第2章 競争のための差別化
1.
CDの使用そのものでの取り合いの相手としてMDやiPodなどの新しい技術産業が、顧客のCDへの支出を取り合う相手として携帯電話産業やアニメ産業などが登場してきた。音質面ではMDやiPodなどのデータはCDとほぼ同等であるので、歌い手との握手券をCDに付けるといった戦略を取るべきである。アニメ産業などとは排他的に競争するのではなくメディアミックスの一環として主題歌やキャラクターソングのCDを積極的に売り出すべきである。
2.
既存の企業が製品の個性化を推し進める場合は、既存の製品とうまくマッチした個性を抽出するという条件が必要である。選んだ個性に応じて製品を変化させるのは組織として難しいだろうし、仮にそれができたとしても顧客は前の製品のイメージを持ち続けることになる。新規参入をする企業が一点豪華主義的に製品の個性化を目指すのであれば、企業名や商品名がその個性に適合し、適切な広告戦略によりそれが顧客に届くという条件が必要である。微妙な差別化の集積をする場合は、集積をすることができるほどの領域をその企業がカバーしていなければならない。
3.
塾産業を例に考える。市場が生まれるときには学校よりもわかりやすく教えるという製品が武器の中心になることが多い。そのあと競争の推移とともに、進路指導などのサービスに、さらには価格へと中心的武器が変わって行く。ブランドはどの段階においても中心的な武器になり得る。塾に通うことが一般的になると顧客が進路指導などのさらなるサービスを求めるようになり、そうしたサービスもおよそ出尽くして塾が均一化すると価格でしか差別化できなくなるからである。