令和4(2022)年司法試験予備試験口述再現(1日目・刑事)です。
帰宅してから作っているので忘れている部分があり、正確な再現ではありません。
本番はグダグダだった部分もある程度きれいに補正しています。
主査の発言を地の文で、私の発言を――以下で、その他の内心の動きなどを()内で記載しています。副査は一言も発しませんでした。
(ドアのノック、ベルの音、○室○番ですの後)
今から事例を言うのでよく聞いてください。30代男性のAはバイクに乗り、歩いている20代女性Vのバッグを奪いました。そのバッグの中には現金2万円が入った財布と携帯電話が入っていました。女性はケガをしたりはしていません。何罪が成立しますか。
――窃盗罪が成立します。
強盗罪は成立しませんか。
――はい、成立しません。
それはなぜですか。
――反抗を抑圧するに足る暴行を加えていないからです(主査は満足げ)。
窃盗罪の成立のためには、財物の窃取以外にどのような要件が必要でしょうか。
――不法領得の意思です。
不法領得の意思とは何ですか。
――その財物の用法に従って利用処分する意思です。
不法領得の意思はその一つだけですか。
――その財物を占有している被害者を排除するという要件も必要です(主査がほっとした様子)。
Aは現金だけ取ろうと思っていました。バッグや財布や携帯電話はすぐに川に捨てました。窃盗罪はどの範囲で成立しますか。
――(自信はないけれどもこの前フリからすると)現金のみです。
そうですか…それではバッグの中に現金が入っていなかった場合には窃盗罪が成立しませんか。
――(主査は不満げだし、この場合に成立しないのも変なので)いえ、成立すると考えます。
どうしてですか。
――現金は財布の中に入っているので、財布も窃盗罪の対象となります。
バッグと携帯電話はどうですか。
――現金が入った財布がバッグの中に入っているのでバッグについても窃盗罪が成立します。携帯電話、携帯電話…については成立しません。
それでは犯人の主観により窃盗罪が成立したりしなかったりするのですか。
――(主査不満げ。ただ、先ほどの理屈からすると成立しないと言いたいので)すぐに川に捨てたという客観的な事情から判断します。
わかりました。それでは事例を変えて、最初から携帯電話も取るつもりだったとします。携帯電話を盗んでから家に持ち帰って破壊しました。何の罪が成立しますか。
――何の罪も成立しません。
器物損壊罪は成立しませんか。
――はい、成立しません。
それはなぜですか。
――不可罰的事後行為だからです。
それはどういうことですか。説明してください。
――この場合は最初から携帯電話を盗むつもりだったので、それを窃取した時点で窃盗罪が成立します。そしてそれでもう評価されています(拙い説明だけれども伝わっただろうか)。
話は変わって、Aが逮捕されて10日間勾留されました。検察官は10日の勾留延長を請求しています。あなたが裁判官だったとして、どのような要素に着目して勾留を延長するかどうか判断しますか。
――起訴するかどうかを判断するために、捜査の進捗具合や、さらなる捜査が必要かどうかに着目します。
今後必要な捜査の所要見込時間も関係ありますか。
――(そこまで言ってくれるんですね…)はい、必要だと考えます。
どうしてですか。
――窃盗罪でしたら最大であと10日しか勾留を延長できないからです。
それでは裁判官のあなたは3日で捜査が可能だと判断しました。検察官は10日の延長を請求しています。どうしますか。
――(旧司法試験の口述過去問集で見覚えがある、難しい問いだから答えられなくてもいいはず)10日延長します。明文の根拠がないので。
でも、できないという明文の根拠もないですよね。
――(主査不満げ、この誘導に乗ろう)はい、できないという明文の根拠がないので3日延長すると考えを改めます(「撤回」という言葉を使わなくても伝わりますよね)。
わかりました。3日で捜査が終わりませんでした。検察官はどうしますか。
――(わからないけれどもとにかく何か言おう)3日で捜査が終わらなかったことを裁判官に伝えます。
伝えてどうするのですか。
――(方向性はあっているみたい、ということは)勾留の再度の延長を請求します。
裁判官は何日延長できますか。
――7日です。
なぜですか。
――最大で20日だからです。
20日というのは?
――(分けて説明しろということかな)最初にまず10日で、延長は10日までしかできないからです。
弁護人は被告人の身柄を早く解放したいと考えました。どうしますか。
――勾留の取消しを請求します…(主査は続きを待っているようだ。予備試験の口述過去問で似たような問いを見たような)準抗告をします。
準抗告は勾留全体にしませんよね。
――(主査はこれを待っていたのですね。しかも誘導してくれているのでこれに乗ろう)はい、勾留延長の決定に対してします。
検察官は、被害者Vの犯人を厳罰に処してほしいという供述書を証拠として提出しようとしています。このあとどうなりますか。
――被告人及び弁護人が異議があればあると言います。
その後どうなりますか。
――裁判所が証拠調べの決定をします。
先ほど異議と言ったのは、文字通りの異議という意味ですか。
――(あ、伝聞か)伝聞証拠の同意・不同意も述べます。
要は意見を言うということですね。ちなみに、これはどのような証拠になりますか。
――情状証拠です。
Aが同じような犯行を繰り返してきたという供述書があります。被告人と弁護人は同意をしたとします。裁判所はこれを証拠としてもよいでしょうか。
――(話がややこしくてついていけない)…伝聞証拠なので不同意と述べます。
ではなくて伝聞証拠の同意はしています。これを証拠にしてもよいでしょうか。
――はい、犯罪事実の成立を判断するために必要なので証拠調べをします。
犯罪事実の成立を判断するために必要ですか。
――常習窃盗で起訴されているのですよね。
いえ、起訴されているのは単純窃盗罪です。
――(余罪のことを聞いているのかな)それでしたら、顕著な特徴のある手口の場合は、犯罪事実の成立を判断するために必要だと考えます。
顕著な事実…Aは犯人性は認めているのですよ。
――その場合は、余罪を評価することになるので証拠とするのはまずいと考えます。
Aは被害者Vと示談をして、弁護人はそれを書面にしました。これはどういう証拠になりますか。
――(「余罪」という言葉が出たらさっきの問いはクリアなのかな)情状証拠です。
もっと言うとどういう証拠ですか。
――犯情です。
犯情なのですけれども、どう評価されますか。
――実質的に被害を回復し、反省していることがわかります。
それは被告人側の事情ですよね。被害者側の事情は?
――処罰感情が低下していることが示されます。
Aは示談を成立させてくれた国選弁護士に謝礼を支払おうとしました。これに問題はありますか。
――はい、問題があると考えます。
どのような問題ですか。
――国選弁護士は定められた枠内で活動するので、それはまずいです。
それは明文の定めがありますか。
――明文、明文…あったかと記憶しております。
弁護士職務基本規程ではないですか。
――(そこまで言ってくれるのですか)それです。
では、Aが別件の債務整理をその国選弁護人に依頼することに問題はあるでしょうか。
――はい、問題があると考えます。
なぜですか。
――先ほどの潜脱になるかと。
どういうことですか。
――(主査が微妙に納得してくれたようだったのにまだ聞くのですか)国選弁護人は決められた枠内で活動することが想定されているので…
お疲れさまでした。
――ありがとうございました。
誘導に乗れたかなという感触はあります。希望を込めて60点だと予想します。