平成26年司法試験予備試験論文(刑事訴訟法)答案練習

問題

次の【事例】を読んで,後記〔設問〕に答えなさい。

【事 例】
 司法警察員Kらは,A建設株式会社(以下「A社」という。)代表取締役社長である甲が,L県発注の公共工事をA社において落札するため,L県知事乙を接待しているとの情報を得て,甲及び乙に対する内偵捜査を進めるうち,平成25年12月24日,A社名義の預金口座から800万円が引き出されたものの,A社においてそれを取引に用いた形跡がない上,同月25日,乙が,新車を購入し,その代金約800万円をその日のうちに現金で支払ったことが判明した。
 Kらは,甲が乙に対し,800万円の現金を賄賂として供与したとの疑いを持ち,甲を警察署まで任意同行し,Kは,取調室において,甲に対し,供述拒否権を告知した上で,A社名義の預金口座から引き出された800万円の使途につき質問したところ,甲は「何も言いたくない。」と答えた。
 そこで,Kは,甲に対し,「本当のことを話してほしい。この部屋には君と私しかいない。ここで君が話した内容は,供述調書にはしないし,他の警察官や検察官には教えない。ここだけの話として私の胸にしまっておく。」と申し向けたところ,甲はしばらく黙っていたものの,やがて「分かりました。それなら本当のことを話します。あの800万円は乙知事に差し上げました。」と話し始めた。Kが,甲に気付かれないように,所持していたICレコーダーを用いて録音を開始し,そのまま取調べを継続すると,甲は,「乙知事は,以前から,高級車を欲しがっており,その価格が約800万円だと言っていた。そこで,私は,平成25年12月24日にA社の預金口座から800万円を引き出し,その日,乙知事に対し,車両購入代としてその800万円を差し上げ,その際,乙知事に,『来月入札のあるL県庁庁舎の耐震工事をA社が落札できるよう便宜を図っていただきたい。この800万円はそのお礼です。』とお願いした。乙知事は『私に任せておきなさい。』と言ってくれた。」と供述した。Kは,甲に対し,前記供述を録音したことを告げずに取調べを終えた。
 その後,甲は贈賄罪,乙は収賄罪の各被疑事実によりそれぞれ逮捕,勾留され,各罪によりそれぞれ起訴された。第1回公判期日の冒頭手続において,甲は「何も言いたくない。」と陳述し,乙は「甲から800万円を受け取ったことに間違いないが,それは私が甲から借りたものである。」と陳述し,以後,両被告事件の弁論は分離された。

〔設 問〕
 甲の公判において,「甲が乙に対し賄賂として現金800万円を供与したこと」を立証趣旨として,前記ICレコーダーを証拠とすることができるか。その証拠能力につき,問題となり得る点を挙げつつ論じなさい。

 

 

練習答案(実際の試験での再現答案)

(F評価)

以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

1.違法収集証拠(自白の任意性)
 任意になされたものでない疑いのある自白は証拠とすることができない(第319条1項)。本件ICレコーダーには、司法警察員Kが、甲に対し、「ここだけの話として私の胸にしまっておく。」と虚偽を申し向けて、その結果甲が話し始めたことが録音されている。これは違法に集められた証拠であるので、証拠とすることはできない。
 一概に違法に集められた証拠と言っても、そのことだけで証拠能力が否定されるわけではない。しかし本件の違法は重大であり、将来的に同じような違法を繰り返さないためにも、この証拠は排斥されるべきである。

2.秘密録音
 本件ICレコーダーはKが甲に無断で録音したものである。しかしそれは司法警察員による取調べという公の場でのことである。仮に本件ICレコーダーの証拠能力が認められなかったとしても、Kが証人になったり、供述調書を提出することもできる。よってこれだけで本件ICレコーダーの証拠能力が排斥されるということはない。

3.取調べの任意性
 本件では甲が任意に同行して取調べに応じているし、供述拒否権も告知されている。よってこの取調べは原則的に適法であるが、朝から深夜まで取調べを続け、トイレに行くのにも司法警察員が同行しているような態様であったならば、事実上「何時でも退去することができる」(第198条)に反しているので、違法になり得る。その場合は1と同じ基準で違法に集められた証拠が排斥されるかどうかが判断される。

