浅野直樹の学習日記

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2018 / 7月

平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案民事訴訟法

以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
第1 通常共同訴訟(38条)
 Y及びZに対する請求は、どちらも特定の日時に特定物である本件絵画の売買契約に基づく残代金の請求であり、実際に行為した自然人も共通している。よって、訴訟の目的である義務が数人について共通であるので、その数人は共同訴訟人として訴えられることができる。

第2 同時審判(41条)
 Y及びZに対する請求は、一方が成立すれば他方が成立しないので、法律上併存し得ない関係にある。よって、原告Xが申出があれば、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない(41条1項)。法律上併存し得ないということを詳しく説明すると、本件売買契約がYを本人として成立するか、Yを代理人Zを本人として成立するかのどちらか一つであるということである。

第3 それぞれの手段の比較
 Xとしては、両負けを防ぐために、同時審判の申出をすべきである。

[設問2]
第1 訴訟告知の効力
 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、補助参加をすることができた時に参加したものとみなされ(53条4項)、いわゆる参加的効力が発生する。参加的効力(46条1項)は、敗訴責任の分担という趣旨から、既判力(114条)とは異なり、判決の理由にも及ぶ。本件において、仮にZがXに補助参加をして、Yを被告とする訴訟で買主がZであるという理由で請求が棄却されたとしたら、後訴においてZは買主が自分ではないと主張することはできない。つまり、Xは、後訴で、Yを被告とする訴訟の判決の効力を用いることが可能である。

第2 訴訟告知の効力がZに及ぶかどうか
 しかしそれではZにとってあまりにも酷である。というのも、例えば錯誤(民法95条)などの理由でYにとってもZにとっても売買契約がそもそも無効だと主張する場合には、ZはXではなくむしろYに補助参加するだろう。本件に即しても、ZはYが代表取締役を務める株式会社であり、Xに補助参加することは期待できない。このように、補助参加することが期待できない場合は、「参加することができた時」には当たらないと解すべきである。以上より、Xは、後訴で、Yを被告とする訴訟の判決の効力を用いることは不可能である。

[設問3]
 裁判所は口頭弁論の分離を命じることができる(152条1項)が、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努めなければならない(2条)。
 公正ということに関しては、実体法上Yへの請求とZへの請求はどちらか一方だけが成立するのだから、弁論を分離することで、そのどちらも認められない、あるいは両方とも認められるというのは不公正である。こうしたことを防ぐために同時審判の制度が設けられたのである。[設問1]で記述したように、訴え提起前にYが売買契約成立を否認する理由がわかっていたら同時審判の申出をしていたのだから、弁論を分離すべきではない。
 迅速ということに関しても、Yへの請求とZへの請求で証拠が共通であり、関係する自然人も共通であるため、弁論を併合したままであっても訴訟が複雑になって遅延するおそれはない。かえって弁論を分離したほうが、Yの予定の都合なので、遅延していまいかねない。よって迅速な裁判という観点からも、弁論を分離すべきではない。

以上

 

 



平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案商法(会社法)

以下会社法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 株主Dからの問題文4の請求の根拠は、303条1項の株主提案権である。そこでDがその要件を満たすかどうかを検討する。
 甲社は取締役会設置会社である。よって、株主提案権は、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主に限られる。甲社は100株で1単元なので、300個だと30000株になるので、Dはその要件は満たさない。「個」と「単元」は同じ意味である。Dは平成24年から甲社株式を有していたので、期間要件は満たしている。
 総株主の議決権の数を計算するためには、平成29年6月1日に発行され、丙社が有している20万株がそこに含まれるかを考えなければならない。結論から言うと、甲社の基準日は毎年3月31日と定められているので、本件株主総会に関しては、丙社が有している20万株は含まれない。基準日が定められるのは、画一的に取り扱って、議決権について明確で一律に決めることができるようにするためである。しかも、本件のように平成29年4月10日の時点ではDの上記4の請求が株主提案権の要件を満たしていたのに、同年6月1日に株式が発行されると満たさなくなるというのでは、不安定になってしまう。
 改めてDの持株要件を検討すると、総株主の議決権は1万個(100万株)なので、その100分の1は100個(10000株)になる。Dが有している議決権は100個(10000株)なので、持株要件を満たす。
 以上より、Dは、本件株主総会に上記4の議題を提案することができる。「議題」とは「一定の事項」のことであり、「議案」とは、「株主総会の目的である事項につき議案」のことである。
 Dは、上記4の請求を平成29年4月10日に行っており、本件株主総会は同年6月29日開催なので、8週間前に請求をするという要件も満たしている。
 そして、以上と同じ要件を満たせば、議案の要領を株主に通知すること(株主総会招集通知に記載すること)を請求することができる(305条1項)。
 以上より、株主Dから上記4の請求を受けた甲社が本件株主総会の招集通知に上記4の議題及び議案の要領を記載しなかったことは、不当である。

