平成25年司法試験予備試験論文(民事訴訟法)答案練習

問題

 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

 

【事例】
 Aは,平成23年11月10日,Bに対し,弁済期を平成24年11月10日として,1000万円を貸し付けた(以下,この貸付けに基づく貸金債権を「甲債権」という。)。しかし,Bは,弁済期にこれを返済しなかった。
 そこで,AがBの現在の財産状況を調査したところ,Bの営む店舗の経営状態が悪化し,甲債権のほかにも,多額の借入金や取引先に対する買掛金の合計1億円余りが弁済期を過ぎても未払となっていること,Bの所有する不動産にはその評価額以上に抵当権が設定されており,平成25年1月31日を弁済期とする500万円の売掛金債権(以下「乙債権」という。)をCに対して有するほか,Bには見るべき資産がないことが判明した。
 そこで,平成25年2月25日,Aは,Bに代位して,乙債権の支払を求める訴えをCに対して提起した(以下,この訴えに係る訴訟を「訴訟1」という。)。

 

〔設問1〕((1)と(2)は,独立した問題である。)
(1) Bは,平成25年3月14日,訴訟1に係る訴状の送達を受けたCから問い合わせを受けて,訴訟1が第一審に係属中であることを知った。Bは,甲債権については,平成24年12月10日にAから免除を受けたとしてその存在を争うとともに,乙債権については,自己に支払うようCに求めたいと考えている。
 ア この場合,Bは,訴訟1において,民事訴訟法上,どのような手段を採ることができるか,理由を付して述べなさい。
 イ 裁判所は,審理の結果,甲債権は存在せず,乙債権は存在すると判断した場合,どのような判決をすべきか,Aが提起した訴訟1に係る訴え及びアでBが採った手段のそれぞれについて説明しなさい。

(2) Bが訴訟1の係属の事実を知らないうちに,訴訟1について,甲債権は存在すると認められるが,乙債権が存在するとは認められないとして,請求棄却判決がされ,この第一審判決が確定した。その後,Bが,Cに対し,乙債権の支払を求めて訴えを提起した(以下,この訴えに係る訴訟を「訴訟2」という。)ところ,訴訟2の過程において,訴訟1についての上記確定判決の存在が明らかになった。この場合において,訴訟2の受訴裁判所はどのような判決をすべきか,当該受訴裁判所が,審理の結果,訴訟1の口頭弁論終結時において甲債権が存在していたと判断したときと,これが存在していなかったと判断したときとに分けて説明しなさい。

 

【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
 Dは,Bに対して,平成25年2月10日を弁済期とする1500万円の売掛金債権を有しているが,同年4月半ば,Dの取引先でCとも取引関係があるEから,AのCに対する訴訟1が第一審に係属中であると知らされた。
 そこで,Dは,顧問弁護士と相談した結果,Aが甲債権を有することを争う必要はないが,このままではAが乙債権の弁済による利益を独占し,自らが弁済を受ける機会を失ってしまうこととなるので,それを避けたいと考えるに至った。

 

〔設問2〕
この場合,Dは,訴訟1において,民事訴訟法上,どのような手段を採ることができるか,理由を付して述べなさい。

 

 

練習答案

以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
(1)
 
  この場合、Bは、訴訟1において、民事訴訟法47条1項の独立当事者参加という手段を採ることができる。
  訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる(47条1項)。
  甲債権の存在が認められ、乙債権の存在が認められずに、請求棄却判決が訴訟1でされると、乙債権の不存在についての既判力(114条1項)がBにも及ぶ。当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人には既判力が及ぶ(115条1項2号)ところ、Aのような代位債権者(民法423条1項)は、115条1項2号の当事者であるからである。そうなるとBは乙債権を行使できなくなるのでその権利が害されるため、独立当事者参加ができる。
  甲債権と乙債権の双方の存在が認められて、請求認容判決が訴訟1でされると、甲債権というBにとっての債務が認められる結果乙債権を行使できなくなるので、やはり権利が害される。
  甲債権の存在が認められないと乙債権にかかわらず却下判決が訴訟1でされることになるが、その場合は乙債権という訴訟の目的が自己の権利であるとBは主張できるので、独立当事者参加をすることができる。
  以上より、Bは、Aを相手方として甲債権の不存在の確認を、Cを相手方として乙債権の自己への支払いをそれぞれ求めて、独立当事者参加をすることができる。
 
  裁判所は、審理の結果、甲債権は存在せず、乙債権は存在すると判断した場合、Aが提起した訴訟1に係る訴えについては却下判決を、BのAを相手方とする請求については請求認容判決を、BのCを相手方とする請求については請求認容判決をすべきである。
  後二者についてはBの請求がそのまま認められているので特に説明する必要もない。前者については、甲債権の存在が認められれば代位債権者としてAは当事者となる(28条)が、認められなければ当事者とならず、訴えが不適法でその不備を補正することができなくなり、訴えを却下することになる(140条)。

