平成29(2017)年司法試験予備試験論文再現答案一般教養科目

再現答案

〔設問1〕
 本文中において、アリストテレスは、弁証術は論理が厳密だけれども一般的な聴衆に感覚的に訴えかける力が比較的小さいものであり、弁論術は論理が厳密でなくても説得力が感じられるものであると区別している。どちらも結論を導くための議論であるという点では共通している。
 弁証術においては、普遍的な真であることから、論理の飛躍をせずに厳密に推論を重ねるので議論が長くなりがちであり、教養豊かな人には適していても、一般の人たちにとっては退屈に感じられることだろう。弁論術においては、経験的に身近なところからスタートしてもよく、特定の聴き手の見解に沿った結論を導く説得推論で議論が進められる。

〔設問2〕
 弁論術は、未成熟な人を相手にして使用する場合には功が罪を上回るが、成熟した人を相手にして使用する場合には大きな罪となることがある。
 液体が気体になること(気化)を小学生に説明することを例に取って考える。その際には、やかんに水を入れて火にかけると湯気が出てくると説明するのが通例である。この説明には不正確な点も多々あるが、これ以上長くなると子どもたちは退屈して説明を聞かなくなってしまうだろう。他方で化学を専攻する大学院生に同じ説明をするのは有害である。ドライアイス(二酸化炭素)は室温で個体から気体になるし(昇華)、水でも周囲の気圧が低ければ室温で沸とうして気体になる。こうしたことを厳密に考えることで科学が発展してきたのであり、そのおかげで私たちの生活は豊かになった。弁論術に甘んじていては科学は発展しないだろう。
 医療についても同じことが言える。医師が子どもに薬を飲ませるために、ゼリーに薬を混ぜ込んで、「ゼリーを食べればおいしいから元気になるよ」と言うのは方便として許されるだろう。しかし、同じことを大人に対して行うと、医療行為に伴う説明義務を果たしていないということで、非難されてもおかしくない。薬の成分や起こり得る副作用などをきちんと説明すべきである。

以上

 

感想

例年より難しく感じました。〔設問2〕ではパターナリズムとインフォームドコンセントというよくある議論に持ち込みました。

 




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