[設問2]
第1 Bの甲社に対する会社法上の損害賠償責任の有無
 本件賃貸借契約が利益相反取引(356条1項2号)に該当するかどうかを検討する。
 「のために」というのは「の名義で」と解せないわけではないが、利益相反取引の実質を考慮して、「の計算で」と解すべきである。丁社はBが全部の持分を有しているので、その利益はBに帰属する。よって、甲社の取締役Bは、自己のために、株式会社甲と取引をしているので、利益相反取引に該当する。
 そして、その取引により、甲社には相場と実際の価格の差である150万円×12か月=1800万円の損害が発生している。用地を確保する必要があり、適当な土地を見付けることができない状況にあったとしても、相場を基準として考えるべきである。以上より、Bは、1800万円の損害賠償責任を負う(423条3項1号、423条1項)。この責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない(428条1項)。

第2 Bが負う損害賠償の責任額
 Bは甲社と責任限定契約を締結しているので、その責任額が1200万円に限られるようにも思われる(425条1項1号ハ、426条1項、427条1項)。Bは甲社の社外取締役だからである。しかし、425条から427条は、本件の責任には適用されないので(428条2項)、Bは1800万円全額の責任を負う。

以上



平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案民法

以下民法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
第1 ①の請求根拠
 AはCと雇用関係にある。雇用なのか請負なのかは契約の名称にとらわれず、被雇用者が雇用者の指揮監とく下にあるかどうかで判断する。雇用(623条)の本質は命を受けて労働に従事することにあり、請負(632条)の本質は方法は自由であってもよく仕事の完成にあるからである。本件において、Cは、Aに対し、重機や器具等を提供し、作業の場所、内容及び具体的方法について指示を与えていたので、AはCの指揮監とく下にあり、雇用だと言える。
 雇用契約には、付随義務として、雇用者が被雇用者の安全に配慮する義務が認められる。その安全配慮義務は、本件で具体的に言うと、このような事故を防ぐための命綱や安全ネットを用意したりすることである。Cはその義務を果たしていなかった。そのせいでAに損害が生じたので、債務不履行(415条)により、Cは、Aに生じた損害を賠償する責任を負う。
 損害賠償の範囲は、通常損害(416条1項)と予見可能な特別損害(416条2項)である。これは債権なので、消滅時効は10年である(167条1項)。消滅時効の起算点は、平成26年2月1日である。

第2 ②の請求根拠
 BにはAの撤去作業が終了しないうちに、本件家屋の1階壁面を重機で破壊し始めたという過失がある。Aの身体は法律上保護される利益である。Bの過失とAの損害との間には、社会通念上相当な因果関係がある。よって、Bは、Aに対し、その損害を賠償する責任を負う。
 先述したように、BとCは雇用関係にある。仮にそれが認められなくても、少なくとも、Cは使用者に代わって事業を監督する者である。先に述べたBの過失によるAの損害は、本件家屋の解体という事業の執行についてのものだといえる。「事業の執行につき」とは外形的に事業の執行であればよく、本件では問題なく認められるからである。以上より、Cは、使用者責任により、Aの損害を賠償する責任を負う(715条1項、2項)。Cは、命綱や安全ネットを用意するなどしていればAの損害を防ぐことができたと考えられるので、同条但書には該当しない。
 不法行為の賠償範囲は、416条が類推適用されると解されている。消滅時効は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年である(724条)。

