再現答案
以下会社法については条数のみを示す。
〔設問1〕
A社は、当該募集株式の発行を受けるまで、X社の株式を有していなかったので、株主への割当ではないので募集株式の発行について検討する。株式会社は、その発行する株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式について199条1項各号に定める事項を定めなければならない(199条1項)。公開会社ではその事項を取締役会の決議によらなければならない(201条1項、199条2項)。X社は公開会社である。よって募集株式の数が1万株であること(199条1項1号)、募集株式の払込金額が5万円であること(同項2号)、A社のX社に対する金銭債権を出資の目的とすること及びその金額が5億円であること(同項3号)、その財産の給付の期日が平成28年5月27日であること(同項4号)、「資本金が5億円増加する」や「資本金が2億5千万円、資本準備金が2億5千万円増加する」といったような増加する資本金及び資本準備金に関する事項(同項5号)を、取締役会で決議しなければならない。
それから、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない(207条1項)。
出資の履行がなされると、混同(民法520条)により、X社のA社に対する債務は消滅する。
〔設問2〕
(1)Z社に対する責任追及
募集株式の出資の履行を仮装した場合には、払込みを仮装した払込金額の全額の支払をする義務を負う(213条の2第1項1号)。Z社は金融機関から3億円を借り入れて、当該募集株式の払込みに充て、その3億円はX社の預金口座から引き出されて金融機関に返済された。出資されたのは金融機関からZ社が借りた3億円であり、平成29年2月1日にそれを借り入れて募集株式の払込みに充て、その翌日である2月2日に3億円を返済している。X社でこれが運用されていない。よってこれは見せ金と評価でき、出資の履行を仮装したと言える。以上より、Z社は、3億円の支払をする義務を負う。
本来であれば、X社が提訴して、この責任を追及するのが筋である。しかしこの仮装を共同したXがそうするとは期待できない。そこでX社の株主であるCは、X社に代わって、Z社の責任を追及する訴訟を提起することができる(847条1項)。これはX社にZ社を訴えるように請求してから60日が経過してからのことである(847条3項)。
Yに対する責任追及
X社はZ社が金融機関から借りた3億円の債務の連帯保証をしている。これはZ社の利益になると同時に、X社の損害になる。Z社はYの親族が経営しているので、Z社の利益はYの利益とも言える。よってこれは利益相反取引である(356条1項3号)。そしてこの利益相反取引によってX社に損害が生じたと言える。きちんと返済されたのでX社に損害はなかったではないかという反論が想定されるが、それは結果論であり、保証をした時点で損害が発生している。よってYは任務を怠ったものと推定される(423条3項1号)。
Cによる責任追及の方法は、先に述べたZ社のときと同様である。
(2)
(1)で述べたように、Z社の出資の履行は仮装であり、無効である。ただしこれと株式の効力とは別であり、株式自体は有効である。そう解さないと、B社のように、何の落ち度もない者が議決権を行使できなくなってしまう。外形的には株式が発行されていたのである。
X社の定時株主総会の議決権の基準日は5月31日であるので、5月29に株式を譲り受け名義書換も受けたB社は議決権を行使できる。
感想
〔設問1〕に面食らったので、民法と民事訴訟法を先に解いて、商法を最後に残したので、全体的に記述が雑です。その場で条文を引きながらそれらしい記述をしました。〔設問2〕の(2)は今ひとつ論点が見えませんでした。