第19章 場のマネジメント
1.
場のマネジメントの論理では、トップが行うこととして、場の設定と創発が挙げられる。アジェンダを設定したり、職場の物理的環境を整えたりすることである。場とは本来的に自律的なものなので、トップの設計通りに作られるものではなく、場の中にいる人たちが主体的に作り上げるものである。よって、より現場に近いミドルが、誰と誰がどのように接触するかを規定するなどして、具体的な場作りに大きな影響を与えることになる。
2.
設計の現場では、巨大な設備投資により導入された工場や機械を直接使うので、それを活かして卓越した仕事をしようという場が生まれてくると想像できる。設計を担当する技術者は、技術そのものに愛着を持っていることが多いので、性能のよい機械などを与えられると喜ぶものである。
営業の現場では、前述の設計の現場の空気にも影響を受けて、細かいことはわからないが社運を賭けたような決断がなされたようだから、顧客に対しても大きく出ようという場が作られると想像できる。これまでは取引がなかった大口顧客のところに飛び込み営業をするといったこともあるかもしれない。
本社では、その設備投資の結果を売上の数字などから判断しつつ、場合によっては追加の投資やそのための資金調達も視野に入れつつ、緊張感をもって見守るという場が生まれていると想像できる。
3.
オーケストラでは各楽器の演奏者が、譜面に沿って指示通りに演奏することを求められつつも、機械的に演奏するのではなく個性を表現することも求められる。つまり場のパラダイムとヒエラルキーのパラダイムの共存が求められるわけである。そこで指揮者は、最低限守るべき拍子を取るというヒエラルキーのマネジャーであると同時に、瞬間瞬間で強調されるべき楽器や人に注目を促すという場のマネジャーでもあると言える。基本となる指揮系統は維持しつつ、それ以外の部分では各所の自律性を重視するということである。