4.伝聞証拠(第320条1項)
 本件ICレコーダーは、「甲が乙に対し賄賂として現金800万円を供与したこと」が立証趣旨とされているので、公判期日における供述に代わる証拠(第320条第1項)に当たるので、伝聞証拠である。そうなると原則として証拠とすることができない。しかしICレコーダーは機械的な正確性でもって音声を記録するものである。記憶したり想起したりする際に内容がわい曲されることがない。よってこれを証拠とすることができる。
 ただしそれが当てはまるのは甲発言の部分のみである。乙知事の発言部分に関しては、ICレコーダーがいくら機械的に正確に録音しようとも、それが正しいとは限らない。この部分は伝聞証拠として証拠能力が排斥される。

 以上より、本件ICレコーダーは違法に集められたという点で、証拠能力が認められない。なお、自白の任意性は日本国憲法第38条で保障されている重要な権利であり、黙秘権や供述拒否権として刑事訴訟法の各所にも規定されているということを付け加えておく。

以上

 

 

修正答案

以下刑事訴訟法についてはその条数のみを示す。

 

第1 伝聞証拠
 供述の真実性が要証事実に求められる場合は、一定の伝聞例外を満たさない限り、公判期日における供述に代えて書面を証拠とすることができない(320条1項)。これは供述を公判期日において反対尋問にさらして、その真実性を吟味できるようにするためである。
 本件ICレコーダーは書面ではないものの、そこには発言が録音されているいてその真実性が問題となり得るので、320条1項の伝聞法則の適用がある。「甲が乙に対し賄賂として現金800万円を供与したこと」を要証事実とする場合は、本件ICレコーダーの録音の内容(甲が乙に対して800万円を交付し、工事の入札で便宜を図ってもらうことを依頼したこと)の真実性が求められる。よって伝聞例外を満たさなければその証拠能力は否定される。
 本件ICレコーダーは被告人である甲の供述を録取した書面に当たるので、322条1項の伝聞例外を検討する。そこでは署名もしくは押印が要求されているが、それはその証拠に記載された内容が本当に被告人の供述であるかを被告人自身に確認してもらうための規定なので、本件のように機械的正確性でもって供述が記録されていることが保証されている場合は署名や押印がなくても差し支えない。また、甲が乙に対して800万円を交付し、工事の入札で便宜を図ってもらうことを依頼したことというのは被告人甲に不利益な事実を承認するものである。そしてこの供述が秘密裏に録音されたことに問題が含まれているとしても、供述拒否権が告知され、本当のことを話してほしいと申し向けられただけで、不起訴の約束などの利益誘導はされていないので、任意でされたものでない疑いはない。以上より、322条1項の伝聞例外を満たす。
 乙知事の「私に任せておきなさい」という発言部分は、それが真実であろうがなかろうが前掲の要証事実の認定に影響を及ぼさないので、そもそも伝聞法則が適用されない。
 以上より、本件ICレコーダーは、その全てについて、伝聞法則により証拠能力が否定されることはない。
第2 自白
 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない(319条1項)。このように規定されている根拠は、任意にされたものでない自白は虚偽である可能性がありそれを排除すべきであるということと、自白を得る過程での人権侵害を防ぐことにある。
 本件ICレコーダーに記録されている甲の供述は、乙に対して800万円を交付し工事の入札で便宜を図ってもらうことを依頼したことをその内容とするものであり、自己の贈賄罪という犯罪事実を認めるものなので、自白である。しかし、伝聞証拠のところでも記述したように、この供述が任意でされたものでない疑いはない。虚偽の自白を誘発するような状況ではなかったし(虚偽の自白をしても甲にとって何の利益もない)、自白を求める司法警察員Kの態様も甲の人権を侵害するようなものではなかった。
 以上より、本件ICレコーダーは任意にされたものでない疑いのある自白として証拠能力が否定されることはない。
第3 違法収集証拠
 違法に収集された証拠は、その違法が重大で、将来の違法を抑制する見地から相当でないとされる場合は、証拠能力が否定される(判例)。
 司法警察職員は犯罪の捜査をするが(189条2項)、強制の処分は刑事訴訟法に特別の定がある場合でなければこれをすることができない(197条1項)。強制の処分とは何らかの法益を侵害する処分を指し、対象者のプライバシーを侵害することもそれに含まれる。司法警察員Kは、「ここで君が話した内容は,供述調書にはしないし,他の警察官や検察官には教えない。ここだけの話として私の胸にしまっておく。」と甲に言い、それを信じた甲が他の人には秘密にしておきたい自らのプライバシーに関わることも供述した。にもかかわらずKはこの供述を秘密に録音し、それが公判廷での証拠の候補になっている。これは刑事訴訟法に特別の定がないのに甲のプライバシーを侵害しているという点で違法である。
 この違法は、清廉潔白が求められる司法警察職員が意図的に虚偽の約束をして供述を引き出し、それを秘密に録音して一言一句抑揚も含めてそのまま誰に対しても容易に再現できるようにしており、甲のプライバシーを大いに侵害する重大な違法であるとともに、司法警察職員を始めとした捜査機関、ひいては司法への信頼を失墜させるものであって将来の違法を抑制する見地からこれを認めることは相当でない。贈賄罪の罪の大きさや他の証拠を集める難しさを考慮しても違法であると言わざるを得ない。
 以上より、本件ICレコーダーは、違法収集証拠であるとしてその証拠能力が否定される。

