再現答案
以下行政事件訴訟法についてはその条数のみを記す。
〔設問1〕
本件申請の根拠となっている廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)15条の2の文言は、「許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない」となっていて、「許可の申請が次の各号のいずれにも適合している認めるときは、同項の許可をしなければならない」ではないので、甲県知事Bには許可に関して裁量がある。
その許可申請があれば、申請年月日や縦覧場所などを告示し、当該告示の日から1月間公衆の縦覧に供しなければならない(法15条4項)。そしてその縦覧期間終了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに、意見書を提出することができる(法15条6項)。本件においては、その意見書が提出されている。このように法に定められているのだから、この時点で許可の留保が違法となることはない。
意見書の提出が予定されているということは、意見書の提出後に調整を行うことも当然に予定されている。その調整は、行政指導(行政手続法(以下「行手法」という。)第4章)で行うのが適切であり、本件でもそうされている。Aはしばらくの間その行政指導に任意で従っていて、その間は許可の留保が違法とはならない。
しかし、Aは、行政指導にはこれ以上応じられないので直ちに本件申請に対して許可をするように求める旨の内容証明郵便を送付した。申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない(行手法33条)。本件の行政指導は、申請の内容の変更を求める行政指導である。甲県知事Bは行政指導に携わる者である。上記のようにAは当該行政指導に従う意思がない旨を表明した。よって、当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならなくなるので、この時点から許可の留保は違法となる。
甲県としては、許可に関して裁量があるのだから、違法にはならないと反論するだろう。しかし行政指導に従わないことを考慮することは、行手法33条の規定を無に帰すこととなるので、他事考慮であり違法である。また、Aは内容証明郵便送付後も任意で行政指導に従っているではないかとの反論も考えられるが、内容証明郵便を送付するということは通常真しな意思の表示であるので、やはりこの時点から違法になる。
〔設問2〕
C1及びC2は処分の直接の名あて人ではないので、9条2項に従って原告適格が判断される。これは、当該法令及び関係法令を参酌して、個別的な法律上の利益が保護されているのか、それとも一般公益に含まれるに過ぎないのかを判断するという趣旨である。
当該法令である法の目的は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上である(法1条)。これだけでは漠然としていてはっきりとしないので、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という。)を参酌する。これは法の細部を規定するものであり、関係法令である。法15条3項の書類には、地下水について記載しなければならない(規則11条の2第1号)。C2の居住地は法15条3項の調査の対象内であり、その調査書類には地下水のことが書かれているはずである。そして仮に地下水に有害物質が混入すれば、地下水を飲用しているC2は生命や身体に危険が生じる。よってC2の利益は保護されるべき法律上の利益であると言えるので、原告適格が認められる。他方でC1の居住地はこの調査の対象外であり、C2は地下水を飲用しておらずぶどう栽培に使用しているだけなので、有害物質が混入したとしてもせいぜいが財産的な被害である。よってC1に原告適格は認められない。以上は地下水について述べたが、大気質でも同様である。よって①及び②の事実を前提としても結論は変わらない。つまり、法15条3項の調査の対象内であるかどうかと、危険にさられるのが生命・身体なのか財産なのかということが判断の分かれ目となる。
以上
感想
〔設問1〕はまずまずできたのではないかと思っています。〔設問2〕では問題文中の①と②を誤解していたために地下水で記述していたのですが、最後のほうで誤解に気づいたので無理矢理記述を追加してまとめました。