宇賀克也『行政法概説1 行政法総論 第4版』第19章「行政行為」

1.意義

行政行為の規律力…行政庁の一方的な行為によって法効果が発生する

取消訴訟の排他的管轄に服する

行政行為≒行政処分

 

2.行政行為の分類

申請に対する処分と不利益処分

二重効果的処分

命令行為・形成行為・確定行為

一般処分

 

3.行政裁量

(1) 意義

行政裁量が認められる根拠…政治的判断、臨機応変な対応など

行政裁量の統制…行政庁の判断を裁判所の判断に優先させる(行政庁自身は当・不当の判断ができる)

 

(2) 行政裁量の認められる判断過程

要件裁量(例:国家公務員の懲戒の要件)

効果裁量(例:懲戒処分の効果…免職、停職、減給、戒告)

時の裁量・手続の裁量

事実認定の裁量(原子力発電所の安全性)

 

(3) 裁量権の限界と司法審査

裁量権の踰越濫用

裁量権行使の前提となる事実の誤認

法律の目的違反、不正な動機

平等原則違反

比例原則違反

裁量の不行使

実体的判断過程統制審査…最高裁判例はない(東京高判昭和48.7.13ーー日光太郎杉事件など)

手続的司法審査

効果裁量と不作為の違法

 

4.行政行為の瑕疵

瑕疵…通常は行政行為が違法であることを意味する

行政行為の瑕疵の分類…内容の瑕疵、主体の瑕疵、手続の瑕疵、判断過程の瑕疵

 

5.行政行為と取消訴訟の排他的管轄

(1) 意義

行政行為の瑕疵は原則として取消訴訟の管轄

 

(2) 取消訴訟の排他的管轄の範囲ないし限界

権原と無関係な許認可

危険施設の設置許可と民事差止訴訟

申請拒否処分と再申請

無効の瑕疵ある行政行為(無効確認訴訟)…重大明白説

国家賠償請求訴訟と取消訴訟…金銭の納付に関しても取消訴訟を経ずに国家賠償請求が可能(最判平成22.6.3)

刑事訴訟と取消訴訟…取消訴訟の排他的管轄は及ばない(最判昭和53.6.16)⇔及ぶ(最決昭和63.10.28)

行政上の義務の民事執行…当事者対等の原則から取消訴訟の排他的管轄が及ばないと考えられる

違法性の承継…(a)土地収用法の事業認定と収用裁決は事業説明会や公聴会が義務づけられたので承継が認められにくくなる可能性あり、(b)安全認定と建築確認は一体性や手続的観点から承継が認められる(最判平成21.12.17)、(c)課税処分と滞納処分に関しては基本的に認められない

形式的当事者訴訟

 

6.取消訴訟の出訴期間

処分または裁決があったことを知った日から6カ月以内

 

7.瑕疵ある行政行為の効力

瑕疵の治癒(最判昭和36.7.14ーー農地買収計画)

違法行為の転換(最判昭和29.7.19)

不可変更力…不服申立てに対する決定、裁決のような紛争を裁断する行政行為

理由の追加・差替え(最判昭和56.7.14ーー不動産の取得価額)

事情裁決、事情決定、事情判決

 

8.行政行為の成立、発効、失効

(1) 行政行為の成立

外部に表示されることが必要(最判昭和57.7.15)

 

(2) 行政行為の発効

到達主義

 

(3) 行政行為の失効

行政行為の取消し…争訟取消しと職権取消し

職権取消しの効果…原則遡及するが、場合によっては遡及させない

二重効果的処分の取消しの効果…利害関係人の権利利益を考慮する必要性

行政行為の撤回…適法になされた行政行為について、その後の情勢の変化に伴い効力を失わせること

撤回の効果…原則遡及しない

撤回の可否…諸般の事情を総合的に考慮して根拠法律が撤回を許容しているかを解釈

撤回権者…当該行政行為を行う権限のある行政庁

撤回と補償…事案に即した検討が必要

 




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