浅野直樹の学習日記

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2013 / 12月

労働組合の作り方

労働組合の作り方を聞かれたので、ここにまとめておきます。私自身、今のところは一から労働組合を作ったことはありませんが、労働組合の役員として運営に携わったことはありますし、ちょっと違うかもしれませんがNPO法人の設立をしたこともあります。

 

1.労働組合を作るメリット・デメリット

具体的な作り方に入る前に、労働組合を作るメリット・デメリットを考えましょう。

 

まずそもそも労働組合のメリット・デメリットです。

 

<メリット>

  • 使用者との話し合いの場を設定できる(使用者に団交応諾義務が発生する)
  • 労働組合員であることを理由とした不利益取り扱いが禁止され、救済の道がある
  • 集団の力(助け合い、団体行動)
  • 正当な組合活動は刑事上も民事上も免責される

 

一人で労働問題を解決しようと動いた場合と対比するとこのメリットが理解しやすくなります。一人で社長に何かを言おうとしてもそもそも話し合いの場さえ設定されないでしょうが、労働組合が団体交渉を要求するとそういうわけにはいきません。組合に入ろうが入るまいが、文句を言う奴だとみなされて解雇されたり嫌がらせをされたりする可能性がありますが、労働組合に入っていたら「労働組合員であることを理由とした不利益取り扱いだ」という主張をして労働委員会に救済を申し立てることができます(労働組合に入っていなくても文句を言う奴だからという理由での解雇はもちろん不当です)。そして一人では力が弱くても、職場の一定数の人がまとまって要求すると無視することは難しいでしょうし、お互いに情報交換や物質面で助けあうこともできます。しかも労働組合の正当な活動は刑事上も民事上も責任が問われません。

 

<デメリット>

  • 使用者から嫌がらせをされる
  • 組合費を納めなければならない
  • 組合活動に時間を取られる

 

解雇といったわかりやすい嫌がらせなら「不利益取り扱い」で対抗できますが、微妙な嫌がらせだとそれも難しいです。それにいくら対抗できるといっても嫌がらせをされるのはうれしいことではありません(組合活動を長くしている人の中には追及材料ができて嫌だけれどもうれしいという人もいますが)。お金と時間がいくらかかかるというのは仕方のないことですね。組織にもよるでしょうが、望まない活動を強要されるということはおそらくないはずです。ちなみに労働組合に入ると次の就職に響くのではないかと多くの人が危惧しますが、そのような例はまず聞きません。わざわざ志願者が労働組合に入っているかどうか調べないでしょうし、仮に調べたとしてもわからないはずです。

 

このように労働組合には大きなメリットがありますが、いくらかのデメリットもあります。自分たちで労働組合を作ればそのデメリットを減らすことができます。組合費の額やどのような活動をするか自分たちで決められますから。それでいて、たとえ2人で労働組合を作ったとしても上で挙げたメリットはすべて得られます。

 

2.組合結成大会まで

労働組合を作る流れは安心して働きたい – 労働組合のつくり方 – にわかりやすくまとめられています。いろいろややこしく感じるかもしれませんが、サークルを作るくらいの感覚で作ることができます。

 

まずは情報収集と仲間集めですね。労働組合を作ろうとするからには何か問題を感じているのでしょうし、このサイトを見ている時点で情報も収集しているはずです。信頼できる組合経験者がいればその人にいろいろ聞けるので心強いです。もしいなければコメント欄かお問い合わせから質問してもらえれば、私が可能な範囲で答えます。

 

あとは規約作りでしょうか。詳しくは労働組合の規約サンプルをご覧ください。

 

この段階では使用者に労働組合を作ろうとしていることを悟られないことが大切なので、信頼できる人だけに声をかけることをおすすめします。

 

3.組合結成大会から

使用者に労働組合結成を通知して具体的に動き出す前に、結成大会を行っておく必要があります。余裕を見て早めに行っておいてもよいでしょうし、確実に手続きを踏めるなら通知の直前でもよいでしょう。

 

結成大会の具体的な進め方については労働組合の結成大会マニュアルと議案書サンプルをご参照ください

 

そしていよいよ使用者に要求を行います。組合加入通知書を兼ねた団体交渉申入書を送ります。書式については労働組合書式テンプレート(加入申込書、脱退届、団交申入書、労働協約)をご参照ください。

 

あとは試行錯誤しながら進むのみです。

 



労働組合書式テンプレート(加入申込書、脱退届、団交申入書、労働協約)

労働組合を作ったら必要になるであろう書式のテンプレートを示しておきます。

 

1.加入申込書

特に決まりはありません。名前、生年月日、住所、電話、携帯電話、FAX、メールアドレス、職場名/役職名くらいがあれば大丈夫でしょう。必要に応じて適当に項目を付け加えたり削除したりしてください。

 

加入申込書

 

2.脱退届

脱退届を作っておいても悪くないでしょう。署名は必須ですね。

脱退届

 

3.団体交渉申入書(組合加入通知書を兼ねる)

この団交申入書が最もよく使う文書になるでしょう。日時、場所、出席者、要求事項、回答期限、連絡先および回答送付先くらいでよいでしょう。

 

新たに組合を作ったり組合に加入したときは組合加入通知書も兼ねるようにします。

 

後になって申入書を受け取っていないと主張しそうな相手には内容証明で送ります。内容証明については別途お調べください。

団体交渉申入書  団体交渉申入書(内容証明)

 