 

感想

総合的な理解が問われるいい問題ですね。甲のプライバシーを侵害しているから違法だという理由で押し通しましたが、これでよいのかちょっと悩みます。

 



  • 私の一番好きな科目である刑訴の記事がアップされていたので勉強がてらコメントしに来てしまいました。

    伝聞
    ・「供述の真実性が要証事実に求められる場合」という規範は正確なのでしょうか?私にはちょっと判断できませんが、ここは伝聞証拠の定義を書いたほうがよいのかなという気がします。

    ・「本件ICレコーダーは書面ではないものの」
    →これは320条1項前段ですね。前段を指摘するのなら後段にも該当しないことを指摘した方がよいかもしれません。(「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」にも当たらないということ)

    ・「伝聞法則の適用がある」と言い切ったたあとに再度「内容の真実性が求められる」と論じているのは違和感があります。伝聞法則の適用はあるけど、伝聞例外を満たさずとも証拠能力が認められる場合があるということでしょうか。
    伝聞証拠の定義を実質説にたった場合の論証で、伝聞証拠には形式的に該当するけど伝聞法則は適用されないという流れは見たことがありますが。

    ・「要証事実とする場合は」→この書き方はどうでしょう。ようしょう事実の認定をしっかりしたほうが良いと思います。
    ようしょう事実は①罪名と②訴訟経過から③立証趣旨を参考に判断されると思います。本件では賄賂として供与されたのではなく、借りたものだと乙が述べていることがポイントなのではと思います。

    ・「乙知事の…発言部分は、それが真実であろうがなかろうが前掲の要証事実の認定に影響を及ぼさないので」→言いたいことはわかりますが、規範と対応させたほうがよいのではないでしょうか?

    自白
    ・Kが申し向けた具体的内容の評価が重要だと思います。事実を少しでも引用して具体的に論じるべきではないでしょうか?その際は、Kの申し向けがなければ甲は話さなかったんだから甲の供述の自由を侵害したみたいな想定される弁護側の反論などをたたき台にするとよい論述ができるかもしれません。

    違収排
    ・「強制の処分とは何らかの法益を侵害する処分を指し」
    →この定義は良くないと思います。判例も学説も重大な法益侵害がなければ強制処分に当たらないと考えていると思います。そのため、プライバシー侵害があるだけではなく、プライバシー侵害の程度が高い場合でなければ強制処分に当たらないと思います。

    ・判例も学説もだいたい盗聴(対話者のどちらの同意もない場合)は強制処分、秘密録音(一方の同意あり)は強制処分ではないと考えているように思います。今回は対話者が録音しているので秘密録音と同じに考えて良いのではないでしょうか。そうすると、録音の必要性や相当性の具体的こうりょうを論じるべきかと思います。

    はじめは行政法からコメントしようかと思ったんですが、平成26年の行政法があまりにも難しすぎたので刑訴にコメントしました。予備試の受験生はあんな難しい行政法の問題を解かなければならないんですね。

