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第14章 コピーレフトとは何か

 コピーレフトは、プログラムをフリーソフトウェアにするとともに、そのプログラムのすべての変更、拡張バージョンもフリーソフトウェアにするための一般的な方法である。

 プログラムをフリーにするためのもっとも簡単な方法は、それを著作権なしのパブリックドメイン (権利消滅状態)で差し出すことである。こうすれば、人々がそのつもりになれば、プログラムとその改良点を共有することができる。しかし、この方法では、プログラムを私有ソフトウェアに転換してしまうような協調性のない人間の存在も許してしまう。彼らは、多少の変更を加えて、その結果を私有製品として流通させる。修正が加えられた形のプログラムを手にした人々は、オリジナル版の作者が与えた自由を手にすることができない。仲介者が、自由を抜き取ってしまったのである。

 GNU プロジェクトの目的は、すべてのユーザーに GNU ソフトウェアを再頒布、変更する自由を与えることである。仲介者が自由を抜き取ることができるのなら、私たちは多くのユーザーを得るかもしれないが、それらのユーザーは自由を持たなくなってしまう。そこで、私たちはGNUソフトウェアをパブリックドメインにするのではなく、「コピーレフト」にすることにした。コピーレフトは、すべてのユーザーが自由を持つことを保証してくれる。

 コピーレフトは、他のプログラマが何かフリーソフトウェアを追加しようという動機も与える。GNU C++コンパイラなどの重要なフリープログラムが存在する理由は、コピーレフト以外にはない。

 コピーレフトは、フリーソフトウェアの改良に貢献したいと考えているプログラマが、実際にそれを行う許可を得るためにも役に立つ。これらのプログラマは、ほぼすべての業務の目的が金儲けになっている企業や大学のために働いていることが多い。プログラマが自分で書き換えた内容をコミュニティに提供したいと思っても、雇用主は変更後のプログラムを私有ソフトウェア製品に転換したがるものである。

 しかし、私たちが改良版をフリーソフトウェアとして流通させなければ違法行為になるということを雇用主に説明すれば、通常、彼らは改良版を放棄するよりも、フリーソフトウェアとしてリリースすることを選ぶものである。

 プログラムをコピーレフトにするために、私たちはまず、プログラムが著作権の管理下にあることを述べ、頒布条件を付加する。その頒布条件とは、頒布条件を変更しないという条件を満たす場合に限り、プログラムおよびそれから派生したプログラムのコードを利用、変更、再頒布する権利をすべてのユーザーに与える法的な装置である。このようにして、コードと自由は法的に分離不能になる。

 私有ソフトウェア開発企業は著作権を使ってユーザーの自由を取り除くが、私たちは著作権を使ってユーザーの自由を保証する。私たちが右を左と言い換えて、「コピーライト」を「コピーレフト」と呼んでいるのは、そのためである。

 コピーレフトは、一般的な概念である。細部の詰め方には多くの方法が考えられる。GNU プロジェクトが使っている具体的な頒布条件は、GNU一般公開使用許諾書(General Public License) に含まれている。GNU一般公開使用許諾書は、GNU GPL という略称で呼ばれることが多い。GNU GPLには、FAQページ(http://www.gnu.org/liccenses/gpl-faq.html)も用意してある。また、FSFが貢献者に著作権の譲渡を求めている理由も説明されている(http://www.gnu.org/copyleft/why-assign.html)。

 コピーレフトのもう1つの形態である GNU準一般公開使用許諾書(LesserGeneral Public License: LGPL)は、GNU ライブラリの多く(しかしすべてではない)に適用される。以前、このライセンスはライブラリ GPL と呼ばれていたが、この名前では、本来使うべきライセンスではなくこのライセンスを使うことを開発者に奨励することになってしまうので、名前を変更した。この変更が必要だった理由については、「次のライブラリでライブラリ GPL を使うべきではない理由」(http://www.gnu.org/philosophy/why-not-lgpl.html) という論文を読んでいただきたい。

 GNU ライブラリー般公開使用許諾書は、準GPLによって廃止になったが、HTMLとテキストフォーマットではまだアクセスできる。

 GNU自由公開文書使用許諾書(Free Documentation License: FDL)は、すべてのユーザーが営利、非営利を問わず、未変更または変更済みの文書をコピー、再頒布する自由を保証するマニュアル、教科書などのドキュメント用に作られたコピーレフトの一形態である。

 多くのマニュアル、およびすべてのGNU ソースコードディストリビューションには、適切なライセンス(使用許諾書)が含まれている。

 GNU GPLは、作者が著作権保持者なら、自らのプログラムに簡単に適用できるように作られている。適用のためにGNU GPL を変更する必要はない。プログラムに GNU GPL を参照せよという断り書きを追加すればよい。

 GNU GPL か GNU LGPL でプログラムをコピーレフトにしたければ、GPL学習ページの忠告を参照していただきたい(http://www.gnu.org/copyleft/gpl-howto.html)。GPL を使う場合には、GPLの全文を使わなければならないことに注意していただきたい。GPL は密接不可分の全体であり、部分的なコピーは認められていない(LGPLも同様)。

 多くの異なるプログラムで同じ頒布条件を使えば、さまざまなプログラムの間でコードをコピーすることが容易になる。これらはみな同じ頒布条件を持っているので、頒布条件のずれを気にする必要はない。LGPLには、GPLの対象となっているほかのプログラムにコードをコピーできるようにするために、頒布条件を通常のGPLに変更できるようにする条項が含まれている。

 GNU FDL でマニュアルをコピーレフトにしたい場合には、FDLのテキストの末尾にある指示と GFDL 学習ページ(http://www.gnu.org/copyleft/fdl-howto.html)を参照していただきたい。GNU GPLと同様に、ライセンス全文を使わなければならない。部分的なコピーは認められていない。

初出:第1稿は1996年に執筆。このバージョンは、"Free Software, FreeSociety: Selected Essays of Richard M. Stallman", 2002, GNU Press(http://www.gnupress.org/); ISBN 1-882114-98-1の一部である。

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