平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案法律実務基礎科目(民事)

以下民法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
 (1)Xが採り得る法的手段は仮差押(民事保全法20条1項)である。この手段を講じなかった場合には、Xが勝訴したとしても、Yが無資力になるなどしていたら、強制執行をして支払いを得られなくなってしまう。*1
 (2)XY間の消費貸借契約に基づく返還請求権としての貸金返還請求権 *2
 (3)Yは、Xに対し、金100万円及びこれに係る平成28年9月30日から返済ずみに至るまで年5%の割合の遅延損害金を支払え。
 (4)①平成27年9月15日、Xは、Yに対し、消費貸借契約を締結し、それに基づき100万円を渡した。
    ②①の返済期限は平成28年9月30日であった。
    ③平成28年9月30日は経過した。

[設問2]
 (1)平成28年9月30日、本件消費貸借契約に基づき100万円を返済した
 (2)(i)相殺の意思表示をした
    (ii)必要である。相殺(505条1項)を行うためには、債権に抗弁権が付着していてはいけない。Xが有する同時履行の抗弁権を消滅させるために、この事実を主張することが必要である。なお、売買契約では、特約のない限り、代金の支払いと物の引き渡しは同時であると解される。

[設問3]
 本件カメラの売買代金債権は平成19年10月1日に発生した。債権の消滅時効は10年なので(167条1項)、Yが内容証明郵便にて相殺の意思表示をした平成29年2月2日には、この債権に消滅時効が成立しているように見える。しかし、XとYは同窓会の幹事に関して平成29年9月半ばにやり取りをしており、その際に相殺の意思表示をしていたかもしれない。このように、消滅時効が成立する前に相殺の意思表示があったと認定される可能性が高いから弁護士Pは断念した。

[設問4]
 本件消費貸借契約の返済期限は平成28年9月30日であり、同年9月28日に50万円、翌29日に50万円がY名義の銀行預金から引き出されたことは証拠上認定できる。他に使途もないのに100万円を引き出すということは考えづらい。そして返済期限である同年9月30日に、YがXにレストランの食事をおごったこともまず間違いない。細かい日付はともかく、Xもレストランで食事をおごられたことを認めている。それほどひんぱんに会っていたわけではないXとYがレストランで食事をして、しかもYがおごるというのは、YがXに100万円を返済し、貸してくれてありがというという意味だと解釈するのが自然である。
 Xが書いてくれた領収証を証拠として提出できないのは残念である。しかし引っ越しの際に手帳から切り取られた1枚の紙を処分してしまうのは仕方ない。Yが平成29年8月31日に新しい場所へ転入したことは証拠上認められる。XとYは友人であり、お金を借りる理由もプライベートなものであって、最初にお金を借りるときもYが借用証書を準備していたのであるから、返済時にXが正式な領収証を発行しなかったり、借用証書を返還しなかったりしたのも、不自然ではない。
 また、同窓会の幹事に関しては、平成29年9月半ば頃、Xの経理についてYが他の幹事たちの面前で指摘をしたこと、及びXが幹事を辞任したことは両者の主張で共通している。Xは幹事を辞任したのはそれとは無関係の理由だと主張しているが、他に説得力のある理由を提示していない。このように、動機面からしても、Xは本当は返済を受けた100万円をYに請求するということが十分考えられる。

*1に追加
 仮差押の効力として、Yが被差押債権(本件ではAに対して有する80万円の売買代金債権)を自由に処分できなくなるという効力が生じる。

*2に追加
 及び債務不履行に基づく損害賠償請求権。

以上




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