    • 通りすがり様

      あたかも個人レッスンを受けているかのようでありがたいです。

      >「供述の真実性が要証事実に求められる場合」という規範は正確なのでしょうか?私にはちょっと判断できませんが、ここは伝聞証拠の定義を書いたほうがよいのかなという気がします。
      「公判期日における供述に代えた書面」というのが定義で、最初の部分でそれを述べたつもりでした。そして「供述の真実性が要証事実に求められる場合」というのが、伝聞法則の趣旨から導かれる、条文には書かれていない条件だと理解しています。

      >前段を指摘するのなら後段にも該当しないことを指摘した方がよいかもしれません。(「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」にも当たらないということ)
      ICレコーダーは人ではなく物なので後段の供述ではないということは自明だと思いました。

      >「伝聞法則の適用がある」と言い切ったたあとに再度「内容の真実性が求められる」と論じているのは違和感があります。伝聞法則の適用はあるけど、伝聞例外を満たさずとも証拠能力が認められる場合があるということでしょうか。
      「本件ICレコーダーは書面ではないものの、そこには発言が録音されているいてその真実性が問題となり得るので、320条1項の伝聞法則の適用がある。」という記述が不適切で、正しくは「本件ICレコーダーは書面ではないものの、そこには発言が録音されていてその真実性が問題となり得るので、320条1項に規定される書面と同視でき、伝聞法則の適用を検討しなければならない。」と言いたかったのです。

      >「要証事実とする場合は」→この書き方はどうでしょう。
      「要証事実とする場合は」という表現が曖昧でした。「要証事実となるかどうかはわからないが、もしもそうなる場合は…」ではなく、「要証事実となる。その場合は…」と言いたかったのです。乙が借りたものだと述べていることはどう関係するのか疑問に思っていたのですが、ここに関係するのですね。

      >言いたいことはわかりますが、規範と対応させたほうがよいのではないでしょうか?
      そうですね、乙の発言部分については、答案の最初の真実性云々の部分で検討して真実性が問題にならないので伝聞証拠ではないと最初に除外しておいたほうがよかったと振り返って気づきました。

      >Kが申し向けた具体的内容の評価が重要だと思います。事実を少しでも引用して具体的に論じるべきではないでしょうか?その際は、Kの申し向けがなければ甲は話さなかったんだから甲の供述の自由を侵害したみたいな想定される弁護側の反論などをたたき台にするとよい論述ができるかもしれません。
      的確なご指摘です。意識的に事実の引用をしたとして、弁護側の反論をたたき台にすると、「拷問や脅迫により供述を迫ったのではなく、取調で通常想定される理性的な説得により甲が自発的に話し始めたのだから、甲の供述の自由を侵害したとは言えない」くらいでしょうか。

      >この定義は良くないと思います。判例も学説も重大な法益侵害がなければ強制処分に当たらないと考えていると思います。そのため、プライバシー侵害があるだけではなく、プライバシー侵害の程度が高い場合でなければ強制処分に当たらないと思います。
      「強制の処分とは何らかの法益を侵害する処分を指し」の「何らかの」はany(少しでも)の意味ではなくsome(一定の)の意味で用いていたのですが、誤解を招くので、「一定の」に改めたいと思います。

      >今回は対話者が録音しているので秘密録音と同じに考えて良いのではないでしょうか。
      同じ対話者録音型の秘密録音でも、プライバシー侵害の度合いは異なると思います。具体的には、以下の順でプライバシー侵害の度合いが高くなると考えられます。

      喫茶店などでの会話の録音(話し手は周りに聞こえることを想定している)
         ↓
      電話の録音(対話者はハンズフリーモードにして他の人といっしょに電話を聞いているかもしれない)
         ↓
      部屋の中での通常の会話(対話者が他の人に話の内容を伝えるかもしれない)
         ↓
      今回のような誰にも言わないという状況下の部屋の中での会話

      今回のようなパターンは盗聴に近くなると考えています。

      行政法はやはり難しい問題でしたか。私はまだ練習が不足していて簡単な問題なのか難しい問題なのかもわからないくらいです…

      • いえいえ、そんなレッスンだなんて。私にそんな実力はありません。
        試験が終わってしまい適当にバイトしたりしてだらだらと自堕落な日々を送っているので、浅野さんの記事は私自身が勉強するとても良い機会になってます
        私みたいなペーペーの受験生のコメントにお付き合いいただけてとても感謝しております!