4.労働協約

団体交渉で何らかの合意が見られたらきちんと労働協約にすべきです。というのも、労働協約には法令の次に強い力が認められているからです(就業規則や個別の労働契約よりも強い)。名称は「労働協約」でなくても構いませんが、両当事者が署名または記名押印する必要があります。個別の組合員を交えて3者で合意を交わしてもいいです。

 

労働協約

 

 

 



労働組合の結成大会マニュアルと議案書サンプル

労働組合の規約サンプルなどを参考にして労働組合の規約を作ることができたら次は結成大会のことを考えましょう。結成大会と言っても難しく考えなくてもよいです。2人で労働組合を作るならその2人だけの参加でいいですし、場所もファミレスなどで構いません。要は形式に則って結成大会をしたという事実が大切なのです。

 

1.結成大会前に議案書と委任状を送付する

結成大会より前に議案書と委任状を参加予定者に送付します。できれば1, 2週間以上前のほうがよいです。議案書の詳しい内容は後ほど解説するとして、ともかくサンプルを載せておきます。出席と委任状を合わせて過半数を超えないと大会が成立しないので注意が必要です。

 

結成大会議案書サンプル   結成大会委任状

 

2.大会当日(議決以前)

大会当日の議決以前にすることがいくつかあります。議長選出→大会書記選出→選挙管理委員選出→あいさつ→議決といった流れが一般的でしょうか。この中で外せないのが議長選出です。できれば次に示すような大会議事録を取ったほうがよいので、そのための大会書記を可能なら選出します。同様に選挙管理委員もいたほうがいいので、人数が許せば選出します。

 

結成大会議事録

 

議事録はここまで厳密に考えなくてもよいとは思いますが、参考のために作ってみました。

 

3.第1号議案 組合規約

規約の各項目については労働組合の規約サンプルでコメントしました。これには組合員の直接無記名投票が必要です。

 

4.第2号議案 活動方針

雰囲気だけを伝えるなら次のような感じです。

1. 要求を実現していく
組合員の雇用を守り、労働条件をよくするという要求を実現していく…
2. 組合員を増やし組織を拡大する
この度は労働組合のなかった会社に労働組合を設立した。今後は同じ悩みを抱える従業員に声をかけ、組合員を
増やして組織を拡大することを目指す…

組合独自で活動方針を立てればよいです。

 

5.第3号議案 予算

予算もシンプルなものを適当に作ってみました。もちろん組合の実状に合わせて予算を立ててください。
(収入の部) 単位:円

前年度繰越金          0
組合費 20,000
寄付 10,000
雑収入  1,000

 

(支出の部) 単位:円

交通費 3,000
通信費 6,000
消耗品費 2,000
印刷費 6,000
図書・備品費 5,000
会議費 2,000
予備費 2,000
次年度繰越金 5,000

 

6.第4号議案 役員体制

どういった役員を設けるべきかについては労働組合の規約サンプルをご参照ください。組合員の直接無記名投票が必要です。大会で最も盛り上がるところでしょうか。

 

人数が決まっている役職にその人数以上が立候補すれば通常の投票を、そうでなければ信任投票をすることになります。

 

 7.第5号議案 ストライキ権

いわゆるストライキ権の確立です。次のような議案です。

1. 当組合の組合員は、そのストライキ権ならびに、そのほかの争議行為に関する一切の権限を執行委員会に委譲する。
2. 執行委員会は、次期大会において新たな決議が採択されるまでの期間、ストライキそのほかの争議行為に関する一
切の権限を有する。
3. 前各号に関しては、この決議が採択されると同時に発効する。

こうしておけば機動的にストライキを実行できます。これにも組合員の直接無記名投票が必要です。

 

投票用紙のサンプルも結成大会議案書サンプルの最後のページに付けておきましたので、よろしければご活用ください。

 

 



内田貴『民法I』第8章―時効――消滅時効

[一] 時効とは何か

消滅時効と取得時効

 

[二] 存在理由をめぐる問題

社会秩序や法律関係の安定

過去の事実の立証困難からの救済

「権利の上に眠る者は保護に値せず」

 

[三] 消滅時効―要件

1 消滅時効にかかる権利

債権、および債権・所有権以外の財産権

2 時効期間の長さ

債権は10年、債権・所有権以外の財産権は20年

短期消滅時効

3 時効期間の起算点

権利を行使しうるとき

4 形成権の特殊性

取消後の返還請求権

 

[四] 中断・停止

1 中断とは何か

法定中断…請求、差押え、仮差押え又は仮処分、承認

2 請求

(1) 「請求」の意味

催告との違い(裁判上か否か)

(2) 「裁判上の請求」

3 差押え、仮差押え及び仮処分、承認

4 中断の効果

(1) 中断後の時効

リセットされる

(2) 中断の効果の人的範囲

中断の効力の相対性

5 停止

 

[五] 時効の効果―援用・放棄

1 時効の効果

遡及効

援用が必要

放棄できる

2 時効の援用

(1) 学説

攻撃防御方法節

不確定効果説

法定証拠提出節

(2) 判例

不確定効果説(停止条件説)

3 援用権者

保証人、物上保証人、抵当不動産の第三取得者に肯定

4 援用の場所

5 援用の効果の及ぶ範囲

援用の相対効

6 援用の制限

援用と信義則

7 時効利益の放棄

(1) 時効利益の放棄とは

完成後の放棄と完成前の放棄(前者は可、後者は否)

(2) 時効完成後の自認行為

信義則上の援用権喪失

(3) 時効利益の放棄の効果

放棄の相対効

 

[六] 除斥期間

 

[七] 形成権の期間制限の法的性質

 

[八] 抗弁権の永久性

 

 

 

 




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