伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)演習問題解答例

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第14章 リーダーシップ

1.
 この章では、リーダーシップはマネジメントの全体のうちのごく一部であることが述べられた。「何もする必要のない管理者が、最良のリーダーである」という逆説的な表現の真の意味は、見えやすいリーダーシップを発揮するまでもなく、戦略やシステム、理念によりうまくマネジメントしている管理者が最良のリーダーであるということであると考えられる。

2.
 ①大企業のサラリーマン社長は一般に正当性を持っていると考えられる。日本では外部から社長を迎え入れるよりも従業員の中から社長を選ぶほうが社会的慣行に合致している。このようなサラリーマン社長はその企業のことに長く勤めて様々なことを熟知しているはずであり、またその世代の中で最もふさわしい人が社長に出世したと多くの人が認めるような状態であれば、自分より優れた人だという正当性も生まれやすい。
 ②現場からのたたき上げの工場長は正当性を持っていることが多いであろう。現場のことをよく知っているという専門性がその理由の一つである。たたき上げで工場長になったということは、技能やコミュニケーションなど属人的な能力にも秀でている可能性が高い。ただし、工場長は現場からではなく本社からの従業員がなるものだというその企業での慣行に反した異例のケースであれば、その点で正当性が削ぎ落とされるとも理解できる。
 ③旧共産主義国の共産党書記長はその地位そのものに高い正当性が付与されている。極端に言えば、誰が書記長になっても同じくらいの正当性がある。しかしながら、共産主義体制が崩壊する際などには、無能な書記長の正当性が急激に低下するということも起こり得る。

3.
 補佐役には、自分が一番になって目立つよりも誰かを陰で支えるのを好むという性格が必要とされるだろう。これは補佐役という仕事に内在する性質に由来する。その他の条件や性格は補佐すべき相手(主人役)のタイプによって変わる。補佐役が主人役を補完すると考えるなら、主人役に欠けているものが補佐役に必要なものとなる。例えば若くて活動的な主人役には、その人よりも年長で冷静な補佐役がぴったりであるといった具合である。

 

作成:浅野直樹
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