        伝聞
        ・伝聞証拠の意義として、形式説(公判廷外の供述を内容とする証拠で、供述内容の真実性を立証するためのもの)と実質説(反対尋問を経ていない供述証拠)の対立が一応ありますので、自分の取る立場の意義を論証に組み込んだ方がよいのかなと思っただけです。あまり重要なポイントではないかもしれません。
        また、「要証事実に求められる」という言い回しがあまり聞いたことなかったため正確な規範なのかなと思っただけです。内容の真実性を立証するために用いるものとか、真実性が問題となるといった言い回しが多い気がします。ですが、そんな重要なことでもないと思いますので、なにかの本にそのように書かれてあるならそれで良いかと思います。

        ・「ICレコーダーは人ではなく物なので後段の供述ではないということは自明だと思いました。」
        →書面でないことは自明ではありませんか?一方だけ指摘したのに違和感があっただけです。どうでもいいことかもしれません。
        今気づきましたが、2段落目では「書面ではないものの」って記述して、3段落目では「書面に当たるので」って書いてますね。

        ・ようしょう事実は同じ証拠でも訴訟経過によってころころ変わると思います。例えば、甲が賄賂のつもりではなかったとか言えば故意がようしょう事実になりそうですね。賄賂罪ではあまりない気がしますが、甲が知らない、賄賂を贈ったのは私ではないとかいえば犯人性がようしょう事実になるかもしれません。

        自白
        ・事実や反対利益を意識して書くだけで十分良い論証になると思いますので、そのように書ければとても良い論述なのではないでしょうか。正直なところ認定の良し悪しは私にはよくわかりません。

        い集排
        ・強制の処分の規範は判例(意思の制圧と身体、住居、財産~の制約)かメジャー学説(相手方の意思に反し、重要な権利利益の制約を伴う処分)で書いたほうがよいのかなと思いました。これも、具体的認定の方が重要かと思いますので、なにかの本に一定のと書かれてあるならそれでもよいかもしれません。ただ、意思の制圧や意思に反するという部分が規範に入っていないのは少し気になります。

        ・強制処分のあてはめでとても深く考えているんですね。私の読解力が足りないだけかもしれませんが、その思考過程を答案に示せば跳ねるのではないでしょうか。
        浅野さんはとても頭が良い方のように思います。そのため、もしかしたらあたりまえの思考過程や前提の話を省略してしまう傾向にあるのかもしれません。浅野さんが当たり前すぎて書かなくてもよいかなと思ったことでも簡潔に答案に示せば意外と点になるのではないかと思います。
         秘密録音の百選判例は警察官が捜索差押の際の事情聴取でこっそり録音した事例でした。会話の相手方に対しては会話の秘密性を放棄しているという判例の理由付けは本件の場合にも使えそうだと私は思いましたが、浅野さんのように①誰にも言わない状況下、②2人しかいない部屋を強調して判例の射程が及ばないと考えることはできそうです。
         ただ、浅野さんのように考える場合にも判例には一応挨拶した方がよいのかなと思います(地裁判例ではありますが一応百選判例ですので)。

        行政法少なくとも私にとっては難しいです!こんなの受験生はまともに解けないと信じたいですね。

        • 通りすがり様

          いただいたコメントのおかげで理解が深まってきています。コメントをせずに傍で読んでいる方の理解の助けにもなっているのではないでしょうか。

          個別の応答に入る前に言い訳をしておくと、学説や判例の知識が圧倒的に不足しており、自分の頭で考えて答案を作っています。話はそれますが、大学入試の数学などでも、公式をほとんど覚えず原理的な思考で対応していました。記憶力があまりよくないので、どうしてもそういう方針になってしまいます。

          >伝聞証拠の意義として、形式説(公判廷外の供述を内容とする証拠で、供述内容の真実性を立証するためのもの)と実質説(反対尋問を経ていない供述証拠)の対立
          この対立点を意識せず、両方を混ぜて使っていました。主尋問を終えたところで証人が死亡した場合などにはこの区別が重要になりますね(形式説では伝聞非該当で証拠能力肯定、実質説では伝聞該当で例外を満たさなければ証拠能力否定)。

          >真実性が問題となるといった言い回しが多い気がします
          「要証事実に求められる」という表現は自分でも違和感を少し覚えていたので、「真実性が問題となる」を使わせてもらいます。

