平成30(2018)年司法試験予備試験論文再現答案民事訴訟法

以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
第1 通常共同訴訟(38条)
 Y及びZに対する請求は、どちらも特定の日時に特定物である本件絵画の売買契約に基づく残代金の請求であり、実際に行為した自然人も共通している。よって、訴訟の目的である義務が数人について共通であるので、その数人は共同訴訟人として訴えられることができる。

第2 同時審判(41条)
 Y及びZに対する請求は、一方が成立すれば他方が成立しないので、法律上併存し得ない関係にある。よって、原告Xが申出があれば、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない(41条1項)。法律上併存し得ないということを詳しく説明すると、本件売買契約がYを本人として成立するか、Yを代理人Zを本人として成立するかのどちらか一つであるということである。

第3 それぞれの手段の比較
 Xとしては、両負けを防ぐために、同時審判の申出をすべきである。

[設問2]
第1 訴訟告知の効力
 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、補助参加をすることができた時に参加したものとみなされ(53条4項)、いわゆる参加的効力が発生する。参加的効力(46条1項)は、敗訴責任の分担という趣旨から、既判力(114条)とは異なり、判決の理由にも及ぶ。本件において、仮にZがXに補助参加をして、Yを被告とする訴訟で買主がZであるという理由で請求が棄却されたとしたら、後訴においてZは買主が自分ではないと主張することはできない。つまり、Xは、後訴で、Yを被告とする訴訟の判決の効力を用いることが可能である。

第2 訴訟告知の効力がZに及ぶかどうか
 しかしそれではZにとってあまりにも酷である。というのも、例えば錯誤(民法95条)などの理由でYにとってもZにとっても売買契約がそもそも無効だと主張する場合には、ZはXではなくむしろYに補助参加するだろう。本件に即しても、ZはYが代表取締役を務める株式会社であり、Xに補助参加することは期待できない。このように、補助参加することが期待できない場合は、「参加することができた時」には当たらないと解すべきである。以上より、Xは、後訴で、Yを被告とする訴訟の判決の効力を用いることは不可能である。

[設問3]
 裁判所は口頭弁論の分離を命じることができる(152条1項)が、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努めなければならない(2条)。
 公正ということに関しては、実体法上Yへの請求とZへの請求はどちらか一方だけが成立するのだから、弁論を分離することで、そのどちらも認められない、あるいは両方とも認められるというのは不公正である。こうしたことを防ぐために同時審判の制度が設けられたのである。[設問1]で記述したように、訴え提起前にYが売買契約成立を否認する理由がわかっていたら同時審判の申出をしていたのだから、弁論を分離すべきではない。
 迅速ということに関しても、Yへの請求とZへの請求で証拠が共通であり、関係する自然人も共通であるため、弁論を併合したままであっても訴訟が複雑になって遅延するおそれはない。かえって弁論を分離したほうが、Yの予定の都合なので、遅延していまいかねない。よって迅速な裁判という観点からも、弁論を分離すべきではない。

以上

 

 




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です