令和4(2022)年司法試験予備試験論文再現答案民法

再現答案

 以下民法についてはその条数のみを示す。

〔設問1〕
(1)
 Bの請求の根拠は、559条で準用される563条1項である。請負契約は、売買以外の有償契約であり、559条ただし書にも該当しないので、同条で準用される。
 請負契約(632条)は、仕事の完成が契約内容である。仕事の完成の内容は当事者の合意により定まる。よって、契約に適合するかどうかは、転売を予定しているといった事情がなければ、客観的価値ではなく、当事者が合意した仕事の完成の内容を基準として判断する。
 本件では、Bのコーポレートカラーである極めて鮮やかなピンク色の外壁用塗料である塗料αを用いて外壁を仕上げることが仕事の完成に含まれていた。Aは、周囲の住民から反対を受けたため、塗料αではなく、より明度の低い同系色の外壁用塗料である塗料βを用いた。上記の基準から、これは当事者が合意した仕事の完成に照らすと、契約に適合していない。Bは転売を予定していなかった。
 Bが塗料αによる再塗装を求めたが、Aはこれを拒絶しているので、563条1項に該当する。よって、Bの請求は認められる。
 Aは、636条を根拠として、注文者Bの与えた指図によって生じた不適合であると反論するかもしれないが、住民の反発があったとはいえ塗料αを用いることは違法でもなく、この反論は当たらない。
(2)
 Bの請求の根拠は、415条1項であると考えられる。(1)より、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときに当たる。564条より、415条の規定による損害賠償の請求は妨げられない。再塗装に要する費用は、これによって生じた損害に当たる。
 しかしながら、Aが塗料αではなく塗料βを用いたのには住民の反発という一応の理由があり、塗料αによる再塗装を行う旨を申し入れているのだから、415条1項ただし書の債務者の帰責事由はない。よって、このBの請求は認められない。
 Bは、709条を根拠に再塗装に要する費用を損害としてその賠償を請求することも考えられる。しかし、Aが塗料αによる再塗装を行う旨の申入れをしている以上、侵害したとは言えない。
 以上より、Bの請求は認められない。

〔設問2〕
 Fが援用する乙不動産の取得時効は、20年の取得時効ということなので、162条1項がその根拠である。本件では、占有がいつ開始されたのかということから、同条の「占有」の意義が問題となるので、先にその点につき検討する。
 そもそも、取得時効が認められているのは、継続した権利状態を尊重するためである。不動産については、登記により、その権利状態が示される。一人の人が複数の不動産を所有することも珍しくなく、登記によればそれも可能である。よって、不動産については、事実上の占有をしていなくても、登記により法律上の占有をしていれば、162条1項の占有に当たると解する。
 本件では、令和9年4月1日、乙不動産の登記名義人をFとするために必要な登記が行われたので、この時点でFが乙不動産の占有を開始したと評価できる。
 Fは、所有の意思をもっていたし、平穏かつ公然と占有していたと思われる。もっとも、所有の意思、平穏、公然は、186条1項で占有者Fについて推定されるので、その推定を覆されそうになったときに上記の主張をすればよい。
 Fは、令和29年4月1日時点で登記名義により乙不動産の占有をしていた。よって、186条2項から、その間の20年間の占有が推定される。
 Fは、145条の時効の援用をしている。
 以上より、Fが援用する乙不動産の取得時効は成立する。

以上

感想

 これで2ページちょっとです。特に〔設問2〕では論じ足りないと感じつつも、割り切って他の2科目(商法と民事訴訟法)に時間を使おうと判断しました。




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