第3 Aにとっての有利・不利
 平成26年2月1日から3年後の平成29年5月1日が経過しているので、消滅時効の観点からは、被害者であるAが損害及び加害者を知った時は平成26年2月1日ではなく同年10月1日だと主張できないことはないかもしれないが、①の請求のほうが有利である。また、立証責任の観点からも、②の請求ではBの過失を立証しなければならないので、やはり①の請求のほうが有利である。

[設問2]
第1 ㋐について
 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる(736条)。離婚に関して本件と関係するような要件は他に存在しない。そして協議離婚の際には、財産分与を請求することができる(768条1項)。夫婦には同居義務があるが(752条)、逆に夫婦でない者たちが同居してはいけないという決まりはない。このように、身分行為は当事者の意思を最大限尊重すべきなので、離婚は認められる。

第2 ㋑について
 財産分与は、身分行為であると同時に、財産行為でもある。よって、一定の場合には詐害行為取消権(424条1項、2項)の対象となる。その一定の場合というのは、財産分与に仮託して、不相応な財産を分与する場合である。本件土地は婚姻前からのCの特有財産であった。本件建物は婚姻後にCとFとの協力の下に建築したものである。特段の事情のない限り、夫婦の寄与は半々であると解すべきである。財産分与は離婚後の生活保障という意味合いもあるが、本件では離婚前後を通じて生活状況は変わっていないので、それを考慮する必要はない。
 債務者Cは、債権者Aを害することを知って、本件財産分与をした。転得者FもAを害することを知っていた。以上より、Aは、Cが行った財産分与を、本件土地の全部と本件建物の半分の範囲で、取り消すことを裁判所に請求することができる。

以上

 



平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(刑事)

以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかどうかは、罪証の性質、被告人の態度などを総合考慮して判断する。本件においては、W2の発言が重要な罪証であり、公判で証人尋問される可能性が高い。被告人Aは本件被告事件を否認している。よってAが、K駐車場の直ぐ隣に住んでいるW2と面会して、その発言を封じるおそれがあるので、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると判断した。

[設問2]
 ①証拠の類型は同条1項3号の321条3項に規定する書面又はこれに準ずる書面である。甲8号証にあるような目撃をW2が物理的にすることができるかどうかを確かめるためにこれは必要である。証明力を判断するために重要である。
 ②証拠の類型は同条1項5号ロである。より記憶が鮮明だったときに、甲8号証と矛循【原文ママ】や食い違いのある発言をしていれば、その証拠の証明力が減らされる。
 ③証拠の類型は同条1項6号である。同じ日時に同じような場所から他の人がW2とは異なる目撃をしていれば、甲8号証の証明力が低下し、被告人の防御に資する。

[設問3]
 検察官は、298条1項に基づき、証拠調を請求した。ただし、本件では公判前整理手続に付されていたので、やむを得ない事由によって公判前整理手続においてこれらの証拠調を請求することができなかったことも主張した(316条の32第1項)。具体的には、甲9号証は公判前整理手続の時点では入手していなかったものであり、甲10号証は甲9号証から派生したものであるということである。入手していなかったというより、Bの所在が判明していなかったので、入手できなかったものである。

[設問4]
 (1)間接証拠である。直接証拠とは、犯罪事実(被告事実)を直接基礎づけるものであり、推認などを経て間接的に基礎づけるものは間接事実である。本件では被告事実は器物損壊・窃盗であり、W2はAが不審な行動をしているのを見たに過ぎないので、間接証拠である。
 (2)条文上の根拠は、297条1項の証拠調の範囲を定めるための意見聴取及び294条の訴訟指揮権である。釈明を求めたのは、Bの証人尋問だけで十分ではないかと思ったからである。
 (3)検察官は、W2を尋問する必要性について、Bを証人尋問しても自己が有罪に問われかねない内容の証言を拒絶する可能性が高いので、W2の尋問も必要であると釈明すべきである。何人も、自己が有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる(146条)。

[設問5]
第1 領収証にBの名義が入っていない場合
 この場合は、あたかもAが弁済したかのような外観を呈するので、事案の真相を明らかにするという1条に反し、弁護士職務基本規程(以下「規程」という。)5条の信義誠実に反する。より直接的には、規程74条の裁判の公正に反する。また、Aの名義を書き加えたりした場合には、虚偽と知りながらその証拠を提出してはならないという規程75条に違反する。