(2)
  問題文の場合において、訴訟2の受訴裁判所は、審理の結果、訴訟1の口頭弁論終結時において甲債権が存在していたと判断したときと、これが存在していなかったと判断したときのいずれも、請求棄却判決をすべきである。
  (1)で述べたように、この場合に乙債権の不存在についての既判力がBに及ぶので、請求棄却判決となる。訴訟2の受訴裁判所が甲債権についてどのように判断しようとも、訴訟1では甲債権が認められ、乙債権について審理が尽くされた上でそれが存在しないという結論に至り、Cもその結論を信頼しているので、いずれの場合も請求棄却判決をすべきである。

 

[設問2]
 この場合、Dは、訴訟1において、民事訴訟法47条1項の独立当事者参加という手段を採ることができる。Dは、Bに債権者代位して、訴訟1の目的である乙債権の行使が自己の権利であると主張することができるからである。

以上

 

修正答案

以下民事訴訟法についてはその条数のみを示す。

[設問1]
(1)
 
  この場合、Bは、訴訟1において、民事訴訟法47条1項の独立当事者参加という手段を採ることができる。
  Bとしては、Cに対して乙債権の支払いを求める別訴を提起することがまず考えられる。しかし、AがBに代位してCに対して乙債権の支払いを求める訴訟1をすでに提起してこれが係属しているので、二重起訴に該当するため、この別訴を提起することはできない(142条)。
  次に、BがAの側に補助参加(42条)することが考えられるが、これが認められA側が勝訴したとしても乙債権はAに支払われてしまいBとして支払いを受けることができないので、無意味である。
  そこで最後に独立当事者参加(47条)を検討する。Bにとっては、Aの訴訟遂行がまずくて乙債権の存在が裁判所によって認定されなかったとしたら自己に権利が害されることになると言えるし、訴訟1で訴訟の目的となっている乙債権がAが代位できる債権ではなく自己の権利であると主張することができるとも言える。いずれにせよ47条1項の要件を満たす。
  この場合、Bは、Aに対しては甲債権の不存在確認の、Cに対しては乙債権の支払いの請求をそれぞれ立てることになる。甲債権が不存在であればそもそもAによる訴訟1が不適法であり、そのことを争っているのだから、これは二重起訴には該当しない。これが二重起訴に当たるとすると、いったん債権者代位訴訟が係属すると、債務者として被保全債権の存在を争うことができなくなり、不合理である。
  独立当事者参加をするためには、統一的な審判という観点から、請求の非両立性も要請される。甲債権が存在すればBではなくAが当事者となり乙債権はAに支払うべきであり、逆に甲債権が存在しなければAではなくBが当事者となり乙債権はBに支払うべきであり、請求の非両立性という条件も満たす。

 
  裁判所は、審理の結果、甲債権は存在せず、乙債権は存在すると判断した場合、Aが提起した訴訟1に係る訴えについては却下判決を、BのAを相手方とする請求については請求認容判決を、BのCを相手方とする請求については請求認容判決をすべきである。
  後二者についてはBの請求がそのまま認められているので特に説明する必要もない。前者については、甲債権の存在が認められれば代位債権者としてAは当事者となるが、認められなければ当事者とならず、訴えが不適法でその不備を補正することができなくなり、訴えを却下することになる(140条)。

(2)
  問題文の場合において、訴訟2の受訴裁判所は、審理の結果、訴訟1の口頭弁論終結時において甲債権が存在していたと判断したときは請求棄却判決を、存在していなかったと判断したときは乙債権の存在の有無に応じて請求認容判決または請求棄却判決をすべきである。
  訴訟1で乙債権に関してAが当事者となっている。これは訴訟担当である。そうすると115条1項2号により、被担当者であるBにも既判力が及ぶ。このような場合に既判力が及ばないとすると、CにとってはAとの訴訟で一度請求棄却判決を得てもBとの訴訟に再び応じなければならなくなり、酷であると同時に不経済である。
  ただし、甲債権が存在しなかった場合にまで既判力がBに及ぶとすると、Bにとって酷であり不合理である。甲債権が存在しなければそもそも訴訟1が不適法だからである。Bとしては(1)で述べたように独立当事者参加ができるとしても、訴訟1の係属を知らなければどうしようもない。他方でCとしてはBに対して訴訟告知をすることで二重応訴の負担を免れることができると言える。

 

[設問2]
 [設問1]で述べたように、甲債権が存在するとすると、訴訟1の既判力はBに及ぶ。そうなると結果的に訴訟1の効力がDにも及ぶことになる。Bに既判力が及ぶということは、そのBの債権者であるDが代位することもできなくなるからである。そこで、Dとしては、訴訟1で何らかの手段を採る必要に迫られる。
 [設問1](1)アで述べたのと同じ理由で、別訴の提起は二重起訴に抵触し、補助参加は無意味であり、独立当事者参加をすることができる。Dは債権者としてBに代位しようとしているのだから、基本的にBと同じように考えればよい。共同訴訟参加(52条)については、訴訟1が先に係属している以上、甲債権が存在すればAのみが当事者となり、甲債権が非存在でAが当事者ではなくなって初めてDが当事者となる可能性が出てくるので、共同訴訟人とはならないため不可である。
以上

 

 

感想

練習ではかなりひどい答案を作ってしまいました。[設問2]は結論・記述方法ともこれでよいのか不安です。

 




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です