再現答案
以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。
〔設問1〕
(1)
令和3年3月1日(以下日付だけ示す部分は全て令和3年のことである。)の夜、Aから電話でV方から金を奪おうと誘われたというBの供述は、証拠⑪と整合する。それから何回か、Aと共に私の車でV方付近に行き、V方の様子を観察したというBの供述は、証拠⑮と整合する。証拠⑬及び証拠⑭から、このサバイバルナイフをAがBに触らせたことが推認されるのであるが、それは「親父のだから、落としたりするなよ。」とAから言われてサバイバルナイフを渡されたというBの供述に整合する。その他、3月9日の犯行時の服装や用いた道具なども、各証拠と整合する。
このように、Bの供述が客観的な証拠と整合するので、信用性が認められると判断した。
(2)
(1)よりAが本件被告事件に関与したことが認められるとして、その関与の形態が共謀共同正犯なのか挟義【原文ママ】の共犯(教唆、幇助)なのかが問題となる。共謀共同正犯か挟義【原文ママ】の共犯かは、客観的主観的事情から、自己の犯罪として実行する正犯意思があるかどうかで判断する。
本件では、Bの供述によると、AからV方から金を奪うことを提案し、サバイバルナイフという主要な道具を提供した。奪った現金500万円についても、Aの取り分が300万円であった。
以上より、検察官は、Aに共謀共同正犯が成立すると判断した。
〔設問2〕
公判前整理手続の制度趣旨は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うことである(316条の2第1項)。本件では、同条以下の所定の手続きを経て、弁護人が予定している主張を明らかにしている(316条の17)。これにより、AB間の共謀の有無が本件の争点になることがはっきりしてきた。そこで、裁判所は、検察官に対し、316条の21第1項の証明予定事実の追加し又は変更を求めた。本件では、単に証拠を並列するだけではどのようにしてAB間の共謀を立証するのかがわかりづらく、争点を明確にして充実した公判の審理をするために、追加の証明予定事実記載書の提出を求めたと考えられる。
〔設問3〕
接見等禁止の請求の根拠は、81条である。ここでは、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかどうかが問題となる。その理由があるかどうかは、被告人の主観的な態様及び罪証隠滅の客観的な可能性から判断する。
下線部ウと下線部エの間で、被告人であるAの主観的な態様が変化したという事情は見られない。本件ではBの証言が重要な証拠であるところ、下線部ウと下線部エの間にBの証人尋問が行われたという事情がある。よって、下線部エの時点では、もはや罪証隠滅の客観的な可能性が認められず、接見等禁止の請求をしなかったと思われる。下線部ウの時点では、Aに会いに来たBに対し、Aが共謀はなかったという趣旨の証言をするように働きかける可能性があった。AはBの地元の先輩であり、BはAには昔から面倒を見てもらっていたと感じていたという事情も考慮している。
〔設問4〕
(1)
公判前整理手続の時点では予想できなかった事態に応じて証拠調べ請求をする場合は、316条の32第1項の「やむを得ない事由」があると解する。本件では、公判前整理手続の時点では、Bが証拠⑩とは異なる内容の供述をすることが予想できなかった。その予想できなかった事態に応じた証拠調べ請求であるため、やむを得ない事由があると考えた。
証拠能力については、公判期日における供述に代わる書面として、320条1項で証拠能力が否定されないかが問題となる。同項で禁止されるのは、その内容の真実性が問題となる場合に限られる。本件では、証拠⑩によりBが証人尋問とは異なる供述をしていた事実自体を問題としているので、同項で証拠能力が否定されることはない。このことは、328条でも注意的に規定されている。
(2)
「同意」とは、320条1項で禁止される証拠について、325条に基づき証拠能力を付与する行為である。「異議」は309条1項の証拠調べに関して申し立てる異議である。
本件では、(1)で述べたように、そもそも320条1項で禁止される証拠に当たらないので、同意は問題とならない。316条の32第1項を根拠として証拠調べに関して異議を申し立てる可能性はあったが、(1)のように考えたので、「異議なし」と述べた。
以上
感想
これでちょうど3ページ分くらいになりました。分量が少ないような気もしますが、淡々と記述したらこうなりました。