子になっていてややこしいですね。

 

次にその日から深夜労働を始める場合、つまり早朝労働の場合です。早朝労働が発生する場合は5:00(5:00以前に退勤した場合はその退勤時間)-出勤時刻、そうでない場合は0という式を作ります。12行目で行うなら、MAX(VALUE(MIN(VALUE(E12),VALUE(“5:00”))-D12-G12),VALUE(0))ですね。ただし出勤時刻が0:00であるのと空白であるのとを区別しなければならないので、ISBLANK関数とIF関数を用いてIF(ISBLANK(D12),0,MAX(VALUE(“5:00”-D12-G12),VALUE(0)))とします。

 

1つ上の段落で計算したものと、2つ上の段落で計算したものの2つを足し合わせると深夜労働時間の出来上がりです。13行目であればMAX(VALUE(MIN(VALUE(E13),VALUE(“29:00”))-G13-“22:00”),VALUE(0))+IF(ISBLANK(D13),0,MAX(VALUE(“5:00”-D13-G13),VALUE(0)))という式になります。

WS000004

 

6.賃金をそれぞれ計算する

これで時間については準備ができたのでいよいよ賃金を計算します。これまで全て時刻・時間形式(シリアル値)で計算してきたので、そこから時間数を取り出す必要があります。エクセルのシリアル値は24時間を1とするような値なので、24倍すれば時間数になります。そうやって計算した時間数に休日労働なら時給の1.35倍、残業なら1.25倍をします。一週あたりの残業代はすでに通常賃金として計算しているので、割増分だけ計算します。深夜割増の部分もすでに賃金そのものは計算されているので、0.25倍して割増部分だけを計算します。3行目(4月1日)でそれぞれ計算するなら、休日賃金がH3*24*C3*1.35、通常賃金がI3*24*C3、一日あたり残業代がJ3*24*C3*1.25、一週あたり残業代は日曜日のところだけで表示するようにしてIF(B3=”日”,K3*24*C3*0.25,””)、深夜割増賃金はL3*24*C3*0.25です。金額なので表示形式を通貨にします。

WS000005

 

7.月の合計を計算する

先ほど計算した賃金を一月分合計します。SUMを用いれば簡単です。通常労働時間ならSUM(I3:I33)で、あとの部分も同じようにSUMで計算できます。一週あたりの残業代を計算するためには週の途中で月が変わったときの処理をしなければなりません。私の作ったファイルでは前月繰越、次月繰越ということで処理しています。月の最終日曜日の次の日からその月の末日までの労働時間を合計したものが次月繰越に入ります。その次の前月繰越の通常労働時間のセル(I2セル)にその先ほど計算した次月繰越分が入ります。

WS000006

 

以上が残業代の基本的な計算方法です。端数処理など細かいことは無視しましたが、この計算でそれほど間違いはないはずです。もし間違いに気づいた方がいらっしゃいましたらコメントをしてください。

 

 



労働審判本人申立の方法

労働審判について質問されることが何度かあったので、ここにまとめておきます。特に本人申立を念頭に置いています。

 

1.労働審判とは

労働審判とは労働関係のトラブルを裁判のような手続で解決する制度です。2006年に始まってから利用件数は着実に増えています。裁判と聞くと大変そうだと思うかもしれませんが、以下に書くように申立をする労働者にとって有利な点がいくつかあるので、頑張れば本人申立も可能です。裁判所からの公式情報としては裁判所|労働審判手続裁判所|労働審判のQ&Aをご覧ください。

 

2.対象

労働関係のトラブル全てが労働審判の対象になるわけではありません。労働審判の対象は労働者と事業主との間の個別労働紛争です。労働組合を通じた集団的な賃上げ要求や、労働者間のトラブルなどは対象になりません。もっとも、たいていの事例は労働者と事業主との間の個別労働紛争の側面を持ちます。例えば、上司からのパワハラであれば、事業主に安全配慮義務違反や使用者責任を問うことができます。

 

3.期間

3回以内の期日で結論を出すというのが労働審判の大きな特徴です。およそ1ヶ月ごとに期日が開かれるので、全体で3ヶ月くらいだと思えばよいです。

 

4.管轄

原則として、相手方の所在地を管轄する地方裁判所、または勤務をしていた事業所を管轄する地方裁判所のどちらかです。一般の民事訴訟と比べると、勤務をしていた事業所の管轄でも申立をすることができるのが労働者にとっての利点になります。

 

5.代理

代理ができるのは原則として弁護士です。ただし弁護士以外でも社労士や労働組合の担当者などが代理人として許可されることもあります。そのあたりの運用は裁判所ごと、事例ごとに異なります。

 

6.費用

本人申立であれば、印紙代と切手代のみです。印紙代は訴額によって異なります。詳しくはwww.courts.go.jp/osaka/vcms_lf/30617001.pdfをご覧ください。印紙代は民事訴訟の訴えの提起の半額であり、例えば訴額が160万円なら6500円です。

 

7.申立

申立書が労働審判申立の際の根本をなす書類です。まずはサンプルを見たほうが早いので、裁判所|東京地方裁判所(民事部)から裁判所が例示しているものをご覧ください。

 

訴えの種類は、労働者としての地位確認(解雇が無効である)といった確認の訴えと、未払い賃金請求などの給付の訴えの二種類に大別できます。それ以上の詳しいことをここではとても書ききれません。労働基準法などの実体法の知識も必要です。次の2冊に載っている各種の申立書をよく読んで自分の場合に当てはめると、申立書らしくなります。

 


労働審判実践マニュアル Ver.1 補訂2版作 者:出版社:

発売日: 2010-2-26

 


すぐに役立つ労働審判のしくみと申立書の書き方ケース別23


作 者: 

出版社: 三修社

発売日: 2018年03月27日

 

 8.証拠

裁判類似の手続なので証拠が求められます。といっても賃金未払いでは雇用契約書(労働条件通知書)、タイムカード、給料明細があれば足りるでしょう。パワハラなどではICレコーダーで暴言を録音するといった事前の証拠集めが重要です。証人になってくれるという同僚がいたらそれも大きな証拠になります。本人や同僚が陳述書という形で自由に記述した文書を証拠として提出することもできます。http://www.courts.go.jp/sapporo/vcms_lf/30210008.pdfのような証拠説明書にまとめるのが通例です(リンク先は通常の民事訴訟のものなので適宜書き換えてください)。労働審判委員会が職権で証拠調べをすることができるのも通常の民事訴訟には見られない特色です。

 

9.第1回期日~第3回期日

労働審判では最大でも3回の期日しかありません。ですので期日前に追加の証拠などがあれば提出すべきですし、答弁書が送られてきたら補充書面という形で反論をしておくのもよいでしょう。手続は原則非公開ですが、関係人の傍聴が認められることもあります。

 

10.解決

労働審判での和解率は7~8割程度だと言われています。和解が成立しなければ審判が下されることになります。その審判に異議を申し立てると地裁での通常の民事訴訟に移行します。労働審判の申立書の「申立人」を原告に、「相手方」を「被告」にすればそのまま民事訴訟の申立書になりますし、証拠も共通して使うことができます。同じ裁判所で同じ申立書と証拠を用いて長期間裁判をするくらいなら労働審判で和解しておこうという動機付けが働くので、先ほど書いたような高い和解率になっていると考えられます。

 

 




top