再現答案
刑事訴訟法については条数のみを示す。
〔設問1〕
本件の公訴事実は、AがVに対して胸を押して転倒させて傷害を負わせたことであり、AとVとの関わり(胸を押したかどうかなど)が争点となることが想定される。そうなると現場を近くで見ていたB子の証言が重要になる。AはB子と同居しており、Aの身柄を解放すると、口裏を合わせて、Aに有利なようにうその証言をしようとするかもしれない。これは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由である。
〔設問2〕
公訴事実を直接証明する証拠が直接証拠であり、公訴事実を推認を経て間接的に証明する証拠が間接証拠である。公訴事実記載の暴行とは、AがVの胸を押して転倒させたことである。ⓑの供述では、最初からVが寝ているので、Vを転倒させたことを直接証明することはできない。よって間接証拠である。ⓑの供述からAがVに攻撃の意図を持っていたことが示され、そこからその前にAがVを転倒させたことが推認されるのである。
〔設問3〕
甲3号証で、検察官は、AがVの胸部を押して転倒させたことを証明しようとしている。そこで甲3号証以外のVの供述録取書(例えば甲3号証より前に警察官の面前で供述されたもの)を調べて、矛盾や供述の変遷がないかどうかを確認することにより、甲3号証の証明力を判断することができる。
〔設問4〕
「不同意」とは、326条1項の同意をしないという意味である。この同意は伝聞証拠(320条1項)に証拠能力を与える行為である。甲4号証は写真であるが、要証事実はAがVの胸を押して転倒させたことであり、Vの供述と一体となってそのことを示そうとしている。写真という図像を用いた供述である。その真実性が問題となるので、伝聞証拠である。
「異議あり」とは、309条1項の証拠調に関する異議である。これは伝聞証拠以外の理由で証拠能力が否定されると考えられるときに、その証拠の排除を裁判所に求めるものである。甲5号証は、本件公訴事実と関係がなく、自然的関連性が否定されるので、弁護人は「異議あり」と述べた。
〔設問5〕
(1)
訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面……を利用して尋問することができる(刑事訴訟規則(以下「規則」という。)199条の12第1項)。検察官は訴訟関係人である。証人Vの供述を明確にするために、甲4号証貼付の写真は必要である。VとAとの距離を示す際などに、言葉だけでは不明確で、写真を用いるとわかりやすくなるからである。よって同写真を示すことを裁判長は許可した。
(2)
甲4号証貼付の写真は、証拠調を経ていないので、原則として事実認定の用に供することはできない。事実の認定は、証拠による(317条)。しかしながら、同写真は、Vの証言と一体となっているので、例外的に証拠として認められる。というのも、Vが写真を見ながら「これくらいの距離で…」と供述していた場合に、写真なしではこの供述が無意味になってしまうからである。
〔設問6〕
(1)
B子は、証人尋問では、AがVの胸を押した事実も、AがVに馬乗りになって殴り掛かろうとした事実もないと供述しているが、甲7号証ではどちらの事実もあったと記載されている。これは、公判期日の供述と、その前の供述が相反していると言える。甲7号証に関して、B子は、嘘を話した覚えもないし録取された内容を確認した上で署名・押印したと言っている。公判期日での供述は、甲7号証の作成時には判明していなかったAの子の妊娠が発覚してからのことなので、Aをかばおうとする動機が高まっている。よって甲7号証の供述を信用すべき特別の情況があると言える。
(2)
本件では、AがVの胸を押したかどうかが最大の争点になっている。それを判断するためには、現場を至近距離で最初から見ていたB子の証言が欠かせない。Wは遠くから部分的に見ていたにすぎない。
以上
感想
〔設問3〕では問題文を読み落として316条の15第3項1号イについて書き損ねていました。あとは自分なりに記述できたと思っています。