以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。
[設問1]
被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかどうかは、罪証の性質、被告人の態度などを総合考慮して判断する。本件においては、W2の発言が重要な罪証であり、公判で証人尋問される可能性が高い。被告人Aは本件被告事件を否認している。よってAが、K駐車場の直ぐ隣に住んでいるW2と面会して、その発言を封じるおそれがあるので、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると判断した。
[設問2]
①証拠の類型は同条1項3号の321条3項に規定する書面又はこれに準ずる書面である。甲8号証にあるような目撃をW2が物理的にすることができるかどうかを確かめるためにこれは必要である。証明力を判断するために重要である。
②証拠の類型は同条1項5号ロである。より記憶が鮮明だったときに、甲8号証と矛循【原文ママ】や食い違いのある発言をしていれば、その証拠の証明力が減らされる。
③証拠の類型は同条1項6号である。同じ日時に同じような場所から他の人がW2とは異なる目撃をしていれば、甲8号証の証明力が低下し、被告人の防御に資する。
[設問3]
検察官は、298条1項に基づき、証拠調を請求した。ただし、本件では公判前整理手続に付されていたので、やむを得ない事由によって公判前整理手続においてこれらの証拠調を請求することができなかったことも主張した(316条の32第1項)。具体的には、甲9号証は公判前整理手続の時点では入手していなかったものであり、甲10号証は甲9号証から派生したものであるということである。入手していなかったというより、Bの所在が判明していなかったので、入手できなかったものである。
[設問4]
(1)間接証拠である。直接証拠とは、犯罪事実(被告事実)を直接基礎づけるものであり、推認などを経て間接的に基礎づけるものは間接事実である。本件では被告事実は器物損壊・窃盗であり、W2はAが不審な行動をしているのを見たに過ぎないので、間接証拠である。
(2)条文上の根拠は、297条1項の証拠調の範囲を定めるための意見聴取及び294条の訴訟指揮権である。釈明を求めたのは、Bの証人尋問だけで十分ではないかと思ったからである。
(3)検察官は、W2を尋問する必要性について、Bを証人尋問しても自己が有罪に問われかねない内容の証言を拒絶する可能性が高いので、W2の尋問も必要であると釈明すべきである。何人も、自己が有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる(146条)。
[設問5]
第1 領収証にBの名義が入っていない場合
この場合は、あたかもAが弁済したかのような外観を呈するので、事案の真相を明らかにするという1条に反し、弁護士職務基本規程(以下「規程」という。)5条の信義誠実に反する。より直接的には、規程74条の裁判の公正に反する。また、Aの名義を書き加えたりした場合には、虚偽と知りながらその証拠を提出してはならないという規程75条に違反する。
第2 領収証にBの名義が入っている場合
この場合は、Aとは基本的に関係がないので、309条1項の検察官の異議により証拠が採用されないだろう。実質的にはAが費用を負担してBを通じてVに弁償したとしても、それならばわざわざそのようなことをせず直接Vに弁償できたので、公判前整理手続において請求することができた証拠であるため、316条の32第1項により、採用されない。また、規程76条の裁判手続きの遅延にも反する。
以上