第17章 パラダイム転換のマネジメント
1.
パラダイム転換をうまくマネジできるトプマネジメントの条件を挙げる。その行うべき行動は、パラダイム転換の余地を発見し、誰も実際にはやろうとしないことをやることである。実行のスタイルは短期的な失敗や反対に惑わされずにやり続けるというスタイルである。組織のメンバーとのコミュニケーションのパターンは、常識や通念にとらわれずに重要なメッセージを繰り返し伝えることである。私はAmazon.comの共同創設者であるジェフ・ベゾスを想定してこの条件を考えた。彼は急速に発展していたインターネット上で莫大な点数の商品を扱う本屋を開くというパラダイム転換の余地を発見して、赤字の年度にもくじけず、株価の上下に一喜一憂せずにきちんと仕事をすることを従業員に伝え続けた。
2.
全員巻き込み型のゆさぶりが、変革のエネルギーのディスチャージになってしまい、大きなエネルギーのタメをなくす危険があるのは、責任の所在が曖昧になるからである。全員に危機意識を持たせてプレッシャーをかけようとしても、自分がやらなくても誰かが危機を解決してくれるだろうと他の人に任せがちになるので、エネルギーのタメが発生しづらい。
3.
脱成熟化のための成熟の認識のプロセスに関するゆさぶりは、トップによる現状否定である。これまでのように売上や利益が伸びていないという状況を受けて、現状のあり方をトップが否定するのである。それを受けてミドルがプロジェクトチームを立ち上げて各種の情報を分析するなどして、原因を究明すべく突出する。そしてそこから、自社はもう成熟してきたのだからこのままではいけないという連鎖反応が広がり、人事でも成熟認識派の影響力が増す。そして最終的には全社的に脱成熟化という方針が打ち出されるなどして、この認識が確立する。