伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)演習問題解答例

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第3章 競争優位とビジネスシステム

1.
 このような、宅配便のネットワークサービスが高度に発達し、コンビニエンスストアの店舗網の密度もきわめて高い環境のものとでのインターネットを使った消費者相手の小売業のビジネスモデルの典型的な発展形態は、自社は商品の仕入れに特化することで、品質に比して低価格な多種類の商品を消費者のもとへと迅速に届けるというものになる。宅配便とコンビニエンスストアが発達していれば商品の配送と受け取りがそれらに頼れるということに加え、代金の収納もしてもらえるので、支払いシステムを自社で構築したりクレジットカードの加盟店になったりする必要がない。さらに、チケットのような定型的な商品であれば、情報さえ管理すればコンビニエンスストアの店舗で発券することもできる。他方でこれらの発達していない国では、流通や支払のシステムをいかに構築するかが大問題になる。

2.
 アウトソーシングのメリットはコスト削減と一定の品質の保証で、デメリットは自社のコントロールできる範囲が縮小し差別化が難しくなることである。既存の業務を新たにアウトソーシングするのであれば、その業務に携わっている従業員の不満を高めるというデメリットもある。メーカーが経理業務をアウトソーシングすることは他の製品開発などの業務で差別化することをを意味し、設計業務のアウトソーシングをすることは他の流通や販売などの業務で差別化することを意味すると考えられる。

3.
 競争のドメインが広いということはビジネスシステムと製品・市場が広いということであり、取り得る選択肢が多くなる(競争の手段の武器庫が多様になる)とともに、それらを組み合わせることで新たな領域を開発する(懐が深くなる)こともできる。例えばK塾は講師の育成や教材開発も自前で行うほどビジネスシステムが深く、また授業だけでなく模試や出版物も提供するという幅の広さがある。そうすると少子化という逆風の環境になっても競争の手段の武器庫が多様なので、模試を私立高校に売り込むという有効な戦略を取ることができるし、手持ちの資源を生かして大学院入試という新たな市場で勝負できるという懐の深さも見せることができる。


作成:浅野直樹
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