伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)演習問題解答例

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第9章 組織と個人、経営の働きかけ

1.
 キヤノンのセル生産方式を例にとる。これはライン生産方式とは異なり、一人が同じ空間内で全工程を担当するというもので、トヨタのカイゼンをさらに発展させてものである。このように全工程を担当すると生産全体を把握するという思考様式の下でたくさんの情報が手に入り、問題点や改善点が見えやすくなって、学習が促進される。

2.
 戦略はこの3つの中で一番大きな要素であり、うまく共有できると従業員の心理的エネルギーを高め、多方面で長期間にわたり業務行動と学習を促進させられるという長所がある。他方で戦略というのは概して曖昧であり、きちんと共有するのが難しいという短所がある。
 経営システムを調節することにより微妙な調整を行うことができるという長所があるが、従業員の心理的エネルギーを高めることは少なく、場合によってはマイナスの影響を与えてしまうという短所がある。
 これとは反対に、理念と人を通じた統御は人間臭さをもっていて爆発的な効果を発揮することもあるが、誰にでもできるわけではなく微妙な調整も難しいという短所がある。

3.
 個人の自律性と現場の自己組織性を前提とすると、それらをつぶしたり発生しにくくさせたりして組織が抑圧の存在になる状況が考えられる。例えば現場に決定権限を全く与えない状況では、個人の自律性も現場の自己組織性もつぶされてしまうと言える。また、オフィスに間仕切りを設置するなどしてコミュニケーションを阻害し、短期的に従業員を入れ替え、従業員がお互いに悪口を言い合うような状況であれば、個人の自律性や現場の自己組織性が発生しにくい。


作成:浅野直樹
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