再現答案
以下民事訴訟法については条数のみを示す。
〔設問1〕
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる(135条)。将来給付の訴えを無制限に認めると、被告が不安定な地位に立たされるので、このように制限されているのである。本件に即して言うと、Yが賃料が得られなくなったのに、Xへの支払い義務が残るといった場合である。
115条1項3項などから、判決の基準時は口頭弁論終結時であると考えられる。よって、口頭弁論終結後に発生する利得分の請求は将来の給付を求める訴えになる。本件では、Aが運営するゴルフ場の経営は極めて順調であり、ここ10年に渡って約定どおりに賃料が支払われている。よってこれから10年も定額の賃料が支払われると予想できる。それでも今後賃料が支払われなくなるとか、Yが死亡するとかいうことも考えられないではないが、そのようなことを言うと、およそ将来給付訴訟が認められなくなってしまう。他方で、Xとしてはできる限りのことをしてから本件訴訟の提起に至ったのである。Xはこの賃料で生計を立てようとしているのかもしれない。よって、あらかじめその請求をする必要がある場合に当たり、訴え提起の時点では未発生である利得分も含めて不当利得返還請求訴訟を提起することができる。
〔設問2〕
確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有し(114条1項)、相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する(114条2項)。相殺をもって対抗した額は50万円なので、それを除く残額450万円には既判力が働かないというのがYの主張であると考えられる。
既判力が設けられたのは、被告の応訴する負担と裁判所の訴訟不経済を防ぐためである。実質的に同じ訴訟を繰り返して紛争を蒸し返すことが許されないのである。本件では、第1訴訟でYの本件貸金債権が全額審理されている。このような外側説と呼ばれるやり方は一般に採用されているものである。よって第2訴訟は実質的に第1訴訟の蒸し返しである。第1訴訟で紛争が解決したというXと裁判所の期待が裏切られている。しかしYが主張するように、114条の文言から既判力とすることはできない。そうしてしまうとそれはそれで当事者の期待を裏切ってしまう。そこで、信義に反するとして(2条)、受訴裁判所は、貸金債権の存否について改めて審理・判断をすることはできないと考えるべきである。
以上
感想
これだけだと2ページ強で終わってしまいました。時間が余れば〔設問2〕で却下なのか棄却なのかということでも書こうかと考えましたが、他の科目の都合で時間が余らず、これで答案を出しました。