          >書面でないことは自明ではありませんか?一方だけ指摘したのに違和感があっただけです。どうでもいいことかもしれません。今気づきましたが、2段落目では「書面ではないものの」って記述して、3段落目では「書面に当たるので」って書いてますね。
          私の説明不足でした。ICレコーダーは形式的には書面ではないが実質的には書面と同視できるので320条以下の射程内だと言いたかったのです(供述と同視するつもりはなかったので後段の指摘は割愛しました)。3段落目の「書面に当たるので」は「書面と同視できるので」とすべきですね。

          >ようしょう事実は同じ証拠でも訴訟経過によってころころ変わると思います。
          この発想があまりなかったのでご指摘いただいてありがたいです。実務基礎科目とも関係するかもしれません。

          >意思の制圧や意思に反するという部分が規範に入っていないのは少し気になります
          今回の事案や宅配便の荷物のX線検査のような事例では、そもそも録音やX線検査がされていることを知らないので、意思を制圧していないし、(明示の)意思に反していないので、その部分をあまり書きたくないのです。

          >①誰にも言わない状況下、②2人しかいない部屋を強調して判例の射程が及ばないと考えることはできそうです。
          まさにそう言いたかったのでした! 簡潔に要点をまとめていただきありがとうございます。

          全体的に雑な記述をしていたのだなと気づかされました。思考過程や前提をなるべく答案に示せるように努力します。

  • 私が結構細かく学説や判例を指摘しているのは自分の勉強のためであって、がっちり暗記しておさえなければだめというものではないと思います。

    私の感覚では(私は合格者でもないので間違っているかもしれませんが)浅野さんが知識不足とは思いません。それよりも、コメントなどを見ると十分に検討できているはずなのにそれを答案にあまり書いていないことが私としては一番気になります。
    今回の伝聞や自白にしても強制の処分にしても、事実への着目や分析は検討段階ではかなりできていると思いますので、浅野さんが考えたことをほんの少し答案に示すだけで(たくさん書くとメインが書けなくなるので)点が跳ね上がるのではないでしょうか。
    例えば、実際は強制の処分でかなり事実に着目した詳細な分析をしているのに、答案から、「あれ、この人プライバシーに関わるってだけで簡単に強制処分にしているじゃん。何も問題点に気づけていないな」なんて試験委員に思われたら勿体なさすぎると思います。

    それにしても数学で公式をほとんど覚えずにってすごいですね!司法試験は法律を覚える試験ではなく法律を使う試験だと思っていますのでただ覚えていることには全く意味がないと思います。なので、浅野さんが数学で培ったその思考力は強い武器になるのではないでしょうか。

    いしゅうはい
    >今回の事案や宅配便の荷物のX線検査のような事例では、そもそも録音やX線検査がされていることを知らないので、意思を制圧していないし、(明示の)意思に反していないので、その部分をあまり書きたくないのです。

    →こういった悩みを答案に示すようにするとよいのではないでしょうか。
    本問では大した問題ではなく別に書かなくても良い気がしますが、書きたくない、よくわからないといったことがまさに試験委員の聞きたいことであることは意外と多い気がします。

    確かにこの手の捜査類型では意思の制圧や意思の明示が考えられません。それにもかかわらず、この捜査類型で意思の制圧がないと考える人はあまりいないと思われます。
    その理由としては、プライバシー侵害を伴う捜査に同意することは相手方の合理的意思解釈から言ってありえないなどといったものが考えられます。また、当該捜査類型では意思の制圧の要件を課しても意味がないなどとしてもよいかもしれません。
    ちなみに受験生では、「反対意思を形成する機会を与えないため意思の制圧と同視できる」といった具合に流す人が多い気がします。

    • 通りすがり様

      率直な生の声は本当に参考になります。

      論文の問題を考えているときには、自分が悩んでいることなんて学説や判例で定説があって他の受験生はそれをしっかり書いてくるんだろうなと思いつつ、自分に自信がないのでごまかそうとすることがあったように感じます。意外と素直に悩みを書いたほうがよいのかもしれませんね。

      >ちなみに受験生では、「反対意思を形成する機会を与えないため意思の制圧と同視できる」といった具合に流す人が多い気がします
      うまいですね。この辺りが訓練を積んでいる受験生とそうでない受験生の差かもしれません。


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