令和2(2020)年司法試験予備試験論文再現答案一般教養科目

〔設問1〕
 クレオンの主張は、その内容の当否はさておき、ポリュネイケスの埋葬をするという行為は、国の公の布告により禁止されているのだから、その行為をしたアンティゴネは非難されるべきというものである。
 これに対し、アンティゴネは、その布告は人間が作った掟に過ぎないため、神々の不滅の掟には劣後すると主張する。同じ母を持った兄が死んだら、その亡骸を野晒しのまま放っておくよりも、それを埋葬するほうが、神々の意思にかなうということである。
 クレオンは、掟(布告)に反する行為そのものよりも、掟を破ろうとする傲慢な態度のほうが、問題であると主張する。アンティゴネだけがそのような傲慢な態度を示しており、他の人々はそのような態度を示していないとのことである。
 これに対し、アンティゴネは、他の人々は王であるクレオンを恐れているだけであって、本心では、ポリュネイケスを埋葬した自分の行為に賛同していると反論している。

 

〔設問2〕
 この論争における対立軸の一つとして、人間が作った実定法と、神々が作ったとでも言うべき自然法との対立を取り上げる。その上で、今日における社会事象の中で同様の対立軸を持つ事象として、貧しくて飢えているために食べ物を盗むという犯罪を挙げる。
 この犯罪を取り締まる国家の側からすると、そのような理由があったとしても、犯罪は犯罪であり、公平や平等の見地から、許容することはできないと主張することが考えられる。さらに、少しでも例外を認めてしまえば、刑罰体系全体が崩壊すると主張するとも考えられる。
 これに対し、そのような行為を弁護する側は、食べ物が豊富に存在し、その近くに飢えた人がいるなら、その人がお金を持っていようがいまいが、その食べ物を食べる自然の権利があると主張する。刑罰というのは、生命や身体などを保護するために設けられたものなのだから、それにより生命や身体が危険にさらされるのは不自然であるという主張もあり得る。
 法秩序の維持という観点から、このような行為を完全に許容することはできないが、起訴をしない、緊急避難の適用を検討する、情状を考慮するなどして、処罰は極小にすべきだと、私は考える。

以上




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