第2 領収証にBの名義が入っている場合
 この場合は、Aとは基本的に関係がないので、309条1項の検察官の異議により証拠が採用されないだろう。実質的にはAが費用を負担してBを通じてVに弁償したとしても、それならばわざわざそのようなことをせず直接Vに弁償できたので、公判前整理手続において請求することができた証拠であるため、316条の32第1項により、採用されない。また、規程76条の裁判手続きの遅延にも反する。

以上



平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(民事)

以下民法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 (1)Xが採り得る法的手段は仮差押(民事保全法20条1項)である。この手段を講じなかった場合には、Xが勝訴したとしても、Yが無資力になるなどしていたら、強制執行をして支払いを得られなくなってしまう。*1
 (2)XY間の消費貸借契約に基づく返還請求権としての貸金返還請求権 *2
 (3)Yは、Xに対し、金100万円及びこれに係る平成28年9月30日から返済ずみに至るまで年5%の割合の遅延損害金を支払え。
 (4)①平成27年9月15日、Xは、Yに対し、消費貸借契約を締結し、それに基づき100万円を渡した。
    ②①の返済期限は平成28年9月30日であった。
    ③平成28年9月30日は経過した。

[設問2]
 (1)平成28年9月30日、本件消費貸借契約に基づき100万円を返済した
 (2)(i)相殺の意思表示をした
    (ii)必要である。相殺(505条1項)を行うためには、債権に抗弁権が付着していてはいけない。Xが有する同時履行の抗弁権を消滅させるために、この事実を主張することが必要である。なお、売買契約では、特約のない限り、代金の支払いと物の引き渡しは同時であると解される。

[設問3]
 本件カメラの売買代金債権は平成19年10月1日に発生した。債権の消滅時効は10年なので(167条1項)、Yが内容証明郵便にて相殺の意思表示をした平成29年2月2日には、この債権に消滅時効が成立しているように見える。しかし、XとYは同窓会の幹事に関して平成29年9月半ばにやり取りをしており、その際に相殺の意思表示をしていたかもしれない。このように、消滅時効が成立する前に相殺の意思表示があったと認定される可能性が高いから弁護士Pは断念した。

[設問4]
 本件消費貸借契約の返済期限は平成28年9月30日であり、同年9月28日に50万円、翌29日に50万円がY名義の銀行預金から引き出されたことは証拠上認定できる。他に使途もないのに100万円を引き出すということは考えづらい。そして返済期限である同年9月30日に、YがXにレストランの食事をおごったこともまず間違いない。細かい日付はともかく、Xもレストランで食事をおごられたことを認めている。それほどひんぱんに会っていたわけではないXとYがレストランで食事をして、しかもYがおごるというのは、YがXに100万円を返済し、貸してくれてありがというという意味だと解釈するのが自然である。
 Xが書いてくれた領収証を証拠として提出できないのは残念である。しかし引っ越しの際に手帳から切り取られた1枚の紙を処分してしまうのは仕方ない。Yが平成29年8月31日に新しい場所へ転入したことは証拠上認められる。XとYは友人であり、お金を借りる理由もプライベートなものであって、最初にお金を借りるときもYが借用証書を準備していたのであるから、返済時にXが正式な領収証を発行しなかったり、借用証書を返還しなかったりしたのも、不自然ではない。
 また、同窓会の幹事に関しては、平成29年9月半ば頃、Xの経理についてYが他の幹事たちの面前で指摘をしたこと、及びXが幹事を辞任したことは両者の主張で共通している。Xは幹事を辞任したのはそれとは無関係の理由だと主張しているが、他に説得力のある理由を提示していない。このように、動機面からしても、Xは本当は返済を受けた100万円をYに請求するということが十分考えられる。

*1に追加
 仮差押の効力として、Yが被差押債権(本件ではAに対して有する80万円の売買代金債権)を自由に処分できなくなるという効力が生じる。

*2に追加
 及び債務不履行に基づく損害賠償請求権。

以上




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